インタビュー
面白いと感じたら,我々を信じて遊び続けてください――期待の新作MOBA「コアマスターズ」インタビュー
4Gamer読者には説明するまでもないだろうが,MOBAとは,RTSの戦略性とRPG的な成長要素を併せ持つ,チーム対戦型のオンラインゲームを指すジャンルである。一般的には,複数のプレイヤーが2つのチームに分かれ,それぞれが1人のキャラクターを選んでRTSのようにキャラクターを操作し,味方プレイヤーと力を合わせて敵チームの本拠点を破壊すれば勝利となる。1回当たりのプレイ時間は20分前後なのだが,そのプレイ中にキャラクターのレベルを上げたり,装備を整えたりできる点は,まさにRPG的な魅力と言えるだろう。
「League of Legends」を例に挙げるまでもなく,今MOBAは世界中のゲーマーから注目されており,日本語でプレイできるタイトルもちらほら出てきたが,日本のゲーム市場においてはまだまだマイナーなジャンルといえる。そんな中,GMOゲームポットはどのような狙いをもってコアマスターズを運営しようと考えたのか。今回4Gamerは,同作のプロデューサーを務める谷川新太郎氏(以下,谷川氏)にインタビューする機会を得たので,その内容をさっそくお届けしよう。
コアマスターズをより面白いゲームにするため
CBT終了直後に韓国へ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。コアマスターズでは2014年2月19日から3月4日までの期間にクローズドβテストが行われましたが,その直後,谷川さんは韓国へ飛ばれたそうですね。
はい,開発元であるSOFT BIGBANGのもとへ向かいました。おかげさまでCBTは大盛況のうちに終了したんですが,お客様から貴重な意見/要望を多数いただいたので,急いで伝えたかったんです。
4Gamer:
SOFT BIGBANGはコアマスターズが第1作とのことですが,谷川さんから見てどのような会社ですか?
谷川氏:
SOFT BIGBANGは,僕個人が今まで関わった会社の中でもトップクラスに“良い”会社ですね。オンラインゲームの発達した韓国の開発者は職人気質というか,自分達の考えを貫き通すタイプの人が多い印象なんですが,SOFT BIGBANGはとても柔軟で,いいゲームを作るためなら誰の言葉にでも耳を傾けてくれますし,技術力も確かです。
4Gamer:
私もCBTに参加させてもらいましたが,そう言われてみると不具合らしい不具合は確認できませんでしたね。
谷川氏:
こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが,CBTはテストなわけですから,不具合があって当たり前じゃないですか。ところがコアマスターズは大きな不具合もトラブルもなく,つつがなくCBT日程を終えることができたので驚きました。
4Gamer:
にも関わらず,開発元との協議を急いだ理由は何だったのでしょうか。
谷川氏:
基本的には順調に進んだCBTですが,お客様の感じたさまざまな不満点を洗い出し,可能な範囲でそれらを修正するためです。
4Gamer:
不満点としてはどのようなものが多かったんですか?
