プレイレポート
[E3 2015]3画面仕様×可動筐体の「Forza Motorsport 6」を体験。ただし,残念ながら製品版は3画面に対応せず
余談ながら,「Gran Turismo」シリーズがいまだにPlayStation 4に提供されておらず,今回のE3 2015でもとくに発表がなかったため,やきもきしているファンも多いのではないだろうか。
なにはともあれ,早くもXbox Oneの「二周目」となったForza Motorsport 6(以下,Forza 6)をE3 2015で体験してきたので,その模様をお届けしたい。
「Forza Motorsport 6」公式サイト
Forza 6で採用された
最新版「Forza Tech」エンジンの新要素とは
まずは,Forza 6の開発元であるTurn 10 Studiosでクリエイティブディレクターを務めるBill Giese氏に話を聞いて得た,Forza 6の基本情報をご紹介しよう。
Forza 6のゲームエンジンはXbox向けの初代「Forza Motorsport」(2005年)から連綿と拡張と改良を続けてきた,独自の「Forza Tech」エンジンの最新版が採用されている。
Forzaシリーズは,走行状態によって前輪がある方向に整列させられようとする「アライニングトルク現象」をシミュレートした初のレーシングゲームとして知られるが,Forza Techエンジンの最新版では,タイヤの材質によるグリップ力の違いの再現や,四輪サスペンションの挙動シミュレーション改良などを行ったという。
Giese氏はそのうえで,Forza 6で採用された最新版のForza Techエンジンには見どころが2つあると述べる。その1つが「雨天ドライビングの再現性向上」であり,2つめは「夜間ドライビングの再現性向上」だ。
雨天の再現については,Forza Techエンジンがサポートする148種類におよぶ路面材質が「濡れ具合」のパラメータを持ったことで,リアルなウェットコンディションを再現できるようになった。具体的には,草,粘土質,砂利,ターマック,アスファルト(Forzaシリーズでは,ターマックとアスファルトを別々に管理している),コンクリート,そして各種路面をつなぐシーリングに用いられる樹脂などが路面材質として存在しており,それらの濡れ具合に応じたシミュレーションが行えるようになったという。
そのためForza 6では,例えば水たまりに高速で突っ込んだ際,ビジュアルとして水しぶきが跳ね上がるだけでなく,水に突っ込んだ車輪が摩擦力を失い,一方で,水に突っ込んでない後輪が車体を進めようとすることで発生するオーバーステアが再現できる。
Giese氏は実際に,実機でのハイドロプレーニング現象を再現して見せつつ,「開発スタッフも実際に雨の中で運転して,Forza Techのシミュレーション結果が正しいかどうかを検証したんだ」と笑っていた。ちなみに筆者は,雨天のサーキットで大クラッシュをした経験があるので,あまりにもリアルなForza 6の再現性に,正直,心臓を握られるような恐怖を覚えてしまった。
夜間というテーマについては,24時間耐久レースにおける「夜の闇」や「漆黒」の再現を目指したそうだ。これは車両シミュレーションの部分というよりはグラフィックスエンジン部の新機能といったところだろう。
新搭載の機能は,ヘッドライトに照らされたところ以外が,黒く沈んで見えるというもので,これまでの夜間描写のように,環境光によってうっすらと遠くが見えたり,映画的に青階調主体になっていたりといったものとは一線を画している。
気になるForza 6のグラフィックスペックは,画面解像度が1080pで,フレームレートは60fpsを従来作どおり維持。新たな雨天,夜間のシーンにおいても,これが保たれる。
敵車のAIには,Microsoftが誇るクラウドコンピューティングプラットフォーム「AZURE」を駆使した機械学習型の,「Drivatar」が採用されている。
Drivatarシステムは,人間プレイヤーの運転特性を取得して,これをクラウド側で学習したうえで,AIプレイヤーとしてゲームに登場させてしまうというシステムであり,本作のDrivatarは,前作Forza Motorsport 5と派生作「Forza Horizon 2」のドライビングデータから構築したものだとGiese氏は説明した。
このDrivatarの仕組みは前作から導入されたものだが,おそらくレーシングゲームで機械学習型AIを採用しているのは,現時点ではForzaシリーズくらいだろう。
Forza 6では新コースが10も追加
