プレイレポート
「ブラウザ カルネージハート」プレイレポート。“シリーズファン御用達”を謳う作品だが,実は初心者にうってつけ?
ファンはもとより,「えーなんかややこしそうだし〜(興味はあるけど)」などとひっそり考えている多くのプレイヤー候補(?)達も注目しているであろう,本作のプレイレポートをお届けしたいと思う。
……とその前に,「こちら」のプロデューサーインタビューでもお伝えしたとおり,本作は既存のカルネージハートファンをターゲットに据えたタイトル。たしかに,シリーズ作品をやり込んだプレイヤーなら,効率よく「OKE」(オーバーキルエンジン。主役であるロボットのこと)を設計し,定番のロジックをソフトウェアにスッと埋め込んで,サービス直後のこのタイミングでもトーナメントなどの晴れ舞台でブイブイいわせることが可能だろう。
しかし実際にプレイしてみると「ん,実はコレ,カルネージハートの導入編としての位置づけが正しいんじゃないの?」と感じる点も多々あった。チュートリアルはキチンと実装されているし,ゲーム進行速度もブラウザ版ならではの,いい意味でのんびりとしたものになっている。
本稿では,できるだけシリーズ未体験の人でも理解しやすいよう心がけて進めていくので,カルネージハートシリーズに興味はあったけど二の足を踏んでいたという人も,ぜひざっと目をとおしてみてほしい。
「ブラウザ カルネージハート Programming Soldier」公式サイト
【基本的なゲーム内容】
オンラインならではの要素を
盛り込んだ最新のカルネージハート
本作は,OKEと呼ばれるロボットの“ハードウェア”(身体)と“ソフトウェア”(頭脳)を設計し,自動で動くOKE達を戦わせて遊ぶ対戦ゲームだ。
ハードウェア設計は,最初にベースとなる機体を選んで,武器や装甲,その他のパーツをうまく組み合わせ,エンジンの出力や搭載するエネルギーなどのパラメータをいじるという,誰しもが直感的に「まあロボットゲームはこんな感じかな」と想像できる範囲のものだ。
一方のソフトウェア設計は,あらかじめ用意された“プログラムチップ”を,特定の容量を持つパネルに埋め込んでいく,いわゆるプログラミング相当の作業を行うというもの。
そしてこのソフトウェア設計の要素こそが,カルネージハートシリーズならではの醍醐味であり,1995年に発売された第一作から不変の要素だ。
……というぐらい変わらない,ソフトウェア設計などを含む本シリーズの概要については,「こちら」のレビュー(のような)記事に詳しいので,ぜひご一読を。
ブラウザCHは,そんなシリーズの最新作として,現在ハンゲームでサービスが行われている。ちなみにコンシューマ機における最新作は2010年に発売されたPSP用ソフト「カルネージハート エクサ」(以下,CHエクサ)だが,ブラウザCHのベースとなっているのは,CHエクサの前作に当たる,同じくPSP向けの「カルネージハート ポータブル」(以下,CHポータブル)。これは,ただ「ブラウザCHの企画時にまだCHエクサは発売されていなかった」という分りやすい理由からである。
このブラウザCHは,ストーリーモードなどを除いたCHポータブルの基本的な要素を可能な限り踏襲しつつ,ブラウザ版ならでは要素を組み込むという形で制作されている。新たな要素は主に,以下の4点だ。
-「Pドロイド」
プレイヤーが設計したソフトウェアにしたがってOKEを制御するキャラクター。従来のカルネージハートシリーズ作品にはなかったもので,経験値を稼ぐことでレベルアップができるという育成要素や,アバターライクな着せ替え要素がある。さらに,一部の人は萌えたりすることもできる。
-OKEや武装の強化
OKEや武装などのいわゆる手駒は全プレイヤー共通であり,「イコールコンディション下で戦う」というのが,カルネージハートシリーズの面白さの一つ。しかし本作では,手持ちのOKEや武装を特定のアイテムと引き替えに強化したり,ガンガチャなどで強化されたものを入手したりといった楽しみ方もできる。まぁこのあたりは“ブラウザ版然とした仕様”といったところですな。
-トーナメント
プレイヤー達が活躍するための場として,またショウとして,プレイヤー以外のハンゲーム会員にも本作におけるアツい戦いを見てもらおうと搭載されたのが,このトーナメントシステム。詳しくは後述するが,みんなでワイワイ楽しむためのちょっとした工夫が凝らされていたりする。
-コミュニケーション要素
