インタビュー
「エクストルーパーズ」プロデューサーの小嶋慎太郎氏にインタビュー。シューティングゲームではなく,あくまでも“アクションゲーム”として制作した理由とは?
もちろん,アクションゲームとしての完成度も高く,シンプルでありながらもツボを押さえたアクションの触り心地は,“カプコンテイスト”が満載といったところ。
今回は,本作のプロデューサーであるカプコンの小嶋慎太郎氏に,「エクストルーパーズ」がどのようにして生まれ,“マンガチック爽快アクション”になったのか,じっくりと話を聞いてきた。
「エクストルーパーズ」公式サイト
「エクストルーパーズ」は「テンポ良く,撃って気持ち良くて,避けてカッコイイ」を目指したアクションゲーム
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,「エクストルーパーズ」を制作することになったのは,どのようなことがきっかけだったかを教えてください。
「エクストルーパーズ」はシューティングゲームではなく,「テンポ良く,撃って気持ち良くて,避けてカッコイイ」アクションゲームとして作っているんです。
そもそもの企画のスタートは,「お気軽なシューターができないかな?」という考えでした。ただ,“撃つ”タイプのシューティングゲームは日本でも数多く出ていますけど,難しいジャンルというイメージがあってハードルが高いですよね。個人的にそういうゲームも好きなんですけど,そういう難しそうって雰囲気を払拭したいなと。
4Gamer:
キャラクターを動かしながら敵に狙いをつける,といった複数の操作を同時に要求されるものも多いですから,シューティングと聞いただけで「難しそう」と感じる人もいるでしょうね。
小嶋氏:
僕らはもともと,「エクストルーパーズ」を日本のゲームユーザー向けに作りたいと考えていました。ただ,見た目が撃つゲームではあるので,ユーザーさんに「FPSとかTPSなのか?」と勘違いされないように,“爽快アクション”と言い続けたんですよ。
4Gamer:
確かに,「シューティングゲーム」と「アクションゲーム」のどちらを謳うかで受けとられ方も変わってきますし,“アクションゲーム”のほうが受け入れられやすいイメージがあると思います。
小嶋氏:
“シューター的な要素もあるアクションゲーム”というスタイルに持っていって,その考え方で作ったらどうなるか実際に試してみたら,テンポが良くて「シューターを突き詰めていくより気持ちがいいな」と。
狙うことよりもバンバン撃って気持ち良くなるほうに集中してほしいなということで,向きが合っていれば,自動的に照準をある程度補正してターゲットに弾が当たるようにして,複数の敵の中から狙いたいターゲットを撃てるように,ロックオンシステムも用意しました。
攻撃して気持ち良いアクションゲームというのを意識したので,ここは割り切っていますね。
4Gamer:
「エクストルーパーズ」のマンガチックな演出というのは,どういった経緯で導入されたんでしょうか。
マンガチックな演出は,先の「テンポ良く,撃って気持ち良くて,避けてカッコイイ」感じを追求する過程で生まれたんです。
開発中,カプコンが新規に作るアクションゲームとしては「何かが足りないな」と思っていた時期がありました。いろいろとアイデア出しをした中で,「マンガチックな表現を入れたらいいんじゃない?」という意見が出てきたんです。
試しにステップを踏んだときに集中線を出してみたら「これは面白い」となって,現在の「マンガチック爽快アクション」に向かっていったんです。
ただ,それだけだと,ほかにもなくはない表現ですよね。なので「やるなら徹底的にやっちゃおう」ということで,「ドドド」とか「ガッ!」とか,擬音語も含めて徹底的にマンガチックな演出を入れていったんです。
4Gamer:
イベントシーンのマンガチックな演出も,その流れで生まれたんですか?
小嶋氏:
どちらかと言うと,マンガチックにした理由は,工数を減らせるという打算的な意味合いのほうが強かったんですよ。……結果的には,そんなことにはならなかったんですけど(笑)。
まず,「エクストルーパーズ」の物語にはかなりボリュームがあって,各エピソードの間には,すべてイベントシーンが入ります。イベントシーンを普通に作ると,かなり時間がかかってしまうので,それをなんとかできないかと思っていたんです。
4Gamer:
“本来”は,どのようにして工数を減らすつもりだったんですか?
