レビュー
従来のシリーズと比較しても“攻め過ぎ”なギリギリのサービスシーン満載
白銀のカルと蒼空の女王
2002年発売の「蒼い海のトリスティア」に始まり,「蒼い空のネオスフィア」「暁のアマネカと蒼い巨神」と続いてきた,工画堂スタジオの「蒼い」シリーズ。その第4弾にして最新作が,本作「白銀のカルと蒼空の女王」だ。オリジナルとなるWindows版が発売されたのは2010年6月だが,2011年にPSPへと移植された。PSP版ではイベントCGや楽曲,オープニングムービーなどが新たに追加されている。
「白銀のカルと蒼空の女王」公式サイト
本作の主人公であるカル・ルスラン。先の統一戦争で滅亡した小国「ルスラン」の姫君だが,現在は古代パシアテ文明保存管理局のエージェントとして帝都で活動している。抜群の美貌とプロポーションの持ち主だ |
帝国ジュニアアカデミーに通う学生という一面も持つカル。しかし,アカデミーの中では決して成績がいいほうではないため,激務と学業との両立がうまくいかずに,いつも四苦八苦している |
本作は,これまでのシリーズ作品と世界を共有している。主人公カル・ルスランは,前作「暁のアマネカと蒼い巨神」に登場しているほか,「アマネカ」以前に発表された小説「白銀のカル Cal&Toara」でも主役を務めており,シリーズのファンにとってはおなじみのキャラクターといえるだろう。
巨大帝国が支配する世界で
祖国復興のために頑張る亡国の姫君
パシアテと呼ばれる古代の超文明が滅んでから,1万年が過ぎた世界。パシアテが残した超科学の断片は「Eテクノロジー」と呼ばれ,一部の国家だけが保有する,強力な魔法のようなものと認識されていた。
しかし,新興国家であるフルクラム帝国において,1人の天才技術者がEテクノロジーの一端の解析に成功したことで,歴史が動き始める。Eテクノロジーは体系化された技術となり,オリジナルより劣化はあるものの,大量生産さえも可能になった。これにより,他国を圧倒する力を持った帝国は,先の統一戦争において世界を事実上支配するに至った。
世界統一を果たしたフルクラム帝国は,次にすべてのEテクノロジーを管理下に置こうとする。低レベルのEテクは人々が生活に利用できるよう社会の発展のために普及させるが,高度のEテクは規制し,独占的に研究を進めていこうというわけだ。この高度Eテクを管理するために作られた組織が,「古代パシアテ文明保存管理局」,通称「ライブラリ」。その詳細な活動内容は,帝国でも一部の関係者しか知りえない機密情報とされている。
統一戦争では多くの国家が帝国に膝を屈し,いくつかの国家は完全に滅ぼされた。戦争終結から15年が過ぎた現在でも,帝国の強引さ,傲慢さに対して不満を唱える者は多い。帝国の支配に反抗しようとするテロリストも後を絶たず,あちこちで火種が燻っている状態だ。
こうした反帝国テロリストは,帝国の手から漏れた高度Eテクを利用することがある。そんなとき矢面に立つのがライブラリだ。ライブラリは,軍や警察にも許されていない高度Eテクを駆使し,「違法」なEテクを使うテロリストに対抗していく組織という面も持っている。
本作の主人公カル・ルスランは,統一戦争で滅びた「ルスラン王国」の姫君だ。戦後,祖国を失った彼女はその類稀なる戦闘力を買われ,将来的な国の復興を条件にライブラリのエージェントとして活動することになった。かくしてカルは,王国遺臣達の期待とサポートを一身に受けつつ,学生とエージェントという二足のわらじを履き,日夜奮闘しているのである。
本編ストーリーは,海軍高官の連続殺害事件で幕を開ける。犯人が用いたのは,ライブラリが把握していない高性能の起動兵と,簡単に携帯できるサイズの小型熱反応爆弾。いずれも通常のテロリストが使う兵器とは一線を画す,高度なEテクであった。現在は帝都万博が開催中であり,さらには平和条約会議の開催も控えている,帝国にとって非常にデリケートな時期。さっそくライブラリが事件の調査に当たることになった。
同僚エージェントの殺害,財閥会長の誘拐,空中王国ネオスフィアからの留学生の護衛,謎の人型兵器「ガラクシア」。捜査の過程でさまざまな問題が発生し,それらがやがて1本の糸として縒り合わせられていく。一連の事件の背後に隠された恐るべき計画とは……? というのが本作の物語となる。