リアルタイムチャットに掲示版にフレンド登録機能にと,従来のシリーズ作品には見られなかった機能を搭載。しかもそれぞれ,カルネージハートならでの機能が実装されていたりして,少なくともコミュニケーション機能の存在については,手放しで「ブラウザ版万歳」といえると思う。
なおインタビュー記事でも取り挙げているが,コンシューマ機版では3D表示だったバトル画面は,ブラウザCHでは2D表示となっている。それによってZ軸方向で起きていることの確認・検証が難しい,あるいは単純に「画面が地味になっている」という点でシリーズファンからの不満が出ている。
まぁただその点については,正直いって現状「言ってもしようがない部分」であるので,今後の改善に期待するにとどめておこう。
というわけで以上の点を踏まえつつ,このあたりからようやく本作のプレイレポートに入ろう。いやあ,前置きがこんなに長くなるというのが,いかにもカルネージハートぽいですなあ。関係ないか。
【ゲームの進め方】
目指すはトーナメント制覇
基本はミッションでお金稼ぎ&部品集め
ものすごく簡単にいうと,このゲームはハードとソフトを練り上げて最強のOKEを作ることが大きな目的だ。もちろん,奇抜な戦略を立てて対戦相手を驚かせてみたり,OKEに踊らせてみたり(?)といった遊び方もできるし,しかもそれを完全に目的化できる点がカルネージハートシリーズの素晴らしいところだったりもする。
しかし,少なくともシステムが要求してくる目的は最強を目指すことであり,具体的には不定期で開催されるトーナメントにおいて優勝を重ねることだ。そして強いOKEを作るために行うこと,これがそのまま本作のゲームの流れとなる。
ゲームを開始すると,プレイヤーにはハードウェアたるOKEと,Pドロイドが与えられる。まずはもらったOKEとPドロイドを前提にしたチュートリアルで,ソフトウェア設計の基礎を学んでいく。
チュートリアルの内容は,初歩的なチップの置き方から,「カウンタ」と呼ばれる記憶領域を使った高度なプログラムまでを一通りレクチャーするというもの。「コアゲームファン向け」を標榜する本作にしては(?)思ったより手厚い。
クリアすれば報酬としてゲーム内通貨の「G」が得られ,これが序盤ではそれなりの額だったりするので,チュートリアルは全プレイヤーが一通りプレイすることになるだろう。
なお本作では,「OKE」「Pドロイド」「ソフトウェア(プログラム)」をまとめて「OKEカード」と呼ぶ。そして最大3つのOKEカードを一組にしたものを「チーム」と呼び,ほかのプレイヤーとは,このチーム単位で戦うことになる。
OKEを強化するには武装を揃えたり組み合わせを考えたりする必要があり,Pドロイドを強化するには敵を倒して経験値を稼ぐ必要があり,ソフトウェアを強化するにはプレイヤーのプログラム技術を向上させる必要がある,と覚えておくと分りやすいはず。
この上記3つのいずれの要素を強化するにせよ,挑まなければならいのが「ミッション」だ。
ミッションは,簡単にいえば,あらかじめ用意された複数のOKEチームから好みの相手を選んで戦うモード。敵チームとして用意されているのは,全然動かない木偶のようなOKE1体といった練習用のものから,3体で高価な武装と頭のいいソフトウェアを持った手強いものまでが用意されている。さらに特定のロジックで抽出されたプレイヤー制作のOKEまで登場するなんていう,ちょっと面白い仕組みもある。このミッションへの挑戦,そして繰り返しが,本作のゲームプレイの根幹をなしていると考えていいだろう。
ミッションに勝利すれば,その難度にあったゲーム内通貨を報酬として得られるほか,Pドロイドには経験値が入る。また,ミッションの中でも一定時間だけランダムに出現する「緊急ミッション」をクリアすれば,武装や弾薬などがもらえることもある。
ただし,ミッションに「出撃」すると,そこで使用した弾薬は減るし,OKEが受けたダメージに比例して,修理時間が必要となる。OKEはHPが最大の状態でないとミッションへの挑戦はおろか,OKEやPドロイドのカスタマイズもできなくなる(ソフトウェアの変更は可能)。そのため,全機殲滅されてミッションの失敗したとき,また勝利したときでも大きなダメージを負ったときは,修理にかかる“時間”がペナルティとなるわけだ。
そんなこんなで,本作のゲーム進行が「ミッション」→「強化&思考」→「ミッション」→「強化&思考」→(以下続く)を繰り返して自らのチームを強化し,トーナメントに備えるというイメージが,なんとなくお分かりいただけると思う。以降ではゲーム中,気が遠くなるほどの回数お世話になるであろう「ミッション」を,もう少し詳しく見ていこう。
