テストレポート
国内メーカーならではのチューニングに期待の「AQUOS SERIE」。KDDI 2014夏モデルスマートフォンテストレポート(後編)
4Gamer恒例のスマートフォン新製品テストレポートでは,製品版に近い状態にあった以下の4製品を選び,特徴の解説とベンチマークテストを実施している。
- isai FL LGL24:2014年7月下旬発売予定
- Xperia ZL2 SOL25:2014年5月下旬発売予定
- GALAXY S5 SCL23:2014年5月15日発売予定
- AQUOS SERIE SHL25:2014年6月下旬発売予定
5月9日0時に掲載済みの前編では,「isai FL LGL24」と「Xperia ZL2 SOL25」の2製品を取り上げた。というわけで,後編で取り上げるのは残る2製品,「GALAXY S5 SCL23」と「AQUOS SERIE SHL25」だ。
なお本稿では,追加でもう1製品,高い堅牢性が謳われる京セラ製スマートフォン「TORQUE G01」をざっと触ってみた印象もお伝えしてみたいと思う。
正当進化の中に目を惹く特徴を持つ「isai FL」&「Xperia ZL2」。KDDI 2014夏モデルスマートフォンをじっくり触ってきた(前編)
GALAXY S5 SCL23
Samsung Electronics(以下,Samsung)の「GALAXY S」シリーズといえば,今までは「その時点で最高スペックを擁するAndroidスマートフォン」といった印象が強かったのではないだろうか。ところが,2014年夏モデルで登場したGALAXY S5 SCL23(以下,S5)はそうでなく,1080×1920ドット(以下,フルHD解像度)というディスプレイ解像度では同1440×2560ドットのisai FL LGL24,2GBというメインメモリ容量では同3GBというXperia ZL2 SOL25の後塵を拝している(関連記事)。
採用されるSoC(System-on-a-Chip)の「Snapdragon 801 MSM8974AC」は,CPUコアの動作クロックこそ2.5GHzと高いものの,動作の快適さで競合製品に圧倒的な違いを付けられるほどではない。バッテリー容量は2800mAhで,今回の新製品ではむしろ容量が少ないほうだ。
ただし,S5のスペックが低いわけではない。単に,「2014年夏モデルの中に置いてみると,最高のスペックではなくなった」というだけのことだ。熾烈なスマートフォン開発競争の中では,Androidスマートフォンの世界王者Samsungといえども安泰ではいられない,ということだろうか。
本体サイズは約73
本体背面。アウトカメラの下にあるのが,後述する静脈認証用のカメラで,LEDライトと一体化されている |
オプションのクレードルにセットしたところ。接続すると背面スピーカーの音抜けがよくなるデザインだそうだ |
外観はこれまでのGALAXYシリーズを踏襲しており,とくにハードウェアボタンを前面下側に備えた見た目は,一目でGALAXYと分かるものだ。背面はラウンドフォルムで持ちやすく,カバーパネルの表面に凹凸のある形状を採用したことで,手が滑りにくくなっている。すっかりこなれたそのデザインは,特筆すべきものがないようにも見えるが,それだけに,IPX5/7の防塵およびIP6Xの防塵仕様を獲得したのは重要なポイントといえよう。外観や,カバーパネルの交換ギミックをそのままに,防塵&防水性能を獲得したのは立派だ。
本体上側面。ヘッドフォン端子とノイズキャンセリング用マイクがある |
本体下側面。USB 3.0対応のMicro-B端子は防水キャップ付きだ |
本体左側面。写真では目立たないが,本体上寄りの位置に音量調節ボタンがある |
本体右側面。クレードル接点と目立たないデザインの[電源/スリープ]ボタンがある |
もう1つ(というか2つ),使い勝手の点で見逃せないのが,静脈認証と指紋認証という,バイオメトリクス認証機能の搭載である。指紋認証自体は富士通製スマートフォンで標準機能なので,珍しいものではなく,もっと言えばiPhone 5sの後追いだが,静脈認証機能も組み合わせてきたのがSamsung流というところ。
本体背面の静脈認証機能はLEDライトと専用のカメラで実現されている。一方,前面にある指紋センサーは,ホームボタンと一体化されており,見た目ではそこにセンサーがあるとは気付かない。
指紋認証と静脈認証は併用できるので,「指紋認証に失敗しやすいから,静脈認証をロック解除に使う」といったことが可能。ユーザーにとって使いやすいロック解除方法を選べるのは,iPhone 5sに対する利点といっていいだろう。
静脈認証機能のある部分は少しくぼんでおり,ここに指先を当てるとスキャンが始まる仕様 |