小嶋氏:
イベントシーンは,映画「スパイダーマン」のオープニングで,マンガから実写に変わる感じがすごくカッコ良かった,というのがヒントになっています。
基本的に止め絵のシーンで構成して,カメラがコマを追っていくという形で,キャラクターを動かすのは一部のコマだけという話だったんですよ。そうすれば,キャラクターに動きを付けるのは通常のイベントシーンより少なくて済みますから,演出面を損なうことなく,全体の作業量を減らせるだろうと。
4Gamer:
なるほど。
小嶋氏:
それなのに,担当のデザイナーが手を加えたものを見るたびに,動いているシーンが増えているんですよ。最終的に「全部動したいのでやらせてください」ってなったときには,さすがに「マジか!」って思いましたけど(笑)。
4Gamer:
まあ,プロデューサーとしてはそう思いますよね(笑)。
そうは言いながらも,マンガ的な表現をとことん増やしていったことで,タイトルのキャッチコピーに入れたほうがいいと感じられるほどの仕上がりになりました。
マンガをめくるときのテンポ感や,コマをブチ抜いて「ドーン」と文字がある感じとか,マンガ好きには当たり前のように目に焼き付いているような表現を,ゲーム上で本気で表現しているので,ぜひ見てほしいですね。
4Gamer:
キャラクターがコマをまたいだり,ページの裏から出てきたりといった,マンガっぽいネタも盛り込まれていて,面白かったです。
小嶋氏:
あのイベントシーンは,人がマンガを読んでいるときの目線の流れをそのまま表現したかったので,コマを切り替えるんじゃなくて“一枚絵”で作っているんですよ。マンガのページ全体のモデルがあって,カメラが動いた先のコマで,キャラクターが動いているという,えらい大変なことを実はしてます。発売日に間に合って良かったです(笑)。
4Gamer:
……本当に間に合って良かったですね(笑)。
ちなみに,ストーリーのボリュームはどのくらいあるのでしょうか。
小嶋氏:
ストーリーを進めることだけで言えば,だいたい18時間くらいでクリアできるでしょう。ただ,武器の開発や強化要素もかなりボリュームがあるので,VRミッションでの素材集めなどをやり始めたら,相当長いこと遊べると思います。
「幅広い層の人に遊んでほしい」という願いから,あえてPS3と3DSという特殊なマルチプラットフォームに
4Gamer:
あらためてお聞きしますが,「エクストルーパーズ」の開発がスタートした時期はいつ頃だったんですか?
小嶋氏:
2年くらい前です。具体的にプロジェクトとして動き出したのはその半年後くらいで,そこからダーッと作り始めた感じですね。開発スタッフは,ピーク時で80人くらいでした。
4Gamer:
PS3と3DSという,あまり例のないマルチプラットフォームの選択となったのは,どのような理由からなのでしょうか。素人考えだと,据置機と携帯機の両方で出すなら,PS3とPS Vita/PSPを選んだほうが開発しやすそうに思えるのですが。
小嶋氏:
マルチプラットフォームは,開発初期からやりたいと考えていて,いろいろと検討もしました。最終的には,幅広い層の人に遊んでほしいという理由から,あえてユーザー層の異なるPS3と3DSを選びました。
4Gamer:
据置機と携帯機で,所有ハードがかぶりにくいところを狙ったということですか。
「エクストルーパーズ」は,SF・マンガ・アニメが好きな方に向けた作品ですが,中学生くらいの年齢層でも楽しめる内容になっています。ただ,若いユーザー層におけるPS3の普及率は高くはないですから,そういった方々には,3DSで楽しんでほしいということですね。
PS3と3DSを両方持っているという人であれば,高解像度の画面でじっくり遊びたいならPS3版,移動中とかちょっとした時間にプレイしたいなら3DS版というように,プレイスタイルで選んでもらえたらなと思います。
4Gamer:
PS3版と3DS版で,内容に差はありますか?