【ミッション詳細】
設計の瞬発力を問われる
「緊急ミッション」が面白い
ミッションはお金や経験値を稼ぐ手段だが,以下のミッション詳細画面を見ると,そこには「貢献度」という文字が並んでいる。
本作の世界では,「ハーン帝国」「ガイア共和国」「レムリア」「ツキシマ党」「グングニル」という5つの勢力が,未知の物質「P」(PドロイドのPでもある)を巡って争いを繰り広げており,ミッションは同5勢力からの依頼であるという背景がある。正直なところ本作において何かしらのストーリーが動いていくのかどうかは不明だが,とにかくそういう設定なのだ。
で,この貢献度という数値は上記5勢力に対するミッションの達成度を意味する。何度もミッションをクリアして貢献度を稼いでいくことで,新たなOKEや武器などがアンロックされていく。最初は1体のOKEと,アサルトガンやビームガンといった基本的な主武装しか使えないが,貢献度が高まれば,次第に,ミサイルやロケットのランチャーといった副武装や高強度の装甲などが使えるようになる。つまり手駒(というか引き出し?)を増やすためにも,ミッションの攻略は必要なことなのだ。
なお本作は,「CHポータブルで遊べる要素は基本的に無料で提供する」という方針でサービスが行われている。そのため,チュートリアルやミッションでOKEや武装をアンロックすれば,それらをゲーム内通貨で購入できるし,1日1回挑める無料の「ガンガチャ」でOKEなどが手に入ったりする。個人的には,序盤からいろんなOKEと武装の組み合わせも試したかったため「有料でいいから全部使わせて」などと思ってしまったが,すべてを無料で楽しみたい人にとっては嬉しい点だろう。
さて,このミッション関連のシステムで個人的に気に入ったのが「緊急ミッション」だ。
通常,ミッションのリストには各勢力からの依頼がズラッと並んでいるのだが,たまにぽんっと,少し高めの獲得貢献度や金銭報酬,さらにアイテムの報酬までが設定された緊急ミッションが現れる。もちろん難度も少し高めだ。
この緊急ミッションはいつ出現するか分らないし,その内容もまちまち。さらに,ミッションリストに現れてから一定時間が経つと消えてしまう。
つまり,ある程度いろんなパターンのミッションをこなせるチームを作り上げて「ふんふんふーん♪」と適当にこなしながら別ウィンドウで麻雀ゲームに興じたりしていても,緊急ミッションが現れたらささっと「シミュレーション」(後述)を行って,当該のチームに最適な戦略・武装にパッと切り替えたりする,といった行動が必要になるのだ。
カルネージハートは,大会などのマイルストーンがなければ大抵はどっしりと腰を据えて,ある意味だらだらと(?)プレイするタイトルだが,この緊急ミッションでは,限られた時間の中で臨機応変なチーム作りを迫られる。この瞬発力を求められる感じが,なかなかに新鮮だ。
先ほど少し話に出たが,本作ではすべてのミッションで,あらかじめ対戦してその様子をチェックできる「シミュレーション」が可能になっている。
シミュレーションでは,弾薬は消費せず,被ダメージもすべて回復する。そのため,基本的にはシミュレーションを行って問題なく勝てることを確認してからミッションへ“出撃”するわけだが,数々のランダム要素を含む本作において,勝負はやはり水物だ。何度もシミュレーションして余裕でクリアできたはずのミッションが,ちょっとした地形の違い(シミュレーションと実戦ではマップが異なる)や,OKEがもともと持っている弾道計算ロジックなどのランダム要素によって,あっさり負けてしまうこともある。そうなると,報酬はもらえないわ,弾薬は減るわ,再出撃に時間がかかるわで本当に「もうやめよう。マジで」などど思うのだが,まぁそうならないようにハードやソフトウェアをキチンと練り込むのが本作の醍醐味,というわけなのだ。
【ブラウザ カルネージハート特有の要素】
トーナメント&その他コミュニケーション機能
ここまでは,なんだかんだといってOKEとソフトウェア強化に関連する部分をお伝えした。ここでは,ブラウザCHのブラウザCHたるゆえんとなっている要素について,順番に説明しておこう。
■トーナメント
トーナメントは事前登録式で,最大256チームがエントリー可能。エントリー締め切り直後から,登録不可通知がくるか,大会開始後に当該チームが敗退/優勝するまで,エントリーしたチームはロックされる。ハード/ソフト共に設計できなくなるという仕組みだ。
