インタビュー
ゲームポットが新規タイトル展開で“攻め”の姿勢を見せる理由とは。同社の2013年度事業展開について,オンラインゲーム部門とモバイルゲーム部門の執行役員に聞いた
しかし,ここ数年は新規タイトルが振るわず,短期間でサービスを終了してしまう事例が多かったことも事実である。そのため,2012年度の同社には,どこか勢いに欠けていた印象があったことは否めないだろう。
そうした状況を覆すかのように,2013年度のゲームポットは,PCオンラインゲーム事業およびモバイルゲーム事業双方において,相次いで新規タイトルを展開していくという。その意図するところや事業の方向性について,ゲームポット オンラインゲーム事業部門 担当執行役員 部門長 朝倉脩登氏と,同社モバイルゲーム事業部門 担当執行役員 部門長 青田径春氏に聞いてみた。
※ゲームポットは6月11日,同社の運営するモバイルゲーム事業を,新設分割で設立する「ジーピー・モバイル株式会社」に移管すると発表した。このインタビューはその発表前に取材したものだが,本稿での発言内容に変更はないとのこと
数々のオンラインゲームをプレイし,サービス開始を検討していた2012年度
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は,ゲームポットの2013年度の事業展開をお話しいただけるということですが,その前に,2012年度を振り返っての所感をお聞かせください。
ここ1年,日本市場におけるPCオンラインゲームは,世間的に見ると厳しい状態にあります。そのためゲームポットも,2012年度は新規のPC向けクライアント型タイトルを投入せず,既存のお客様に向けて従来タイトルのサービスを継続してきました。
その背景には「PCオンラインゲームは,このまま行くとどうなるんだろう」という漠然とした不安があったことは否めません。
4Gamer:
確かに,これまでオンラインゲームの中心的な存在だったMMORPGの人気が,ここ数年で落ち着いてしまったためか,そういう印象がありますね。もっと踏み込むと,スマートフォンの普及でプレイヤーのライフスタイルが変わり,ゲームに対する向き合い方が変化した,という理由も大きいかもしれません。いつでもどこでもプレイできるゲームが台頭した関係で,そうする必然性も薄くなったというか。
朝倉氏:
おっしゃるとおりです。しかし2012年,日本では「ファンタシースターオンライン2」と「機動戦士ガンダムオンライン」のサービスが始まり,大きな注目を集めました。また世界的には「League of Legends」(以下,LoL)が盛り上がっていますし,日本人プレイヤーもたくさんいます。つまり,PCオンラインゲームを求めているお客様は,まだまだ日本にはたくさんいるわけです。
それを踏まえて,ゲームポットはどうするか。実はこの1年間,我々も,新規のPCオンラインゲームタイトル獲得に向けて動いていました。
4Gamer:
具体的には,どういったタイトルを獲得しようとしていたんですか?
朝倉氏:
今だから言えますが,世界中のゲーマーから注目を浴びている,競技性の高い某ゲームや某対戦メカアクションの日本展開も考えました。ゲームポットは,ファンタジーアース ゼロやペーパーマンでの大会開催実績がありますから,相性は良いだろうと考えたんです。
その2タイトルを候補に挙げたのは,もちろん圧倒的にクオリティが高かったからです。今,日本市場でPCオンラインゲームを展開するには,相当高いクオリティが求められるんですよね。昔と比較すると,中規模タイトルの展開はかなり厳しい。パッと見て「何か,すごいのが来たな」と思ってもらえるようでないと,なかなかお客様の食指は動きません。
4Gamer:
確かに,いくつかのキーワードを見ただけで「ああ,またこういうゲームか。じゃあプレイしなくてもいいな」と思ってしまうゲーマーが増えているかもしれません。
朝倉氏:
そうした状況を踏まえ,2012年度は,本当に世界各国のさまざまなタイトルを社内でテストし,先方と交渉していました。
2013年度はクオリティを重視した新規のPCオンラインゲームを展開
4Gamer:
それでは,2013年度のゲームポットの事業展開について教えてください。
PCオンラインゲームでは,先ほども言ったとおり,クオリティを重視した3タイトルを展開します。
まず,2013年7月にサービスを開始する「Shadow of Eclipse」は,PCブラウザとスマートフォンをプラットフォームにしたタクティクスRPGです。
4Gamer:
開発環境はUnityですか?
