新要素が多数追加された「東京新世録 オペレーションバベル」のプレイレポートをお届け。PC版のプレイヤーにとっても楽しみの多い一本

　MAGES.から2015年4月30日に発売されるPlayStation Vita用ソフト「東京新世録 オペレーションバベル」（以下，オペレーションバベル）のプレイレポートをお届けする。本作は，2014年7月24日に発売された「東京新世録 オペレーションアビス」（以下，オペレーションアビス）の直接的な続編にあたる作品で，エクスペリエンスが手掛けるダンジョンRPGの現時点における最新作となっている。

　古くからのエクスペリエンスファンならすでにご存じのとおり，前作のオペレーションアビスは，PC用ソフトとして発売された「ジェネレーション エクス」3部作の第1作「ジェネレーション エクス −コードハザード−」と，第2作「ジェネレーション エクス −コードブレイカー−」をリファインし，1つにまとめた作品だ。そして，このたび発売されるオペレーションバベルは，同シリーズの第3作「ジェネレーション エクス −コードリアライズ−」のリメイク作品となる。


　このあたりのつながりを詳しく説明しだすとキリがないので，ざっと時系列だけをまとめておくと，「ジェネレーション エクス」シリーズはそれぞれ同じ年の1学期，2学期，3学期のストーリーとなっており，「迷宮クロスブラッド」（PC/Xbox 360/PS Vita）ではさらにその後の物語が描かれている。つまり，オペレーションバベルはこれら一連の流れの中で，ちょうど真ん中の時期にあたるわけだ。


　したがって，オペレーションバベル単体でプレイしても楽しめないことはないが，ストーリーを十分に満喫するためには，先にオペレーションアビスをプレイしておきたいところ（逆に「迷宮クロスブラッド」はストーリーの独立性が高いので，これ単体で遊んでもそれほど問題ない）。オペレーションバベルでは，基本的なゲームシステムも，ほぼオペレーションアビスのものが継承されている。


　また，すでにオペレーションアビスをプレイしたという人なら，前作で残された謎が解き明かされる本作は，ぜひセットで遊んでおきたい。これらは2つで1つの大きな物語と見ることもでき，本稿も基本的にオペレーションアビスのプレイを前提とした内容になっている。シリーズ初心者はストーリーや世界観，ゲームシステムなどの基本中の基本を詳しく紹介した，オペレーションアビスのレビューを合わせて参照してほしい。

左から，通常版と限定版のパッケージ

「東京新世録 オペレーションバベル」公式サイト

物語の舞台はいよいよ“3学期”へ

クロスブラッドの力でエンブリオの脅威に立ち向かえ

　さて，前作オペレーションアビスで「スプロールテラー」事件を無事解決した特務隊エクスの面々だが，平和が訪れたのも束の間，本作では上空に突如として謎の巨大物体「エンブリオ」が現れたことで，東京は再び未知の脅威に晒されることとなる。しかし，エクス隊長の御舟アリスと，前作のエクス隊は国連の要請で海外に出張中のため，この事態には新たなエクス隊のメンバーが当たることとなり，その一人がプレイヤーであるアナタというわけだ。

上空に突如出現した，胎児のような姿の巨大物体「エンブリオ」。見るからにヤバそう

　編集部の目と鼻の先にある銀座で発生したハザード事件に巻き込まれ，危ういところを日々野規子に救われたアナタは，その素質を見出されてエクス隊にスカウトされる。パッケージにも用いられているイメージイラストには，日本刀と武者鎧を装備した武士のような出で立ちの男子生徒が描かれているが，これがそのまま本作の主人公になるというわけではない。
　プレイヤーはこのキャラクターをそのまま使ってもいいし，新しく自分の分身を作り直してもいい。パーティメンバーについても同様で，あらかじめ用意されたものをそのまま使うか，新規に作成するかはプレイヤー次第だ。

銀ブラ中に異形に襲われて大ピンチ！　ボクなんか食べてもおいしくないですよ……（震え声）

……と，そこに颯爽と日々野規子が登場。間一髪のところを救われる。それにしても，シリーズ中，最も落差の激しい活躍を見せてくれるのは間違いなくこの子だと思う

　ちなみに，PC版ではシリーズ3作品を通じてキャラデータの引き継ぎが可能となっていた。しかし，“3学期”は上述の事情で前作までのパーティがゲーム終盤になるまで使用できず，やはり新規メンバーで冒険を始めることになる。
　今回のオペレーションバベルではキャラデータの引き継ぎはできないが，オペレーションアビスのセーブデータがあると新要素である「エクステンドスキル」「エクステンドスペル」の付いたアイテムが入手できるので，ちょっぴりお得。エクステンドスキル/スペルについては後述する。