小嶋氏:
画面の構成やボタンの配置,多人数プレイが3DS版ではローカルプレイ,PS3版ではオンラインプレイになるといった違いはありますけど,根本の部分は同じです。
PS3版は,高解像度の大画面で映えるようにがっつりと手を入れていますから,グラフィックスにも差はあります。ただ,3DS版でも,携帯機の画面サイズでも綺麗に見えるように表現を工夫しているので,実機で画面を見たら見劣りする印象は受けにくいと思いますよ。
4Gamer:
そういえば3DS版は,カットインや擬音語などマンガチックな演出が浮かび上がって見えますよね。裸眼立体視と相性がいいと感じました。
小嶋氏:
マンガチックな表現だと,奥行きの表現が“書き割り”のように感じられますから,3D立体視で観ると,「あ,マンガが飛び出ている!」という感覚が味わえて面白いですよね。
4Gamer:
「エクストルーパーズ」のシナリオは,ストーリーライダーズの佐藤 大さんが担当されています。佐藤さんがプロジェクトに参加したのは,どのタイミングからだったのでしょうか。
小嶋氏:
珍しいパターンなんですけど,「この方向でいこう」と決めた初期段階から,ずっと一緒に作っていただいています。
佐藤さんは,ゲームの脚本やシリーズ構成の経験も豊富なのはもちろんですが,「ロスト プラネット」シリーズなどカプコンのタイトルを遊んでくださっていて,海外のタイトルも数多くプレイしているんです。ゲームに非常に詳しいので,とてもやりやすかったですね。
ゲームの中には,「これがこうつながるんだ!」という,佐藤さんらしいネタ振りがたくさんあるので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
ストーリーの見どころを教えてもらえますか?
小嶋氏:
ひと言でいえば「アツい」ストーリーです。序盤は学園モノのノリで楽しげな感じなのですが,だんだんヒロインのティキを中心に,シリアスな話になっていく流れがまたアツいんです。とはいえ,「ちょっとしんどいことがあっても,『エクストルーパーズ』を遊んだらすっきり爽快!」となれるようなゲームを目指したので,暗い話ではないですよ。
「友情」「熱血」「裏切り」そして「恋」というように,さまざまなテーマが描かれています。元気なブレンが「俺達はどうしたらいいんだろう?」「自分達がやらなくちゃいけないことは何なのか」といった葛藤をして,悩みつつも前に進んでいく感じですね。
4Gamer:
「ロスト プラネット」シリーズと世界観を共有するというのは,いつ頃から考えていたのでしょうか。
「ロスト プラネット」の世界観を土台にすることは,開発初期から考えていました。ただ,そのテイストを使いはしても,内容はガラッと変えようと思っていたんです。
「ロスト プラネット」を作っていた竹内※に相談してみたら,「面白かったらいいんじゃない?」と快諾してもらえて,話もスムーズに進みましたね。
※カプコン 常務執行役員 CS制作管理統括の竹内 潤氏。「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」から「ロスト プラネット 2」まで,シリーズのプロデューサーを担当。
4Gamer:
開発としては,2013年初頭に発売予定の「ロスト プラネット 3」とほぼ同時進行になりましたが,お互いを意識して,連動した部分などはあるのでしょうか。
小嶋氏:
それはないですね。意識してしまうと,お互いそれに引きずられてしまうじゃないですか。同じ設定を用いているからといって,別にゲームの内容がリンクする必要はないので,気付いた人だけニヤリとしてくれればいいかな,というレベルに留めています。
4Gamer:
スピンオフではなく,あくまで新規タイトルとして見てほしいということでしょうか。
小嶋氏:
ええ。「エクストルーパーズ」は,新規タイトルとして戦えるだけのポテンシャルを持っていると考えているからこそ,タイトルのどこにも「ロスト プラネット」という冠を付けていませんし,内容を説明するときにも「ロスト プラネット」の名前を使っていません。
4Gamer:
ちなみに,時代設定は「ロスト プラネット」のシリーズでいうと,どの時代に相当するのでしょうか。
小嶋氏:
開発初期は,「ロスト プラネット 2」の10〜20年くらいあとのイメージでしたが,そのあとはあまり「ロスト プラネット」シリーズにとらわれず作っていますね。
4Gamer:
そういえば,ギンギラはVS(バイタルスーツ)なのに人格を持っていて,しゃべりますよね。
小嶋氏:
ギンギラはVSなので,基本的にはパイロットが搭乗して操作するという設定なのですが,自律でもある程度は動けるという,次世代型AIを搭載しています。