谷川氏:
大きなところでいうと,アイテム関連の仕様と,マッチングに起因する試合展開の偏りに関して,不満が集中していた印象を受けます。
“ならでは”の魅力であるアイテムシステムはそのままに
アイテム格差を生むゲームバランスを調整
4Gamer:
コアマスターズにおけるアイテムの概念は――League of Legendsが一般的なMOBAだという前提の話になりますが――かなり独特なものですよね。CBTでも批判的な意見が挙がっていたのを私も確認しています。SOFT BIGBANGとの協議の結果,どのような対応を取ることになったんでしょうか。
谷川氏:
コアマスターズにおけるアイテムは,オンラインゲームにおけるやり込み要素として盛り込み,それがカードゲームのように,どのようなデッキ(アイテムの組み合わせ)で敵を倒すかという戦略性を生むだろうと期待していました。しかし本作ではアイテムの入手がランダムであったため,テスターからは,必要なアイテムを「入手できない」ことがストレスになっていたんです。
4Gamer:
テスターからは,移動速度をアップさせるウイングブーツの有無が格差を生んでいるという声が,とくに目立っていましたね。遠距離攻撃タイプが強すぎるという声も,ウイングブーツ系アイテムの有無に関係していそうな印象です。
谷川氏:
おっしゃるとおりです。とはいえアイテム関連のシステムは,コアマスターズならではの特徴でもありますから,バッサリと削除することはできません。対応策として,マスターの移動速度を調整することも検討しましたが,それが新たな不満を生む可能性もあります。そこで,4月24日からスタートするオープンβテスト相当のサービスでは,初期所持品としてウイングブーツを追加することにしました。
4Gamer:
テストサーバーでOBTバージョンのコアマスターズをプレイさせてもらいましたが,そのときには「クエスト」という要素も確認できました。これも,アイテムの有無がもたらす格差をなくすための対応の一つだと感じたのですが。
谷川氏:
はい。クエストは,ゲーム中に特定の条件を満たすことで,ゲーム内マネーやアイテムが入手できるシステムです。クエストのクリア条件は比較的簡単なので,最低限必要となるアイテムや,アイテムを入手するためのゲーム内マネーを,多くのプレイヤーへ提供できるのではないかと考えています。
加えて,アイテム合成の最大強化値を+5から+3に変更しているので,アイテム格差はかなり緩和されるはずです。
より競技性の高いゲームバランスを実現すべく
さまざまな仕様変更を実施
4Gamer:
では,マッチングに関する調整についても教えてください。コアマスターズのゲームモードは,カジュアルモードとメジャーモードの2種類がありますが,どちらも同様のマッチングシステムでしたよね。
谷川氏:
はい。CBTではプレイヤーの練度や人数が限られていたこともあり,実はマッチングシステムそのものについては,さほど不満の声はなかったんです。ただ,先ほどのアイテム格差の問題などもあり,試合の終盤,一方的な展開になりがちだったところが不評でした。
4Gamer:
確かに,試合前にセットできるアイテムの数が少ないプレイヤー,つまりアカウントレベルの高くないプレイヤーは,試合が終盤に向かうにつれてどんどん厳しくなっていく印象を受けました。マッチングシステムそのものというよりも,アイテム関連のシステムが原因のような気もしますね。
おっしゃるとおりです。なので先ほどお話しした調整でほぼ対応できるとは思うのですが,戦略性を高めるという意味で,アイテムスロットの数についても調整を加えています。もちろん,今後OBT,正式サービスへと移行していけば,プレイヤーの数や練度が変わってきますので,状況を見ながらマッチングシステムそのものを微調整していきますよ。
4Gamer:
分かりました。そのほか,SOFT BIGBANGとの協議で調整に至った要素はありますか?
谷川氏:
試合中にチャットができない仕様は,きっと不満の声が挙がるだろうなと思っていたのですが,それについては好意的な反応が多かったのが印象的でした。たとえばFPSやカードゲームの対戦中に,オープンなチャットシステムが必要かといったら,さほど必要ではないですよね。
4Gamer:
チーム内での連携にはボイスチャットを使うでしょうし,確かにテキストチャットはあまり重要ではありませんね。
谷川氏:
とはいえ,ゲーム中に簡単な指示などを出したいケースも多いですし,CBTでは1種類だったサインを,4種類に増やすことにしました。デフォルトでは[G]キーと[V]キーでサインを選択/使用しますが,ミニマップの横にボタンも追加しているので,操作しやすいほうを選んでいただければと。
それと,テスターからの意見を参考にしたうえで,マスターのステータス/スキルを調整しています。
4Gamer:
それによってゲームバランスは大きく変わりますか?
谷川氏:
CBTで使用できた20キャラのうち15キャラを調整しているので,全体的なゲームバランスはそれなりに変化していますが,特定のキャラを極端に上方/下方修正するような調整はしていないので,その点はご安心ください。
4Gamer:
マスターといえば,OBTバージョンでは新マスターが多数追加されますよね。OBTでは何体のマスターが,最初からアンロックされているんでしょうか。
谷川氏:
OBT段階で実装されているマスターについては,OBT期間中はすべてアンロックされた状態になります。正式サービス以降は,ゲーム内マネーと有料での2種類の購入方法を想定していますが,これについてはあくまで検討中であり,状況を見て判断していくことになります。
4Gamer:
分かりました。そのほか,CBTからの変更点はありますか?
