レビュー
ニンテンドーDS用とは思えない刺激的な世界観が魅力
グランド・セフト・オート:チャイナタウン・ウォーズ
本作は「Grand Theft Auto」シリーズ初のニンテンドーDS用タイトルであり,「Grand Theft Auto」「Grand Theft Auto 2」を彷彿とさせる見下ろし型の視点が特徴。クライムアクションとしてのハードな魅力を保ちつつ,DSならではのタッチペンを用いたアクションを多数取り入れている。
本稿では実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの内容を紹介していこう。
再び舞台となるのは“アメリカ最悪の街”
ヤバいブツの取引で,莫大な財を成せ!
中華系犯罪組織“トライアド”のボスである父親が暗殺され,簡単なお使いをすることになったホァン・リー。その内容は,ファミリーのボスに代々受け継がれてきた“ユウ・ジアン”という古い剣を,リバティーシティにいる叔父のケニー・リーに届けるというものだった。
金持ちのボンボン特有の甘さで,何事もなくスムースにいくだろうと油断していたホァンだったが,リバティーシティに到着した瞬間に剣を奪われ,殺されかけるという手荒い歓迎を受ける。そして,アメリカ最悪の街を舞台に,ホァンの復讐劇が始まった……。
ニンテンドーDS初の“Z”レーティングタイトルでもある本作。以上のように,相変わらず悪徳と暴力に彩られたストーリーが展開する。
前述のように,久しぶりに見下ろし型の視点を採用しているGTA:CTW。画面だけ見ると「グランド・セフト・オート III」や「グランド・セフト・オート IV」(PC / PS3 / Xbox 360)など,TPSとしてのGTAに慣れ親しんだ人は,違和感を覚えるかもしれない。
しかし,実際にプレイしてみるとすぐに,本作が間違いなく「GTA」だということが理解できるはず。乗り物はもちろん,街灯やポストなどの細かいオブジェクトも壊せるし,昼夜や天候の表現もリアルだ。TPSのGTAシリーズと比べても遜色ないプレイ感覚で楽しめる。
ちなみにバイオレンス表現に関しても,NDSならではの表現力でありながら非常に頑張っており,人を車で引いたときの生々しい感触や,死体から広がる血溜まりなどがしっかりと描写されている。さらにチェーンソーで切り付けた相手がバラバラになるなど,むしろやり過ぎ感があるくらいだ。まぁ,キャラクターは顔も分からないチビキャラで描かれているので,残酷描写が苦手な人でも,さほど問題なく楽しめるはずだ。
もちろん,犯罪組織が風邪薬や傷薬を扱うわけがないので,薬剤とは言っても非合法なブツである。リバティーシティのいたるところに売人がおり,元締めの組織によって扱っているブツの種類が違う。
また,ブツは特定のミッションで必要となるだけでなく,ゲーム中の主な収入源でもある。本作ではミッションクリアの報酬が少なめで,それだけではとてもじゃないが十分な装備を整えたり,物件を購入することはできない。その点,ブツはうまく扱えば瞬時に1万$以上を稼ぐことができるのだ。デカイ取引を成功させる快感は,一度ハマると病み付きになる。
……まぁ,警察に踏み込まれるかもしれないというリスクは伴うが,一流の悪党ならそんなの屁でもないだろう?
デカいヤマには必須の“PDA”
DSならではの遊びも色々アリ
GTAの世界も現実と同様,技術の進歩によってどんどん便利な世の中になっている。最近では「グランド・セフト・オート IV」の主人公が携帯電話を活用していたのが記憶に新しいが,本作では“PDA”が大活躍する。
メールでのミッション受信やブツの取引情報確認,目的地へのルートを表示してくれるGPS機能など,デキる男の必須アイテムだ。もはやPDAがないことには裏社会で生きていくことはできないと言っても過言ではない。
さらに,本作では武器もPDAを通して通販で購入できる。いつでもどこでも“www.ammunation.net”にアクセスするだけで,ピストルから火炎放射器まで,自宅に配達してくれるのだ。リバティーシティじゃ,武器は宅配ピザのようなものである。
また,本作にはタッチペンを用いたDSならではのアクションも満載。ガソリンスタンドで火炎瓶を作ったり,車の窓を叩き割ったり,スクラッチカードを削ったり……ミニゲーム感覚で楽しめるものばかりだ。
なかでも,とくに車泥棒に関するアクションは多用するうえ,ドライバーで無理やりエンジンをかける,回線を切って捻って直結する,ハッキングしてパスワードを割り出すなど,バリエーションも豊富で面白い。Grand Theft Auto(車両窃盗罪)というタイトルに恥じぬこだわりっぷりだ。
そしてDSといえば,場所を選ばず友人と楽しめるワイヤレスプレイも大きな魅力。本作にもレースやシマの争奪など,二人で遊べる全6種類の対戦/協力プレイモードが収録されている。また,Wi-Fiコネクションを利用すればインターネット経由で自分のプレイレコードをアップしたり,友人とメッセージやアイテムのやり取りをしたりすることも可能だ。
ファン納得の高い完成度
DS向けに昇華された「GTA」
本作は,GTAシリーズの魅力を損なわず,上手くDS向けに昇華させた作品といえる。相変わらずの悪徳にまみれた世界観は,クライムアクション好きにはたまらないし,カートゥーンレンダリング調のグラフィックスも独特の雰囲気を醸し出していて面白い。DSならではのタッチペンを用いたアクションを,違和感なく取り入れているのも高評価だ。
非常に洋ゲーらしい洋ゲーなので,従来シリーズ同様日本では好き嫌いの分かれそうな作品はあるが,GTAシリーズのファンなら間違いなく“買い”だと言っておこう。
- 関連タイトル:
グランド・セフト・オート:チャイナタウン・ウォーズ
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