レビュー
ゲームシステムの大幅変更で,より遊びやすくなったヒット作の続編
Assassin’s Creed II 日本語マニュアル付英語版
秘宝「エデンの果実」をめぐる戦いの舞台は,
15世紀のイタリアへ……
欧米で2009年11月にリリースされた「Assassin's Creed II」は,2007年にリリースされて,全世界累計で800万本以上のセールスを記録したヒット作「Assassin's Creed」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)の待望の続編だ。日本ではユービーアイソフトから,「アサシン クリードII」として2009年12月にPlayStation 3版とXbox 360版が発売されているが,PCゲーマー待望のPC版「Assassin's Creed II 日本語マニュアル付英語版」(以下Assassin's Creed II)がイーフロンティアより本日(4月30日)リリースされた。
というわけで今回は,そんなAssassin's Creed IIのレビューを行いたい。PC版とはいえ,内容的にはコンシューマ機向けと変わらないので,PC版以外の購入を予定している人にも役に立つはずだ。
ご存じのとおり,アサシン クリードシリーズは全三部作が予定されており,本作はその第二部にあたる。前作をプレイしていればストーリーも理解しやすいが,もちろんプレイしていなくても,前作からの流れがなんとなく分かるように作られているので安心しよう。ただし,本当に物語にズッポリ浸りたいのであれば,前作をプレイしてから挑戦することをかなりオススメしたい。
ちなみに,すでに発売されているPlayStation 3/Xbox 360版は完全日本語版となっているが,今回のPC版は日本語のマニュアル付きの英語版。重要な会話がムービーとして出てくることも多く,しかもちょっとややこしい物語なので,ストーリーを完全に把握するためには多少の英語力が必要だ。もっとも,前作とは異なり字幕(英語)が表示できるようになっているので,そのへんは助かるところ。
ちなみに,前作のストーリーについては,手前ミソながら2008年5月から4回にわたって掲載した週刊連載「アルタイルのアラビア半島一人旅」でも紹介している。高いところが苦手が筆者が,それなりにがんばっているので,目を通してもらえると幸いだ。
その気になればメインストーリーだけを
追っていけるゲームシステム
本作の舞台となる15世紀のイタリアは,いわゆる“ルネサンス”と呼ばれる時期にさしかかっている。貿易と商業の発達によって,ヴェネツィア,フィレンツェ,フォルリ,トスカーナ,そしてヴァチカン(ローマ)といった大小さまざまな都市が自治権を得て都市国家となり,華やかな文化が形成された時期だ。だが,この理性と科学の時代の背後では,失われた秘宝「エデンの果実」をめぐる,テンプル騎士団とアサシン教団の激しい戦いが繰り広げられていたというわけである。
本作の主人公は,現代に生きる「デズモンド」と,デズモンドの先祖である15世紀の「エツィオ」の二人。前作同様,本作でも“シークエンス”と呼ばれるデズモンドの遺伝子に組み込まれた「前世の記憶」を軸にストーリーが展開していく。シークエンスは複数のコアメモリで構成されており,すべてのコアメモリが埋まると次のシークエンスへ進めるというダンドリだ。
また,ストーリーには直接関係がないが,達成すると報酬が得られるサブメモリが用意されているのも前作同様で,要するにコアメモリが普通にいうところのメインミッションで,サブメモリがサブミッションだ。以下,そのように書くので,各自脳内変換してほしい。
前作では,ストーリーの展開に直接関係ないはずのサブミッションもクリアしなければ次へ進まなかったため,やや作業感が強かった。しかし,本作ではメインミッションとサブミッションが完全に分けられており,その気になればメインミッションだけプレイしてゲームを進めていける。
メインミッションの内容もバラエティに富んでおり,劇的に変化していくストーリー展開が楽しめる。また,一つのメインミッションをクリアすると次のミッションのスタート地点がマップ上に現れるため,テンポよく進められるのも好印象だ。基本的に,行く必要な場所はマップ上に表示されるので,英語版だからといって,何をしていいのか分からないということにはならないだろう。
サブミッションについては,制限時間内に目的地までたどり着く「競争ミッション」,浮気している旦那の情事を見つけて痛めつける「制裁ミッション」,盗まれた手紙を取り返したり,依頼された手紙を届ける「使者ミッション」,そして指定されたターゲットを暗殺する「暗殺ミッション」が用意されている。クリアすれば報酬がもらえるし,短時間で終わるものばかりなので,挑戦して損はないだろう。
