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[CEDEC 2011]コンシューマからオンラインゲーム開発者へ転身したDropWave本城氏が語る,「ゲームプランナーの基礎知識」。想いは日本発のオンラインゲームを世界へ
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印刷2011/09/12 22:01

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[CEDEC 2011]コンシューマからオンラインゲーム開発者へ転身したDropWave本城氏が語る,「ゲームプランナーの基礎知識」。想いは日本発のオンラインゲームを世界へ

 CEDEC 2011の3日目,2011年9月8日に「ネットワークゲーム時代に求められる,ゲームプランナーの基礎知識」と題されたセッションが行われた。講師はDropWaveの代表取締役社長を務める本城嘉太郎氏。本城氏は,もともとコンシューマゲームのプログラマーであったが,どうしてもオンラインゲームが作りたくて,自らDropWaveという会社を立ち上げたという人物。今回の講演は,本城氏が自らの経験を基に,オンラインゲームの開発と運営について,コンシューマゲームの開発者の視点で語るというものである。

DropWave代表取締役社長 本城嘉太郎氏
画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2011]コンシューマからオンラインゲーム開発者へ転身したDropWave本城氏が語る,「ゲームプランナーの基礎知識」。想いは日本発のオンラインゲームを世界へ


コンシューマゲームとオンライン/ソーシャルゲームの違い


 本城氏が最初に説明したのは,コンシューマゲームとオンライン/ソーシャルゲームの違いについて。双方の特徴を知り,そこからコンシューマ開発者が注意すべき点を導き出すのが狙いだ。

 最初に挙げられたのは,ゲームに対するユーザーのモチベーションの違いだ。
 コンシューマゲームの場合は,まず数千円の現金を先に払わなければならないので,自然と高いテンションでゲームを開始する。しかし,オンライン/ソーシャルゲームの場合は「無料だからやってみた」という人が大半だ。したがって,オンライン/ソーシャルゲームを作るときは一見(いちげん)さんを想定してゲームを作らなければならない。
 具体的にどうすればいいのか? 本城氏は「最初の5分でその気にさせ,15分で完全にハマる演出が必要」だと話す。オンライン/ソーシャルゲームで最初にレベルが上がりやすいのは,こういった理由からなのだ。
 また,翌日もゲームのことを思い出してもらえるような仕組みも必要不可欠であるという。例えば“アイテムがあと二つあればコンプできる”というタイミングで1日目を終わらせ,ユーザーが翌日もゲームのことが気になるように仕向けるのだ。

DropWaveは,オンラインソーシャルゲームの企画,開発,運営を行う会社で,リアルタイム通信が可能な独自開発のオンラインゲームサーバーエンジンを所持している
画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2011]コンシューマからオンラインゲーム開発者へ転身したDropWave本城氏が語る,「ゲームプランナーの基礎知識」。想いは日本発のオンラインゲームを世界へ 画像集#003のサムネイル/[CEDEC 2011]コンシューマからオンラインゲーム開発者へ転身したDropWave本城氏が語る,「ゲームプランナーの基礎知識」。想いは日本発のオンラインゲームを世界へ

 ゲーム内容だけでなく,ビジネスモデルも違う。
 コンシューマゲームは,開発チームが面白いゲームを作ってさえいれば,あとは営業と販売店がゲームを売ってくれる。しかし,オンライン/ソーシャルゲームは,ゲーム内でプレイヤーに課金アイテムを自ら販売しなければならない。面白いゲームを作るスキルだけでなく,商品設計や店舗運営のセンスも求められてくるわけだ。「タイムセールや,セット販売など,リアルな店舗の販売促進手法がすべて使える世界なので,売り方も自分で研究しなければならい」と本城氏は言う。

 コミュニティ要素の有無も大きな違いだ。「モンスターハンター」シリーズやWii Partyなどの例外はあるものの,コンシューマゲームは基本的に一人で遊ぶもの。対して,オンライン/ソーシャルゲームにはフレンドやギルドなどコミュニティ要素は不可欠。なぜかといえば,コミュニティは継続率を押し上げる重要な要素だからだ。
 コミュニティが盛り上がらないゲームは,寿命が短く,売り上げも伸び悩んでしまう。「コンシューマでは作る必要のない要素であるため,その重要性が理解できず,初期仕様から漏れてしまったり,工数削減候補にまっ先に挙げられたりするので注意してほしい」と本城氏は来場者にアドバイスを送った。

 ソーシャルゲーム単体で考えると,より大きな違いが浮き彫りになるという。
 とくに顧客の違いは歴然で,コンシューマゲームのプレイヤーは,ゲーム機に数万円払えるほどのゲーム好きで,高度に鍛えられたコアゲーマー層といっていい。対してソーシャルゲーマーは現行のゲーム機を持っていない非ゲーマー(と考えるべき)だが,ゲームは嫌いではない人だ。したがって,ソーシャルゲームを開発するなら,ゲーマーではない層に対して作っていることを強く意識する必要がある。
 「ゲームが好きな開発者が,“自分が一番楽しめるゲーム”を作ると必ず失敗します」と本城氏は語り,「自分も十分に楽しめるけど,自分の母親でも説明なしで楽しめるゲームを作らなければならない」と付け加えた。

