プレイレポート
ゲームアーツ十数年ぶりの完全新作「Shadow Walker 影の少年と光の妖精」は,見た目に反して本格アクションパズル!
その実態は,非常に本格派のアクションパズル系ゲームだったのである。そこで本記事では,あらめて本タイトルの魅力を紹介していこう。
3色の「マホマホの柱」を駆使して影を繋げる! オブジェクトの意外な使い道を見つけよう
ゲームのストーリーと概要を簡単に説明しておくと,主人公は「木の妖精ルクス」。木の妖精達は影の中では自由に動き回れるが,一度でも影の外に出てしまうと,木に生まれ変わり,そこに根付くことになる。したがって,彼らにとってどこに根付くかというのは相当に重要な問題だ。ある日のこと,ルクスは「誰かのために木になる」という夢を持って旅に出る。プレイヤーは本タイトルのもう一人の主人公「光の妖精ポポ」となり,ルクスの夢を叶えるために影を繋いで道を作っていくのだ。
ルクスの旅は,全30以上のステージで構成されている。基本的には各ステージに配置されている,いくつかの影を繋ぎながらルクスをゴールまで導くと,1ステージクリア。順次クリアしていくことで,ストーリーも進行していく。
この,ステージ内の影を繋ぐための重要なオブジェクトが「マホマホの柱」である。というのも,本タイトルでプレイヤーができることは,ポポを操作して柱の影を作り出すことと,ルクスをポポのいる場所に呼ぶことだけだからだ。ルクスは,例えポポに呼ばれても自分から日の当たるところに出ることはないが,何らかの理由で影から出てしまうとミスになる。
各ステージには,各種大きさの異なる影が配置されている。「マホマホの柱」の影を作り,それらを繋げて道を作るのだ |
影が繋がると,ルクスが反応して移動する。ただし位置によっては気づかないので,ポポが呼んであげる必要も出てくる |
中央にいるのがオバケ。接触しないよう,うまく背中を向けたタイミングで,ルクスを通過させたいところ |
ルクスがゴールを発見。これで見事1ステージクリアという流れである |
そこでマホマホの柱とポポの位置関係を調節し,影と影が繋がるよう適切な角度で新たな影を作り出しながら,ルクスが進む道を作っていくのだ。ステージが進むと,複数の柱の影を交差させてルクスを誘導する必要も出てくる。柱の影は時間の経過で消えてしまうので,モタモタしているとミスになってしまう。さらに風車の影のように動く影もあるし,ルクス自身もキビキビとは行動してくれず,意図と異なる方向に向かうことも多々ある。関連するすべてのタイミングを見計らいながら,影を繋いだりルクスを呼んだりして,ゴールを目指していくのである。
キリンがいるステージ。こうしたステージでは,登場キャラのお願いを叶える展開になる |
見ているだけでは何だか分からないステージも,実際に影を作ってみると進展があったりする |
またマホマホの柱は,単に影を作り出すだけではない。赤い柱は「熱」の力を持ち,その影で氷を溶かしたり,植物の成長を促進したりできる。黄色い柱は「風」の力を持ち,その影の中ではルクスは空中を移動できる。青い柱は「氷」の力を持ち,物を凍らせることができる半面,その影も凍っているので,ルクスは影の中で止まることができない。角度を間違えると,勢い余ってルクスが影から飛び出してしまうこともある。
こうした各色の柱は,何かしらの意味を持って配置されているので,存在そのものがステージクリアへのヒントだと思って間違いない。どうもうまく影が繋がらないと思っても,角度を変えてステージ内の何かに影を重ねていけば,ゴールへの道筋が見えてくるはずだ。
これはストーリーが一段落した際に訪れるステージ。重要なキャラクターと出会うこともある? |
序〜中盤にかけての難関ステージ。熱を加えると,どうにかなる物を利用してクリアする |
さらにルクスとポポ以外のキャラクターが登場するステージもある。キリンやクマは,ストーリーを進行するうえでの重要な存在。オバケはいわゆるお邪魔キャラでルクスを弾き飛ばしてしまう。飛ばされた方向が運よく影の中ならいいが,日の当たるところだとミスになってしまうので注意が必要だ。ゲーム中,もっとも不思議なキャラはロボで,モーションが多彩なだけでなく,凍らせたり,熱を当てて暴走させたりすると意外な効果が得られる。そのほか,ルクスを特定の方向へ弾き飛ばす貝殻や,壁をせり上げるスイッチのような仕掛けも登場する。