ゲーム開始直後，PC版にはなかったアリスのパーティを操作するイベントパートが挿入される

　キャラメイクの流れは前作と同様で，キャラクターの外見についても通称“福笑い”こと「クラシックモード」と，用意されたポートレートの中から自分好みのものを選ぶ「ベーシックモード」の2通りの方式から選択できる。ベーシックモードのポートレートは，本作で新規に追加されたもののほか，前作の限定版特典だったスクール水着や，雑誌特典DLCのダークヒーローなども選べるようになっており，種類が多くて目移りしてしまう。

今回も，クラシックとベーシックの2通りのキャラグラフィックスが選べるのでひと安心

ポートレートは全45種類。それぞれに3パターンのカラーバリエーションがある

　また，本作からの新要素としては，念願の「クロスブラッド」がついに解禁された。これは，メインブラッドのほかにもう1つ，サブブラッドを設定できるというもので，2つのブラッド（＝職業）のスキルを，1人のキャラクターで使えるようになる。
　ちなみにPC版では，サブブラッドにいくつかの制限（サブブラッドには経験値が入らない，レベル上限はメインの半分など）が設けられていたが，オペレーションバベルではそうした制限を撤廃。取得経験値の3分の2がメイン，3分の1がサブのブラッドに分配されるようになり，利便性が大きく向上している。

念願のクロスブラッドが解禁。王騎士/拳法士と聖術士/召術士の組み合わせがオススメだ！　と書こうと思ったら同じことがマニュアルにも載っていた……やるじゃない

　一方で，選択できるブラッドは前作と同じく全10種類で，新規のブラッドはない。残念ながら，今回もシズラーブラッドを使うことはできない。なぜだー，アイリスー！　ただし，本作では半数以上のブラッドに何らかの新スキルが追加されているので，こちらを楽しみにしておいてほしい。

新キャラクターや新ダンジョンが追加

PC版から再構築されたストーリーに要注目

　基本的なゲームの流れは，CPO司令部で受けたさまざまな任務や課題をこなしていくというもので，このあたりはオペレーションアビスをプレイした人には説明不要だろう。今回のストーリーは，東京の破壊をもくろむエンブリオの使者である7体の情報生命体，「セブンハンド」との戦いを軸に展開される。

セブンハンドの1人，ヴァルプルギス。すごいおっぱいとすごい魔力の持ち主だ

　PC版との大きな違いの1つとして，エンブリオ側の勢力に新キャラクターの「キエル」という謎の少年が登場することが挙げられる。キエルの参戦によって，七世ヒカルにまつわるストーリーに大きな変更が加えられた点が今回の見どころ。とくに，終盤の展開はPC版のプレイヤーでも「えっ，そうきたか！」と思わされるものになっている。というか，筆者は実際ちょっとびっくりした。

エクス隊の前にたびたび姿を現す謎のイケメン，キエル。セブンハンドではないようだが……

　また，七世ヒカル自身，PC版からすっかり見た目と性格が変わってしまって，もはや別人に近い。PC版での，ちょっと儚げな雰囲気が好きだった筆者としては少なからず残念に思う部分もあるが，オペレーションバベルでの元気で小生意気なヒカルも，これはこれで大変可愛い。

すっかり別人になったヒカル。ツインテールだとか，幼児体型だとかは過去に置いてきました

　一方，セブンハンドの皆さんも，オペレーションバベルではそれぞれ個別に，新規デザインが描き起こされている点が目を引く。中でも多くのプレイヤーが気になっているのは，オペレーションアビスにも登場した村正真麻とムーラのような姿のセブンハンドではないだろうか。彼女が一体何者なのかはゲームをプレイして確かめてほしい。