ホームボタンには指紋認証センサーが組み込まれているが,見た目にはまったく分からない |
ちなみに,試用機はまだチューニングが済んでいないのか,動作に少しもたつきがあることが気になった。説明員によると,製品版では改善されているとのことなので期待したい。
さて,ベンチマークテストだが,前編同様に「3DMark」によるグラフィックス性能計測と,連射測定アプリ「ぺしぺしIkina」による連打応答性計測を行っている。
まず3DMarkだが,これが意外にも振るわない。2013年後半以降のハイエンドスマートフォンなら,「Ice Storm」プリセットは測定上限の「Ma
少なくとも,アプリの起動やホームアプリのレスポンスはとても快適なので,これがS5の実力を発揮している結果とは思えない。ここも製品版では改良されていることを期待しよう。
●GALAXY S5 SCL23の主なスペック
- メーカー:Samsung Electronics
- OS:Android 4.4(KitKat)
- ディスプレイパネル:5.1インチ有機EL,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「MSM8974AC」(クアッドCPUコア,最大CPU動作クロック2.5GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1600万画素
- インカメラ:有効画素数約210万画素
- バッテリー容量:2800mAh
- SIM:microSIM
- LTE対応:受信時最大150Mbps
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 連続通話/3G待受時間/LTE待受時間:約1170分/約480時間/約450時間
- 本体サイズ:約73(W)×142(D)×8.3(H)mm,最厚部 約9.8mm
- 本体重量:約147g
- 本体カラー:shimmery WHITE,charcoal BLACK,champagne PINK
- 主な対応サービス&機能:Eメール(@ezweb.ne.jp),SMS,グローバルパスポート(LTE/GSM/UMTS),ワンセグ,おサイフケータイ,NFC,Bluetooth 4.0,Wi-Fiテザリング(最大10台),キャリアアグリゲーション,WiMAX 2+,WIN HIGH SPEED,緊急速報メール,防水(IPX5/7),防塵(IP6X)
AQUOS SERIE SHL25
シャープ製スマートフォンといえば,長らく「AQUOS PHONE」という名称が使われていたが,今夏の新製品からそれが,同社製液晶テレビと同じ「AQUOS」に変更された。テレビのブランド名と揃ったわけである。
そんな新AQUOSスマートフォンの新製品となる「AQUOS SERIE SHL25」(アクオス セリエ SHL25,以下,SERIE)は,2014年春モデルで登場した「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」と同様の,「3辺狭額縁仕様」を継承した製品となっている。ベゼル(額縁)がないようにも見える外観は,今回も魅力的だ。
ベゼル部分やボタン部も,背面と同じ色で見栄えがよくなった。ちなみに前面右下にあるのはタッチ式の音量調節ボタンで,これもAQUOSならではの特徴 |
背面のデザインはごくオーソドックス。大きさのわりには手に馴染みやすく,ホールドしやすい形状となっている |
搭載するIGZO液晶パネルは5.2インチサイズのフルHD解像度で,本体サイズも約71
だが,背面全体が緩やかなカーブを描いているisai FL LGL24と異なり,
ちなみに,外観からは分かりにくいが,ボディを握るだけでロックを解除できる「マジックグリップ」機能も搭載されている。
OSのAndroid 4.4(KitKat)に施された改良部分については,Android 4.3(Jelly Bean)の頃と比べて大きな変更はないという回答が返ってきた。説明員によれば「レスポンス良くする方向で調整中」とのことだったが,試用機でもキビキビとした動作を示していて好感が持てたことは述べておきたい。
なお,搭載SoCはQualcomm製の「Snapdragon 801 MSM8974AB」なので,Xperia ZL2と同じものと思われ,性能面での不安はなさそうだ。
ちなみにSERIEではゲーム向けのチューニングも施してあるそうで,「パズル&ドラゴンズ」を中心に,人気のスマートフォン向けゲームで要求される操作,具体的にはドラッグなどに注力してレスポンスを改良している最中なのだという。発売時点ではドラッグだけでなく,タップの連打にも追従できるようにしたいと説明員は述べていた。実際,シャープの2013年モデルも,発表時の試用機と製品版を比べると,タッチとドラッグの応答性が大幅に改善されていたことを確認している。
