プレイレポート
「リーグ・オブ・レジェンド」2018年シーズンのヘカリムJungleが弱すぎるので“ワンパン馬ン”を推す
2018年シーズンを振り返ると,変更が大きすぎて環境が荒れに荒れた。プレシーズンで,既存のルーンとマスタリーがすべて撤廃されたことに始まり,中立モンスターから得られる経験値の低下や,リフトスカトルの取り合いの発生といった,Jungle(※)への変更も大きかった。ADCが試合に与える影響が小さくなりすぎて,Botレーンなんでもアリ合戦が勃発した時期は,本当にカオスだった。次のシーズンは,いったい何が起こるのだろうか。
※本稿では,ロールを指すときは「Jungle」,場所を指すときは「ジャングル」と表記している。ロールは「Jungler」では? と思われるかもしれないが,大会でのロール表記がJungleなので,そちらに準じた形だ。
2017年シーズンでは,筆者が個人的に好きな当時の圧倒的不人気チャンプ・アーゴット様の魅力を語らせてもらったが,2018年シーズンももう終わることだし,プレイ感をオススメしたいチャンピオンについて,また好き放題言わせてもらいたい。今回は,ジャングルの大変更により貧弱野郎に成り下がり,低い勝率,パっとしないピック率を併せ持つことになってしまったが,使っていてとっても楽しいヘカリムだ!
……正直,もう一度この手のネタで筆を執るつもりはなかったのだが,公式で弱いと断言されたうえにロクに救われず,「ワンパン馬ン」なんて不名誉なあだ名ももらい,悲しくて仕方がないので,次のシーズンでは助かってほしいという願いを込めて紹介したい。
圧倒的な機動力を誇る,爆走Jungle
2018年シーズンでのヘカリムのダメっぷりを説明する前に,使ったことがない,よく知らないという人向けにざっくりと紹介しておこう。ヘカリムは人間と馬が融合した,ケンタウロスのような見た目のチャンピオンだ。下半身が馬だけあって機動力に特化しており,とにかく足が速い。得意ロールは主にJungleだが,メタによってはTopで暴れたこともある(ただし下方修正されて森に帰った)。2018年シーズンも,基本的にはJungle担当だが,北米のプロチームCloud9が,Topレーンでエイトロックスのカウンターとしてヘカリムを使ったことにより注目が集まった。とはいえ,これはちょっと例外的なピックなので,本稿では基本的にJungleとして触れていく。
ヘカリムの設定は,外道としか言いようがない。仲間を見殺しにするわ,仕えている王を騙すわ,味方のカリスタを裏切って背後から槍で刺すわ,島の住民を虐殺するわで,完全にクソ野郎である。結果的に,殺戮だけを求める呪われた異形の怪物と成り果てたが,自業自得というものだろう。とはいえ,性格は悪役として一貫しているし,ビジュアルは非常にカッコイイ。ガレンにぶった斬られただけの設定と不細工な外見だった旧アーゴットに比べれば,遥かにマシだ。
ヘカリムに限らず,悪の皇帝と言わんばかりのモルデカイザー,ルシアンの仇敵であるスレッシュ,出身地の割に珍しく善人なヨリックなど,シャドウアイル勢の設定は面白いので,公式サイトのユニバースには目を通してみよう。
ヘカリムは,2012年に実装された古めのチャンピオンであり,リワークもされていないので,最近のチャンピオンにありがちな複雑なスキルがなく,使っていて分かりやすい。前述のとおり,機動力に全力投球しており,足を止めて使うスキルを1つも持たないという徹底ぶりだ。
パッシブ:ウォーパス
足の速さに応じて攻撃力が上がる。あまりに分かりやすすぎる,ヘカリムらしいスキル。これを持つおかげで,移動力関係のルーンと相性が良い。
Q:ランページ
武器を振り回して周囲にダメージを与える。移動中でも使用可能なうえ,クールダウンはわずか4秒で,さらに敵に当て続けることで2秒まで短縮される効果があるので,戦闘中はとにかくぶん回す。ただし,最初はカスみたいなダメージしかでないくせに,マナ消費が妙に重い。これを連発できてしまうと,Topレーンで暴れるのである。
W:ソウルドレイン
4秒間,周囲に魔法ダメージを与えつつ,範囲内の敵が受けたダメージの30%ぶんヘルスを回復するという攻防一体のスキル。強力だがクールダウンが非常に長い。これを連発できてしまうと,Topレーンで暴れるのである……。
