インタビュー
「モンスターハンター3(トライ)」アシスタントプロデューサー小嶋慎太郎氏に聞く,「モンスターハンターフェスタ」の裏話と今後の展開
今回,小嶋氏にインタビューする機会を得た4Gamerでは,モンスターハンターフェスタ’09をはじめとする「モンスターハンター」シリーズの“外”における展開を中心とした話を聞いてきた。
“人と一緒にやったら楽しい”モンハンの楽しさを伝えたい
そんな思いから始まった「モンスターハンターフェスタ」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。4Gamerでは小嶋さんに登場していただくのは初めてなので,まずはこれまで,「モンスターハンター」シリーズにどのような形で携わってきたのかをあらためて教えてください。
初代「モンスターハンター」から企画に関わってます。がっつりとモンスター系の企画全部をやっていたのは,「モンスターハンター」「モンスターハンターG」「モンスターハンター2(ドス)」「モンスターハンターポータブル」あたりまでですね。以後はプロモーションやグッズ関係をやりつつ,「モンスターハンターポータブル 2nd」「モンスターハンターポータブル 2nd G」では,メインモンスター系のチェックや監修が中心です。「3(トライ)」に関しては完全にプロモーション側ですね。
4Gamer:
小嶋さんは,モンスターハンターフェスタをはじめとしたイベントの企画や関連グッズをプロデュースしているとのことですが,具体的にはどのようなことをしているのでしょうか?
小嶋氏:
イベントのベース部分は運営が組み立てているんですけど,それに対して「今のモンハンならこんなことできるんじゃないの」っていう企画を出したり,配布物をどんなものにしようとか,一通りの監修をしています。フェスタは皆で作ってはいるんですけど,エッセンスはいろいろと入れさせてもらっています。
4Gamer:
「モンスターハンター」シリーズというくくりではありますが,単独のタイトルで,このフェスタほど大きな規模のイベントって類を見ないと思うんです。フェスタがスタートしたきっかけを教えてもらえますか?
小嶋氏:
フェスタは「2nd」の頃にスタートしたんですけど,「2nd」の発売前のアンケートとかを見ると,一人でしかプレイしていなかった人って,けっこう多かったんです。そこで「人と一緒にやったら楽しいんだよ」っていうアピールをしたいなというのが,そもそもの始まりだったんですよ。
フェスタってゲーム大会もそうですけど,造形物があったりとか,屋台があったりとか,なんか変なノリのものとか,来てみると面白いみたいなものがあるじゃないですか。集会所もあったりとか。そういったイベントに行って「面白かったね」って思って帰ってもらえたらいいなって。
4Gamer:
なるほど。人と一緒にプレイする楽しさを体験できるように,人が集まりやすいお祭りの場を用意したという感じでしょうか。
さて,今年で3年目となるフェスタですが,’09では東京/大阪/名古屋の3会場ですでに開催されました。折り返し地点まできた現時点での感想を聞かせてください。
小嶋氏:
フェスタは年々盛り上がってきてる感があるんですが,常連の方と新規の方がいい具合に混ざってきていて,今年は今までの積み重ねが表れてきている感じになっているのが嬉しいですね。
4Gamer:
狩王決定戦の最高クリアタイムが東京/大阪/名古屋大会と回を重ねるごとに更新されていますが,それを見てどのように感じましたか?
小嶋氏:
「すごいな」と。皆さんよく研究していますよね。フェスタでは毎回の傾向ではあるんですけど,1大会が終わったら,その次の大会では前の大会のプレイとか組み合わせを研究してさらに極めてくるんです。
今までのフェスタは地方大会から開催していたので,けっこう特殊な組み合わせや我流が多かったんです。今回は東京大会からのスタートだったので,情報が集まりやすいのか,極めていく過程の間隔がすごくせばまっているなというのを,とくに感じましたね。
4Gamer:
ちなみに,フェスタ開催前はどれくらいのクリアタイムを想定していたんですか?