ギンギラのAIは,物語が進むとパイロットの影響を受けてしゃべり方が変わってきて,「ブレンならこういうことするでしょ? もう止めませんよ」みたいなことを言うようになるんです。いわば「ナイトライダー」のマイケル・ナイトとナイト2000みたいな関係なんですよ(笑)。
シングルプレイ/マルチプレイのデータは共有。友達とワイワイ遊べる感覚を大切に
4Gamer:
「エクストルーパーズ」には,シングルプレイとマルチプレイがありますよね。それぞれのモードは独立したモードになっているのでしょうか。
小嶋氏:
モードとして区別はしていません。メインミッションをクリアすればストーリーを進められて,VRミッションを受ければマルチプレイができるというように,基本的にはミッションで区別する形になっています。
4Gamer:
ということは,キャラクターのレベルや装備は,シングルプレイとマルチプレイで共通になるんですね。
小嶋氏:
そうですね。難易度で締めつけるようなゲームにはしたくなかったので,メインミッションは基本的に,けっこうサクっと進められるバランスに調整しています。
また,ベースには学食があって,ミッションに行く前に食事をすると,ステータスをアップさせるブーストの効果をかけられます。
それでも難しいと感じる人もいるかもしれませんが,VRミッションは何回でも受けられますから,主人公をレベルアップさせたり,素材を集めて武器を強化したりすることで,メインミッションが進めやすくなっていきます。
4Gamer:
アクションが苦手な人に向けたフォローも入れていると。加えて,VRミッションではマルチプレイができるから,友達に助けてもらうこともできるわけですね。
「エクストルーパーズ」では,友達と一緒に遊べば敵の弱点をあっという間に破壊できますから,協力したらだいぶ楽になると思います。それから,協力型のミッションでは,体力がゼロになって力尽きても,一定時間内に仲間に“救援”してもらえば何度でも復活できますから,仲間のありがたみがより感じられると思います。
4Gamer:
となるとマルチプレイ用のミッションは,複数プレイヤーでのチャレンジを想定した難度になっているという感じでしょうか。
小嶋氏:
難度は少し高くなりますが,1人でプレイしてもクリアはできますよ。
ゲームを進めていくと仲間になるキャラクターが増えて,仲間を2人までサポートキャラクターとしてミッションに連れていけるようになります。仲間はそれぞれ,持っている武器などに特徴があります。
VRミッションを1人でプレイするときは,サポートキャラクターの誰をミッションに連れて行くかで,戦略も変わってくるというように,多人数でのマルチプレイとは違った楽しみ方もできるんですよ。
4Gamer:
仲間になるキャラクターはどれくらいいるんですか?
小嶋氏:
ストーリーを進めていくだけで仲間になるキャラもいますが,キャラクターごとのサブストーリーもけっこうあって,それをクリアしないと仲間にならないようなキャラクターもいます。「あ,こいつも使えるんだ」みたいなキャラもいるので,数はけっこう多いですよ。
4Gamer:
仲間になったキャラクターは,VRミッションで自分の操作キャラクターのアバターとして使えるようになるんですよね。
ええ。マルチプレイでは「ティキを使いたい」「ジュリィを使いたい」といった要望って,必ず出ると思ったんですよ。
メインミッションでは操作キャラクターがブレンで固定になるので,そこをどう解決するか話し合った中で,「バーチャルの世界でアバターを使ったミッション」というアイデアが出てきたんです。
オンラインで遊ぶときに整合性も取れますし,衣装を替える理由付けにもなるので,ちょっと面白いかなと。
4Gamer:
同じキャラクターが複数人いても,ミッションにそぐわないような服装であっても,バーチャルなら“あり”というわけですね。
本作では,協力プレイも対戦プレイもチームの構成が最大3人となっていますが,一般的な4人/8人といった構成にしなかったのは,どのような理由からなのでしょうか?
小嶋氏:
ゲームの設定上,1小隊がスリーマンセル(3人組)なので,対戦だけ4人とか8人になるのは不自然だよね,というだけですね。
ちなみに,ゲーム内で衣装チェンジができるようになったら,VRミッションじゃなくても自由に着替えられます。PVにも出ていますけど,水着も当然用意しています。
海パン一丁で雪山のミッションに挑戦すると,「コイツは何をしているんだ?」とツッコミたくなるくらい絵面がシュールですけど(笑)。
4Gamer:
VRミッションをプレイするときにアバターを変更したときは,能力も変わるのでしょうか。
小嶋氏:
協力プレイでは,変わるのはあくまでも見た目だけで,自分の育てたブレンのレベルや武器の強化レベルが反映されます。
逆に対戦では,ブレンのレベルや育てた武器の性能は一切関係ない,一律共通の設定になります。
4Gamer:
対戦で遊ぶときは,プレイヤースキル以外の要素で有利/不利が出にくくなっているんですか?
