インタビュー
“ゾンビ”を題材にシリアスドラマを展開するガマニアの新作ブラウザゲーム「感染×少女」。ゲームシステムと本作の魅力をゾンビディレクターに聞いた
ガマニアのブラウザゲームというと「Web 恋姫†夢想」に代表されるような村ゲー+美少女カードゲームの印象が強い。しかし,本作は,美少女キャラの育成が面白さのキモになっている部分は共通しているものの,今までのブラウザゲームにはないシリアスなストーリーとゲーム性を持ったタイトルだという。
ストーリー面では,なんといっても“ゾンビ”の存在が大きい。ゲームはもちろん,映画/漫画/小説などでもよく目にする題材ではあるが,本作でどう扱っているのだろうか。今回は,ガマニアのゾンビディレクターこと生天目未来(なまためみらい)氏に本作のゲームシステムについて詳しく聞いてみた。
シリアスなゾンビ物語を展開。“死”を意識させる表現もあり
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,本作の概要から教えてください。
生天目未来氏(以下,生天目氏):
本作は,東京湾に浮かぶ架空の都市「渚輪区(なぎさわく)」が舞台となっており,そこで謎のウイルスが蔓延するところからゲームはスタートします。このウイルスは空気感染で人々を“ゾンビ”に変異させてしまうのですが,一定年齢層の少女だけはなぜか感染から免れて,ゾンビからの攻撃に耐えているという設定です。
主人公達は,“人間”の拠点として機能している遊園地に集まり,生き残った少女達と助け合いながら,渚輪区から脱出するために奔走し,同時に事件の真相へと近づいていく……というのが大枠ですね。
4Gamer:
ブラウザゲームというと,ゲームシステムに重点を置かれているイメージですが,本作ではストーリーも重要視しているようですね。
生天目氏:
はい。弊社が開発/運営を行っているブラウザゲームの中で見ると,感染×少女はストーリーに比重を置いたタイトルだといえます。ほかのブラウザゲームでもストーリーはありますが,感染×少女ではほかに類を見ないほどシリアスな展開が楽しめますし,またボリュームもあって物語の読み応えも十分だと思いますよ。
4Gamer:
ゾンビという,ある意味キャッチーな題材を扱ったゲームは,FPSなどではよくありますが,シミュレーションやRPGが土台になっているブラウザゲームではあまり見かけませんよね。
生天目氏:
4Gamer:
この手のストーリーでは,なぜゾンビになってしまうのか,という基本のところで疑問を持ってしまうのですが,そこはお約束として疑問を持ってはいけない感じですか?(笑)
生天目氏:
いえ,なぜゾンビなのかはストーリーで語られますのでご安心ください(笑)。なお,キャラクターは刀とか銃とか物騒な武器を持っています。近未来の東京で,なぜこんな武器があるのか……といったところも,ちゃんと設定があります。
4Gamer:
ストーリーをしっかり読んでいくと,なぜ世界がこうなってしまったのか,少しずつ分かっていくと。すると,序盤から伏線が張られているんでしょうか。
生天目氏:
ノベルゲームと違って一気に物語を読めるわけではありません。キャラの育成をしながら,少しずつ世界が広がっていき,それと並行して謎も少しずつ解き明かされていく感じです。そこは,感染×少女ならではの楽しみといえると思います。
4Gamer:
ゾンビに対抗する主人公ですが,こちらはプレイヤーが自分で選ぶことになるのでしょうか。
生天目氏:
最初に「白石 薫」「波間七海」「銀鏡雪華」の三人の中から,一人をメインキャラとして選択することになります。それぞれ使用武器が違い,バトルにおける性能が異なっているだけでなく,誰を選ぶかで物語が変化します。
4Gamer:
なるほど。その主人公キャラは入れ替えることはできますか。
生天目氏:
現段階では入れ替えられませんので,慎重に選んでください。とはいえ,ゲームでは主人公キャラにパートナーキャラクター4人を足した5人を一つのパーティとしてバトルを行うことになりますので,多少の違いはパーティ編成でカバーできます。見た目で選んでしまっても支障はありませんよ。
4Gamer:
主人公に選ばなかった残りのキャラを,パートナーキャラとして使うことはできますか。
生天目氏:
それもできません。ただ,主人公格のキャラをパートナーキャラとして登場させたり,新しい主人公キャラを追加したりといったことを,将来的にできないかと開発と話はしています。
4Gamer:
主人公キャラを見ると,いかにもガマニアらしい可愛いキャラを前面に押し出したタイトルという印象も受けますが。
生天目氏:
キャラだけを見ると,そうかもしれませんね(笑)。ただ,物語のほうは,お世話になった先生が目の前でゾンビに殺されてしまったりとか,“死”を意識させる表現が数多くあります。強化システムでも,薬剤を使ってドーピングを行うなど,世界観のイメージを増幅させるようなアイデアを採用しています。
4Gamer:
年頃の女子がドーピングをして身体を強化……と考えると,確かにかわいいだけのゲームではないでしょうね(笑)。従来のガマニア産ブラウザゲームを知っている人からすると,ちょっと衝撃を受けてしまいそうです。
生天目氏:
そうですね。既存のブラウザゲームを遊ばれているプレイヤーの皆さんには,良い意味で裏切られたと感じていただけると思います。
自分の好きなキャラを入手できるようにゲームシステム構築
4Gamer:
社内でテストを行った際,率直にどんな印象を受けましたか。
生天目氏:
あと,キャラをガチャで入手するのではなく,自由に入れ替えられるようにした点も内部テストで好評でした。
4Gamer:
ブラウザゲームですし,キャラは当然ガチャで入手するものだと思い込んでいました。感染×少女では,そうではないと?
生天目氏:
はい。従来のブラウザゲームだと,お客様から「新しいキャラが出ても,どうせガチャなんでしょ」といった意見も寄せられていました。しかし,感染×少女では,自分の好きなキャラを自分で選んでパーティに加えることができます。
4Gamer:
あのキャラがほしいのに,いくらお金をつぎ込んでも出ない……なんてことも多くて,それでモチベーションが下がることもありますよね。“運”に左右される部分でストレスを感じなくて済むのは,プレイヤーとしては嬉しい限りです。ちなみに“入れ替えられる”というのは,どういう意味なのでしょうか。
生天目氏:
仲間にできるキャラは,遊園地内の避難所で雇うことができるのですが,そこでは選択可能な女の子がすべて揃っています。そこから最大8人を選んで自分のパーティ予備軍に登録できます。プレイヤー側のキャラの同時登録数には限りがありますが,避難所でキャラを入れ替えて一度手放しても,育成したキャラクターレベルは引き継いだままになっているんですよ。
新しくキャラを育成し始めたけど,以前手放したキャラのほうが使いやすかったと思ったら,いつでもキャラを入れ替えられるわけです。ただし,新しくキャラを登録したり再雇用したりするためには若干のゲーム内マネーが必要になります。
4Gamer:
自分もそうですが,古いゲームでもセーブデータを消すのは惜しいと思ってしまうタイプのプレイヤーには,嬉しい仕様ですね(笑)。
生天目氏:
「どうせ遊ぶなら,自分の好きなキャラを使ってもらいたい」という我々の考えを具現化したシステムです。プレイヤーの皆さまには,自由にキャラを入れ替えてもらって,自分好みのキャラを見つけていただければと思います。
4Gamer:
キャラクター性のあるタイトルだと,そのキャラクターへの思い入れがあって,継続してプレイする意欲につながると思います。その辺りで,なにかシステム的に取り入れているものはありますか。
生天目氏:
キャラごとに設定は細かく決まっているのですが,それ以外に「キャラクタークエスト」というものが存在し,そちらをクリアしていくと,普段は見れないキャラたちの素顔が垣間見れる……かもしれません。また,サポートキャラクターだけでなく,お店のNPCなどにも「おしゃべり機能」が設けられており,会話することでゲーム内マネーなどのインセンティブを受け取ることができます。
キャラの強化具合と陣形の組み方が重要になってくるバトルシステム
4Gamer:
続いて,ゲームシステムについて聞かせてください。
生天目氏:
感染×少女は,Flashを利用したタイトルで,ジャンルでいうとアドベンチャーRPGです。ブラウザベースのタイトルですので,普段あまりゲームをしないような方にも手軽にプレイできるはずです。