朝倉氏:
いえ,Shadow of Eclipseに関してはFlashです。これとは別にUnityとHTML5を使ったプロジェクトもそれぞれ進行していますが,それについては別の機会にお話しさせてください。
4Gamer:
分かりました。それではShadow of Eclipseについて,もう少し教えてください。
朝倉氏:
開発は韓国Ntiq Gamesで,もともとはPCブラウザゲームでした。そのAndroid版アプリを作り,かつPCとスマホで同じサーバーで遊べるようにしたわけです。
4Gamer:
ゲームの内容は,どういった感じなんでしょう?
朝倉氏:
「FINAL FANTASY TACTICS」などに代表されるタクティクスRPGです。使用するイラストはゲームポット側で用意していますし,キャラクターのモデリングも,ペーパーマンや「メビウスオンライン」のグラフィックスチームが作ったものをNtiqに提示して,テイストを合わせています。
また敵のAIも,ゲームポットのプランナーが基本的なロジックを作り,Ntiqが開発したものを繰り返しテストし,最終的な仕様を決めています。
4Gamer:
なるほど。
朝倉氏:
さらには,全キャラクターのボイスを声優陣が演じます。言ってしまえば,コンシューマゲームのタクティクスRPGとほぼ同じ品質のものが,PCブラウザとスマホで遊べてしまうというわけなんです。
4Gamer:
日本市場で受け入れられるであろう要素を詰め込んだと。しかし,先ほどのライフスタイルの変化の話を踏まえると,果たしてタクティクスRPGというジャンル自体が,スマホにマッチするだろうかという疑問もあります。
朝倉氏:
そうですね。今まさに,スマホでプレイするときに,無駄な手順が増えないよう調整を行っています。おそらくサービスを続けていく中で,開発チームとお客様のやり取りを踏まえた,細かな調整が必要になってくるでしょう。
また,ほかにも課題はあります。たとえば課金システムですが,PCブラウザとスマホとで,プラットフォームをまたいだ有料ポイントの一元化はできません。さらに,二つのプラットフォームを使うことで生じるサーバーの負荷も,未知の部分が多いです。内部テストではクリア済みの問題であっても,実際に稼動させたらどうなるか分かりませんから。そういった部分も含めて,ゲームポットとしては非常に意欲的なタイトルです。
4Gamer:
分かりました。それではほかのタイトルについても教えてください。
残る2タイトルは,どちらもクライアント型です。
まず「Mirror War」は,韓国L&K Logic Koreaが開発したMMOシューティングです。一見するとファンタジーモチーフのアクションRPGのようですが,戦闘システムがいわゆる“弾幕シューティング”風になっており,もちろんキャラクターの成長要素なども盛り込まれています。
4Gamer:
L&Kは,「RED STONE」のデベロッパですね。
朝倉氏:
そうです。L&Kは日本のパブリッシャが何を求めているのか,それに対してデベロッパが何をすればいいのかを深く理解しているので仕事がしやすいですね。
面白かったのは,最初のミーティングでL&Kのナムさん(L&K CEO ナム・テクウォン氏)から「どんどんリクエストをくれ。リクエストのないパブリッシャとは仕事しない」と言われたことですね。ですから遠慮なく「こんなグラフィックスでは売れない」と言いました(笑)。
4Gamer:
ズバッと行きましたね(笑)。
朝倉氏:
ええ,「全キャラ同じ顔に見えるのでダメだ」と。そうしたら,すぐに「顔を変えるだけで大丈夫か? 頭身から変えたほうがいいか?」という話になって,数週間後には,数十人単位の専用グラフィックスチームが編成されたんです。
すでに韓国ではサービスされているタイトルですから,4Gamerの記事などで「Mirror War」のスクリーンショットを見ている人もいるかもしれませんが,グラフィックスはかなり変わりますし,ゲーム内の演出も強化するので,全然違う仕上がりになりますよ。
4Gamer:
それは楽しみですね。ちなみにサービスインはどのくらいの時期になりそうでしょう?
