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Intel,ハイエンドデスクトップPC向けCPUの新シリーズ「Core i7-5000番台」を発表。最上位モデルでは8コア16スレッド&クアッドチャネルDDR4対応に
そのラインナップは下記の3製品で,いずれも倍率ロックフリーの「Unlocked」モデルだ。デスクトップPC向けの8コアCPUが登場するのは今回が初めてとなる。
- Core i7-5960X Extreme Edition
8C16T,TDP 140W,CPUコア定格クロック3GHz,CPUコア最大クロック3.5GHz,共有L3キャッシュ容量20MB,PCIe 3.0 40レーン,クアッドチャネルDDR4-2133,Unlocked,999ドル - Core i7-5930K
6C12T,TDP 140W,CPUコア定格クロック3.5GHz,CPUコア最大クロック3.7GHz,共有L3キャッシュ容量15MB,PCIe 3.0 40レーン,クアッドチャネルDDR4-2133,Unlocked,583ドル - Core i7-5820K
6C12T,TDP 140W,CPUコア定格クロック3.3GHz,CPUコア最大クロック3.6GHz,共有L3キャッシュ容量15MB,PCIe 3.0 28レーン,クアッドチャネルDDR4-2133,Unlocked,389ドル
Ivy Bridge-E比で規模が4割大きくなったHaswell-E
下位モデルの差別化はレーン数が軸に
今回発表されたHaswell-Eの3モデルは,Ivy Bridge-Eコアを採用したCore i7-4000シリーズの後継製品となる。22nmの3次元トライゲート・トランジスタを採用して製造され,外回りと内回り2方向のリングバスでCPUコアとアンコア(Uncore)部が結ばれる構造だというのは,Ivy Bridge-Eから変わらずだ。
ちなみに“通常モデル”のHaswellだと,4基のCPUコアとGT2グラフィックスを統合したモデルでトランジスタ数が14億,ダイサイズは177mm2なので,Haswell比ではトランジスタ数が1.86倍,ダイサイズは約2倍である。
では,なぜ同じ製造プロセス技術を採用しながら,Ivy Bridge-E比で4割も規模が大きくなったのか。その理由は,もちろんCPUコアの数がIvy Bridge-Eの6コアモデルと比べて2コア増えたからだが,それだけではなく,共有L3キャッシュの最大容量がIvy Bridge-Eの6コアモデルと比べて5MB多い20MBになったこと,そして史上初めてDDR4メモリコントローラを採用したことも理由の一端になっているものと思われる。
Haswell-Eにおける最大の特徴ともいえるDDR4コントローラについては次の段落で紹介したいと思うが,それ以外では,3モデルの差別化ポイントがIvy Bridge-E(や“その1つ前”のSandy Bridge-E)から変わっている点が重要なポイントになりそうだ。
冒頭で紹介したとおり,最上位モデルであるCore i7-5960X Extreme Edition(以下,i7-5960X)が8コアCPUで,Core i7-5930K(以下,i7-5930K)とCore i7-5820K(以下,i7-5820K)が6コアというのは分かりやすいが,8コアモデルであるi7-5960Xは140WというTDP(Thermal Design Power)の枠内にTDPを収めるべく,動作クロックが3モデル中最低に落とされている。
ゲーム用途ではいまのところ,マルチコアのメリットがあるのは4コアくらいまでで,それ以上は動作クロックのほうが“効く”ケースが大半であるだけに,おそらくi7-5960Xよりもi7-5930Kやi7-5820Kのほうがゲーマーには向くCPUということになるだろう。
Haswell-E世代のCPUを選択するにおいては,動作クロックとPCI Express 3.0レーン数が重要なポイントになりそうである。
統合されるメモリコントローラが変わっているのだからある意味当然といえばそれまでだが,この点も念のため押さえておきたいところだ。
クアッドチャネルのDDR4 SDRAMに初対応
DDR4 SDRAMは,紆余曲折の末,2012年に半導体標準化団体であるJEDECによって正式に承認された新しいメモリ規格で,本格的に採用されるのは今回のHaswell-Eが初めてとなる。