クマの家族。クマの子どもは,お母さんにプレゼントするものを探していたが…… |
ロボ。壊れてるのか正常なのか分からないモーションは必見で,ゲーム的にも重要な存在である |
中盤以降の難度はまさに本格派のアクションパズル! プレイを投げ出させない細やかな配慮も
さて,実際にプレイしてみると,ゲーム序盤の5ステージはチュートリアル,続く中盤くらいまではわりと難なくクリアできるので見た目どおりなので,ここまでプレイした人にしてみれば,ライト層や低年齢層向けだと思ってしまいがちだが,これがとんでもない。終盤に向けて難度はかなり高くなり,たいていの人は,初見でミスなくクリアすることはまず不可能になるだろう。
そんなこんなで何とか全ステージをクリアし,ルクスのストーリーを見届ければめでたしめでたしなのだが,実は本作の要素はそれだけでは終らないのである。というのも,本タイトルにはタイムアタックモードが用意されており,さらにやり込むことができるからだ。各ステージの目標タイムは絶妙な設定となっており,どんなに手際よくポポを操作しても通常のルートでは達成できない場合もある。
ところが,そうしたステージにはショートカットできるポイントが用意されているのだ。普通なら見落としてしまうような小さい影を,もしやと思って繋ぐと,トテトテとルクスが歩いていく。そんな隠されたポイントを探し当てることこそが,本タイトルが持つ奥深さといって良いかもしれない。
加えて,タイムアタックモードで特定の条件を満たすと,スペシャルステージに順次挑戦できるようになる。スペシャルステージは総数こそ少ないものの,ゲームアーツからの挑戦ともいえる高難度のステージとなっているので,本編を簡単にクリアしてしまったという強者であっても苦戦するはずだ。
どんなに小さくても影は影。キリンの影はもちろんだが,それ以外にも道として使える影があったりして…… |
青色のマホマホの柱で作った影は滑る。角度を考えないとルクスは影からはみ出てしまうが,それを逆に利用することもできる |
本タイトルをプレイして印象的なのは,随所に“振り返ってみたときに分かる配慮”が垣間見られることだ。上記で説明してきた,マホマホの柱そのものがヒントになっていること,ロボの使い方,目標タイムの存在とショートカットを発見したときの喜び……加えてステージの難関部分を抜けた先には概ねチェックポイントが用意されており,その先でミスをしても再び難所をやり直す必要がないという点などなど。いずれも声高にアピールするものではないかもしれないが,プレイ上のストレスを極力排除するための──しかし,ゲームとしての手応えをきちんと残す重要な配慮がそこかしこに施されている。
それは,昨今のゲームで評価される見た目の派手さや打撃感といった直接的な爽快感にはならないものの,「あの難関を自分の力でクリアした」「徐々にうまくなっている」という達成感や,「難しくとも,どこかに解法の糸口が見つかる」というプレイ持続へのモチベーションに確実に繋がっているのだ。
なお本記事では,4Gamerの読者に関心を持ってもらえるよう,主に一人でプレイするケースを想定して進めているが,本タイトルは家族や友人と一緒に遊んでもかなり楽しめそうだ。というのは,こうしたゲームの常として,プレイしている本人は最初に見つけた一つのルートに固執してしまいがちだからだ。プレイせずに,後ろから見ているギャラリーのほうが,トラップを迂回するルートやショートカットを見つけやすかったりするものである。これからの年末年始,ああでもないこうでもないとワイワイと皆で遊んでみるのも良いかもしれない。
最後に注目しておきたいのは,本タイトルがゲームアーツの十数年ぶりの完全オリジナル新作であるという点だ。往年のゲームメーカーが,容量や予算,開発期間が限定されるWiiウェアでコンパクトながらも──だからこそ,なのかもしれない──奥が深くやり込みがいのある,そしてプレイ後に確かな達成感のあるゲームを,こうして新規タイトルとして世に送り出したことは喜ばしい限りである。
- 関連タイトル:
Shadow Walker 影の少年と光の妖精
- この記事のURL: