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[TGS 2012]グリー田中良和氏による基調講演レポート。スマートフォンの世界的普及に伴う市場予測とその対応
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印刷2012/09/21 03:44

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[TGS 2012]グリー田中良和氏による基調講演レポート。スマートフォンの世界的普及に伴う市場予測とその対応

 東京ゲームショウ2012のビジネスデイ初日となる9月20日,鵜之澤 伸CESA会長による基調講演第1部に続き,第2部にはグリーの田中良和代表取締役社長が登場。「スマートデバイスがもたらすソーシャルゲームの進化」という題で基調講演を行った。本講ではその内容をかいつまんでレポートしたい。

田中良和氏(グリー 代表取締役社長)
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ハードとインフラの発展がもたらす影響


 田中氏は最初にグリーの事業紹介を簡単に行い,本題である「ソーシャルゲームの進化」論に入っていった。

 そもそもソーシャルゲームが誕生した背景には,ハードウェアの進化インターネットの進化という2つの側面がある。この「ハードの性能」と「通信インフラ」という2つの要素が向上し続けていることは,ソーシャルゲームが進化する大きな礎となる,と田中氏は語る。

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 ハードウェアという面では,「スマートフォンが劇的な性能向上を続けている。スマートフォンは販売数が多く,またモデルチェンジのサイクルも早いため,より高性能なものが,より安く,より早いインターバルで市場に登場し続けている」と田中氏。「モバイル(デバイス)とPCとの垣根が曖昧になってきているが,この傾向はさらに加速するだろう。今後はさらに,コンソールゲーム向けハードウェアとの垣根も曖昧になっていくのではないか」という観測も提示していた。

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 一方のインターネットインフラとしては,LTEのような,モバイルで高速通信が可能となる技術が普及し始めた。これによって,大容量のリッチコンテンツもストレスなく運用が可能となったとしている。

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 従来のソーシャルゲームはカジュアルなコミュニケーションが最も重視されてきたし,それがゲーム業界における最新のトレンドでもあった。しかし,ハードと通信インフラの性能向上により,カジュアルなコミュニケーションにゲーム性やストーリー性を加味しても,ストレスなくゲームがプレイできるようになったと,田中氏は現状をまとめる。

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 ここでそのサンプルとして,グリーが新たに提供するソーシャルゲーム「War Corps」などが紹介された。高精細なグラフィックスを有したTPSとされるWar Corpsは確かに,「これまでのモバイルソーシャルゲームとは違う」という印象が強い。

War Corps(左)と「モンスターハンター Massive Hunting」(中央),「METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS」(右)
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 田中氏は,こういった新しいチャレンジを通じ,ゲーム人口をより拡大していきたいと語っていた。


ソーシャルゲーム発の文化


 続いて田中氏は,「ソーシャルゲーム発の文化をつくる」という展望を示した。
 これまでコンテンツビジネスは,コミックにしてもコンソールゲームにしても,アニメ化や映画化など,IPビジネスとして展開されてきた。これら従来のコンテンツと同様,ソーシャルゲーム発のキャラクターや世界観が愛されるようにしていきたいというのである。

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 グリーが実際に行っている取り組みの例としては「探検ドリランド」のアニメやグッズ展開が紹介されたが,同様の取り組みは今後,サードパーティ制作のゲームでも行っていく予定とのことだ。田中氏は「ソーシャルゲームだけでなく,総合的にコンテンツを作っていきたい」と,ソーシャルゲームをIPとするマルチメディア展開のさらなる推進を示唆していた。

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世界中の人にゲームを


 ソーシャルゲームに限らず,ゲーム産業にとってグローバル展開は重要な課題となっている。
 この点に関し田中氏は,スマートフォンが世界レベルで急速に普及していることに言及する。すでに出荷台数ではスマートフォンがPCを上回っており,グローバルで見た場合,全インターネットトラフィックの10%はスマートフォンなどのモバイルデバイスからのものになっているとのことだ。

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 また,新興国におけるスマートフォンの伸びは著しいものがあるとも田中氏は述べる。
 氏によれば,2011年の時点におけるスマートフォン普及台数は先進国と新興国で2:1程度の比率だが,2015年にもなると新興国における普及台数は新興国を上回るという。新興国における普及台数は,2011年比で11倍にも達するとのことだ。
 田中氏は,「2020年には,全世界のスマートフォンの80%〜90%は新興国で利用されるようになるのではないか」とも述べていたが,要するに,この極めて巨大なポテンシャルを持つ市場にモバイルソーシャルゲームはアクセスできるというわけである。

2011年と比べると,スマートフォンの普及台数は,先進国で4倍,新興国で11倍に達するとの予測
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 田中氏は新興国におけるゲーム市場が持つビジネスポテンシャルの大きさを指摘しつつ,同時にそれは「ゲームを遊びたくても遊べない人が,ゲームを楽しめるようになる」世界を作ることであると語る。幸運にも日本に生まれた我々は,好きなゲームをいつでもどこでも楽しめるが,そういった恵まれた環境は世界的に見るとまだまだレアケースなのだ。

 なお,「日本のゲームのグローバル展開が成功するか否か」という点について,田中氏は,日本のコンソールゲームの総出荷数比率が国内23.7%に対し海外76.3%であることを挙げて,その可能性が十分にあると述べていた。コンソールゲームは現状ですでにグローバル展開を成功させており,これは「ソーシャルゲームも海外で広く受け入れられる土壌があることの示唆」だという。

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 新興国市場だと,これまでは海賊版問題などがあってなかなかパッケージゲームのビジネスが成立しにくかったが,オンラインゲームであるソーシャルゲームは海賊版問題にも耐性が高い。
 また,ソーシャルゲームの国際展開を支える基盤としては「GREE Platform」をがあると田中氏。世界の多くの人にゲームを遊んでもらえる環境としてのプラットフォームを越え,デベロッパが直面する技術的問題についてもサポートするなど,「プラットフォームの定義を変えていくもの」であると述べていた。


成長産業として


 最後に田中氏は,2020年のゲーム市場が2010年の約1.5倍にまで成長し,日本と世界の双方でゲーム市場は拡大していくという見通しを示した。ゲームは成長産業であり,世界中の人にゲームは求められているのだ。

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 講演のまとめで語られた「新しいデバイスに,新しいコンテンツを」「ユーザーが求めるゲームは変わっていく。今年と同じゲームを来年も作っていてはいけない」という言葉が示すように,変わりゆく市場と,そこに果敢に挑戦する意欲,そして,ゲームというものが本来的に有する革新性を感じられる基調講演であったと言えるだろう。

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