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PlayStationプラットフォームがついに中国で展開。中国発タイトルのグローバル展開構想も明らかにされたプレスカンファレンスをレポート
これは,2000年以降コンシューマゲーム機の製造・販売が禁止されていた中国で,2014年1月にその規制が緩和されたことによって実現したものだ。
今回のカンファレンスでもっとも大きな発表は,すでに掲載しているとおり,中国でPlayStation 4とPlayStation Vitaが2015年1月11日に発売されること,そして価格が順に2899元(約5万5600円),1299元(約2万4900円)だということだ。発売にあたり,中国では本日(12月12日)0:00に予約受け付けもスタートしている。
ちなみに,PS4については,PlayStation Cameraとの同梱版も3299元(約6万3200円)で発売される。また,今回の中国市場進出を記念して,龍のイラストが描かれた中国限定のPS4本体,およびPS Vita用ポーチも数量限定で発売されるとのことだ。
プレスカンファレンスでは,中国で展開されるタイトルについても言及された。SCEは,「KNACK」「DRIVECLUB」「リトルビッグプラネット3」「ホホクム」(PS4 / PS Vita)「Entwined」(PS4 / PS Vita)といった,日本で言うCEROレーティングAの“無難”そうなタイトルから展開していく模様だ。
興味深かったのは,中国デベロッパのタイトルである。今回,PS4やPS Vitaが販売されるにあたって,中国のデベロッパもさまざまなタイトルの開発に着手しており,国内だけでなく,グローバルでの展開も考えられているという。
その中でもとくに力の入れようが感じられたタイトルが,Snail Game(Suzhou Snail Digital Technology)の「King of Wushu」だ。ざっくり言ってしまえば武侠モノのMOBAだが,「League of Legends」のような見下ろし視点型ではなく,3人称視点のアクション性を重視したタイプになっている。本作は,PS4本体との同梱版(Free-to-Playのタイトルなので,正確にはシリアルコードが付属するモデルと思われる)も発売されるので,中国のPS4所持者の多くがプレイするタイトルになるかもしれない。
そのほか,Unity Games Chinaが,「Mr.Pumpkin Adventure」など,Unityを利用したタイトルが多数開発されていることを紹介したほか,Perfect WorldがPS4版「Warframe」のサービスを中国でも提供することなどを発表した。
続いては,中国外のデベロッパのタイトルについても発表された。最初に登壇したのはスクウェア・エニックスの橋本真司氏で,「FINAL FANTASY X/X-2 HD Remaster」の発売をアナウンス。ちなみに,カンファレンス中に発表されたタイトルで,もっとも会場から歓声が起こっていたのが本作だった。
また,日本のデベロッパからはコーエーテクモゲームスの森中 隆氏と鈴木亮浩氏も登壇し,「討鬼伝 極」と「真・三國無双7 猛将伝 完全版」を発売すると発表した。いかにも“和”なイメージの討鬼伝と,三国志の武将達が活躍する三國無双が,中国でどう受け入れられるかは気になるところだ。
以上のような展開で,2015年1月11日,ついに中国市場へ正式にPlayStationプラットフォームが上陸する。これにあたって,SCEは「高い技術によるハイクオリティなゲームを届ける」「中国の開発者や政府と協力していく」「中国の家庭にPlayStationを届け,中国のゲーム市場に新たな成長を促進する」という3つの目標を掲げているとのこと。
これからどのようにして中国にコンシューマゲーム市場が根付くことになるのか,SCEの手腕に期待したい。PS4の世界累計販売台数は2014年9月の時点で1350万台を達成しており,これに中国市場が加わることで,どこまで伸びることになるのかも気になるところである。
カンファレンス終了後には,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアの織田博之氏,スクウェア・エニックスの橋本真司氏,コーエーテクモゲームスの「討鬼伝 極」プロデューサー森中 隆氏と「真・三國無双」シリーズプロデューサー鈴木亮浩氏に合同インタビューの場が設けられた。最後に,この模様をお伝えして本稿の締めとしよう。
