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  • 発表日:2009/09/23
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[GDC 2010]マニフェストは「ゲーマー第一主義」。AMD,PCゲーム産業への積極的な取り組みを宣言
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印刷2010/03/12 00:00

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[GDC 2010]マニフェストは「ゲーマー第一主義」。AMD,PCゲーム産業への積極的な取り組みを宣言

 Game Developers Conference 2010(以下,GDC 2010)初日となる北米時間3月9日,AMDは,会場近くのホテル「W San Francisco」で発表会を開催し,PCゲーム市場および産業に対する取り組み方のマニフェスト(公約)として「ゲーマー第一主義」(Gamers First)を掲げると宣言した。

AMDはゲーマーに向けたマニフェストを宣言。ズバリ,「Gamers First」だ
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Nigel Dessau氏(Chief Marketing Officer, AMD)
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 これは,発表会のなかで,AMDのマーケティング責任者であるNigel Dessau(ナイジェル・デッソー)氏が行ったもの。ゲームデベロッパからエンドユーザーまで「垂直に」(Dessau氏)サポートやサービスを提供することで,ゲーム市場における,強力なエコシステム(ecosystem,生態系。ここでは「ゲーム業界全体の収益構造」の意)を構築していくという。

本マニフェストは,「ゲーマーに最高のゲーム体験をもたらす」のが目的。この「ゲーマー」には,AMDのハードウェアを使っていないユーザーも含まれる
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 マニフェストの実現に向け,ゲーマー(のコミュニティ)が必要とする性能や機能を実現する製品(≒GPUやCPU)を提供していくのは当然として,AMDはそれに加え,同社の持つ先進技術を,オープンスタンダードコミュニティへ惜しみなく提供することで,確固としたゲーム用プラットフォームを構築していく。さらに,PCゲーム産業を,技術とビジネスの両面から強力にサポートし,ゲーム産業の成長を促すとのことだ。
 Dessau氏は,「この新しいエコシステムにおいては,ゲーマーやゲームデベロッパからの要望を受けて,製品ロードマップを調整する可能性もある」とまで述べ,これまで以上に,市場ニーズを反映した製品開発を進めていく考えを示している。

マニフェストの骨子。(1)ゲーマーが望む製品を開発していくこと(Innovation),(2)業界スタンダードをサポートし,デベロッパが最先端の技術を導入できる素地を形成していくこと(Industry Standard),(3)PCゲーム産業の継続的な成長を支えるべく,技術とビジネスの両面でデベロッパを支援していくこと(Developer Support)が3本の柱となる
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「オープンスタンダード」で攻めに転じるAMD


 なぜ,このタイミングでAMDは積極的なアプローチに出たのか。その背景には,DirectX 11と,ATI Eyefinity(以下,Eyefinity)の成功があるようだ。

Neal Robison氏(Director, ISV Relationship Management,AMD)
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 AMDでゲームデベロッパ支援チームなどを統括するNeal Robison(ニール・ロビソン)氏は,「ゲーマーは,NVIDIA PhysXよりも,DirectX 11やEyefinityを好む」という調査結果を示し,「この市場動向にゲームデベロッパも反応し,対応タイトルの制作が進んでいる」と説明。また,テッセレータやGDDRメモリ,DisplayPortなど,AMDの技術提供によって業界スタンダードになった事例が多いことも挙げ,「業界全体が自由に共有できるテクノロジーこそが,グラフィックス産業の成長を支えてきた」とアピールする。

海外の情報サイトが読者に実施したアンケート結果。NVIDIA PhysXよりも,EyefinityやDirectXのほうが重要だとされている
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AMD(および旧ATI Technologies)は,DirectX 11におけるテッセレーションや,GDDRメモリの標準化など,これまで数多くの業界スタンダード構築に貢献してきたと謳うスライド
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AMDは,BulletPhysics.orgやPixelux Entertainmentらとともに,Open Physicsイニシアチブを推進する
 Robinson氏はここで,「業界全体が自由に共有できるテクノロジー」――オープンスタンダードに向けた積極的な取り組みの一環として,「Open Physics」(オープンな物理環境)イニシアチブのサポートを表明。「すべてのゲームデベロッパにあまねく最新の物理演算環境を与えることが可能なOpen Physicsこそ,真の業界スタンダードになり得る存在だ」(Robinson氏)。

 また氏は,オープンソースの物理演算ライブラリ「Bullet」(Bullet Physics Library)がOpenCLとDirectCompute 11に採用されたこと,そして,Pixelux Entertainmentの物理演算エンジン「DMM 2」(DMM:Digital Molecular Matter)がOpenCLアクセラレーションに対応したことなどを明らかにし,幅広いゲームプラットフォームで物理演算環境を実現可能な,Open Physicsイニシアチブを積極的にサポートしていく姿勢を見せる。


3D立体視表示についてもオープンスタンダード化を推進。そこにはEyefinity対応も含まれる。その詳細は後日明らかにされる予定だ
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 さらにRobinson氏は3D立体視表示についても「Open Stereo 3D」(オープンな3D立体視環境)イニシアチブの推進を宣言。垂直同期周波数120Hz表示に対応したディスプレイと,アクティブあるいはパッシブ,両シャッター方式の3Dグラスを組み合わせた3D立体視表示を,DirectX 9/10/11環境下で実現する意向を示す。
 今回は,そのコンセプトのみが明らかになっただけだが,Open Stereo 3Dでは,Eyefinityによるマルチディスプレイ表示への対応も組み込まれることになっているという。