日本のスマホゲーマーをきちんと意識して,それを製品開発にも反映しているのあたりは,もっと評価されてもいいのではないだろうか。
なお,ぺしぺしIkinaの結果は,93〜96タップになるよう連射して「79」と,もう少し伸びてもよさそうなスコアになった。飽和は9タップめ,18タップめ,45タップめ,64タップめで確認している。
●AQUOS SERIE SHL25の主なスペック
- メーカー:シャープ
- OS:Android 4.4(KitKat)
- ディスプレイパネル:5.2インチIGZO,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「MSM8974AB」(クアッドCPUコア,最大CPU動作クロック2.3GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1310万画素
- インカメラ:有効画素数約210万画素
- バッテリー容量:3150mAh
- SIMサイズ:未公開
- LTE対応:受信時最大150Mbps
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 連続通話/3G待受時間/LTE待受時間:約1390分/約980時間/約830時間
- 本体サイズ:約71(W)×134(D)×9.9(H)mm,最厚部 約10.2mm
- 本体重量:約141g
- 本体カラー:ピンク,ホワイト,ネイビー
- 主な対応サービス&機能:Eメール(@ezweb.ne.jp),SMS,グローバルパスポート(LTE/GSM/UMTS),ワンセグ,フルセグ(アンテナ内蔵),おサイフケータイ,NFC,赤外線通信,Bluetooth 4.0,Wi-Fiテザリング(最大10台),キャリアアグリゲーション,WiMAX 2+,WIN HIGH SPEED,緊急速報メール,防水
米軍規格準拠のタフネススマホ
TORQUE G01
さて,最後は追加でお伝えすると冒頭で述べた京セラ製のTORQUE G01(トルク G01)である。スペックは1年以上前の製品程度だが,そのビジュアルが琴線に触れるゲーマーもいるであろうということで,あえてお伝えしようと思う次第だ。
TORQUE G01は,アメリカ国防総省が定める耐久性に関する規格「MIL-STD-810G」に準拠した堅牢性を備えるのが最大の特徴。防水や防塵性はもちろんのこと,衝撃や振動,圧力,日射や温度,湿度に塩水などなど,聞いているだけでも胸が熱くなる耐久性を誇るという。
ホームボタンやメニューボタン,音量調節ボタンなどはすべてハードウェアで,さらに本機独自のボタンやハンズフリー通話用のボタンも備えている。
また,画面の解像度も720×1280ドットと,フルHD解像度が当たり前の昨今では物足りなさを感じざるを得ない。もちろん,そういうスペックを追求した製品ではないので当然ではあるのだが。
KDDIの2014年夏モデルの特徴であるLTEのキャリアアグリゲーションやWiMAX 2+にも対応していないので,スペック面でお勧めし難いのが残念なところ。しかし,2台め以降のスマートフォンとしてなら,こういう製品を選ぶのもアリではなかろうか。
●TORQUE G01の主なスペック
- メーカー:京セラ
- OS:Android 4.4(KitKat)
- ディスプレイパネル:4.5インチIPS,解像度720×1280ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 400 MSM8928」(クアッドCPUコア,最大CPU動作クロック1.4GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量16GB)
- アウトカメラ:有効画素数約800万画素
- インカメラ:有効画素数約200万画素
- バッテリー容量:3000mAh
- SIMサイズ:未公開
- LTE対応:受信時最大150Mbps
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 連続通話/3G待受時間/LTE待受時間:検討中
- 本体サイズ:約69(W)×136(D)×13.5(H)mm
- 本体重量:約185g
- 本体カラー:レッド,ブラック
- 主な対応サービス&機能:Eメール(@ezweb.ne.jp),SMS,グローバルパスポート(GSM/UMTS),おサイフケータイ,NFC,Bluetooth 4.0,Wi-Fiテザリング(最大10台),WIN HIGH SPEED,緊急速報メール,防水,防塵