予選のクルペッコで4分くらい,2分を切れたらすごいんじゃないかという感じですかね。フェスタ期間中に,2分を切る組は現れるだろうって思っていたんですけど,実際は2分を切るどころか,1分11秒とかよく分からないくらいすごいタイムがもう出ちゃってますけど(笑)。
ラギアクルスも同じですよね。6分はかかるんじゃないかって思っていたんですけど,大阪/名古屋では2分台のタイムが出ていますし。あれはすべてがうまく当てはまった詰め将棋みたいな感じだと思います。
4Gamer:
福岡/北海道大会はさらにクリアタイムが更新されると思いますか?
小嶋氏:
名古屋大会から福岡大会まで,ちょっと間隔が空くじゃないですか。福岡/北海道の人は,モチベーションをどこまで保てるかっていうところでしょうか。地区大会の練習をずっとしているかもしれませんけど,決勝大会を見据えてほかのモンスターの練習もしているかもしれません。
ただ,さらなるタイム更新も期待はしたいですけどね。でも,予選であのクルペッコのタイムを超えるとなると,エライことになりそうですよね。1分切りとか(笑)。
4Gamer:
実際にプレイを見て思いましたが,真似してもやっぱりあんなタイムは出せないです。
小嶋氏:
当てるポイントとかお互いの立ち位置とか連携とか,すごく濃くやってないと,あのタイムは絶対出ないんで,反復練習をかなりしていますよね。
今回のとくにラギアクルスは,本当にうまくハマッたチームが勝ち上がるという,ちょっとしたミスも許されないシビアな狩りが繰り広げられているという感じですね。
上手い人達は,連携とかがちょっとズレても軌道修正できるんですけど,修正に入ったチームは落ちちゃっているんですよね。それでもすごくいいタイムなんですけど。
4Gamer:
ちなみに小嶋さんは,出場者側でやりたいとは思いますか?
小嶋氏:
思いませんね,開発者がミスったら恥ずかしいですし(笑)。
開発者はゲームの土台とか,ある一定のことを分かっていますから,上手いこと操作はできます。でも,一定のレベルプラスアルファを超す上手さで開発の上を行って,極めていくのはどのゲームでも絶対ユーザーですから。ゲームの可能性を見せてくれるという面でも,狩王決定戦は毎回楽しみですよ。
決勝ステージで4人の画面を同時に見ていると,目まぐるしくてどの画面を見たらいいか分からなくなるんですけど,小嶋さんはいいタイミングでメイン画面を切り替えながら実況していますよね。4画面をうまく同時に見るコツはあるんですか?
小嶋氏:
あれは……ノリ?(笑)。まあ,僕も全部把握しているわけではないんですけど,3年もやっていると「このときに切り替えないと会場がしれっとする展開になっちゃうな」というのは分かります。なので,見せ場が来そうなときに,タイミングを見て画面を切り替えています。
ステージには常に2人いるので,解説のメインは藤岡や木下に任せています。進行に徹していたら全体を見ていられるんで,そこは役割分担ですよね。
ストイックなだけじゃない“楽しい部分”を伝える
“開発者チャレンジクエスト”
4Gamer:
同じくステージイベントの開発者チャレンジクエストは,事前に段取りはすべて決まっているんですか?
小嶋氏:
すべてではないですね。フェスタの準備をしているだいぶ前から,このクエストをやろうかっていう想定はいくつかしています。ただ,そのときの雰囲気とか,公開されている情報に対してのユーザーの反応とか,アピールしたいものとかを踏まえて,そのままでいくことも,前日のリハーサルの段階で変えることもあります。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,辻本さんの行動はリハーサルのときから自由奔放な感じなんですか?