 こうした理由から,必然的にゲームの操作性や難度も異なってくる。コンシューマゲームはコアゲーマーが対象となるので,高度な操作技術や複雑なルールの理解を求めてもかまわない。しかし,ソーシャルゲームのユーザーは,ちょっと空いた時間に片手で数分間プレイしたいだけなので,簡単な操作で,ほとんど迷わずにゲーム進行できなければいけない。
 「とにかく入力を簡単でシンプルにすること。しかしながら,結果の多様性は確保し,ゲームとしての楽しさや戦略性は維持すること」と本城氏。双六のマスごとに装備がもらえたり,敵を倒したり,ストーリーが進行するようにすればRPGを作ることもできる。もう一度サイコロを振るべきか,今アイテムを使うべきかといった戦略性の要素も入れられると,具体例も示した。

 前提として,顧客のプレイスタイルが違ってくるのは当然だろう。コンシューマゲームは集中して1〜2時間連続で遊んでくれるが,ソーシャルゲームはコマ切れに空いた時間に十分に楽しめて,さらにその時間内でやることがなくなるように作らなければならない。ここでポイントになるのは,自分が作るゲームがユーザーのライフスタイルの中でどのように遊ばれるか綿密にシミュレーションすることだという。
 1回のプレイ時間が10分以上だと,電車の乗り換えの合間に遊べないし,10分間拘束されるとうんざりして起動してもらえなくなることもある。また,次にプレイするまでの時間が短すぎると,焦らされている感じがするし,長すぎると遊べなくてイライラする。こう分析する本城氏は「1時間,3時間,8時間など,次にプレイするタイミングを自分でコントロールできる農園系のゲームは,この問題に対する完璧な回答の一つです」と説明した。

開発/運営チームでオンラインゲームの話をするとき,必ず出てくる基礎用語
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オンラインゲーム設計のポイント


 基礎知識を一通り解説したところで,開発段階へ話題がシフトする。
 開発の大前提は「当たり前すぎるように聞こえるかもしれないが,面白いゲームを作ること」と本城氏。オンラインでもソーシャルでも,必ず面白いゲームである必要がある。そうしないと継続率を維持できず,成功が望めない。
 また,ビジネスモデルとしてゲームを設計するのも前提条件だ。ゲームの基本サイクルに最初から課金ポイント組み込んでおくべきで,後付けの課金はゲーム内に埋め込みづらくなる。

 課金の話が出たが,オンライン/ソーシャルゲームでは,非課金者と課金者それぞれにゲームバランスを整える必要がある。ただ,課金プレイヤーは全体の数%なので,彼らが圧倒的に強くなってもとくに問題ないとのこと。ただし,強力すぎるアイテムを安価でバラまいてしまうとさすがにバランスが大きく崩れてしまうので,圧倒的に強い人が全体の数%になるようなバランスと価格設定をしなければならない。
 このバランシングが適正であれば,全体の9割以上は無課金者同士,および軽課金者同士の戦いになり,それほど理不尽なことにはならない。

 ゲームにもよるが,課金していることが露骨に分かる圧倒的に強いアイテムは危険だ。非課金ユーザーが非難する口実になるし,最悪の場合,非課金ユーザーの心が折れてゲームをやめてしまうこともある。
 無料でも,がんばれば有料ユーザーと同じくらい強くなれると思わせることが肝心なのだ。そのために,利用していることが分かりづらい課金アイテムのほうが使いやすい。例えば,超強い武器を直接売るのではなく,超強い武器の合成確率をアップさせるアイテムを売るべきなのだ。無料ユーザーでも超強い武器は手に入るが,かなりの努力が必要というバランスにしておき,結果的にお金を払った人が強い武器を持っている,という状況が理想といえるだろう。よくある時間短縮系のアイテムも,課金と非課金の境界線を曖昧にできるアイテムだ。

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 ビジネスモデルとして成功させるためにも,商品設計は消費アイテムを中心にすることだ。時間短縮,体力回復,確率アップといったアイテムで,同じ物が長く売れ続けるため運用が楽になる。また,デザインが発生しないためコストも抑えられて収益化しやすいのだ。逆にアバターアイテムや新しい武器などは,制作コストがかかり続けるため運営が大変になる。