そうですね。対戦については,ワーワーキャーキャー言いながら楽しく遊んでもらいたいと思っているので,ヘッドショットがどうとかエイミングがどうといった,シビアなシステムにはしていません。
ただ,ガチで上手な人になると,いろんなテクニックを使ってきます。開発チームでテストプレイをしているときも,ジェットでダッシュしながら溜め撃ちするようなテクニックを使ってくるスタッフがいたんです。上手な人はたいがい,コントローラの持ち方が普通じゃなくなってくるので,そういう人は敵に回したくないですね(笑)。
4Gamer:
開発チーム内では,すでに“エクストルーパーズ持ち”が確立されているんですか(笑)。
キャラクターデザインの実田千聖氏は背景デザイナーからの大抜擢
4Gamer:
「エクストルーパーズ」のキャラクターデザインは,カプコンの実田千聖氏が担当していますが,キャラクターデザインを担当するのは初めてなんですよね。どういった経緯で実田氏を抜擢することになったのでしょうか。
小嶋氏:
実田は,ずっと背景を担当していたので,背景はめちゃくちゃうまいんですけど,社内では背景の説明用にキャラクターも描いていたんです。華のあるというか,気になる絵を描くスタッフだったので,前々から気になっていて。
4Gamer:
では,最初から実田氏の起用を考えていたんですか?
小嶋氏:
いえ,最初からというわけではないです。
開発当初は,グラフィックスがもうちょっとリアル寄りだったんですが,マンガチックな表現を入れるとなったとき,方向転換が必要でした。リアル系のグラフィックスだと,当然ながら違和感が生まれてしまいますから。
新しいデザインをどうしようかと検討をしているときに,僕が「実田さんの絵を使いたいけど,どうだろう?」という話をしたんですよ。そうしたら周りのスタッフからも「僕もそう思ってました!」という反応が返ってきて,任せることが決まったんです。
4Gamer:
そうだったんですか。背景とキャラクターデザインでは勝手も違うでしょうし,実田さんは,かなり苦労されたのではないでしょうか。
やっぱり苦労はしていましたね。社内での説明用に描いていたキャラクターもちゃんと描けてはいたんですけど,外に向けた絵となると,それ以上のものにクリーンアップしなくちゃいけないじゃないですか。社内のキャラクターデザインをやっている人達にいろいろと聞いて,キャラクターデザインの勉強をしながら描いていました。
あと,たとえば主人公のブレンだと,「その絵だとバカっぽ過ぎるから,ヤンチャだけどガキっぽくなりすぎないようにして!」みたいにいろんな注文をしていたので,それも苦労した原因だったと思います(笑)。
4Gamer:
そんな漠然とした注文ばかりだと苦労すると思いますよ(笑)。
小嶋氏:
確かに(笑)。ブレンは実田もかなり悩んでしまったので,最終的に「周りの言葉に振り回されず,今,実田が思うブレンを描いたら?」と振ったんです。そうしたら,今のブレンの原型ができ上がりましたね。さすがです。
新規タイトルだからこそ,知名度の高い企業/商品と積極的にコラボ
4Gamer:
「エクストルーパーズ」では,オロナミンC,JOYSOUND,餃子の王将,Zoffなどなど,異業種とのコラボレーションも積極的に行っていますよね。
小嶋氏:
やはり新規タイトルですから,話題性を持たせて「エクストルーパーズ」というタイトルを広めないといけません。僕がモンハンでいろいろなコラボに関わっていたこともあって,コラボ関連については,早い段階からいろいろと検討していました。
4Gamer:
以前,パブリシティ企画推進室室長の萩原さんにインタビューをさせてもらったときに,コラボを実現する難しさを聞いたのですが,「エクストルーパーズ」のような新規タイトルだと,コラボを実現するのには苦労があったのではないでしょうか。
それはもうたいへんでしたよ(笑)。たとえばオロナミンCのときは,「エクストルーパーズ」の元気さや爽快感にハマるものを考えていて,“元気ハツラツ”があるじゃないかと,大塚製薬さんに伺ってコラボのお願いをしたんです。
ただ,オロナミンCは大塚製薬さんが大事にされている主力商品なので,これまでゲームとコラボしたことはなかったんですね。なので,「こういうゲームで,主人公はこういう性格で,飲むことによって元気になるんです」と誠意を持ってご説明して,粘り強くお願いし続けて,ようやく実現できたんです。
そして,「元気ハツラツ!」とゲーム中でも叫ぶことができました。梶さんのレアなボイスです(笑)。
4Gamer:
餃子の王将とのコラボも珍しいですよね。「エクストルーパーズ」がターゲットにしているであろう,若者向けという意味ではピッタリだと思いますが。
もちろん,そういう反応を期待して王将フードサービスさんにお願いしたという狙いはあります。実は,王将フードサービスさんが「餃子の王将の餃子」という看板商品をコラボに出すというのは,初めてのことなんですよ。しかも,東京ゲームショウ2012のときは,試遊特典として割引券を準備していただけましたし,話題性は十分あったと思います。
4Gamer:
確かに,割引券は衝撃的な試遊特典でした(笑)。
「オロナミンC」も「餃子の王将の餃子」も,ゲーム中に出てくるんですか?