小嶋氏:
辻本はたまに神が降臨することがあるんで,基本的に自由に動いてもらって,その行動を皆が想定して対応しているという感じです。
4Gamer:
辻本さん,名古屋では「今までで一番緊張した」って言ってましたね。
小嶋氏:
開発者のプレイは,最初のフェスタからやらせてもらっているんですけど,開発者なら上手くて当然だろうというのもあったんで,本気のガチプレイの予定だったんです。でも一番最初のフェスタで,1会場目の最速アタック決定戦を見て,「俺達は違うほうの楽しみ方を表現しよう」ってなって。
4Gamer:
なるほど。結果的には,やり込みとは正反対の位置付けになったことが,いい形になっているのかもしれませんね。
モンハンって,フェスタもグッズもそうなんですけど,かっこいい,面白い,可愛いって幅広くできるし,ゲームスタイルもストイックにやってもいいし,わいわいやってもいいしっていうのがあるんです。
なので,ストイックにやり込んだ見せ場は僕らじゃなくてユーザーのほうが熱いので,楽しい部分というか「こんなことができるんだよ」というのを見せようというのが,開発者チャレンジクエストのスタートです。まあ,どんどんモンスター側の人間になってるヤ……方もいますけど(笑)。
4Gamer:
なるほど。開発者チャレンジクエストは朝イチのイベントなのにすごい賑わいで,楽しみにしている人は多いんだなと感じました。
小嶋氏:
毎回,かなり試行錯誤しながらやらせてもらってますけどね(笑)。
モンハンは,素材が欲しいときはガチでやりますけど,そうじゃないときはクエスト中にふざけたりとかできる空気があるんで,そういうものも楽しんでもらえているのかなという気がしますね。
ゲームの中だけでは分からない“モンハンの世界観”を
ユーザーに伝えるべく始まった“教えて藤岡先生”
“教えて藤岡先生”も人気のイベントですが,今回“帰って来た”経緯を教えてもらえますか?
小嶋氏:
“教えて藤岡先生”は,前回のフェスタでも人気だったんですよね。やはりゲームだけじゃ語られていない設定をディレクター自ら語ってくれるのは,ユーザーさんも楽しみにしてたんじゃないでしょうか? まぁ,本人は「緊張するからいやや〜」とか冗談みたいに言ってますが,ユーザーさんが求めている限りは先生をしてもらいますよ(笑)。
4Gamer:
東京のモンハンラジオ公開録音でも,「教えて藤岡先生をレギュラーコーナーにしてほしい」「藤岡さんをパーソナリティにしてほしい」ってユーザーからのお便りを,藤岡さんが取り上げていましたね。あれは藤岡さんが自分で選んだんですか?
藤岡ですね。とは言っても,選んでいる最中にみんなで藤岡をたきつけたんですが(笑)。
モンハンの中で,ゲームだけじゃない世界観というものをいろいろと考えて作っているんで,そういった情報が出せる場がフェスタで欲しいなと。インタビューや本などで情報が出ることはありますけど,ユーザーのすべてが見ているわけではないですし。
モンハンでこだわっている部分を出した新コンテンツができないかなって思ったのがきっかけですね。
4Gamer:
藤岡さんに白羽の矢が立ったのはどういった経緯なんですか?
小嶋氏:
藤岡ってけっこう語るタイプなんですよ。「なら先生でいいじゃん,“藤岡先生”やる?」っていうのが去年のことですね。最初藤岡は「何それ?」みたいに言っていたんですが,「まあまあまあ,白衣着とこうか」って(笑)。けっこうゴネてたんですけど,最後は腹くくってやってくれましたね。
4Gamer:
ゲームの中だけでは分からない情報を聞けるのは,ファンにとってはすごい嬉しいですよね。
小嶋氏:
声があれば「教えて藤岡先生リターンズ」みたいに続けていけますから,もっと言ってください(笑)。
4Gamer:
“教えて藤岡先生”は,東京/大阪/名古屋でテーマは全部違いましたが,福岡と札幌でも内容は変わるんですか?
小嶋氏:
そうですね。
4Gamer:
どういった内容になるんですか?
孤島,砂原,水没林と順番にやってきているので,今まで出ていないフィールドとモンスター……になるんじゃないですかね。
4Gamer:
ナイショですか……。ちなみに,直前に内容を変えることもあるんですか?
小嶋氏:
あのイベントは,項目を多めに準備しておいてある程度の想定はしているんですけど,最終的にどんな内容にするかは,前日くらいに確定させることが多いですね。事前に準備したままいくものもありますし,「このネタとこのネタを合わせたらいいかも」と直前まで直すものもありますね。
モンハンの楽しさを伝えるさまざまなイベント展開
「3(トライ)」ではオンラインのイベントを実施予定
4Gamer:
会場の屋台メニューのネーミングも小嶋さんが担当したんですか?