中国のコンソールゲーム機市場を今日から育てていく。SCE織田博之氏インタビュー
――まずは本日の発表会の感想をお願いします。
織田博之氏(以下,織田氏):
単に「PlayStationのプラットフォームを中国に持ってくる」ということではなく,中国のデベロッパさん達などと一緒にこれからマーケットを作っていくという我々の姿勢は,お伝えできたのではないかと思っています。満を持して発表させていただきましたが,ホっとしているというのが正直なところですね。
――価格はかなり頑張ったな,という印象なのですが,あの価格設定にした理由はどういったものになるのでしょうか。会場からは歓声が上がっていましたが。
織田氏:
「納得できる価格にしよう」と,我々やパートナーのみなさん,流通の方々などで相談した結果です。実は発表前,中国のネット上では,「PS4は2999元ぐらいでは?」「いや,それは楽観的だろう,3499元だな」といった予想がにぎわっていて,そこに2899元という価格を出したので,驚かれたのかもしれません。
――ソフトウェアはパッケージ版とダウンロード版の両方を販売するのでしょうか。
織田氏:
はい,両方準備しています。
――発表会ではPS4だけでなくPS Vitaへの反応も良かったように見えましたが,中国では携帯ゲーム機はどのように見られているのでしょうか。
織田氏:
市場調査をしたところ,学生からのニーズが高いですね。中国は,学生寮に住んでいる学生が多いのですが,そういった方はプライベートスペースがあまりありませんから,携帯ゲーム機を好むようです。
日本のタイトルに興味を持たれているだけでなく,中国のデベロッパから「PS Vita向けに作りたい」という声もいただいています。
――ローンチ時には何タイトルぐらい発売されるのでしょうか。
織田氏:
私が知りたいです(笑)。中国では,タイトルを販売するのにセンサーシップ(検閲)を通過して認可をもらう必要があるので,それ次第なんです。そのため,どのタイトルをどのタイミングで出すかは調整中になります。
――中国で販売するにあたって,例えばコードを入れないとソフトがプレイできないといった,海賊版対策は行われているのでしょうか。
織田氏:
そういった仕組みは入れていません。PS3,PS4,PS Vitaに関してはジェイルブレイク(※セキュリティホールを突くなど,何らかの方法でゲーム機や携帯電話などの機能制限を取り除き,メーカーの意図しない方法で動作できるようにすること)されておらず,マーケットに行っても海賊版のソフトが存在していませんから。そういった意味では,ソフトウェアメーカーさんには,安心してソフトを出していただける環境かと思います。
――今回,PS4とPS Vitaが中国市場で販売されるにあたって,中国のデベロッパの反応,空気感はどういったものでしょうか。
織田氏:
非常にポジティブですね。新しい何かが起きるのではないかという期待感を,皆さん持たれているようです。一方で,中国は世界最大のPCオンラインゲーム市場でもあり,そちらでうまくいっているデベロッパからは様子を見たいという声もあります。「待ちに待っていた!」というのと,「お手並み拝見」という両方の気持ちがあるのではないかと思います。
――中国で展開するにあたってセンサーシップが非常に重要かと思いますが,その勘どころというのはつかめているのでしょうか。
織田氏:
基準については非常にクリアで,ゲーム市場の発展には「健康的である」ということを考えなければいけません。ですから,暴力表現やエロチックな表現,政治的な表現を含むタイトルについては,センサーシップに出す前に配慮します。
――発売日が1月11日というのは,どういった狙いがあるのでしょう。
織田氏:
2015年は2月19日が中国の旧正月の元旦にあたり,その直前は日本のボーナス商戦か,それ以上に市場が盛り上がる時期です。ですから,その商戦期に合わせたタイミングでのリリースになります。
――PS4はグローバルで9月の時点で1350万台と,大きなヒットを飛ばしています。ここに中国市場も追加されるわけですが,販売台数の目標はありますか。
織田氏:
1台でも多く皆さんに手に取っていただきたいですし,目標は大きく出たいところですが,中国のコンソールゲーム機市場は,まさに今日から作っていかないといけません。まずは台数をどうこうというよりは,中国のゲーム産業を育てていくという気持ちでいます。
――最後に,今後の抱負をお願いいたします。
織田氏:
中国市場には非常に期待しています。それと同時に,まだまだ乗り越えないといけないハードルがあることも理解していますから,少しでも多くのゲーマーにPlayStationを届けられるよう,一歩ずつ着実に頑張って行きたいと思っています。