トーナメントが始まると,1回戦,2回戦という具合に,数分(20分ぐらい?)のインターバルでまとめて対戦結果が決定する。段階的に試合が進むので,みんなでチャットしながら「1回戦のあの試合のココがさ〜」といった形で盛り上がれるという案配だ。
対戦結果が出たら,個々の試合のリプレイを再生できる。対戦した両チームのどちらの視点からでも鑑賞可能で,気に入ったらそのままフレンド登録申請を送る,といったことも可能となっていた。
今のところ優勝者には報酬が用意されている程度だが,NHN Japanの考える“ショウ化”の施策がスタートすれば,プレイヤーはもちろん,非プレイヤーの観戦者を交えてワイワイと楽しめることだろう。勝敗のほかにも,ベストバウトなどを投票できる仕組みがあっても面白いかもしれない。
■掲示版
本作には,プレイヤーがスレッドを立てて投稿ができる「掲示版」が用意されている。
この掲示版はただ書き込みができるだけでなく,自らのチームのデータを添付することが可能。添付されたデータが公開の設定にされていれば,ソフトウェアのデータを誰でも閲覧することができる。ほかのプレイヤーのソフトウェアを参考にしてもいいし,場合によってはコピーして試してみてもいい。このような形で,ソフトウェアの共有が非常に容易になっているのは,なかなか嬉しい。これまでものすごく面倒だったから。
■フレンドリスト/ライバルリスト
トーナメントやミッションで遭遇した気になるプレイヤー,あるいはチャットなどで仲良くなった友達は,「フレンドリスト」に登録するといいだろう。面白いのは,ミッションへ出撃するときに,フレンドリストに登録したプレイヤーの機体を“借りること”ができる点だ。
もちろんチームの全機をフレンド機体にしてミッションに出撃することはできず,リーダー機を自らのOKEにしておく必要はあるし,経験値はもちろん戦いで活躍した機体に優先的に配分される。とはいえ,友達の機体にミッションを手伝ってもらえるのは非常にありがたい。また,フレンド機体は弾薬が減らず,ダメージ回復の時間なども不要になっているので,ここ一番の緊急ミッションに出撃するときになどには非常に重宝する機能だろう。
もう一つの「ライバルリスト」は,――抽出条件は不明だが――プレイヤーのライバルにふさわしいとされる,ほかのプレイヤーの一覧を提供してくれるもの。リストから気になる人を選んでライバル認定をすれば,当該プレイヤーのチームがミッションに出現する。ライバル認定は相手に通知されないため,「オレがオマエのライバル? なんだコノヤロウ」みたいなことにはならないので心配は無用だ。
意外にも初心者がプレイしやすい作り?
冒頭でも書いたが,本作は初心者でも,むしろ初心者に最適な作品なんじゃないかというのが,筆者がプレイしたあとの印象だ(「コアファン向け」という制作コンセプトを真っ向から否定しているようで恐縮だが)。
CHエクサなどでは正直言って少し冗長かなと感じていたチュートリアルはシンプルな形で備わっているし,ブラウザゲームらしくゲームの進行速度はおだやか。序盤はOKEや武装の選択肢が限られており,逆にこれが“プリセットのソフトウェアを少しずつカスタマイズしてなれていく”という初心者らしい遊び方を促してくれるように思える。
また,なんだかんだでリアルタイムチャットや掲示版の存在が大きい。非公式な掲示版やWikiを行脚してせっせと情報収集するという一種の課外活動は,カルネージハートシリーズの初心者にとっては非常に大きなハードルだったと思う。その点を――オンラインゲームとしては比較的オーソドックスな機能で――クリアできるというのは,多くのファンが想像していたことだとは思うが,「やはり」と思わずにはいられない。
最後に,それなりにカルネージハートシリーズをかじっている筆者としては,「ああ,やっぱり人がたくさんいるのはいいなぁ」と単純に思ってしまった。一人で遊べることは同シリーズの特徴というかメリットの一つではあると思うが,その結果を共有できる相手がいないというのは,なかなかさみしいものだ。
CHエクサなどをプレイする古参ファンの人も,「バトル画面がかっこよくなったらな〜(チラッ)」といったスタンスを保ちつつ,ぜひ本作が持つ魅力には目を向けてみてほしい。
……と,「プレイレポでなに言ってんだオマエ」という感じだが,だってそう思ったんだもん。
「ブラウザ カルネージハート Programming Soldier」公式サイト
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