また,ミッションとは少々異なるが,各都市には「アサシンの墓所」「テンプル騎士団の墓地」が合計十か所あり,ここに入ると,複雑な地形をフリーランで走破する,アスレチックのようなモードが楽しめる。走破するとアサシンの印章を手に入れることができ,すべてを集めると(前作の主人公である)アルタイルの装備が使えるようになる。
美しい歴史的建造物を眺めながら,
楽しいショッピング
今回もストーリーの流れに沿ってさまざまな連中を暗殺していくことになるが,ゲームを進めるにつれて,フィレンツェ以外の都市へも往き来できるようになる。ちなみに都市間の移動は前作のように馬で延々と走る必要はなく,移動ステーションに行ってお金を払えば即座に別都市へ転送してくれる。手間が省けて大助かりだ。
舞台設定が芸術,科学,社会などが栄えた時期のイタリアということなので,絵画や発明などに多彩な才能を見せた天才芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチ,当時のフィレンツェを統治したロレンツォ・デ・メディチ,そしてニッコロ・マキアヴェリなど実在した人物も多数登場する。とくにレオナルド・ダ・ヴィンチにはいろいろ協力してもらうことになるせいか,妙な親近感を覚えるようになった。
人物のほかにもサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂,バシリカ・ディ・サン・マルコ寺院,サン・ピエトロ大聖堂,サンタ・クローチェ聖堂など,実在する建造物も緻密に再現されており,行ったことがない人も観光気分に浸れるはずだ。もちろん,眺めるだけでなく,自由に壁を登ったり飛び降りたりできるのは本作ならでは。
また,今作ではお金の概念が強くなっており,都市には体力を回復してくれたり薬/毒を売ってくれる「医者」,武器や防具などを買ったり防具を修理できたりする「鍛冶屋」,衣装の購入や染色ができる「仕立屋」,絵画や宝の地図が買える「美術商」,そして,離れた都市へ移動させてくれる「移動ステーション」がある。もちろん,購入や使用にはすべてお金が必要で,経済が発展し,世界初の銀行が設立されたりしたルネサンス期のイタリアらしい。
お金を貯める手っ取り早い方法がミッションをクリアすることだが,都市のいろいろな場所に宝箱が放置されており,これを開けることでも多少の資金が手に入る。また,市民からサイフをスリ取ったり,倒した敵の死体を漁って手に入れる方法もあるが,もちろん,バレると警戒レベルが上がってしまうので注意が必要だ。
とはいえ,お金に困るのは序盤くらい。というのも,エツィオの行動拠点となるモンテリジョーニに投資して「復興」させることで,定期的に資金が手に入るようになるからだ。具体的にはモンテリジョーニにいる建築家に話しかけて建物の改築を行い,改築レベルによってモンテリジョーニの価値が上がって収入も増えるというダンドリ。収益は20分ごとに金庫に保管されるので,自動的にフトコロが温かくなるというわけだ。
ちなみに医者,鍛冶屋,仕立屋,美術商については改築することで販売価格が割引されるようになるが,割引対象となるのはモンテリジョーニのみで,ほかの都市では通常価格のまま。つまり,少しでも安く買うならばモンテリジョーニで買い物したほうがお得なのだ。高額の武器,防具を買うときなど大きな金額差が生まれるので,殺しのテクニックだけでなく買い物のテクニックも身につけよう。それにしても,こうしたRPGっぽい経済システムが本作に導入されるとは,ちょっと予想外。
多彩になった暗殺方法 華麗にターゲットをしとめよう
アサシンの血をひくエツィオだけに,アルタイルと同じく多彩なアクションが使用可能。前作と同様,頭(タカの眼,シンクロ,盗聴など),手(人を押す,つかむ,スリなど),足(祈る,ジャンプ,スプリントなど),そして攻撃,カウンター攻撃などをワンタッチで繰り出せるインタフェース,「フルボディコントロール」により,誰もが簡単にエツィオを操って派手なアクションを堪能できるはずだ。
地面や屋上を走り回り,隣の建物へ飛び移るなんてのは朝飯前。ジャンプのタイミングもシビアではなく,キーを押しっぱなしで前進するだけで,しかるべき位置で自動的にジャンプし,飛んだ先に掴めるところがあれば掴んでくれる。
とにかく,ボタンを押し続けているだけで状況に合わせたアクションを自動的に取ってくれるので,垂直の壁をスイスイ登り,塔のてっぺんから藁束めがけてダイブし無傷で着地! なんて荒技も余裕でこなす。この操作感は,相変わらず非常に気持ちがいい。
