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印刷2015/02/17 14:53

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吉田明彦氏が「リトル ノア」のグラフィックス制作秘話を語る。トークセッション「リトル ノア・アートワークの秘密」レポート

 Cygamesは2015年2月11日,3DCGデザイナー向けの採用セミナーを東京都内で開催した。このセミナーには,新作スマホアプリ「リトル ノア」iOS / Android,iOS版は近日配信予定)でアートディレクターを務めている吉田明彦氏も登壇。「リトル ノア・アートワークの秘密」と題したトークセッションが行われ,さまざまな制作秘話も飛び出した。本稿では,その模様をレポートしよう。

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CyDesignation 取締役/「リトル ノア」アートディレクター 吉田明彦氏
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CyDesignation 代表取締役社長 皆葉英夫氏
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BlazeGames 代表取締役社長/「リトル ノア」プロデューサー 岡田佑次氏
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Cygames 3Dデザイナーチームマネージャー 谷本裕馬氏

 「リトル ノア」といえば,吉田氏の描く可愛らしい天才錬金術師「ノア」が印象的だが,実は彼女,企画段階から存在していたわけではなく,開発が中盤に差し掛かった頃に生まれたキャラクターなのだという。岡田氏によると,本作は当初,方舟を舞台にし,ドラゴンや魔法といったファンタジー要素が満載ということは決まっていたが,はっきりとした世界観は定まっていなかったそうだ。

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 そこで,あるとき吉田氏が「主人公がいたほうがビジュアルも映えるだろう」と考えて,勝手に描き進めていた(?)という女の子のイラストを提出。それがノアの誕生につながったわけだ。ちなみにノアという名前に決まったのは「方舟といえば」というシンプルな理由からだそうだ。

 また,ノアの可愛らしいキャラクター性に合わせて,もともとは“世界の滅亡”というダークな方向へ舵を切っていたゲームの世界観が,明るい雰囲気に変更された。吉田氏によれば,「アンタの知能はネズミ並みかよ」というトゲトゲしい感じだったノアの口調も,可愛らしいものに変わったとのこと。彼女が白衣風のコスチュームを着ている点については“マッドサイエンティスト”を意識したためで,もっと言えば,当時話題になっていた理系女子にヒントを得たという。

敵のマッドサイエンティストや予言者なども描かれたラフスケッチ。残念ながら,彼らはゲーム本編に採用されなかったとのこと
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 本作の舞台が方舟に決まったのは,単なる浮遊大陸ではありきたりなので何かないかと悩み抜いた吉田氏が,ひらめきでたどり着いたという経緯があるそうだ。皆葉氏と谷本氏は当時を振り返り,そうして上がってきた方舟のイラストを見て「早くこのゲームで遊びたい」「絵だけで興味をそそられた」とワクワクしたことを明かしていた。

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 この方舟は,吉田氏によるラフをいったん2Dに起こしてから3Dのモデリングへと至ったのだが,スマホ向けのゲームとしては贅沢に時間をかけ,クオリティを高めていったという。岡田氏によると,モデリングは早く仕上がったが,実機での表現にこだわったり,いろいろな動きを追加したりした結果,完成に約半年という期間を費やしたそうだ。

 方舟の本来は見えない部分(蔦の下など)に関してもガッツリ作りこんであると吉田氏が補足。さらに中央にある芝生の部分は解像度が高いため,容量的にきびしいと指摘されたが,試行錯誤を経て,そのままの解像度をキープできたと谷本氏が解説した。芝生にはループテクスチャを使用し,平坦な感じを抑えているそうだ。

 画面上では「ひし形」として表示される芝生について,一度,長方形に戻してからレンダリングし,再びゆがませてひし形にすることで,斜めの線を綺麗に仕上げた(ジャギーが出ない)とのこと。ほかにもプロペラの羽の数を増やしてアニメパターンを節約するなど,吉田氏はそんな昔ながらの手法を使っていると明かしていた。

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ノアの不思議な力「アニマ」は,特定の施設をアップグレードすることで強くなっていく。ゲーム中で重要な役割を担うこの施設は,吉田氏が魔術師のとんがり帽子をモチーフにしてデザインし,そのイラストをもとにモデリングしたら,ゲーム中の見下ろし視点では潰れた感じになってしまったため,3Dモデル自体をいじって調整したという。なお岡田氏によれば,「リトル ノア」は通常版と高画質版のグラフィックスが異なる2種類の設定を用意しており,多くの端末でプレイできるように作っているとのこと
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 方舟や施設はプリレンダリングモデルだが,巨大なボスの描写は,リアルタイムレンダリングで行われる。なお会場で公開されたボス「鉄巨人」は,ゲームで最初に遭遇することになる巨大ボスなので,動きの格好良さが印象に残るように配慮したそうだ。

鉄巨人のもとになったのは,皆葉氏が「グランブルーファンタジー」用に制作したデザインだとか。グラブルの雰囲気に沿ったものではないということでボツとなり,その後は数タイトルで採用されかけたが実装には至らず,「リトル ノア」にてようやく登場を果たしたという経緯があるとのこと(ただし兜はカットされた形で)
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 ライティングを自動で行っている点については,プリレンダリングとリアルタイムレンダリングの両方でモデルの質感をそろえるためと吉田氏が理由を説明した。また,疑似スペキュラを採用し,本来のスペキュラよりも処理負荷を抑えつつ,うまく金属的な質感を出すことに成功した事例も紹介された。

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 続いて紹介されたのは,プリレンダリングモデルの量産化と,クオリティの両立について。吉田氏がプリレンダリングモデルを使ったゲーム開発に携わるのは,本作が初めてとのことだが,普段マントの中に腕を隠しているヒーラーが,バトル時はその腕が見えるようになるなど,リアルタイムレンダリングだと避けられがちな表現にチャレンジしたそうだ。

ヒーラーのデザイン案。実際ゲームに採用されたのは上段の2タイプ
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 モデルの量産化にあたって,多彩なキャラが登場するというのもウリの本作では,1体ごとにライティングを施していては膨大な手間が必要となるため,どんな形状でも「良く見える」汎用的なライティング設定に時間をかけたとのこと。まずは基本となる素体のモデルを作成し,テクスチャや髪型を変えることでバリエーションを増やす手法によって,時間とコストを抑えているという。こうした量産化の手法は吉田氏のコンシューマゲーム開発経験によるものだが,すでに複数のキャラを仕上げた谷本氏は「同じ素体を使っているようには見えない」と,その仕上がり具合をアピールしていた。

レンダリングしたモデルの顔の影などにレタッチが施されて,より可愛らしくなっている
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吉田氏は,イラストをそのまま3Dに起こしたら鼻の位置が気に入らず,何パターンも作ったというエピソードも披露。いま考えると「どれでもよかった」そうだ……
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ゲーム内の見下ろし視点だと,フードを被ったキャラは顔が隠れてしまうため,あえて上を見上げるような姿勢でモデリングされている
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 セッションの最後には,あらためて「リトル ノア」のPVが上映された。登壇者達は,今回のトークを踏まえてゲームの仕上がりを見ると細部のこだわりに見入ってしまうと口々にコメント。吉田氏と岡田氏は,プリレンダリングモデルであってもPVでの使用に耐えられるクオリティになるように,しっかり工数をかけて作ることができたと語ってトークを締めくくった。

会場では,事前登録受付中の「LINE ペーパーダッシュワールド」のほか,Cygamesグループから今後リリースされる予定のタイトルの映像も少しだけ公開されたが,詳しくは「続報をお待ちください」とのこと
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