朝倉氏:
結構,根本的な部分から変更を加えますから,2014年に入ってからになる予定です。
4Gamer:
分かりました。それではもう1タイトルについて教えてください。
朝倉氏:
4Gamerにもプレイレポートが載っている「CORE MASTERS」です。ジャンルは,今,もっとも注目されているMOBAですね。
4Gamer:
なぜ,各社がこぞって展開している中,あえてゲームポットでもMOBAを扱おうと考えたんでしょうか。わざわざ強敵の多い戦場に乗り込まなくても……と思ってしまうんですが。
朝倉氏:
今の日本におけるMOBAの状況は,かつてオンラインFPSが盛り上がったときに似ていると思うんですよ。多くの人が「FPSなんてはやるわけがない」と言っていたのに,フタを開けたらたくさんの方々がFPSをやっていたのと同じように。
4Gamer:
ああ,なるほど。
朝倉氏:
あとは,僕自身がLoLをやり込んでいるという理由もあります。その中で,プレイヤーとしてツラいのは,1プレイあたりの時間が長いこと,負けると分かっているのに続けなければならない状況が多発すること,そして局面によっては,やりたくない役割を強要されることの3点でした。
ところがCORE MASTERSは,早ければ1プレイ10分,長くても20分で終わるんですよ。ビルドもそれほど複雑ではなく,すぐに4対4のチャンピオン同士の戦いになり,フラッグ戦のようなコアの奪い合いに発展するんです。だから僕は最初プレイしたときに,これはマップの構成次第で,MOBAというよりもクォータービューのTPSのような存在にできるんじゃないかと考えたんです。
4Gamer:
RTSから面倒な部分を取り払ったMOBAを,さらに手軽にした感じですか。
朝倉氏:
そうです。これならMOBA初心者でも簡単に遊べるだろうと考えました。かつてペーパーマンがFPSの入門編として機能したように。
もちろん単体のゲームとしてもクオリティが高く,PvPとPvEのバランスがよくできており,大会もすぐにできそうだなとも感じましたね。
4Gamer:
ゲームポットが培ってきたイベントのノウハウも生かせるわけですね。
朝倉氏:
また,開発を担当した韓国Softbigbangのメンバーが,元々ゲームポットで運営していたタイトルに関わっていた人達だったことも大きいですね。だからMirror Warと同じく,日本市場で求められるものをよく分かっているんですよ。もう最初からコラボレーション展開ができる作りになっているので,ゲームポット的にも,非常に面白いことができそうです。
こちらは2013年末にローンチ予定です。他社さんとも協力して,日本市場におけるMOBAを盛り上げたいですね。海外展開も韓国,インドネシア,中国,日本に続き,北米も交渉中とのことで,世界大会の開催も期待できそうです。
4Gamer:
分かりました。2013年度のPCオンラインゲームの展開予定は,この3タイトルのみですか?
朝倉氏:
ほかにも2タイトルほど,かなり尖ったジャンルを用意していますので,公開できるタイミングでお話しします。2013年度のゲームポットはかなり攻めていきますよ。
モバイルゲームはスマホネイティブアプリを中心に一挙7タイトルを展開
4Gamer:
それでは,モバイルゲーム事業についてもお聞かせください。2012年度のモバイルゲーム事業はいかがでしたか?
ご存じのとおり,2012年度のモバイルゲーム市場は「パズル&ドラゴンズ」の躍進に代表されるように,スマートフォンのネイティブアプリが本格的に立ち上がってきました。
あとはディー・エヌ・エーとグリーがソーシャルゲームを海外展開していくなかで,日本で培われたモバイルゲームの何が受け入れられ,何が受け入れられないのかが,ある程度見えてきています。
そうした状況のなか,2012年度のゲームポットは,引き続きでMobageをプラットフォームに,トレンドに沿ったリアルタイムギルドバトルゲームなどを展開してきました。またスマホネイティブとしては,2012年末に「ゆるロボ製作所 ふぃーばー」,2013年2月に「狩りともSP」を展開しています。
4Gamer:
それらのネイティブアプリは,既存タイトルの拡充またはスマホネイティブ化ですよね。
青田氏:
はい。それ以外の部分で,ネイティブアプリの開発体制を整えていた1年間でした。2013年度は,その成果を順次お見せしていく予定です。
4Gamer:
ちなみにこの1年で,ネイティブアプリがヒットする傾向もある程度ハッキリしてきましたよね。たとえば“本格”を謳って,開発もプロモーションもかなり注力したタイトルが,意外に受けなかったり。そういった部分はどうお考えですか?