 そういった理由から「アバターゲームは作ってはいけない」と本城氏。アバターゲームの具体的な問題点は,「まったりユーザーが残り,彼らはあまりお金を払ってくれない」「課金の必然性が演出しづらい」「新規アバターアイテムを追加し続けるため,運営コストがかかる」「ゲーム性が浅くなりがちで,コアゲーマーが寄りつかない」などで,つまるところ儲からないのである。
 どうしてもアバターアイテムを売りたい場合は,せめてゲームに作用するパラメータを持たせるべきで,そうすることで,アバターアイテムに興味はなくてもゲームを有利に進めたいゲーマーが買ってくれると,本城氏は付け加えた。

 コミュニティを活性化させる仕組みも重要だろう。例えば,仲間がいると有利になったり,助けてももらえたり,プレゼントが贈られたりするような仕組みで,「怪盗ロワイヤル」でいうあいさつ,ボス戦共闘,応援要請などだ。仲間と協力して目的を達成する,MMORPGのギルド戦やパーティプレイのようなもので,こういった仕組みでゲーム内で知り合ったプレイヤー同士の関係を深めさせ,関係を切ることに罪悪感を覚えるほどにすれば,そのゲームは長く遊ばれることになる。その結果として,LTV(顧客生涯価値)の最大化につながるというわけだ。


オンラインゲームの運営の基本


 コンシューマゲームだとゲームが完成して販売されれば一安心だが,オンラインゲームはゲームが完成してからが本番になる。
 「ゲームの完成で気を抜くと即座に失速して墜落します。開発と運営は両輪。どちらが欠けても失敗する」と本城氏は警鐘を鳴らす。
 では,運営として何をすべきか。ゲーム制作者から一転して「カリスマ販売員になれ」と本城氏はいう。毎日,来客数やPOS(店頭販売)データを見て,どうやったら売り上げが増えるか,どうやったらプレイヤーにもっと楽しんでもらえるのかを,毎日真剣に考えることが必要となるのだという。

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 運営を開始して最初に行うのは,継続率の改善。課金率や課金額はあとからいかようにもできるが,継続率が低いということは,そもそもゲームがつまらないということであり,課金以前の問題となる。その場合,主に演出やゲームのテンポ,ゲーム開始後30分〜数時間のバランスをとくにチューニングするといいと,本城氏はアドバイスし,毎日ひたすら改善を繰り返すことの重要性についても説明した。
 「オンライン/ソーシャルゲームは,1年365日継続するビジネスなので,今日改善したことは,1年間で365倍になって返ってくる。小さな改善が予想以上の大きな効果をもたらすため,毎日少しずつでもいいので必ず改善を行ったほうがいい」(本城氏)。そして,一部を変更したらKPI(重要業績評価指標)ツールで10分〜1時間間隔でユーザーの反応を見て,高速でPDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)を回すのが理想であるとした。

 ゲームのバランス面の調整は,3日以上ログインがなかったユーザーを離脱とみなし,その離脱ポイントを割り出して改善するといい。とくに離脱者が多いポイントは何らかの原因,例えば急に敵が強くなるといったことが必ずあるので,そこを実際にプレイしてみることも必要だ。また,チュートリアルについても,全フェーズの脱落率を計測し,離脱が多いポイントはチュートリアルからどんどん改善していくこと。ガラケーのソーシャルゲームであれば,チュートリアル通過率90%以上が目安であるとのことだ。

 ほかにもいくつか運営時のポイントが解説されていたので,紹介しておこう。
 まず,ゲーム内の新商品を徹底的に宣伝すること。新しいアイテムやクエストを追加したら,必ず紹介専用ページを作って全力で商品の魅力をアピールする。
 広告を打つタイミングはコンシューマゲームと違うので注意。コンシューマゲームはゲーム発売日前後に広告を集中させるが,オンラインゲームはリリース後から本格的な広告を開始するのが一般的だ。ただし,継続率が低いうちは広告を打たないこと。また,リリース直後は広告をあまり出さずにチューニングを行い,KPIの指標が改善されてから広告を打つべきだ。

画像集#008のサムネイル/[CEDEC 2011]コンシューマからオンラインゲーム開発者へ転身したDropWave本城氏が語る,「ゲームプランナーの基礎知識」。想いは日本発のオンラインゲームを世界へ

 本城氏はコンシューマゲーム開発経験者が陥りがちな罠について話し,最後に「廃人になるまでオンラインゲームをやり込むこと」の重要性を説いた。オンラインゲームに毎月2万円課金する。そうすることで課金の気持ちが分かるというのだ。「課金したことがない人がオンラインゲームを作ると100%クソゲーになります」と本城氏はバッサリ断ずる。
 「18歳の頃にディアブロやウルティマオンラインと出会い,オンラインゲームこそが究極のゲームであると思って,今まで来ました。コンシューマゲームでは日本のゲームが世界中でブームを起こしました。今度は日本のスマートフォンのゲームが世界を席巻するのではないか──。DropWaveはスマートフォンで日本発のオンラインゲームを世界展開します!」と自らの熱い想いを明かして講演は終了した。
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