そんなDDR4 SDRAMだが,最大の特徴は,クロックあたりの帯域幅がDDR3 SDRAM比で2倍に引き上げられているところだ。
ただし,実際の帯域幅が2倍になるわけではない。
HaswellのメモリコントローラはDDR3-1600対応だが,DDR3-1600ではメモリクロックが200MHzで,メモリバスクロックは800MHzという仕様になっている。DDR(Double Data Rate)系SDRAMは,メモリチップ内部の動作速度と比べて2倍の転送速度を実現するため,メモリチャネルのあたりの帯域幅は12.8GB/s
翻ってHasell-Eはというと,まず,メモリコントローラは「第1世代DDR4」とでも呼ぶべきDDR4-2133対応となる。DDR4-2133は,メモリクロックが133MHz,メモリバスクロックが533MHzという仕様で,DDR3-1600と比べるとクロックが下がっているのだが,帯域幅はDDR3比で2倍なので,メモリチャネルあたりの帯域幅は17GB/s強(=533×4×64bit,厳密にいえば約17.056GB/s)となる。つまり,「クロックあたりの帯域幅が2倍」と言っても,DDR4-2133の帯域幅はDDR3-1600比で1.33倍に留まるのだ。
DDR4のロードマップでは,DDR4-3200やDDR4-4266が控えているので,将来的にはチャネルあたり34.1GB/sという広帯域幅を実現することになるが,スタート時点だと,そう大きな違いがあるわけではない。
もっとも,プロセッサ同士で比較すると話は別。Haswell-EはIvy Bridge-Eから引き続きクアッドチャネル(=4チャネル)のメモリコントローラを搭載するので,トータルのメモリバス帯域幅は約68.2GB/sに達する。デュアルチャネルメモリアクセスとなるHaswellは25.6GB/sなので,実に約2.66倍という計算だ。Ivy Bridge-EのクアッドチャネルDDR3-1866だと約58.7GB/sなので,もちろんそれよりも上である。
また,明らかなメリットとしては,省電力化と動作の安定性向上が挙げられる。
省電力化のほうから紹介すると,DDR4 SDRAMの電源電圧はDDR3 SDRAMの1.5Vから1.2Vへと下げられた。
ここで少し細かい話をしておくと,DRAMではワード線(※DRAMセルのゲートを制御する線)用に2.5Vの電源が必要となる。そしてDDR3の場合,オンチップの昇圧回路によって1.5Vから2.5Vを生成していたのだが,この負担を省くためDDR4では1.2Vとは別にワード線専用の2.5V電源ラインが用意されたのだ。メモリチップ側で昇圧回路を用意する必要がなくなったことで,発熱の抑制効果を期待できるわけである。
次に安定性向上のほうだが,DDR4では,エラーを抑えるために複数の新機能が組み込まれているため,高い動作レート域においてDDR3 SDRAMよりも安定した運用を期待できる。
省電力化や安定性向上といった点は実際に使ってみないと分かりにくいというか,使ってみても分かりにくいのだが,純粋に帯域幅が向上しただけではないので,その点は押さえておきたいところだ。
チップセットにはIntel X99を採用
Haswell-Eでは新たに用意されるチップセット「Intel X99」(以下,X99)と組み合わされることになる。
X99は,20Gbit/sの帯域幅を持つ4レーンのDMI 2.0でHaswell-Eと接続され,Serial ATA 6Gbps×10とUSB 3.0×6,USB 2.0×8ポートといったサウスブリッジ機能を提供するというのが公開情報だ。最近のIntel製チップセットだと,マザーボードメーカー側の実装次第でSerial ATAとUSBのポート数を変更できる仕組みが備わっているのだが,その仕組みがX99にも採用されていると明示された資料がないため,原稿執筆時点だとその点は未詳となる。
息の長いプラットフォームになる
可能性があるLGA2011-v3
IntelのCPU製品一覧ページ「ARK」
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Core i7-5000番台(Haswell-E)
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