AMD，Carrizoを「AMD PRO A12」APUとしてビジネス市場向けに展開

　2015年9月30日5：16，AMDは，6月にノートPC向けとして発表済みの第6世代APU「Carrizo」（カリーゾもしくはカリッゾ）を，ビジネス市場向けに展開すると発表した。
　AMDは従来から，ビジネス市場向け製品に「AMD PRO」のブランドネームを与えているが，AMD PROブランドの新製品として，「AMD PRO A12-Series APU」（以下，AMD PRO A12）が追加されることとなる。
　ビジネス向けということで，4Gamer読者の大多数には縁遠い話だが，AMDのAPU戦略を押さえるという意味で，簡単に紹介してみよう。

「競合と同じ価格で，よりパワフルなビジネス向けノートPCを構築できる」

　Carrizoとは何かという話はCOMPUTEX TAIPEI 2015のレポートを参考にしてもらえればと思うが，ざっとおさらいしておくと，Bulldozer系マイクロアーキテクチャの最新版となる「Excavator」CPUコアと，「Radeon R7」ブランドのGPUコアを統合するAPUである。今回の発表は，当初，一般ユーザー向けとなるノートPC向けにリリースされたCarrizoを，ビジネス向けのAMD PRO A12として強力に推していくという話なのだ。

　AMDのKevin Lensing氏（Corporate Vice President & General Manager, Client Business Unit，Computing and Graphics Business Group）によると，安定して成長して成長している，ビジネス向け小型PCやモバイルPCの分野では，CarrizoベースのAMD PROプロセッサがとても適しているという。

AMD「PRO」は性能（Performance）と信頼性（Reliability），機会（Opportunity）の意味が込めてあるという

　PROを性能（Performance）と信頼性（Reliability），機会（Oppotunity）の3単語に“分割”して，AMD PROの優位性を語っていたが，まず性能面では，CPUコアの電力性能が従来製品（≒Kaveri）比で50％向上，GPUコアは同66％向上し，バッテリー駆動時間は最大で2倍に到達したとアピールされた。今回，具体的な製品名が明らかになったのは「AMD PRO A12-8800B」のみだが，本製品であれば，CPUコアは4基でクロックが最大3.4GHz，GPUコアたる「Compute Unit」の数は8基（シェーダコア512基）で最大800MHz動作するという。

AMD PRO A12-8800Bが市場投入される

TrustZoneはWindowsとAndroidの双方でサポートされ，ビジネスに必要なセキュリティ機能を実現できるという

　信頼性というポイントでは，ARMによるハードウェアレベルのセキュリティ技術「TrustZone」に対応した「Cortex-A5」を，セキュリティプロセッサとして搭載するという，Carrizoの大きな特徴があらためて強調されている。いわく，TrustZoneは業界標準としてWindowsとAndroidの双方でサポートされ，ビジネス向けとして十分なセキュリティを提供できるとのことだ。

　最後の機会というのはちょっと無理矢理感があるのだが，要はCarrizoによってコストを節約できるため，競合のプロセッサを使うのと同じ予算で，ストレージやメモリ，ディスプレイなどを強化できるため，より高い生産性が期待できることを，機会としているのだそうである。

AMDなら，同じ予算でよりよいものを入手できるというスライド（左）。右は「Core i5-5200U」とAMD PRO A12-8800Bの比較したもので，競合のCPUと容量4GBのメインメモリ，そしてHDDという構成を入手するのと同程度のコストで容量8GBのメインメモリとSSDを確保できるので，システム性能は上がるというスライドだ

　なお，AMDは従来から引き続き，HP（旧称：Hewlett Packard）と緊密に協業し，AMD PRO A12シリーズを搭載したPCを市場投入していくとのこと。ゲーマーがAMD PRO A12シリーズ搭載PCを手にする機会はまずないと思われるが，Carrizoが対象となる市場を広げつつあることは，心に留めておいてもいいのではないだろうか。

AMD PRO日本語公式Webページ