谷川氏:
マップデザイン,およびサーチシステムを変更しています。メジャーモードでは,センターコアに続く道に罠を仕掛けるのが定番の戦法となっていましたが,このワンパターンを解消すべく,センターコアへの道幅を広くし,サーチの仕様を一部変更したんです。
4Gamer:
具体的にはどのような変更でしょうか。
谷川氏:
サーチはメリットとデメリットが明確になるようになりました。詳細としては,サーチを使用するために少量のクリスタルが必要になり,さらに壁越しの罠やマスターを発見できなくなります。ただし,設置されている罠は直接破壊できるようになり,破壊すればクリスタルが得られます。
4Gamer:
なるほど,罠を仕掛ける側もサーチする側も,読みや工夫が必要になるわけですね。ちなみにカジュアルモードは,何か変更される要素はありますか?
谷川氏:
新たにサドンデスという要素を追加します。試合の優劣によってサドンデスという状態へ突入し,マップ上に生成されるタワーの数とそのタワーからドロップするコアの数が増加します。これにより,負けている側には逆転のチャンスが,勝っている側には決着を早めるチャンスが生じます。
そして両モードで使用可能な,アビリティとルーンというシステムを追加します。アビリティはアカウントレベルによって習得した能力でマスターを強化するシステムで,ルーンはこのシステム専用のアイテムを装備して,それぞれキャラクターの性能を高めるものです。どちらも,キャラクターのカスタマイズ要素になっているので,自分の戦術に特化したマスターを作り上げてもらえればと思います。
正式サービス以降も定期的に行われるアップデート
いずれは世界大会の実施も?
4Gamer:
これまでお聞きした内容は,4月24日のOBT開始までのアップデート内容となりますが,OBT以降の展開について,お話しできることはありますか?
谷川氏:
OBTと同時に大規模アップデートを実施しただけで,コアマスターズの進化は止まりません。時期は未定ですが正式サービスがスタートしたあとも,さまざまな展開を用意しています。
大きなところでは,正式サービス開始時に実装済みとなる40キャラクター分に関して,それぞれにアバターを用意する予定です。
4Gamer:
おお,正式サービス開始時には40体のマスターが実装済みになる予定なんですね。
アバターというと,キャラクターのスペックを変えず,見た目だけを変更するようなシステムですよね。
はい。しかしそれだけでは面白くありませんので,GMOゲームポットらしい面白い仕掛けを今後も用意しますので,楽しみにしていてください。また初夏を予定で,MOBAではおなじみの観戦機能を実装する準備をしていますよ。
4Gamer:
しかしそれだけのマスターが基本的に無料で使え,アイテムも今のところゲーム内マネーで購入できるわけですし,コアマスターズは一体どこでマネタイズするつもりなんですか?
谷川氏:
そこについては,我々も困っています(笑)。
4Gamer:
プレイヤーからすればありがたいでしょうし,競技性の高さが魅力となるMOBAにおいてはある意味前提ともいえる流れかもしれませんが,ビジネスとしては難しそうですよね。
谷川氏:
私はかつてFPSのプロデューサーをやっていたんですが,どこでお金をいただくのかについては,一時期のFPSでも課題になりましたよね。分かりやすいところでは有料武器や新キャラクター,特別なスキンなどを販売するのが無難なところですけど,我々としてはまず,コアマスターズを多くのプレイヤーに認知してもらうことが最重要課題といえます。商売上の理由でゲームバランスを壊してしまったら誰も遊んでくれませんし,まずは多くの人が「続けたい」と思えるようなゲームに仕上げられるよう,全力を尽くしたいと考えています。
4Gamer:
ということは,有料アイテムの有無が勝率に結びついてしまうようなマネタイズは,今後絶対に導入しないということですか?
