レビュー
14年経っても色褪せない名作が3DSでリメイク
スターフォックス64 3D
「スターフォックス」シリーズの中でも,特に評価が高くファンの多いこのスターフォックス64は,1990年代中盤にスーパーファミコン向けに開発されるも,残念ながら発売中止となってしまった「スターフォックス2」のシステムなどを一部引き継いで,ニンテンドウ64本体発売から10か月後の1997年4月27日に発売されたシリーズ第2弾となる。
スーパーファミコン版の続編という位置づけではあるが,各種設定のみを引き継いだパラレルワールドが展開しているため,前作をプレイしていなくても十分楽しめる内容となっている。
実は筆者,初代のスーパーファミコン版はかなりやり込んでいたクチなのだが,発売当時にニンテンドウ64を持っていなかったこともあり,「スターフォックス64」はあまりプレイしないまま今に至ってしまっていたのだ。せっかくのいい機会なので,ニンテンドウ64とスターフォックス64を引っ張り出して,あらためて一通り遊んでから,本命である3DS版に挑むことにした。
「スターフォックス64 3D」公式サイト
実際に64版を今遊んでみて驚かされたのが,その完成度の高さである。通常は特定のルートを飛行しながら敵を倒していく3Dシューティングの基本形なのだが,ボス戦や特定のステージでは“オールレンジモード”という全方向へと自由に飛行できるシーンが展開し,普段とは違うドッグファイト的な戦いが楽しめる。
惑星コーネリアから始まるルートはクリア条件などによって変わり,ときにはアーウィン(戦闘機)から,ランドマスター(戦車)やブルーマリン(潜水艦)という別の機体で出撃できるステージも存在している。
特筆すべきはゲーム中のドラマ展開で,飛行中の仲間たちとの会話はもちろん,敵のアンドルフ軍やライバルチームのスターウルフ,ビルやキャットといった,チームとは別のキャラクターたちとの通信を通したやりとりが,ステージ展開によって変化していくことに大いに興奮した。なぜ自分は当時これをやり込まなかったのだろうと,悔やまれるほどの素晴らしい内容であった。
ただ,発売から14年が経過し,ニンテンドウ64版のグラフィックスの質感や解像度などは,現在の大画面テレビでプレイするには若干厳しいところがあるのは確か。
今回発売された3DS版は64版のゲームシステムやストーリー,演出などをほぼ忠実に再現しつつ,グラフィックスや解像度,フレームレートを3DSのスペックに合わせ,小さいながらもより美しく見やすい画面でプレイできるようになっている。なお,ゲーム中のボイスはキャストが一新され,完全新録となっていた。
過去の名作を現代の技術でリメイクすることは別段珍しいことではないが,本作を3DSでリメイクすることに関して,もう一つ大きな意義が存在している。2010年のE3にて開催された任天堂の“Round Table”において,宮本 茂氏が語っていた,“立体視によるプレイ感覚の向上”である(関連記事)。
2011年6月に発売された「ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D」でそれを感じた人も多いかもしれないが,このスターフォックス64 3Dでは,ゼルダ以上に立体視のありがたみを体感することができるはず。
3Dシューティングという性質上,特に敵や障害物との距離感を掴むことは攻略において重要なファクターであり,本作では,障害物をくぐったり迫る敵を加減速によって回避したりといった,立体的な操作が必要とされる場所において,立体視がプレイヤーを手助けしてくれるのだ。特にコーネリアやメテオ,セクターXのような障害物の多いステージでは,その立体視のありがたみを実感することができた。
余談だが,後半ステージの分岐先にある惑星ゾネスの海面は,現代のハードウェアらしい表現がなされているので,ぜひ一度見てほしいものである。
3DS版では,ニンテンドウ64版から難度を調整した“ニンテンドー3DS”モードが追加され,新たに3DSのジャイロセンサーを使った操作で楽しむことができる。
任天堂公式サイトのインタビュー「社長が訊く」によると,開発陣もこのジャイロ操作にはかなりこだわりを持っているようで,本体の前後左右の傾きに対するアーウィンの反応もよく,アーケードの体感ゲームで操縦桿を握っているような感覚でプレイすることができた。
ただ,やはり同様の操作系を持つ3DSタイトルでも指摘されているように,ジャイロ操作と立体視との相性があまりよくないのは確かで,3D立体視を有効にしたまま,終始この操作でプレイし続けるのは厳しい。
ジャイロ操作中もスライドパッドでの操作が可能で,さらにオプションでジャイロ操作を切ることもできるので,シーンによって切り替えてプレイするのがいいだろう。
そんな対戦モードは今回,ダウンロードプレイのみが用意されている。オールレンジモードの対戦専用ステージ上で,3つのルールのもとに対戦が可能だ。このときは3DSの内側カメラがプレイヤーの顔をリアルタイムで撮影し,それがプレイヤーアイコンとして画面に表示されるという実験的な試みも用意されている。
Wi-Fiコネクションを使った通信対戦もあったニンテンドーDS版「スターフォックス コマンド」の対戦モードと比べるとやや物足りない印象もあるが,3DSユーザー同士の手軽な対戦ツールとしては十分な内容になっている。というのも本作では,ソフト1本と人数分の3DSがあればプレイでき,顔が映るという付加価値もあるからだ。実際遊んでみると,この顔を映した対戦は見た目的にもかなり面白いので,3DSを持っている友達がいたらぜひ試してもらいたいもの。また今後この内側カメラを使った,3DSのコミュニケーション展開などにも期待したいところだ。
カメラはプレイヤーの顔をリアルタイムに撮影している。目の前の相手とプレイしているのに,思わずカメラに向けていろんな顔をしてしまうはず |
マリオカートに出てきたようなアイテムも登場し,対戦を盛り上げる。なお64版にあったランドマスターや機体から降りたパイロットでの対戦はなくなった |
「スターフォックス64 3D」は,「ゼルダの伝説 時のオカリナ3D」に続き,シリーズの新作ではないリメイク作品ではあったものの,実際に触ってみると古くささを一切感じさせない丁寧な作りで,満足度も十分だった。
3DSモードでは,ちょっとゲームに慣れた人ならば,最初のエンディングを見ること自体は簡単だろう。しかしゲームシステム上,1回目ですべてのステージをプレイすることは物理的に不可能だし,ステージによっては反復してプレイすることで発見できる要素などが隠されているものもある。
さらにやり込むことで出現する難度の高い“エクストラモード”も用意されているので,やりこみ要素は十分備えている。ちなみに,オリジナルのスターフォックス64は,Wiiのバーチャルコンソールでも配信されているので,筆者のようにオリジナルと比較して楽しんでみるのもいいかもしれない。
今回のような名作タイトルの3DSリメイクは今後も期待したい一方で,やはり気になるのはシリーズの新作の存在である。3Dシューティングと立体視の相性のよさは本作で十分に証明されたわけだし,ぜひともこの流れを汲んで,フォックスたちの新たな活躍を本作のように3DSの画面上で見せてもらいたいもの。……きっと新作の開発には着手しているんですよね? 任天堂さん!
「スターフォックス64 3D」公式サイト
※ニンテンドー3DSの立体映像は本体でしかご覧いただけません。
画面写真は2D表示のものです。
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