朝倉氏:
そういう意味だと,企画の立脚点が定まってきた感がありますね。「電車に乗っているときに,5分で遊べるゲーム」という感じで。
青田氏:
市場がもっと拡大して,求められるものが分散すると,本格的なゲームもいいんでしょうけれど。今は,一つウケると皆がそこに集中する段階なので,本格的な内容だと「ああ,コアなゲームだね」で終わってしまいます。
朝倉氏:
今の市場では,パズドラより難しくしちゃいけないんじゃないかとすら思いますよ。あとは,電車の中で他人に画面を見られたとき,恥ずかしいものはダメだろうと(笑)。
4Gamer:
狩りともSPとゆるロボ製作所 ふぃーばーの調子はいかがですか?
青田氏:
おかげさまで,狩りともSPのiOS版は2013年度に入ってから50万ダウンロードを超え,App Storeのランキングでも最高2位を記録しました。要因としては,Mobage版からユーザーインタフェースを大きく変更し,スマートフォンに最適化したことと,プレイヤー層の違いを考慮して,仕様やゲームバランスを根本から設計しなおしたことが挙げられます。また,そもそも狩りともは,1体の敵を皆で攻撃したら面白いだろうというコンセプトで作られたゲームなので,そのソーシャル性がスマートフォンでもお客様に楽しんでいただいけていると考えています。
もう一方のゆるロボ製作所 ふぃーばーは,前作にあたるゆるロボ製作所と合わせると,100万ダウンロードを記録しています。内容的には,ゲームというよりもマスコットアプリに近いので幅広い層にマッチしますが,カジュアルなモバイルゲームなのに3Dグラフィックスを使っているところが,新鮮なものとして受け止められたんじゃないかと分析しています。
4Gamer:
ちなみにネイティブアプリの開発は,内製ですか?
青田氏:
そうです。かつてメビウスオンラインを手がけていたスタッフも参加していますし,昨年設立したGamepot Koreaでも開発を進めています。
4Gamer:
なるほど。そういったことを踏まえ,2013年度のモバイルゲーム事業はどうなるのでしょう?
2013年度上半期に,新作7タイトルをリリースします。実は2012年度にリリース予定だったものも含まれているのですが,モバイルゲームでもゲームポットは攻めていきますよ。
4Gamer:
差し支えない範囲で,どんなタイトルがリリースされるのか教えてください。
青田氏:
今お話しできるのは,そのうち4タイトルです。まず2013年6月に,Mobageにて「ガーディアンスピリッツ」をフィーチャーフォン/スマートフォン向けにリリースしました。これはブラウザベースのタワーディフェンスで,カードゲームやリアルタイムバトルの多いMobageタイトルの中では,チャレンジングなタイトルです。FlashとJava Scriptベースの双方で,同じゲームを動かすというのは技術的な課題も多かったのですが,内容的にも見栄え的にも面白いものに仕上がったと思います。
4Gamer:
なるほど。
青田氏:
その次が,狩りともSPのAndroid版で,まあ新作とは言っても内容的にはiOS版と一緒です。こういったゲームは,オンラインでの協力プレイはもちろん楽しいのですが,実は隣にいる友人知人と一緒に盛り上がるのが楽しかったりもするんですよね。そういう意味では,今までiOSでしか遊べなかったところにAndroid版が加わるので,プレイヤー層が拡大することに期待しています。
4Gamer:
分かりました。そう言えばゆるロボシリーズの新作もありましたね。
青田氏:
「ゆるロボ vs わるロボ」ですね。ゆるロボ製作所のスピンオフという位置付けで,ねじ子を操作する3Dアクションゲームです。多くのファンが楽しめるよう,シリーズで好評のロボットがワラワラ表示される要素をフィーチャーして,かつ難度も下げているのですが,ゆるロボ製作所よりはハードルが高いかもしれません。
このタイトルも,あまりモバイルゲームでは見ないジャンルですから,我々としてはチャレンジですね。
4Gamer:
ビジネスモデルはどうでしょう?
