レビュー
δ世界線で繰り広げられるイチャラブキャッキャウフフな物語。「STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん」レビュー
本作は,タイムトラベル(タイムリープ)を題材とした巧みなストーリー展開が高い評価を得た“想定科学アドベンチャー”,「STEINS;GATE」(PC / Xbox 360 / PSP)のスピンオフ作品。「99%の科学と1%のファンタジー」がウリだった原作とは異なる“世界線”を舞台としており,ラボメンガールズ(ボーイもいるが……)とのイチャラブキャッキャウフフを中心としたラブコメ的……ダル風に言うならば「それなんてエロゲ?」的な展開が楽しめるのが大きな特徴だ。本稿では,そんな本作の魅力をお伝えしていこう。
「STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん」公式サイト
なお,本作はあくまで「STEINS;GATE」をプレイ済みのユーザーに向けたファンディスクであるため,本稿でも基本的には原作を知っていること前提で紹介していくことになる。若干ネタバレも含んでいるので,その点については注意してほしい。
原作ファンのかゆいところに手が届く
いい意味でスイーツ(笑)な作品
コミカルな要素をちりばめつつも,基本的にはプレイヤーをハラハラとさせるシリアスな展開が中心だった「STEINS;GATE」だが,そのファンディスクとして発売された「比翼恋理のだーりん」はというと……血生臭い陰謀や悲劇など影も形もなく,全体的にスイーツ(笑)である。もちろん「いい意味で」だが。
それもそのはず。本作の舞台となるのは,原作で岡部が悲劇を回避するために奔走した“α世界線”でもなく,“β世界線”でもない。度重なるDメール実験の結果,陰謀も悲劇も華麗にスルーしてたどり着いてしまったダイバージェンス3%台の“δ世界線”なのだ。岡部と苦労を共にし,いくつもの試練を乗り越え,やっとのことで“境界面上のシュタインズゲート”にたどり着いたプレイヤー的にはズコーッとせざるを得ない展開だが,これもまた“運命石の扉”の選択なのだから仕方がない。甘んじて受け入れようではないか。
さて,そんなδ世界線では,ラボメン8名が全員集合。ラボの資金難に頭を悩ませつつも,みんなでプールに行ったり,バンドを組んだり,メイド喫茶“メイクイーン+ニャン2”でバイトをしたり,まさに「リア充爆発しろ!」と言いたくなるような日常が展開されていく。
全体的に明るく軽いノリではあるが,ただ色恋のみに焦点を当てているというわけでもなく,キャラクターの掘り下げや,原作で語られなかったエピソードの補完がしっかりと行われているのが素晴らしい。公式サイトで「かゆい所に手が届く」と謳っているとおり,「STEINS;GATE」のファンディスクとして押さえるべきツボはしっかりと押さえている印象だ。
これは個人的な見解だが,そういった意味でとくに桐生萌郁のルートは必見だ。彼女の意外な一面や,周囲の人間関係が大変魅力的に描かれている。原作ではとある理由から,プレイヤーの怒りを一身に受けてしまう損な役回りの萌郁だが,本作でやっと“救われた”という印象だ。ラストに表示されるイベントCGは全ヒロイン中でもトップクラスの破壊力だよ,マジで。
また,漆原るかルートについても特筆しておきたい。彼女,いや,彼はごく一部の層(HENTAI)に絶大な人気がある染色体XY型のヒロイン……いわゆる“男の娘”なのだが,原作ではDメールの影響によって性別が逆転。最終的には女の子として岡部と結ばれていた。しかし,なんと本作では男のまま「アッー!」なラブストーリーが展開される。かなり挑戦的なシナリオになっているので,筆者のように「こんな可愛い子が女の子のはずがない」と断言できるHENTAIなら大喜び間違いなしだろう。オカリンの漢気(性的な意味で)に敬礼だ。
もちろん,ほかのヒロインについても非常に愛らしく描かれており,語り尽くそうと思ったらキリがない。原作とは違うベクトルで魅力的なシナリオが楽しめるので,ぜひとも全エンディングをコンプリートしてほしい。
そうそう,“ルート”という言葉を何度か使っているが,携帯電話で送ったメールによってストーリーが分岐していく“フォーントリガー”システムは本作でも健在である。大まかにはストーリー序盤,電話レンジ(仮)で過去にどのような内容のDメールを送るか(もしくは送らない)によって,牧瀬紅莉栖,椎名まゆり,漆原るか,阿万音鈴羽,フェイリス・ニャンニャン,桐生萌郁それぞれのヒロインに焦点を当てたシナリオへと分岐する。アドベンチャーゲームに欠かせないスキップ/オート機能の使い勝手が非常にいいので,一切のストレスなしに繰り返しプレイが可能な点も好印象だ。
メールにどのような返信をするかで,ルート分岐のフラグが立ったりするフォーントリガーシステム。ラボメンとの他愛ないやりとりも楽しみのひとつだ |
エンディングを見ると,キャラクターごとに壁紙や着メロを獲得できる。他のヒロインを攻略中に携帯を開くと,これは……浮気者…… |
筆者はオート機能を使いつつ,のんびりとボイスを堪能しながらプレイしたが,全エンディングを見るまでには大体25時間程度かかった。メールまでコンプリートしようとするならばもう少しかかるはずなので,アドベンチャーゲームとしてのボリュームはなかなかのものである。
ファンディスクとしては出色の完成度
ただし,何度も言うようだが,本作はラボメン達との日常や恋愛に焦点を当てた作品になっているので,原作のような科学的考察に基づいた高度なギミックや伏線を期待してはいけない。カオス理論や量子力学云々といった小難しい話から思考を切り替え,「こまけぇこたぁいいんだよ!」と素直にキャラ萌えできるプレイヤーならば,楽しめること間違いなしだ。
また,本作はあくまでファンディスクであるため,原作未プレイの人にはあまり強くオススメできない。しかし幸いなことに,「STEINS;GATE」はゲーム以外にも,小説やアニメ,コミックといった豊富なメディアミックス展開に恵まれており,間口は非常に広くなっている。「アニメしか見ていない」「小説だけ読んだ」という人であれば,十分に「比翼恋理のだーりん」を楽しむ資格を有しているので,ぜひともお好みのコンテンツから,未来ガジェット研究所の扉を叩いてほしい。
ちなみに,「STEINS;GATE Platinum collection」と「比翼恋理のだーりん」の2タイトルがセットになった「STEINS;GATE ダブルパック」が発売中なので,Xbox 360ユーザーにはそちらをオススメしたい。さらにPSP版「STEINS;GATE」も発売中なので,携帯ゲーム機で原作に触れてみたいという人はそちらをどうぞ。やっぱり何だかんだで,ゲームから入るのが一番だからね。
それでは,右腕に宿る力で闇の“機関”に立ち向かう系の仕事があるので,筆者はそろそろ失礼しよう。エル・プサイ・コングルゥ。ルカ子ぺろぺろ。
「STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん」公式サイト
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STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん
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