インタビュー
「DOFUS(ドフス)」は日本サービス1周年を迎え,次回作「WAKFU」も順調に開発中。仏Ankama CEOインタビュー
今回,AnkamaのCEOを務めるEmmanuel Darras(エマニュエル・ダラス)氏に会う機会が得られたので,設立10周年を迎えたAnkamaのこれまでや,今後の話などを聞いてみた。
「DOFUS(ドフス)」公式サイト
設立後10年で社員数が500名の一大グループ企業へ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
読者の中にも,Ankamaという会社を今回初めて聞く人は多いと思いますので,まずは簡単に自己紹介をお願いします。
はじめまして。10年前にフランスでAnkama社を共同で設立した3人のうち1人,Emmanuel Darrasです。現在は主に,Ankamaグループの国際ビジネスまわりを統括しています。
4Gamer:
Ankamaがサービスしている「DOFUS」は,フランスをはじめとした欧州各国で高い人気があると聞きます。DOFUSの他国展開なども,Darrasさんが仕切っているのでしょうか?
Darras氏:
はい。これまで10年間のあいだ,ヨーロッパの各国でDOFUSを展開してきました。欧州では軌道に乗っていますが,現在の大きな目標はアジアでDOFUSを成功させることで,そのために2009年3月9日にAnkama Japanを設立しています。
4Gamer:
最初は3人で起業したのが,今は社員数が4〜500名になったとのことですね。当時を振り返って,今の心境はいかがですか。
Darras氏:
会社を興したばかりの頃は,2〜3か月先に社員をどうやって食べさせていこうか,そのことばかりを考えていました。でも今は,グループ会社として,2〜3年先のことを常に考えながら動いています。あの頃を振り返ると,なんだか不思議な気分ですね。
4Gamer:
現在AnkamaはDOFUSの開発運営以外で,主にどういった事業を行っているのでしょうか。
Darras氏:
設立当初はDOFUSの開発/運営に専念していましたが,現在はこの世界観を中心とした,メディアミックス展開を積極的に行っています。例えばフィギュアやぬいぐるみ,トレーディングカードなど,さまざまな関連グッズをリリースしています。それらの中でも,アニメーション制作とコミックス/雑誌の出版事業は,オンラインゲームと同じくらい大きな事業の柱ですね。
4Gamer:
オンラインゲーム会社がマルチ事業を展開していくというのは,簡単にできることだったのでしょうか?
Darras氏:
最初はアニメや出版事業の経験がゼロだったので,苦労の連続でしたね。ですが,DOFUSの世界を広げていくんだという目標があったので,苦労というよりは大きなチャレンジで,むしろそれ自体が大きなモチベーションになっていました。
4Gamer:
これからDOFUSの世界をどこまで広げていきたいか,目標といったものはありますか?
Darras氏:
そうですね。DOFUSのメインストーリー以外にも,外伝的な広がりを持たせていって,ゆくゆくは「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」のような壮大な世界にしたいです。
4Gamer:
Ankama刊行の雑誌を拝見しました。メインの記事はDOFUSに関する内容ですが,「WAKFU」の情報もちらほら見かけますね。
Darras氏:
ええ。ご存じのとおり,WAKFUは弊社にとってオンラインゲームの次回作ですので,少しずつ盛り上げていってます。WAKFUはすでにアニメ化されている作品で,素材がたくさんあるので,雑誌での展開も比較的行いやすいんですよ。
4Gamer:
DOFUSはオンラインゲームから始まり,コミックスやアニメに展開していきましたが,WAKFUは逆にアニメからスタートした作品なのでしょうか?
Darras氏:
いえ,5年前にWAKFUのアニメを制作する前から,ゲーム化は進められていました。なお,マルチメディア展開は大きな効果が期待できますが,他社さんの状況を見ていると,別会社に委託することでクオリティが保てなくなるケースも見受けられます。その点WAKFUは,アニメもオンラインゲームも同じ私達のグループ会社で制作しているので,そういった心配が少ないです。
4Gamer:
WAKFUのアニメーション公開は2008年とのことですよね。だとすると,オンラインゲーム化はもう少し早いほうが効果的だったようにも思えるのですが,開発作業が難航しているのでしょうか?
Darras氏:
たしかに,オンラインゲーム化のスケジュールは多少遅れていますが,弊社はこのWAKFUというブランドを長期的に育てていきます。クオリティをないがしろにしてリリースを急ぐことはありませんし,長い目で見ればそれは正しい判断だと信じています。
Ankamaにとって次回作となるオンラインゲーム「WAKFU」
4Gamer:
WAKFUに関して現在公開されているコンセプトアートなどのテイストは,DOFUSによく似ています。両者に直接的なつながりはあるのでしょうか?
WAKFUの世界は,DOFUSから1000年後という設定です。DOFUSのテイストの良さを引き継ぎつつ,新しい要素を盛り込むことがメインコンセプトの一つです。
4Gamer:
DOFUSやWAKFUのオンラインゲームの開発人数や,サービススケジュールなどに関して,聞かせてもらえますか。
Darras氏:
DOFUSは開発と運営を合わせて約100名います。WAKFUは開発のみで現在は約40人ですが,今後もっと増やしていきます。WAKFUのサービススケジュールに関しては,SQUARE ENIX USAと運営契約を結んでおり,2012年に北米地域でリリース予定です。
4Gamer:
ぱっと見,WAKFUとDOFUSはよく似たグラフィックスですが,ゲーム内容について一番違う部分はどこでしょうか?