ゲームシステムでは,強化システムを中心としたやり込み要素が多岐に渡っているのが特徴でしょうか。どんどんキャラクターを強化していって,最強のパーティを目指す。その過程と結果で,プレイヤーの皆さまに満足感を感じていただければと思います。
4Gamer:
ストーリーの説明でも出ていた“遊園地”が拠点となって,そこで女の子達とコミュニケーションを取ったり,強化を行ったりし,遊園地の外へ探索に出て行くイメージでしょうか。
生天目氏:
具体的なゲームの流れとしては,そうですね。探索で素材やゲーム内マネーを稼いで,遊園地で強化を行っていきます。
4Gamer:
キャラ強化はどうするのでしょうか。ガチャではないということは,同キャラを含む複数のキャラカードを手に入れることはできませんよね。
生天目氏:
キャラのレベルは,探索に出してバトルで勝利したときに経験値を入手できますので,それを積み重ねていってレベルアップしていく仕様です。お気に入りのキャラをパーティに入れて,どんどん強くさせていってください。
4Gamer:
バトルはどういった形で行われますか。
生天目氏:
あらかじめ,3×3合計9マスの中に,最大5人のキャラで陣形を組んでおきます。バトルでは,各キャラの所持スキルや能力を反映した戦いが,自動で展開されます。
体力がある直接攻撃タイプのキャラ,主人公でいうと白石 薫や銀鏡雪華は敵に近い前衛,波間七海など銃を持った特殊攻撃ができるキャラは中衛もしくは後衛に入れるのが基本です。中〜後衛の位置は,自キャラの前に味方がいると,基本的に直接攻撃を受けることはないので,体力が低いキャラでも安心です。
ただし,敵も使ってくるスキルの中には,縦一列とか範囲攻撃ができるものもありますので,絶対安心というわけではありません。相性もありますので,どうしても敵に勝てない場合,敵に合わせて陣形を組み直すことも大事ですね。
4Gamer:
キャラの強化具合と陣形の組み方が重要になるわけですね。
生天目氏:
はい。バトルの経過を見ながら,強化のポイントや陣形の組み方を考え,次のバトルに活かす感じです。また,スキルの使用でカットインが入ったりと演出面でも楽しめると思います。
毎回バトルシーンを見るのはかったるいという人には,戦闘のスピードアップや戦闘そのものをカットすることも可能ですが,最初はなるべくじっくりとバトルを観察してください。ちなみにですね,演出面ではちょっとしたお楽しみ要素もあったりします。
4Gamer:
お楽しみ要素ですか……。気になりますね。
生天目氏:
バトルでダメージが蓄積すると……そのキャラの服が破けます! 某ゲームでも似たようなシステムがありますが,以前のインタビューでうちの浅井(ガマニアデジタルエンターテインメント 代表取締役社長 兼 COO 浅井 清氏)が述べたように,台湾では2013年6月にはβテストを行っていますので,別に真似たわけではないんです(笑)。
4Gamer:
プレイヤー視点でいうと,面白ければOKだと思いますよ(笑)。半裸の女性が襲われるゾンビ映画って結構多くて,意外と親和性がありそうな気もしますね。
生天目氏:
台湾でも好評だったので,日本でも話題になってくれればと思います。
4Gamer:
ちょっと話が逸れてしまうのですが,感染×少女ではガチャ系のシステムはまったく存在しないのでしょうか。
生天目氏:
今後実装予定のものはあります。ガチャを使った「アルバム」という機能は,キャラクターの画像を集めて閲覧できるコンテンツとなっています。水着のようなセクシー系のコスチュームも入手できることもありますので楽しみにしてください。
4Gamer:
ついでに課金システムについても聞かせてください。
生天目氏:
はい。課金につきましては,「ダイヤ」を購入し,そのダイヤを使うことでさまざまなサービスを受けられるシステムとなっています。その中でダイヤと交換でゲーム内マネーを得られるサービスがありますので,こちらを軸にできればと考えています。
たとえば,ゲーム内で新たな少女を雇うにもゲーム内マネーが必要です。もちろんゲーム内でも入手できますが,頻繁にメンバーを入れ替えたり,たくさんのメンバーを鍛えたりといった場合にはダイヤ購入が有効です。
感染×少女は,日本独自の要素を追加しつつ進化していく
4Gamer:
生天目氏:
台湾版「末日少女」は,そのまま台湾サイドで開発を継続していきますが,日本の「感染×少女」はそれとは別に国内に開発担当をおいています。正式サービス以降のアップデート計画などに関しましては,日本の開発と話をしていますので,今後少しずつ日本の独自色が出していけると思います。
4Gamer:
台湾は台湾で,日本は日本で独自に進化していくわけですね。
生天目氏:
はい。不具合修正などベースのバージョンアップは,台湾と日本とで連絡を密にとって協力して行いますが,コンテンツに関しては独自に進化させていく予定です。世界観に合った日本独自コンテンツの開発を行うことは,中長期的なテーマとして考えてます。
4Gamer:
台湾と日本でストーリー展開が変わったりするんでしょうか。
生天目氏:
はい。すでに実装されている部分については同じですが,今後は別々のストーリーになる可能性もあります。
4Gamer:
アップデートの軸になるのは,やはりキャラとストーリーの追加になりますか。
生天目氏:
そうですね。キャラとストーリーは,プレイヤーの皆さまにお待たせすることなく,継続して追加していきたいです。現在でき上がっているストーリーは,台湾のものをローカライズしてアレンジしていますが,日本独自のサイドストーリーやifストーリーを追加することも考えていて,そのときは日本の作家さんにイラストやストーリーを担当してもらう予定です。
4Gamer:
シリアスなストーリーが魅力だという話でしたが,オンラインゲームなので,エンディングがなく物語が続いていきますよね。シリアスだけでなく,どこかでハッピーな部分も途中にないと息苦しくなってしまいませんか。
生天目氏:
最初は町から脱出するという大きな目的がありますが,その後の展開も考えてます。その後のストーリーでは,ちょっと安らげるような,ホッとできる物語も考えています。
4Gamer:
正式サービス以降の展開ではなにが追加されるのでしょうか。
生天目氏:
正式サービスと同時にレベルキャップが40になり,新しいマップが追加されます。中央駅はレベル20〜30向け,鳳凰軍事学校はレベル30〜40向けのエリアですね。もちろん,メインストーリーに関わる新しいキャラクターも登場します。
その後の展開としては,6月にはレベルキャップを50に引き上げて,新マップ「下水道」を,7月にはレベルキャップ60開放と新マップ「墓地」を追加する予定です。
中央駅 |
鳳凰軍事学校 |
小早川真希 |
??? |
鳴海 遥 |
立花真人 |
4Gamer:
かなりのペースで進んでいきますね。そのほか,今後の展開として考えているものはありますか。
生天目氏:
まだ決定はしていないのですが,ゾンビ関連でのコラボレーションも積極的に行っていきます。自社タイトルとのコラボレーションは,登場するキャラが騎士とか武将になってしまうので,ちょっとやりにくいかもしれませんが(笑)。
4Gamer:
実現できるかどうは別にして,個人的にコラボしてみたい作品などはありますか。
生天目氏:
世界観でいうとアニメにもなった漫画の「学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD」がピッタリだと思います。また,洋ゲーの香りがする「ロリポップチェーンソー」のようなぶっ飛んだ作品とコラボするのも面白そうだなと感じます。
4Gamer:
ゾンビのつながりは大前提のコラボなんですね(笑)。今後の展開を楽しみにしています。では,最後に4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
生天目氏:
感染×少女は,今までのガマニアにない“ゾンビコンテンツ”として開発してきました。正式サービス以降も,ゾンビ関連のキラータイトルとなるよう進化させてまいります。ゲーム内容はもちろんですが,開発/運営の動きにも注目してください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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感染×少女
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