青田氏:
ゆるロボ製作所は広告モデルでしたが,今作ではコンティニューなどの部分で有料サービスを導入しています。基本的にはアクションゲームですから,たくさんお金を使ったから有利になるということはありません。
4Gamer:
それでは4本目のお話をお願いします。
青田氏:
2013年8月に,Gamepot Korea開発のiOS/Android両対応タイトル「進軍のクルセイダー」をリリースする予定です。これは進軍型RTSで,複数のユニットを操作して,登場する敵を倒しステージをクリアしていくタイプの,どちらかというと一人で遊ぶゲームですね。グラフィックスは2Dですが,ユニットの操作と戦略の組み合わせで新しいゲーム性を模索しており,チャレンジポイントとなっています。
4Gamer:
いずれのタイトルも,何かしらのチャレンジが入っていると。
青田氏:
ゲームポットは,強力なIPを持っているわけではないので,お客様に何をどうやって提示していくかが重要になります。そういう意味では,内容でも見た目でも,ほかにない何かで勝負しなければなりません。その上で,コンセプトをシンプルにして企画を進めてきました。もっとも,全部が全部,お客様に面白いと評価していただけるかというと難しいとは思いますが,次のステップにつながる可能性を広げようと,数多くのタイトルを投下していきます。
2013年度はゲームポットの原点に立ち返りプレイヤーが喜ぶサービスを追求
4Gamer:
こうしてお話を聞いていると,PCオンラインゲームでもモバイルゲームでも,主流ジャンルをあえて外している印象を受けます。多くのタイトルを展開するわりに,代表ジャンルのMMORPGやモバイルカードゲームの話がないというのも,ちょっと興味深いですよね。
そもそもゲームポットの行動指針に,「驚きと楽しさとネットエンターテイメントを追求する」「ほかがやっていないことをいち早く実践する」「365日,ユーザーのためのサービスを追及する」という項目があるんです。果たしてこれが実現できていたかと考えた結果が,今日お話ししてきた内容だと思うんですよ。
ゲームポットの方針を決める会議では,「普通に運営が続けられて,お客様もそこそこ満足してくれる。しかしゲームポットがそれでいいのか。行動指針を実現できているか」と考えて議論を詰めていきました。そのなかで,「実は,こんなことをやりたいと思っているんです」という意見が次々に出てきたんです。それを突き詰めてタイトルを決めていったから,尖ったラインアップになったんじゃないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。
朝倉氏:
「お客様に面白いものを提供しよう」という思いの裏側には,常に「オレ自身がやりたい」という思いがあるはずです。たとえば僕がトップダウンでプロジェクトを誰かに任せても,そのスタッフがやりたいと思っていなければ,面白いサービスにはならないでしょう。CORE MASTERSやMirror Warのサービスを検討したのも,まずは社内の誰かが「面白いゲームなのでゲームポットでやってみたい」と言い出したからです。そうやって自問自答し,いろいろ仕込んでいった結果,ようやく2013年度に皆さんにお見せできる段階にまでなったわけです。
4Gamer:
一朝一夕で決まったことではなく,ある意味でゲームポットの原点に立ち返って決まったラインナップというわけですね。
朝倉氏:
あと2013年度は,全社を挙げてゲームをプレイします。やっぱりゲームのサービスを提供する以上,スタッフ全員,ゲームを知っておく必要があります。
オンラインゲームもモバイルゲームも,すべてのデータを把握できますが,それが逆によくないこともあるんですよね。やっぱり一番大事にするべきなのは,実際にゲームを遊んで,プレイヤーとしてお客様と触れ合うことで見えてくる部分です。そこにデータの裏付けがあって,初めて「いいもの」と言えるんですよ。
データは結果に過ぎませんから,それは定量的なものです。じゃあそれが定性的にどうなのかと言うことは,実際にゲームを遊んでみないと分かりません。つまり「新しい取り組みについて,お客様がゲーム内で喜んでいた」「翌日,数字を見たら確かに上がっていた」と,双方を理解することが重要なんです。
4Gamer:
データがなぜそうなっているのか,因果関係を理解していないとダメだと。
朝倉氏:
ゲームを見ずに「データがこうなっているから大丈夫です」というのは,非常に危険なんですよね。実は2012年度,ゲームポットもそういう状態に陥ってしまい,僕自身,数字のことを言いすぎたと反省しました。
ただこれは,PCオンラインゲームだからできる話なんですよね。何だかんだ言っても,明日,急にお客様がゼロになることは絶対ない。だから考える時間があるんです。ところが一般的なモバイルゲームでは,お客様が一気に激減することもあるので,大変だなと思いますよ。
4Gamer:
そのあたり,モバイルゲーム担当の青田さんはどうでしょう?