Darras氏:
WAKFUでは自分だけの“島”を持つことができ,ルールや法律などを作れます。つまりキャラクターだけでなく,島を発展させるという要素があるんです。これはDOFUSにはない要素です。
島は文字どおり生きていて,プレイヤーの動きが影響を与えていきます。例えば木を伐採したあとは,自分で種を撒いて育てないと再び生えてきません。また,動物などを倒しすぎると生態系が破壊され,なかなか次が出現してこなくなります。ですので子牛や子馬などは,狩り尽くさずに見逃してあげる必要も出てくるでしょう。
4Gamer:
DOFUSに,「CityVille」などのような面白さ取り込んだものがWAKFU,ということなのでしょうか。
Darras氏:
フランスの関係者にWAKFUのゲーム内容を紹介した際,そのような指摘をする人もいましたね。でもWAKFUは,4〜5年前からこの構想を練っていました。プレイヤーの行動がゲーム内にどういった影響を与えて,それをゲームシステムに反映すればきっと面白くなるだろう,というのはずっと前から考えています。
4Gamer:
現在,世界的にソーシャルゲームやブラウザゲームが盛り上がっています。10年前にDOFUSをブラウザゲームとしてリリースした御社にとって,ある意味時代を先取りしていたわけですが,現在の風潮をどのように受け止めていますか?
Darras氏:
ソーシャルゲームを遊んでいる人の中には,従来のゲームに興味がなかったライトな人が大勢います。そういった人も含め,ゲーム市場が広がっていくことは良いことだと思います。弊社のDOFUSやWAKFUは,そういったライトな人達にもアプローチできるゲーム内容なので,チャンスが広がっていると感じています。
4Gamer:
DOFUSやWAKFUを,facebookやiOS用アプリなどとしてリリースする予定はないのでしょうか?
Darras氏:
今年の5月に,DOFUSの世界観をもとにしたタワーディフェンス型の関連ゲーム「DOFUS battle」を,iOS用アプリとしてリリースしました(英語版のAppStoreのみ)。今はまだ詳しくお話できませんが,facebookで遊べるミニゲームなども社内で計画しています。
気になる今後のアジア展開は?
4Gamer:
WAKFUは今年の夏に北米でオープンβテストを実施したそうですが,反響はいかがでしたか。
じっくり時間をかけて作ったこともあり,ゲームシステムに対するフィードバックはとても良かったです。正式サービスを迎えるには,まだまだコンテンツのボリュームが足りないので,今後はここに注力していきます。
4Gamer:
WAKFUのワールドワイド展開はどのような予定となっていますか。
Darras氏:
まずはヨーロッパ諸国で,弊社が直接運営,近日中に正式サービス開始です。次がアメリカとカナダで,SQUARE ENIX USAが運営する予定ですが,現在日程を調整中ですね。
4Gamer:
アジア方面についてはどうでしょうか。
Darras氏:
アジアの国々には,まだDOFUSの魅力が十分に浸透しきっていないので,そちらが先になります。まずはDOFUSをヒットさせ,それからWAKFUに続く良い流れを作っていきたいですね。
4Gamer:
DOFUSの日本展開を振り返ると,2010年の9月にアエリアによってサービスが行われたものの,その後2011の4月1日にAnkama Japanへ運営移管されていますね。
Darras氏:
当時はアエリアのお陰で,DOFUSを“基本プレイ無料+アイテム課金”のビジネスモデルとしてサービスさせることができました。でも長期的に見たストラテジーやビジョンが合わなくなったため,今年からAnkama Japanを通じて自社運営することにしました。
4Gamer:
日本のゲーム市場は特殊で,世界中で流行っているコンテンツが日本では受けなかったり,その逆だったり,といったケースが珍しくないです。Darrasさんは,日本のゲーム市場をどのように分析されていますか。
たしかに,ほかの国とは大きく違いますね。
DOFUSは日本で人気のある一般的なMMORPGとはちょっと違ったテイストで,そこが新鮮に受け入れられるかなと思っていたのですが,想像以上にハードルがあったようでした。2009年にAnkama Japanを設立して,注意深く観察していますが,正直なところまだ完全には理解しきれていません。
4Gamer:
今後,日本のDOFUSはどのように続けていくか,ビジョンはありますか。
Darras氏:
意外に聞こえるかもしれませんが,サービス開始後1年間の状況だけを見ると,日本よりもヨーロッパのほうが不調だったんです。本格的にヨーロッパで人気が出てきたのは,サービスから3年経ってからです。ですので,日本のサービスに関しても,長期的なプランにのっとって頑張って運営していきますよ。
4Gamer:
日本版DOFUSは,いま目の前にあるような関連グッズのローカライズがされておらず,オンラインゲーム単体としての展開でした。その点,少々もったいないように思えましたが。
Darras氏:
当時アエリアと契約を結んだのは,オンラインゲーム展開に関してだけでした。今はAnkama Japanが運営しているので,画集などの関連グッズも,ぜひ展開していきたいですね。長期的プランで,DOFUSのブランドを認知させていきたいと思います。
4Gamer:
DOFUSのキャラクターデザインやイラストは,どことなく日本の影響を感じさせつつ,それでいてほかでは見ない不思議なテイストがありますよね。
Darras氏:
フランスでは,30年以上前から日本のアニメや漫画文化がローカライズが行われています。ワールドワイドで漫画の売上を見ると,1位が日本で,その次は実はフランスなんです。実際私もそうですが,多くのフランス人が,子供の頃から日本の漫画やアニメの影響を強く受けています。そういったバックボーンを持つアーティストが,DOFUSを作り上げていったんです。
4Gamer:
個人的にも,DOFUSの画集は見てみたいですね。
それでは最後に,一言メッセージをお願いします。
Ankamaはフランスの会社ですが,スタッフの多くは日本の文化を愛しています。日本の人達にDOFUSを楽しんでもらえるように,グループ企業を含めてのクロスメディアを行っていくので,期待してください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「DOFUS(ドフス)」公式サイト
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