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水の動きにやたらとこだわった「Hydrophobia Prophecy」を紹介する,今週の「海外ゲーム四天王」
今週の「海外ゲーム四天王」は,アクションゲーム「Hydrophobia Prophecy」を紹介する。本作は,2010年に発売された「Hydrophobia」のアップグレード版なのだが,発売当時の欧米ゲーム業界では,物理演算による「流体シミュレーション」をどのようにゲームに取り込むかが,ちょっとした話題になっており,その1つの例として注目されていたという記憶がある。コミュニティの要望によってグラフィックスがさらに向上したという本作で,リアルな水の動きを見てみよう。
紹介するのは,泳げないので海やプールが苦手という,まさにHydrophobiaなライター,UHAUHA氏だ。
暑い夏には,豪華客船のクルージングをどうぞ
いよいよ夏本番! うだるような暑さでオーバーヒート気味の人も多いと思うが,今週の「海外ゲーム四天王」は,そんな夏にもってこい,プレイするだけで涼しくなれるサバイバルアクション「Hydrophobia Prophecy」を紹介しよう。まったく泳げないので,海やプールが苦手という筆者は,別の意味でもちょっとヒンヤリした気分になるけど。なんといっても,タイトルがHydrophobia,つまり水恐怖症ですもんね。
本作はイギリスのデベロッパである,Dark Energy Digitalが2010年にリリースした「Hydrophobia」のアップグレード版だ。コミュニティの要望を受けて,前作のグラフィックスを向上させたり,ストーリーとエンディングに追加/変更などを加えたというものだが,前作をプレイしたことのない筆者には,どこが変わっているかよく分からない。いずれにしろ,コミュニティの要望に応えたというゲームというのも珍しいような気がする。
さて,ゲームの舞台はタイタニック号の数倍の大きさを誇る巨大な船「クイーン オブ ザ ワールド号」。航行開始から10年を記念したフェスティバルが開かれているが,その最中,船はテロリストによって占領されてしまう。やがて,あちこちで火災や浸水が発生し,同船は沈没の危機に陥る。主人公のシステムエンジニア,ケイトは仲間と連絡を取り合いながら,船からの脱出を試みるというのが本作のストーリーだ。
このときほかの乗客がどうなっているのかはよく分からないのだが,ともあれ本作は,三人称視点の3Dアクションゲームで,沈没していく船の中を走り回ったり,泳いだりしながらゲームを進めていく。ジャンプで隙間を飛び越えたり,何かにぶら下がって移動するといった,比較的簡単なアクションが多いので,この手のゲームが苦手な人でもプレイしやすいだろう。その上,日本語の字幕がバッチリ収録されているのも嬉しいところだ。
「Hydrophobia Prophecy」公式サイト
本作は3つのチャプターで構成され,各チャプターはいくつかのパートに分かれている。基本的には,ケイトをサポートする仲間であるスクートの指示に沿って行動し,「〜に行け」「〜を見つけろ」といった課題をクリアすると次のパートへ移っていく仕組みだ。次に向かうべき方向と距離は常に画面上に表示されているし,マップを見ればどう移動すればいいのか分かるあたり,やはりビギナー向けだが,何となく自力で脱出を試みている雰囲気が薄く,そのへんがちょっと残念だ。
ジャンプアクションだけでなく,海上都市を乗っ取ったテロリスト達との戦闘も発生するが,ケイトが使えるのは「LP4」という銃のみ。この銃はソニック弾,速射弾,ゲル弾,セミオート弾,エネルギー弾という5種類の銃弾を随時切り替えて発射でき,それぞれの特徴を生かした使い方が要求される。個人的には5種類の弾の中で唯一,残弾制限がなくて無限に撃てるソニック弾をメインに使うことが多かった。
また,テロリストに向けて発砲してもいいが,破壊できる機器を撃って感電させたり,どういうわけか大量に配置されている爆薬を撃って巻き込んだりと,意外なほど気持ちいい倒し方のバリエーションが楽しめる。もちろん,感電したり火だるまになればケイトは簡単に死んでしまうので,そのへんには注意しよう。
少しびっくりしたのが,最後のチャプターをクリアした時点でエンディングにならず,スタッフロールが流れて終了してしまったことで,どうやら続編を前提とした終わり方になっているらしい。クリア後は「チャレンジルーム」がアンロックされ,時間制限内でテロリストとの戦いが楽しめる。このチャレンジルームでは,ケイトの「水を操る特殊能力」が使えるが,この能力,本編でもなんとなく匂わせてはいたものの,ほとんど登場しない。少しくらい特殊能力を使わせるシーンがあってもよかったんじゃないかと思うわけで,このあたりも少し物足りない部分だ。
本作の見どころといえば,やはり水の物理表現を追求した独自のゲームエンジン「HydroEngine」によるリアルな水の動きだろう。本作では水圧によって隔壁が壊れて船内に大量の水が入ってくるシーンがたびたび出てくるが,水が迫ってくる様子や水位がみるみる上がっていくところなどの表現は非常に見事。ドアを開けると別の部屋に水が流れ,水位は下がるなど,細かい部分の演出も素晴らしい。迫ってくる波が身体に当たり,押し戻されたり足が浮くような感覚は,本当に水の中にいるようだ。ただ,ケイトが水恐怖症という割には,魚のように泳いじゃったりして,全然水恐怖症とは思えないなぁ。
全体的にアクションゲームとしての完成度は低めと言わざるを得ない本作だが,筆者が水恐怖症なせいか,リアルな水の表現,動きという部分は非常に楽しめた。水圧を感じながらプレイできるちょっと変わったゲームに興味があれば,挑戦してみよう。
■■UHAUHA(ライター/四天王)■■
レースゲームやアクションゲームなどを好んでプレイする,反射神経系のライター。とはいえ,人間が相手だとつい熱くなってしまうので,マルチプレイはちょっと苦手。高いところと,ホラー系が不得意で,高い場所が出てくるゲームと,怖いゲームもちょっと苦手と意外と弱点も多いが,とくに悲壮感はない。4Gamerがスタートした頃からライターをやっている,ベテラン中のベテランだ。特技は,遠距離通勤。
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