イベント
アマチュアプログラマーの祭典「leapfest 2012」が開催。9leapプロジェクトの表彰式や,遠藤雅伸氏がゲーム開発の重要ポイントを披露するセッションも
9leapという名前にも,プロジェクトのコンセプトが反映されている。まず一つは1969年に月面に初めて降り立ったアームストロング船長の名言,「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが,人類にとっては偉大な飛躍(leap)である」から取っているとのことである。
加えて,かつて清水氏のもとで働いており,今は海外で活躍する優秀な若手プログラマーが,ハンドルネームに“9”の文字を使っていたこと,そして清水氏が彼のもとに遊びに行ったとき立ち寄った本屋で“leap”という単語を目にしたことも大きな理由となっている。すなわち9leapという言葉は,そのプログラマーのような人材を発掘/育成しようというコンセプトを,そのまま表現しているのである。
続いて清水氏は,9leapプロジェクトでコンテスト形式を採用し,誰もが投稿作品に実際に触れられる公式サイトを用意した経緯を説明。氏自身はそれまで,若手を育成することに積極的ではなかったが,思い起こせば学生時代,雑誌の投稿コーナーなどの発表の場があったからこそ,プログラム制作のモチベーションを保つことができたという。そこで若いプログラマーが自分の作品を発表し,評価され,また自身でプレゼンテーションできる場を設けたというわけである。
まず遠藤氏は,ゲームデザインの基本を“自分が何を面白いと思うか”を軸にすることが重要であると述べ,氏自身にとってそれは“競争”“非日常”“トレース”であると説明した。
そして,もう一つ重要なポイントは“人はなぜ,ゲームをするのか”であると続ける。遠藤氏は,人がゲームをするときのモチベーションを大切にするべきであるとし,ゲーム開発者は,常にプレイヤーを意識していなければならないと述べた。氏は,自身が若い頃に手がけた「ドルアーガの塔」を悪い例に挙げ,「何の手がかりもない無茶苦茶な謎を用意して,『お前らこれを解け!』という作り方をしています。ああいう不親切な作り方は駄目だと思いますね」と説明し,会場を沸かせていた。
それでは,プレイヤーのモチベーションを保つにはどうすればいいのか。遠藤氏は3つの答を持ってゲーム開発に臨んでいるとのことで,一つ目として“プレイヤーの自己満足”を挙げた。これはすなわち,プレイヤーがゲームを遊んだ結果で満足できなければならないということである。例えばFPS/TPSのキャンペーンモードは,敵を倒しステージをクリアして初めて満足できるものであるから,イージーモードには「最後までプレイさせよう」という開発者の気持ちが込められていなければならないと遠藤氏は話す。また,「とりあえず,ここまで進めばセーブできる」といった見えやすい目標を細かく設定することも,モチベーション維持には効果的とのことだ。
二つ目は“プレイヤーの自己表現”。これは自身のプレイや,あるいは収集したアイテムなどをほかのプレイヤーに披露する場を作ることで,遠藤氏は「他人よりランキングが一つでも上にあることで『オレはこんなにすごい』という優越感を抱かせることが大事」と説明する。古くはアーケードゲームでスーパープレイを披露するプレイヤーを取り巻くギャラリーがそれにあたり,昨今のオンラインゲーム/ソーシャルゲームでも,与ダメージの数値や装備のグラフィックスをきちんと目に見えるようにすることが重要というわけである。
三つ目は“探求”。例えばRPGでは,エンディングを迎えたら終わりにするではなく,ミニゲームや隠しボスなどの探求要素を用意して,プレイヤーの“やり込みプレイ”へのモチベーションを喚起すべきである,と遠藤氏は説明する。そうしたプレイの継続には,ゲーム中での絶妙なヒントの提示もポイントになっているそうだ。上記のダメージ表示に関しても,ダメージの計算式を割り出すことに喜びを感じるようなプレイヤーにとっては,重要なヒントになっているとのことである。
最後に遠藤氏は,テクノロジーが進化してゲーム開発が便利になっていることに言及し,「楽になっているからと言って,自分だけが満足するものを作るのでは駄目。何となくであっても,プレイヤーのことを意識しながらゲームを作ってほしい」と来場者に呼びかけた。
イベントの後半では,9leapに投稿された作品のうち,コンテストの対象外となったものの中から優秀賞を選出する,「openleap」の公開審査会が開催された。一次審査を通過したのは以下の9作品で,壇上での審査および遠藤雅伸氏の助言により,higopageさんの「花ちゃんジャンプ」が優秀賞を獲得した。
「斬って切って斬りまくれ!」
作者:mimimoさん
「反撃の狼煙」
作者:yac_yac_yacさん
「The Flame Knight」
作者:kubohiroyaさん
「グルリン」
作者:toteteroさん
「すねーくん」
作者:usami_yuさん
「花ちゃんジャンプ」
作者:higopageさん
「ラピッドブースト」
作者:he_nokiさん
「ささわーるど」
作者:akisasa33さん
「ワナゲーβ版(0.2)」
作者:kono3478さん
「洞窟もぐり」
作者:chick307さん
同じくエンディングセッションに登壇した,伏見遼平氏(写真左)。20歳になる東京大学の学生で,2011年はenchant.jsプロジェクトのリーダーを務めた |
エンディングセッションにスペシャルゲストとして登壇した電通 顧問/作家の鏡 明氏。広告コミュニケーションにおけるゲームの可能性にも言及していた |
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