小嶋氏:
もちろんです。どちらも学食の食事のメニューとして出てきます。発売後に追加コンテンツとしてコードを公開する予定なので,楽しみにしていてください。
それから,インターメスティックさんとのコラボでは,メインキャラクターがゲーム内で「Zoff SMART」というメガネをかけるという仕掛けを用意させてもらいました。設定画面に「メガネ」という項目があって,ONにするとメガネをかけた状態でプレイできるようになります。もちろん実在するモデルなので,実物のメガネを購入することもできますよ。
4Gamer:
趣味嗜好がマッチする人にはたまらないコラボですね(笑)。
エクシングさんとのコラボでは,May'nさんが歌う主題歌の「Mr.Super Future Star」のショートバージョンをJOYSOUNDのカラオケで先行配信してもらっていて,ゲーム内では,JOYSOUNDのロゴ入り装備衣装を用意しています。あと衣装つながりでいうと,「モンスターハンター」シリーズからレウス装備のハンターもあります。「エクストルーパーズ」に合わせたトゥーン調になっているので,実際にゲーム内で見たら,新鮮に感じると思いますよ。
4Gamer:
主題歌を歌うアーティストにMay'nさんを起用したのは,やはりターゲットとしている層や作品の雰囲気から決めたんですか?
小嶋氏:
ええ。「疾走感のあるゲーム」というイメージには,May'nさんの声がぴったり合うと感じたので,作詞作曲から完全にオリジナルで作っていただきました。非常に気持ちのいい歌に仕上がっていて,サテライトさんが作ったプロモーションアニメともマッチしているので,ぜひ公式サイトでムービーをチェックしてください。
4Gamer:
10月からは,ニンテンドーeショップとPlayStation Storeで体験版が配信されていますが,これは東京ゲームショウでプレイアブル出展されていたものと同内容なんですよね。
小嶋氏:
そうですね。1人用のストーリーモードと,VRミッションを2つ用意させてもらいました。VRミッションも1人でも遊べるようになっていますから,ストーリーモードをクリアしたら,VRミッションにも挑戦していただければと。この体験版(※)では,タイムアタックもできますから,かなりやり込めると思います。
※BGMほか,一部仕様に製品版とは異なる部分があります。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてのメッセージをお願いします。
小嶋氏:
「エクストルーパーズ」は,「マンガチック爽快アクション」というキャッチコピーにふさわしく,アニメやマンガが好きな人がぐっとくる要素もたくさん盛り込んでいます。また,カプコンらしい,テンポ良くやり応えのあるアクションゲームになっていますから,アクションゲームが好きだという人にもぜひ遊んでもらいたいゲームです。
まずは体験版をプレイしていただいて,気に入ったらぜひお手に取っていただければと思います。よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
本作が「ロスト プラネット」シリーズの世界観を踏襲しており,“銃を撃って敵を倒す”ゲームであるため,シューティングゲームとして期待する「ロスト プラネット」シリーズファンも多かっただろう。
しかあし,インタビュー中でも話題に上がったように,小嶋氏は“撃つゲーム”の楽しさを広め,難しいという雰囲気を払拭したいという考えから,本作をシューティングではなく,「プレイして気持ちのいい,テンポを重視したアクションゲーム」として作っていることが分かっていただけたと思う。
筆者も実際に「エクストルーパーズ」をプレイして,シューティングゲームが得意ではない人でも気軽に楽しめる,カプコンらしく完成度の高いアクションゲームとなっていると感じた。
現在,本作の体験版がPlayStation Storeとニンテンドーeショップで配信されているので,新規オリジナルタイトルとしてプレイしてみて,気に入ったら製品版の購入を検討してみてほしい。
「エクストルーパーズ」公式サイト
(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.
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