E:チャージ
ヘカリムのアイデンティティと言える最重要スキル。移動速度が4秒間増加し,ユニットをすり抜ける効果を得る。さらに,次の通常攻撃が強化され,ノックバックの効果も付く。スキル使用後の移動距離に応じて威力がアップするので,勢いをつけて突進すれば強烈な一撃を叩き込めるが,クールダウンは非常に長い。
このスキルを使っての攻撃は,前脚でのキックになる。
R:スペクターズ・オンスロート
騎兵隊の亡霊と共に突撃する。壁を越えて指定地点に一気に移動できる,ヘカリムの機動力を支えるもう1つのスキルであり,着地地点から発生する衝撃波によって恐怖状態をバラ巻く,集団戦の要となるスキルでもある。強力なうえに派手でかっこよく,文句なしのUltだ。
序盤,中盤,終盤と隙なく弱い
ヘカリムについて一通りご理解いただいたところで,本題に入ろう。ヘカリムのロールはJungleになるわけだが,2018年シーズンの環境では,弱い期間がずっと続いていた。どのぐらい弱いかというと,8月のパッチ8.16で「ヘカリムは現状,とても弱い状態にあります」と断言されたぐらいである。この時,公式につけられたあだ名は,チャージで突っ込んでワンパンするぐらいしか仕事がないからか「ワンパン馬ン」。しかも,このパッチでランページが強化されたと思いきや,同時にヘカリムの重要マスタリーである「追い風」は下方修正されており,「え,助けてくれるんじゃなかったの?」という感じ。いちおう,勝率自体は上がったものの,マシになった程度で弱いまま。その後のパッチでは放置されており,おそらく,2018年シーズン中の調整は望めないだろう。
では,どう弱いのか。酷い話だが,序盤,中盤,終盤と隙なく弱い。もともとのヘカリムは,ジャングル内での1vs.1の戦闘が苦手で,カウンタージャングルにとても弱い代わりに,機動力を駆使したガンク性能が高かった。コアアイテムが1つ完成したあたりから強くなるので,序盤をどうにか乗り越えて有利を作れれば,そのまま試合を壊していける“スノーボール”型のJungleだったのだ。
しかし,2018年シーズンはそうもいかない。中立モンスターからの経験値が減り,レーンへの影響力は低下。リフトスカトルの取り合いも強制されるようになったが,もともと相手のJungleと殴り合っても勝てないし,チャンピオンによっては出会うと最悪殺されるので,相手に渡すしかないこともしばしば。経験値もゴールドも遅れがちになり,視界管理も不利となる。
もちろん,タイマンが得意なやつにこちらのジャングル内に入ってこられると,荒らされ放題でどうにもならないところも変わっていない。むしろリフトスカトルが取れないぶん悪化した。序盤を乗り越えたくてもいじめられっぱなしで,スノーボールどころではない。
中立モンスターの処理もそれほど速くないので,ヘカリムにできることは,相手Jungleと出会わないよううまく立ち回りながら,隙あらばガンクに向かうぐらいだ。どうにかキルをもぎ取って勢いに乗り,早めにチームを勝利に導きたい。というか,そうしないと本当に悲惨なことになる。
ワンパン馬ンが最高に楽しい
現環境では弱いことを踏まえたうえで,ヘカリムのどこに楽しさがあるかというと,速すぎる足による理不尽な突撃,この一点である。
ランページとソウルドレインは,接近戦でダメージを与え続けるスキルなので,ヘカリムは一見DPS(秒間ダメージ)に優れたチャンピオンに思えるかもしれない。ただ,実際は狙った相手へのチャージで瞬間火力を叩きだすことに長けている。相手の視界外から猛ダッシュで突っ込み,威力最大となったチャージをかまして,ついでに移動中でも使えるランページをお見舞いしてやるわけだ。
アイテムビルドとしては,回転率の高いランページや,通常攻撃扱いのチャージと相性が良い「トリニティフォース」を目指し,その後は集団戦での殴り合いに対応するため防具を積むことが多い。ヘカリムで“勝ちたい”なら,間違いなくそれが正解だ。しかし,ここで筆者は主張したい。「それ,楽しいですか?」と。
どうせ2018年シーズンのヘカリムは残念性能なのだ。ここはあえてビルドガイドを探しても出てこない「ワンパン馬ン」特化方向を推していきたい。なぜって,これがめちゃくちゃ楽しいのである。