ただし日本のコースはなしか
Forza 6のそのほかの情報にも触れておこう。
まず,ドアを開けたり,内装を観察したりと,超高精度で再現された車両を自由自在に眺め回せるコンテンツ,Forza Vistaに対応した車両は,本作では全80メーカー,約450車種にのぼる。
収録サーキットは前作に収録されたものはすべて持ち越されているほか,新コースとしてネルソン・ピケ・サーキット,ブランズハッチ,デイトナ・インターナショナル・スピードウェイなど,計10種類が追加されるという。
前作では日本のサーキットが収録されず,日本のファンは肩を落としたが,Forza 6での収録はあるのかと聞いたところ,Giese氏は悲しそうな表情を浮かべつつはぐらかしてしまった。察するに,本作にも日本のサーキットは収録されないようだ。
そのため,日本のサーキットが収録されたシリーズ作品は,2011年の「Forza Motorsport 4」が最後ということになるが,大ドンデン返しに期待したい。
オンライン対戦モードは,24台同時対戦に対応しており,ドライバーの技量に応じたリーグ制の対戦システムが新たに導入されるという。
キャリアモードは「ボリューム」と呼ばれる章立ての構成になっており,各ボリュームは車種,メーカー,レースタイプによってカテゴリーが分けられるという。ボリュームによっては,自動車の歴史を学べたり,プロレーサーや評論家の解説がついたりするとのことなので,「レースもできる車の百科事典」的な側面が強まったようだ。
各ボリュームは「シリーズ」によって構成されており,各シリーズをクリアすることで,新たなレースモードが次々にアンロックされていくシステムになっているとのことだ。
1時間半並んで3画面×可動筐体でForza 6をプレイ
MicrosoftブースにはForza 6の試遊台が展示され,来場者の高い人気を集めていたが,とくに長蛇の列になっていたのが,カナダのVRXの可動筐体「iMOTION」を使った3画面システムの試遊台だ。
「Forza Motorsport 3」とForza Motorsport 4では,Xbox 360を3台,そしてテレビを3台用意すれば家庭でも楽しめたこの3画面プレイだが,前作でこの機能は削除されてしまった。Forza 6でこの機能は復活するのか? とTurn 10のスタッフに聞いたところ「製品版には搭載されない。ごめん」と言われてしまった。残念だ。
非常に人気が高いうえに,日本の取材記者は北米ジャーナリストのように優先列に並ぶことができなかったため,筆者は一般来場者と共に1時間半並び続け,やっとプレイできた。その様子が下の動画になる。
ブレーキを踏み込んでちゃんと減速し,前荷重にしてからステアリングを切らないと曲がらない。という実車らしいドライブフィールは,Forza Motorsport 5から大きく変わらず,前作をプレイした経験があれば,それをそのままForza 6に活かすことができるだろう。
Drivatarシステムらしい,人間味のある挙動は見事。こちらの進路を邪魔するものもいれば,フラフラと進路を空けてくれたりする敵車もいたりして,最速レコードラインをひたすらトレースする機械的なAIと対戦しているのとはひと味違う感覚が楽しめた。
ブースでは晴天,雨天,夜間の3コースが選べたが,さすがに,全コースを可動筐体に並んでプレイするのは気が引けたため,3画面+可動筐体で晴天コースをプレイし,雨天,夜間のコースを比較的列の短いゲームパッドによる1画面の試遊台でプレイした。
雨天の場合,水たまりに入ると速度が落ちやすくなるうえに,前述した挙動不安定にもつながるため,晴天時のラインとは異なったコース取りが有効になることも多く,ゲーム性の幅を広げていると感じた。
夜間では,コースを覚えていないと,コーナーが突然,迫ってきてステアリング/ペダル操作が遅れるため,スリル満点だ。ゲームとはいえ,アクセルのベタ踏みが怖い,という体験ができた。敵車のテールランプの動きが,その先のコースの曲がり具合のヒントになるわけだが,中には間抜けなDrivatarもいるため,その挙動を100%信用できなかったりもする。そこがまたスリリングで楽しい。
なお,Forza 6は,日本でも2015年9月17日に発売されることが決定した(関連記事)。Xbox One自体の巻き返しにForza 6が貢献することを期待しつつ,発売を待ちたい。
「Forza Motorsport 6」公式サイト
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