PS4でも過去のFFを遊べる導線を用意したい。スクウェア・エニックス橋本真司氏インタビュー
――本日の発表会はいかがでしたか。
橋本真司氏(以下,橋本氏):
5年ぐらい前からSCEアジアの皆様とどうやったら中国にタイトルが展開できるかという話をしていたので,ようやく実現できたという想いですね。
中国のクリエイターの方もたくさんいらっしゃって,日本人とは違う発想を持っていたのが興味深かったです。
――今回,FINAL FANTASY X/X-2を中国市場に投入しましたが,なぜこのタイトルを選んだのでしょう。
橋本氏:
もともと,PS3が中国で出るかと思っていたのですが,PS4とPS Vitaのみということで,自分達が持っているタイトルの中で出せるものを考えて,FINAL FANTASY X/X-2を選びました。
――X/X-2のPS4版が発表されたのは,我々にとってもサプライズでした。会場では大きな歓声が挙がっていましたね。
橋本氏:
今まで並行輸入で遊んでいた方はいると思うのですが,今回正式に遊べるようになることを発表して,10年以上前のタイトルで歓声をいただけるのは,幸せなことですね。名作はいつの時代になっても受け入れられるということで,うちのクリエイター達も勇気付けられると思います,
――橋本さんとしては,今後はX/X-2以外のタイトルも中国市場に投入していきたいとお考えですか。
橋本氏:
本当は,X/X-2に限らず,ほかの過去のFINAL FANTASYも,PS4で遊べる環境を整えたいと考えています。我々の持っているFINAL FANTASYの資産はPS3までのものばかりですが,世界的にはPS4への移行が急速に進んでいますし,中国の場合,そもそも据え置き機が,PS4からです。そのため,せっかくの名作が遊べなくなってしまうことに危機感を覚えています。かといってPS4への移植もサクっとできるわけではないので,コンテンツホルダーとして地道にPS4でも遊べる導線というのを用意していかないといけないですね。
コンソールゲームの勢いを取り戻すきっかけに。コーエーテクモゲームス鈴木亮浩氏,森中 隆氏インタビュー
――本日の発表会の感想を教えてください。
鈴木亮浩氏(以下,鈴木氏):
三国志発祥の地での発表ということで楽しみだったんですけど,ファンの皆様の盛り上がりが嬉しかったですね。
森中 隆氏(以下,森中氏):
中国でPlayStationが展開されることで,関わるクリエイターも増え,このプラットフォームから生まれるゲームの世界が,より広がっていくかと思います。それが嬉しく感じられました。
――今回,「真・三國無双7 猛将伝 完全版」と「討鬼伝 極」が発表されました。三国志は中国なので受け入れられやすいかと思うのですが,討鬼伝は“和”の世界ということで,どういった感覚でプレイされると思いますか。
森中氏:
日本の感覚で歴史モノのような受け入れ方は難しいですよね。純粋にアクションとして楽しめるゲームなので,まずはそこから入ってもらって,日本の歴史にも興味を持ってもらえると嬉しいです。
鈴木氏:
一方で三國無双の場合は,すごく好きで本当に受け入れてくれるファンが多い印象があります。
――会場のムービーでは音声は日本語でしたが,発売時もそのままでしょうか。
鈴木氏:
音声は日本語のままです。アジア圏はとくに日本の声優さんの人気が高くて,「むしろそのままがいい」という人も多いので。仮に吹き替えたとしても,日本語音声を入れてほしいと言われるぐらいです。
――中国版で機能が増える,あるいは減るといったことはありませんか。
森中氏:
基本的にはありません。あえて言えば,討鬼伝 極の引継ぎ機能は,そもそも引き継ぎ元の「討鬼伝」が販売されていないので,中国版ではカットされるというぐらいです。
――最後に,今後の中国での展開についてコメントをお願いします。
森中氏:
中国でPS4が成功してほしいです。爆発的に広がる可能性のある市場だと思うので,ここで成熟できれば,コンソールゲームにまた勢いが出てくるのではないでしょうか。そうなるよう,我々も成功に貢献していきたいですね。
鈴木氏:
コンソールゲーム機市場は,欧米に比べて日本は少し元気がありません。アジアはとくにスマートフォン向けタイトルに勢いがあるので,コンソールゲームが中心のコーエーテクモゲームスとしては負けないようにしたいと考えていますが,その点で,伸びに期待できる中国市場にぜひ成功してもらいたいですね。
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