谷川氏:
もちろんです。できればアバターなど,GMOゲームポットらしさを出せる部分でのマネタイズをしたいと考えていますし,そういった部分に関しては,SOFT BIGBANGもバックアップを約束してくれていますし,私としてもプレイヤーの皆さんに約束します。
4Gamer:
分かりました。そのほかの展開についてはいかがでしょうか。
谷川氏:
これは構想段階の話となりますが,もちろんいつかは世界大会なんかもやってみたいですし,それを目標として,定期的なオンライン/オフライン大会をやる必要もあると思います。スマートフォンアプリを利用した何らかの連動も,今のプレイヤーにとっては必要なものでしょう。
4Gamer:
そういえば,CBTのタイミングで早くもオフラインイベントを開催されていましたね。
谷川氏:
ええ。あのタイミングでのオフラインイベントは無茶といえば無茶でしたし,企画/運営の面で反省すべきところもあるんですが,今後の展開を考えると,早めにやっておいたほうがいいだろうという判断をしました。インターネットカフェを使ったイベントには,仲間が作りやすいというメリットもありますし,直接教えてもらったりすることで,ゲームのお約束や基本的な立ち回り方をスムーズに覚えられるんですよね。なので,フラッグシップ店舗となるネットカフェをいくつか用意し,数ではなく質を重視したオフラインイベントを展開していきたいと考えています。
4Gamer:
コミュニティの育成や初心者サポートという意味では,CBT中にも流していたインターネット生放送も続けていく予定ですか?
谷川氏:
続けていきます。MOBAはとてもシンプルなゲームですが,それぞれのゲームに独自の立ち回り方やお約束がありますし,なによりスクリーンショットでは魅力が伝えにくい。コアマスターズがどれだけカジュアルなMOBAでも,そこを伝えられなければ遊んでくれる人が増えませんので,許されるのなら毎週やりたいくらいですよ。
4Gamer:
楽しみにしています。それでは最後に,コアマスターズに期待しているゲームファンに対して,メッセージをお願いします。
私が言うまでもなくMOBAは本当に面白いジャンルで,コアマスターズのサービスを決定した理由の一つに,我々自身がMOBAにどハマりしていたという事実があります。本当に面白いジャンルを日本にも根付かせたい,そのためにはジャンルの魅力と,ハードルの低さを兼ね備えたゲームが必要だと考えていたところで,コアマスターズと出会いました。
スマートフォン,コンシューマ,PCそれぞれのプラットフォームに,ありとあらゆるゲームがあふれている状況ですが,MOBAはそんな中でも大きな可能性を持っていますし,我々はコアマスターズを本当に面白いゲームだと信じています。たとえばMMORPGに飽きてしまったという人や,何か面白いゲームを探しているという人に,ぜひ,日本語で遊べるカジュアルなMOBAである,コアマスターズをお届けしたいです。4月24日からスタートするOBTは誰でもプレイできますので,ぜひ一度遊んでみてください。そしてもし面白いと感じたら,我々を信じて遊び続けてください。さまざまなアップデートやイベント展開,そしていずれは世界大会などを通じて,「遊んでいてよかった」と思っていただけるよう全力を尽くします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
日本語で遊べるカジュアルなMOBAということで,これまでMOBAを敬遠していたゲーマーからも注目を集めているコアマスターズ。CBTでは,一部アイテムが生み出す不公平感や,今後のマネタイズに関する不安感などがコミュニティに漂っていたが,自らが熱心なMOBAプレイヤーである谷川氏は,当然のようにこれを察知し,すでに対応に動いていた。競技性の高さをウリとするMOBAジャンルにおいて,これはとても重要なことといえるだろう。
また当初谷川氏は,MOBAジャンルではあまりにも強すぎるLeague of Legendsとコアマスターズを比較され,「これは違う」と思われることを若干危惧していたそうなのだが,CBTでは「これはこれで面白い」という意見が多数を占めていたそうだ。これにより谷川氏は,キャラデザインの方向性や声優陣のチョイスなどをコアマスターズの大きな武器であると確信したとのこと。GMOゲームポットといえば他社IPとのコラボレーションが連想されるが,今後はそういった面でもゲームを盛り上げてくれそうだ。
なおコアマスターズは,4月24日からスタートするオープンβテストで大きな問題が見つからなければ,比較的早いタイミングで正式サービスへ移行する予定だという。有料アイテム/サービスが競技性に影響を与えることはないと断言した谷川氏だが,いったいどのような施策で,ビジネスとしてのコアマスターズを成功させるのだろうか。「遊んでいて良かった」と思えるゲームを常に探しているゲーマーは,そういったところにも注目しておくといいだろう。
「コアマスターズ」公式サイト
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