俺の真麻ちゃんがこんなに凶悪なはずがない……と思いたいのだが，この姿は一体！？

　そして，村正関連では「村正回廊」という新規ダンジョンが追加されている。これは単にクリア後のやり込み要素というだけでなく，割と序盤のうちからストーリーに絡んで少しずつ攻略していくことになる。当然ながら，それによってストーリーの流れも変わってくるわけで，ここでどのような仕掛けが待っているのかも，PC版からのプレイヤーにとっての注目ポイントと言えるだろう。

村正回廊での新イベント。もちろん，大いに必要あると思います！

新要素「エクステンドスキル/スペル」は超強力

これまでのゲームシステムの進化が着実に反映された一本

　最後に，システム面での変更点や新規要素を紹介しておきたい。まず，最も大きなものとしては，上述したエクステンドスキル/スペルの導入が挙げられる。これは，分かりやすく説明すると「デモンゲイズ」における神器スキルのような存在で，スキルやスペルの力が秘められた特定のアイテムを装備しているあいだは，ブラッドに関わらずそのスキル/スペルを使用できるというもの。これは，はっきり言ってかなり強力だ。

エクステンドスキル/スペルの付いたアイテムは，装備品のオプション欄に1つだけ装備できる

　もともと本作では，クロスブラッドによって1キャラで2つのブラッドのスキル/スペルが使えるのだが，ここにもう1つ，ブラッドやレベルに関わらず任意のスキルを追加できると考えれば，その利便性が容易に理解できるだろう。
　例えば，オペレーションアビスのセーブデータ引き継ぎ特典の1つである「キリコミクラフト」には，本来ならば武術士がレベル6で習得する「斬り込み・壱」のスキルが秘められており，これを装備するだけで誰でも，レベル1からこのスキルが使えるようになる。これで強くないわけがない。

微妙な違いではあるが，情報が整理されてステータス画面がすっきり見やすくなった

　これらのエクステンドスキル/スペルが付与された装備品は「○○クラフト」もしくは「○○アーツ」という名前になっており，装備品の「オプション」欄に任意に1つだけ装備可能。これらのアイテムは，開発ラボでの配備やダンジョン内でのハック＆スラッシュによって入手できる。
　オプション欄の装備品には，従来から主にステータス向上系の効果を持った「○○タスク」というアイテムがあるが，装備欄の空きは1つなので，エクステンドスキル/スペルとどちらを取るかには頭を悩ませることになりそうだ。

一部のものは開発ラボで配備できるが，アーツ系の装備品はハック＆スラッシュで集めるのがメイン

　また，戦闘面では「剣の街の異邦人」（PC/Xbox 360/PS Vita）にあった超高速戦闘が本作にも導入されている。これは，△ボタンを押すだけで直前のターンに入力したコマンドをリピートでき，さらにもう一度△ボタンを押すと演出をスキップして一瞬で戦闘結果が分かるというもの。これは非常に便利かつ快適で，一度使ったら手放せなくなるほど。ただし，調子に乗ってボタンを連打していると，気づけばパーティが半壊していたりするので気をつけよう。

クロスブラッドとエクステンドスキル/スペルで多彩なスキル構成が可能になり，バトルがかなり楽しくなった。おまけに，超高速戦闘まで導入されて快適さもアップ

　このほかにも，前作ではお世辞にも視認性がいいとは言えなかった戦闘コマンドが見やすくなっていたり，オートパイロットの移動速度がアップしていたりといった細かいブラッシュアップが行われており，全体的に遊びやすさが増している。
　ただ，個人的に気になっていた隊列変更のUIが前作から改善されていないのは残念。ブラッドに関わらず，好きなポートレートを設定できる本作で，区別の付きにくいキャラクターの目元部分だけのイラストで隊列を決めさせるのはさすがに少々不親切と感じる。せめて，キャラ名かブラッドのアイコンなどを一緒に表示してほしかったところだ。

キャラクターの目元のイラストだけで隊列を決めるのは正直つらいです……

　総括として，オペレーションバベルは，オペレーションアビス＋デモンゲイズ＋剣の街の異邦人÷3といった風情になっており，エクスペリエンスがこれまで積み上げてきた進化が着実に反映されたゲームだと言える。ダンジョンRPGとしての完成度の高さについては，書くまでもない安定感があり，そこに新キャラクターや新システムなどが加わったことで，オペレーションアビスのプレイヤーだけでなく，PC版からのファンにとっても楽しみの多い一本に仕上がっている。

「東京新世録 オペレーションバベル」公式サイト