青田氏:
もちろん,朝倉が言うような側面はあります。しかし逆に言うと,数字を見ているだけでは何も変わりませんから,そこから先,どうやったら面白くできるか,何を提供できるかを考えることのほうが大事ですよね。結局,どんなプランを立てるのかなんです。
朝倉氏:
そうなんですよね……たとえば,グッズ展開でぬいぐるみを作るにしたって,企画書の段階ではいくら儲かるのかなんて分かるわけがないんです。
そもそも僕自身,ペーパーマンのプロモーションでテリシアの着ぐるみやテーマソングを作ったとき,お客様が喜ぶだろうという以外の根拠がありませんでしたからね。「それ,ビジネス的に何の意味があるんですか?」と聞かれても,「いいんだよ,イベントで踊っていれば」と答えましたから(笑)。果たして,2012年度に現場のスタッフが同じことを言ったとして,それが実現したかどうか……。
当然,ビジネスである以上,費用対効果は考えなければなりませんが,マネジメントする側としては,数字に捉われすぎず,かついい意味でのプレッシャーを現場のスタッフに与えるようなバランスで臨む必要があります。そういう反省を踏まえて,2013年度はスタンスを変えてやっていこうと。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,ゲームポットの2013年度の展開について,あらためて意気込みなどをお願いします。
朝倉氏:
いろいろお話ししましたが,最終的には,いい意味で「ゲームポットってバカだよな」とお客様から言われるようなことをやっていきたいですね。愛情を持ってバカにされるくらいが,長く付き合っていただける秘訣なんじゃないでしょうか。
かつてゲームポットのタイトルは「新しいアイテムが売り出されたから,ご祝儀で買うか」と言っていただけましたが,今,果たしてそれだけのサービスを提供できているのかということを,この1年間すごく考えました。それで2013年度は,全部ひっくり返して原点に戻ったわけですが,おかげさまで今,社内は非常に活気にあふれています。今後はそれが皆さんにどんどん伝わるんじゃないでしょうか。
青田氏:
モバイルゲーム市場は,現在,ソーシャルゲームを作っていた人,コンシューマゲームを作っていた人,オンラインゲームを作っていた人と,さまざまな分野からの参入があります。そういう意味では,多様なチャレンジができる市場のはずなんですが,実際にはカードゲームなど特定のジャンルばかりが目立っています。
そうした状況の中では,繰り返しになりますが,ゲームポットには強力なIPがありませんから,なかなか勝ち目がありません。ゲームとしての面白さで勝負していかないと,ゲームポットとしての存在意義がなくなってしまいます。まあ,これはゲームポットという企業としての都合ですが,我々が面白いと思っているかぎり,同じく面白いと思ってくださるお客様が少なからずいるだろうと。逆に,我々が面白いと思わないものを,誰が面白がってくれるのかという思いがあります。
4Gamer:
PCオンラインゲーム市場とモバイルゲーム市場を,より面白くしてくれる展開に期待しています。本日はありがとうございました。
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