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AMD,「Excavator」コア採用&新クーラー同梱のAthlon X4などデスクトップPC向け新APUとCPU計3製品を発表
AMDは,2016年1月に開かれたCES 2016に合わせて,デスクトップPC向けAPUの最上位モデルとなる「A10-7890K」を第1四半期にリリースすることや,静音性を高めた新型CPUクーラー「Wraith Cooler」(レイスクーラー)を投入することを予告しているが(関連記事),今回の発表は,そのアップデートといっていい内容である。本稿では,新APU&CPUの概要を中心にレポートしたい。
デスクトップPC向けでは初の「Excavator」コア搭載CPUが登場
まずは新APU&CPUの話題から始めよう。新製品の主な仕様をまとめた表を以下に掲載しておくが,注目すべき点は,Athlon X4 845のCPUコアが,「Excavator」(エクスカヴェータ)コアとなっているところだ。
なお,表には比較のため,既存APUである「A10-7870K」および「A6-7400K」のスペックも合わせて掲載している。
「Carrizo」(関連記事)で導入されたExcavatorコアは,ノートPC向けAPUやビジネス市場向けAPUである「AMD PRO」,あるいは組み込み向けプロセッサである「Embedded R-Series」で利用されていたものだが,これまではデスクトップPC向けプロセッサで採用されたことはなかった。そのExcavatorコアを採用する初のデスクトップPC向け製品が,このAthlon X4 845なのである。
Bulldozerコア系としては最終形となるExcavatorは,既存のSteamrollerコアと比べてL1データキャッシュを32KBに倍増したほか,分岐予測メカニズムのキャッシュであるBranch Target Buffer(BTB)を1.5倍に増量するといった改良により,クロックあたりの命令実行数(IPC:Instruction Per Clock)をSteamroller比で4〜15%向上したCPUコアとなっている。つまり,同クロックならわずかに性能が向上しているというわけだ。
もっとも,CPUコアがExcavatorであるという点を除くと,Athlon X4 845は,有り体にいってあまり特筆すべき点のない製品だ。Carrizoの統合型GPUを無効化してデスクトップPC向けに転用したためか,PCI Expressが8レーンしかサポートされていないので,ゲーム用途のPCに使うには厳しいといわざるを得ない。
TDPも65Wと,4コアCPUとしては低くないどころかむしろ高いほうであり,どういったユーザーに需要があるのか,今ひとつ読めない製品のような気もする。もしかすると,Carrizoの中でノートPCに使うにはあまり特性が良くないものを,デスクトップPC向けに転用した製品なのだろうか。強いていうなら「Excavatorコアをデスクトップで使ってみたいAMDファン向け」だろうか。
新型APUも見てみよう。A10-7860Kは,Godavari世代のアンロック版APUで,
最後のA6-7470Kだが,現行のエントリー向けアンロック版APU「A6-7400K」の高クロックバージョンといった製品だ。なお,AMDはこのAPUがどの世代かを明言していないのだが,単なる高クロックモデルであるなら,Godavari世代のままだろう。
CPUコアの動作クロックが引き上げられているだけでなく,GPU動作クロックもA6-7400Kの756MHzに対して800MHzにまで引き上げられている。それでいてTDPは,A6-7400Kと同じ65Wに収めているのが特徴といえよう。
Wraith Coolerだけでなく別タイプの新型クーラーも登場
Wraith Coolerが付属する製品として名前が挙がっているのは,今のところAM3+プラットフォーム向けCPU「FX-8370」の新しい製品ボックスだけである。そのほかの製品にも広げていくプランはあるようだが,明言されているのこの製品だけだ。
一方で,Wraith Cooler並みの静音性を備えるという赤い新型クーラー「95W Quiet Thermal Solution」の存在も今回の発表でアピールされていた。正確なサイズは公表されていないが,写真を見る限りでは,Wraith Coolerよりも若干小さいように思える。Wraith Coolerではサイズが大きすぎて,APU用のマザーボードには装着が困難なものもあるだろうから,そうしたマザーボードと組み合わせる可能性が高い製品には,95W Quiet Thermal Solutionを付属させるということだろうか。
この新型クーラーが付属するのは,今回発表の新製品となるA10-7860KとAthlon X4 845の2製品。また,すでに発売済みのA8-7670Kや「A8-7650K」,そして「Athlon X4 870K」
プラットフォームのアップデートについては,まずAM3+およびFM2+プラットフォーム対応マザーボードの最新事情が明らかになった。それによると,Intelプラットフォームでは珍しくなくなりつつあるUSB 3.0 Type-AやType-Cポート,SSD接続用のM.2スロットといった新しいインタフェースを搭載するAM3+やFM2+対応マザーボード製品が,メーカー各社から登場しており,さらに今後も新製品が登場するということだ。
FM2+は登場から3年め,AM3+に至っては登場からすでに5年めとなっており,新製品として登場する数も少なくなりつつある。数少ない対応マザーボードが,陳腐化したインタフェースしか搭載していないとなると,プラットフォーム全体の魅力も減ってしまう。
そこで,新APUとCPUを投入するのと合わせて,新しいインタフェースを搭載したマザーボードも販売されていますよということをアピールして,両プラットフォームへのテコ入れを図ろうというのだろう。
とはいえ,やはり2016年の本命は,現在3つに分かれているAMDのデスクトップPC向けプラットフォームを1つに統合する「AM4」だ。今回の発表では,CES 2016に合わせて発表した情報からアップデートはなかったが,新世代マイクロアーキテクチャである「Zen」採用のCPU「Summit Ridge」(サミットリッジ,開発コードネーム)と,Excavatorコアを採用するAPU「Bristol Ridge」(ブリストルリッジ,同)を2016年中にAM4プラットフォーム向けとして市場投入することが,あらためて説明された。
AMDは今回の発表で,新製品を含めたAMDプラットフォームの価格対スペック比が高いことを強調していた。競合の製品で揃えるよりも,AMDプラットフォームなら低コストで快適な性能が得られますよというわけだ。本命であるSummit RidgeとAM4が登場するまでの間,新プロセッサや新型クーラーで話題をつないでいこうというのが,発表の狙いといったところだろうか。
AMD公式Webサイト
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AMD A-Series(Kaveri)
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