ゲームデベロッパへの支援も充実へ


Richard Huddy氏(Developer Relations Manager, AMD)
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 発表会では,AMDでゲームデベロッパに対する技術支援を統括するRichard Huddy(リチャード・ハディ)氏が,デベロッパサポートの実例を紹介した。

 それによると,EA DICEが「Battlefield: Bad Company 2」を開発するに当たっては,DirectX 11やEyefinityに対応すべく,同社オリジナルゲームエンジン「Frostbite 2」の改良に協力。結果として,ダイナミックシャドウにおける描画品質の向上や,ゲームパフォーマンスの引き上げを実現できたという。Eyefinityによる3画面出力で得られる広い視野は,マルチプレイにおいて有利に働くともアピールした。

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説明会では,Battlefield: Bad Company 2のプロダクトマネージャーを務めたElectronic ArtsのKevin O'Leary(ケビン・オリリー)氏が登壇。「FrostbiteエンジンをDirectX 11へ対応させるに当たって,(描画品質およびパフォーマンス向上の両面で)AMDからは多大なるサポートが得られた」と謝辞を述べていた
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「Aliens vs. Predator」を開発したRibellionのCTO,Chris Kingsley(クリス・キングスレイ)氏。「AMDは気前よく最新ハードウェアを渡してくれるのでうれしい。残念だったのは,Eyefinity対応ディスプレイがもらえなかったこと(笑)」と述べて笑いを取りつつ,DirectX 11周りの実装においてAMDのサポートは大きかったとした


S.T.A.L.K.E.R.: Clear Skyは,DirectX 10.1ベースならMSAAの実装が容易だったが,それだと,DirectX 10.0対応に留まるNVIDIA製GPUではMSAAを利用できない。そこで,DirectX 10.0ベースでもMSAAを利用できるよう,AMDが技術支援したそうだ
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 さらにHuddy氏は,GSC Game Worldの「S.T.A.L.K.E.R.:Clear Sky」において,MSAA(Multi-Sampling Anti-Aliasing)の実装で技術協力し,ATI Radeonだけでなく,GeForceからもMSAAを利用できるようにした事例を紹介する。
 氏いわく「ゲームデベロッパやゲーマーが,最高のゲームプレイを行えるようにするのが,AMDの技術支援におけるゴールだ」。自社プラットフォームに縛りつけるような支援を意識的に避けてきたのが,デベロッパと長期に亘(わた)って良好な関係を保ってきた理由であると語っている。

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旧ATI Technologies時代から受け継がれるゲームデベロッパ支援体制は今後も変わらないという
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AMDのデベロッパサポートチームは,9言語に対応し,世界30か国以上で展開中とされる

Eyefinity技術の実装を容易にすべく,AMDは開発キットを公式Webサイトで配布する計画を披露。合わせて,Eyefinity対応ディスプレイなどの認証プログラムもスタートさせる
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 DirectX 11やEyefinity対応を推進すべく,AMDが開発ツールの整備をさらに進めていくと明らかにしたHuddy氏は,合わせてEyefinity対応製品の検証プログラムをスタートしたともアナウンス。同時に,「EyefinityはAMD独自のマルチディスプレイ技術だが,その対応を進めるうえで,競合他社が同様の環境を構築するのを邪魔したりすることはない」という同社のスタンスも,合わせて明らかにしていた。


 なお,NVIDIAがマルチディスプレイ+3D立体視の「3D Vision Surround」を推進しようとしている点について,前述のRobinson氏が「ゲームの可能性を広げるという観点から,NVIDIAがEyefinityと同様のマルチディスプレイ環境を普及していくことは歓迎する。ただ,自社製品に縛るようなやり方でない場合に限るが……」と,NVIDIA PhysXなどでゲームデベロッパを縛る,NVIDIAの姿勢を揶揄することは忘れなかったことも付記しておきたい。


「AMD Gaming Evolved」プログラムを開始

継続的な支援に期待


AMD Fusion Partnerプログラムの一環として,ゲームデベロッパを強力に支援するAMD Gaming Evolvedを追加。ゲームデベロッパとともにPC市場を盛り上げていくとする
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 最後にRobinson氏は,ゲーマーに対する姿勢を明確にするため,「AMD Gaming Evolved」というプログラムを開始すると発表した。

 これは,AMDが進める「AMD Fusion Partner」プログラム――AMDとパートナー企業による,革新的な製品の創出を支援する目的で2009年9月に開始されたもの。CPUとグラフィックス機能を統合する「Fusion」とは別――の一環。ゲームデベロッパに対する技術支援やマーケティング支援などを通じて,PCゲーム産業の継続的な発展を支えていこうというわけである。

 その背景には,「DirectX 11タイトルの制作には,DirectX 9版やゲーム機向けタイトルとは,まったく異なるプログラムレベルのアプローチが必要になり,結果としてデベロッパ側の負荷が増大している」ことがあるようだ。一方のデベロッパ側は,DirectX 11によるグラフィックス品質の向上や,Eyefinityによる新しいゲームプレイ環境の実現は,PCゲーム市場の明るい将来を切り開くうえで重要な武器になると捉えており,AMDとの利害も一致する。

 あとは,どこかの国の政権与党のように,なし崩し的に尻すぼみになってしまうことなく,この「ゲーマー第一主義」というマニフェストが貫かれるのを祈るばかりだ。

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