また,前作のアルタイルは水に入ると溺れてしまう極端なカナヅチだったが,エツィオはばっちり水の中を泳ぎ回れる。水の中をスイスイと進んで船に乗り移って背後から暗殺なんてこともできるし,高所から水中にダイブして逃げるなんてのも得意技。もう,うっかり足を滑らせた主人公が,もがきながらブクブク沈んでいく情けない姿を見ることはないのだ。
また,アサシンのお仕事である暗殺の方法も増えた。両手に装着したアサシンブレードで二人同時に倒せるようになったことに加え,高所から飛び降りざまに標的を倒したり(通称,エア・アサシン),高い場所にいる敵を引きずり落としたり,水中に引き込んでおぼれさせたりなど,環境をうまいこと利用できるのだ。
ほかにもアサシンブレードに塗った毒での毒殺,アサシンブレードに組み込まれた銃で射撃,さらには,砂をかけたり煙幕を焚いて敵の目を眩ませて倒す/逃げるなど,前作では考えられなかったようないろいろな方法で悪いヤツらのお命を頂戴できるのだ。さて,どうやってあの世へ行ってもらおうか。
暗殺や戦いで使用する武器,防具なども種類が増え,それらは鍛冶屋で購入できる。各武器,防具ごとにダメージ,スピード,受け流しなどのパラメータがあり,それぞれ性能が異なっている。基本的に武器は長剣,短剣を一種類ずつ持ち歩けるが,携帯する装備はモンテリジョーニの武器庫でミッションに応じて変更しよう。
本作にはプレートアーマーを装備した防御力の高い敵なども登場するが,長剣でもなかなか歯が立たたず,長期戦になりがち。そんなときは,素手によるカウンター攻撃で敵が使っている武器を奪えるので,大型の斧や小槌を奪って叩きのめそう。敵が使いやすそうな武器を持っていたら拝借して戦闘に生かすという,前作にはない戦闘テクニックが面白い。
余計な戦いを避けて,ついついアサシンらしい
隠密行動をとってしまう好バランス
敵兵を相手に派手に暴れまるのは楽しいが,やりすぎると警戒レベルが上がり,何もしていないのに追いまくられることになる。具体的には,殺人やスリ行為を市民に目撃されることで「悪い噂」ゲージが上がり,それに連動して警戒レベルが上がる仕掛けだ。
悪い噂ゲージは,「貼り出されている指名手配書をはがす」「市民に悪い噂を流す“先触れ”を買収する」,さらに「悪徳役人を暗殺する」ことなどで下げられる。手配書や先触れの位置などはマップ上に表示されるので,悪い噂が立ってきたら早めに下げておこう。
さて,本作をプレイしていて感心させられたのが,自然と隠密行動を取ってしまうゲームバランスだ。前作のように,敵を片っ端から倒して進んでいく戦い方も可能だが,配備されている敵兵がかなり増えており,しかも手強くなっているせいもあって自然と戦いを避けるようになる。
また,そのへんの人々や街のきれいなお姉さん達を雇い,彼らに紛れて移動したり,金をばらまいて敵兵を誘き寄せたりなど,ステルスに便利なアクションが数多く追加されているので,暴れ回るよりコソコソ行動するほうが楽なのだ。そのため,以前よりアサシンらしい動きが自然に取れるようになり,面白さがワンランクアップしていると思う。
最後にやり込み要素について触れておくと,マップの各所に配置してある「宝箱」集めと「羽根」集めが用意されている。とはいえ,苦痛を感じるほどの数は配置されていないので安心してほしい。宝箱は美術商でマップを購入すると配置位置がすべて分かるし,羽根集めもそれほど嫌らしいところに配置されておらず,タカの眼を使うことで比較的簡単に見つかると思う。
一部の建物に用意されたシンボル(マーク)を発見するというお楽しみもある。シンボルを見つけたら謎解きに挑戦でき,謎を解くとビデオが開放される。合計20個のシンボルがあり,すべてのビデオが開放されると「The Truth Cinematic」(隠された真実)という一本のビデオが完成する。どんな内容なのかは実際にプレイしてご自分の目で確認してほしい。
前作は世界中で高い評価を得たものの,展開が比較的単調だったり,移動が面倒だったりと不満を感じる部分も多かった。しかし,本作ではそのへんがうまく解消されており,格段に面白さがアップしている。最近発売されたアクションゲームの中ではストーリー性,アクション性,グラフィックスなど総合的に見てトップクラスの完成度といってもいいと思う。ぜひ,あなたもアサシン道を極めてほしい。
情熱の国イタリアなのでセクシーシーンも少しだけ登場。ムービー中にキーもしくはボタン入力を求められるので,すかさず押そう |
02エデンの果実に関する謎を解き明かす「シンボルマーク」を発見するのも重要な要素だ。シンボルがある建築物は分かるので念入りに探そう |
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