トリニティフォースの購入を目指す点は変わらない。ただし防具は積まない。一発だけ確定クリティカルが出る「ストームレイザー」や,火力が上がって足も速くなる「妖夢の霊剣」,火力が上がって固くもなれる「ステラックの籠手」あたりを買って,相手に突撃することだけに特化してしまうのだ。
ワンパンヘカリムが順調に育った場合,メイジやADCなどの柔らかいチャンピオン相手なら,一回の突撃でヘルスの8割ぐらいを削れる。もちろん,その後スペクターズ・オンスロートを追加してあげれば,何もできずに死ぬ。相手は走ろうがフラッシュを使おうが,ヘカリムが速すぎて逃げることすらできず,青塗りの高級馬とぶつかるのを怯えて過ごすしかない。この理不尽さは,一度味わえばクセになる。
防具がないため,集団戦で敵に捕まると一瞬で馬刺しにされてしまうのだが,そこで生かすべきは足の速さだ。誰かを1人轢いたあとは,「アサシン運用だから」と自分に言い聞かせ,そのまま走って戦闘を離脱してしまおう。そしてチャージを再使用できるようになったら,もう一度生き残っているやつを轢きに戻るのだ。
問題は,ワンパンにすべてをかけすぎているため,相手が育っていてレベルが高かったり,チーム構成的に守りが固かったり,レイトゲームに突入したりすると,柔らかい相手であっても倒しきれず,仕事ができなくなること。ものすごい勢いで走っていき,敵に当たって爆散する,役立たずなホーミングミサイルになってしまう。
また,あまりにヘカリムにキルが集まってしまうと,それはそれでゲームが長引くにつれて不利になっていくが,キルを譲るなんて器用なことができるダメージではないので,活躍しすぎても最終的に負けがちだ。勝つためではなく,開き直って楽しむためのビルドなので,ノーマルとかで計画的に利用してほしい。
というか,2018年シーズンのランクでヘカリムJungleを選ぶこと自体が微妙である。次のシーズンでは復権してくれることを切に願いたい。
Topレーンは序盤の殴り合いとMidレーンへの圧力が強みだが,難度が高い
最後に,Topレーンで使う場合も触れておこう。データサイトなどで調べると分かるのだが,現環境でのTopヘカリムは高い勝率を誇っている。ただし,ピック率は恐ろしく低いので,ものすごくヘカリムを使いこんでいるうまいプレイヤーが,勝てる相手に対して適切な運用をした結果と考えるべきだろう。真似しようと思っても,簡単にはできないと思う。
ビルドとしては,敵チャンピオンと殴り合うと移動速度が上がるフェイズラッシュのルーンを使うのが大きな特徴だ。ヘカリムの場合,フェイズラッシュが発動すると,パッシブの効果で攻撃力も上がる。スタートアイテムはコラプトポーションで,トリニティフォースを最優先で目指し,そのあとは防具を積むのが主流だ。
サモナースペルはイグナイト&テレポートを採用し,確実にレーンでの有利を取りにいく例が多い。
個人的に,Topレーンでの運用は難度が高い。最序盤はコラプトポーションとフェイズラッシュの効果で,殴り合いによるダメージ交換は強い。イグナイトもあるので,キルにつなげられることもある。殴り合いながらミニオンの処理もできるため,レーンプッシュも早い。有利を取ってからMidレーンに顔を出して,さらなるキルを取っていければ,集団戦も勝利に導ける。
ただ,Midで戦果を上げられるかは味方による部分もあり,かといってそれができないと,試合時間が伸びるにつれヘカリム自身もすごい勢いで腐っていくので,少なくともソロ向けではないと思う。Jungleよりも,自慢の機動力を生かすための選択肢が狭いのだ。
また,ヘカリム以上に殴り合いが強い相手との対面になると,本当にどうしようもないので,相手は慎重に選ぶ必要がある。Topレーンで対面をいじめて機動力でほかのレーンを襲うなら,クインでも使ったほうが分かりやすい。キャリーする気で使うのであれば,Jungle以上に腕を磨く必要はあるだろう。次のシーズンでもTopレーンで出せるのかは分からないが……。
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