そうですね。こじつけですけど(笑)。
「ポッケカレー」って書かれていても,フェスタに来た人は普通のカレーだっていうことは分かっているじゃないですか。でも僕だったら,そこにくすりとできるエッセンスが欲しいんで,いろいろとこじつけでやったりしています。
4Gamer:
カキ氷のイチゴはネーミングでくすりとさせてもらいました(笑)。
小嶋氏:
あれは,パセラさんとのコラボの「狩人達の宴」で小倉バージョンをやっちゃったんで,「もういいじゃん,イチゴもやっちゃえ」みたいな感じで(笑)。
僕は「狩人達の宴」でのメニューの調整を担当したんですけど,このメニューはちょっと辛いなあとか,甘い飲み物が多いから別の飲み物も用意しましょうとか,そのときはもはや何屋なのか分からなくなっていました。
4Gamer:
もうコーディネーター的な感じになってますよね。
小嶋氏:
うちのチームって,プロデューサーの辻本がいて,ディレクターの藤岡や一瀬らがいて本体を回してくれるんで。僕は,もうちょっとモンハンの魅力というか楽しさをアピールできることって何かないのかな,という部分を担当しています。
僕は初代からモンスターの企画をやっていて,モンスターハンターの空気を分かっているから,「じゃあやらせてください」って言って,「夏期講習ってどうですか」とかイベントの企画をするようになりました。悪ノリっていえば悪ノリなのかもしれないですけど,楽しいとは思うんですよね,そういうのって。
4Gamer:
今後また夏期講習のようなイベントをやる予定はあるんですか?
小嶋氏:
夏期講習みたいなのは今のところないんですが,「3(トライ)」のオンラインイベントを行います。PSPだからできることとか,Wiiだからできることって,それぞれ特性があるはずなんで,それで楽しいことはなにかしら考えていきますよ。
いろいろとイベントを現実化してくれているプロモチームがいて,宣伝してくれるパブチームがいる。ほかにもいろんな部署の協力があるからこそ,面白いイベントができているんですよね。ホントありがたいですし,良いチームワークだと思っています。
4Gamer:
「モンスターハンター」のイベントは,かなりバリエーションが豊富ですよね。
小嶋氏:
モンハンってゲームが,いろいろなネタに対応しきれる素材を持っている面白いゲームだと僕は思っているんです。やってみたら,お客さんも喜んでくれているとは思うんで。
ゲームといえばゲームなんですけど,モンハンはコミュニケーションにけっこう強いゲームではあるので,もっとみんなで遊びましょう,モンハン好き同士が集まったら楽しいじゃん,みたいな空気を用意したくて,いろんな展開は考えていますね。
4Gamer:
フェスタ’09は,東京と大阪は9000人,名古屋で7000人が会場を訪れたわけですが,今後開催される福岡と札幌に向けての抱負を聞かせてください。
小嶋氏:
スタッフの対応は回を重ねるごとによくなってはきているんですけど,やはりたくさんの方が来ているので,ケガ人を出さないとか,一人も小さな不満がないようにとか,少しでも運営を良くしていかなくちゃなと。理想は全員笑顔で帰って欲しいというのがあるので,そこは一番気をつけていますね。
4Gamer:
ここで中締めとして,これから福岡大会と北海道大会に行こうと思っている人達に,メッセージをお願いします。
上手い下手は関係なしにフラリときても楽しいイベントです。見て楽しいとか,いろいろな展示物もありますし,「3(トライ)」の体験コーナーもあったりとか,プレイしたらグッズをもらえたりとか,屋台もあったりとか。最新グッズも販売していますし,超絶プレイが見られる狩王決定戦があったり,残念なプレイが見られる開発者チャレンジクエストもあったり(笑)。
モンハン大好きな人が来たら当然面白いし,なんとなく興味があるなっていう人が来ても,たぶん面白いと思うんですよ。福岡そして北海道,両方とも面白いイベントのつもりで作ってきているんで,ぜひぜひふらりと遊びに来ていただければなと思います。
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