メインのシステムはコマンド選択式のアドベンチャー
「カードバトルパート」「探索パート」などの特殊要素も
本作のメインパートは,コマンド選択式のアドベンチャーゲーム。「話す」「調べる」「移動」などのコマンドを選ぶことで,物語が進行していくのだ。もっとも,基本的には一通り選択肢を試せば先に進むようになっているので,進行に詰まる心配はないだろう。ごく稀にゲームオーバーに直結する選択肢もあるが,すぐやり直せるようになっているので安心だ。
ただし,ストーリーに組み込まれている「電話番号探し」は,いくらか難度が高い。ストーリー中に幾度か,「電話をかける」コマンドで正しい6桁の電話番号を入力しない限り,先に進まない場面があるのだ。もちろん,手がかりは会話やアイテムに隠されているから,少し考えれば正解は導き出せるはずだ。頭を絞ろう。
基本は「話す」と「調べる」。これを繰り返していけば,自然と物語が展開していく |
「話す」や「調べる」を選ぶと,次の選択肢が現れるので,これをしらみつぶしにしていこう |
「電話をかける」コマンドは,要所要所で出現する。リストから相手を選ぶか,番号を直接入力しよう |
時にはさまざまな手がかりをもとに,6桁の電話番号を推理して,そこに電話をかける必要もある |
メインパート以外には「カードバトルパート」「探索パート」という2種類のサブパートがある。
カードバトルパートは,敵と戦闘になった際に移行するパート。あらかじめ編成しておいたデッキから,1ターンにつき2枚ずつカードをセットしていく。カードの組み合わせでバトルの勝敗,与えられるダメージが変化し,先に相手の体力を0にすれば勝利となる。
カードには「攻撃カード」「防御カード」「回避カード」「技カード」などの種類があり,「攻撃」は「回避」に強い,「防御」は「攻撃」に強いなど,カード間に相性が設定されている。相手が何を出してくるかを予想し,それに勝てるカードを出していくわけだ。
だが実際のところ,相手のカードを読む有効な手段はほとんどないうえ,デッキをちゃんと編成しておきさえすれば力押しでなんとか勝ててしまうので,それほど頭を使う必要はない。もし負けても,すぐコンティニューが可能だ。ゲーム性はあまりなく,単なる障害ポイントにしかなっていないのが少し残念ではある。
相手の体力を0にできれば勝利だ。勝利するたびに,新たなカードを2枚入手できる |
強いカードを入手したら,次のバトルまでに編成画面でデッキに組み込んでおくべし |
一方の「探索パート」は,いわゆる“脱出ゲーム”の要領。画面の怪しいと思われる部分をカーソルでクリックし,手がかりやアイテムを探し出して,脱出するための方法を見つけ出していくのである。こちらも,それほど難度が高いというわけではない。気になる部分を一つずつクリックしていけば,道が見えてくるはずだ。
重要なものにカーソルを合わせると,カーソルのアイコンに「!」がつく。変化を見逃さないように |
アイテムを発見したら,それを選択して,画面内をクリックしてみよう。それまでとは違う反応が返ってくる |
ますます広がりと深みを見せる
「蒼いシリーズ」の世界観
全4章から成る物語は,かなりの密度とボリュームを誇る。重厚なストーリーと軽妙な会話で,帝国の統一戦争によって生まれた世界の歪みがはっきりと語られており,これまでの世界にさらに深みと広がりが加えられた。システム的なギミックは多いが,物語のテンポがそれで阻害されたりすることはない。シリーズの魅力的な世界観にたっぷり没入できるはずだ。
もちろん,本作だけでちゃんと完結しているので,シリーズ未体験の人がいきなりプレイしても問題はない。ここから入って,ほかのシリーズ作品に手を広げていくのも当然アリだろう。
そして忘れてはいけないのが,物語を彩る可愛い女の子達と,彼女達のあざといまでのサービスイベントだ。シリーズのこれまでの作品と比較しても,かなりギリギリの勝負をしてきている。CEROレーティングがCからDへ引き上げられただけのことはある攻めっぷりで,これだけを目当てに購入しても,後悔はしないはずだ。
「白銀のカルと蒼空の女王」公式サイト
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