インタビュー
「ケイオスドラゴン 混沌戦争」チーフプロデューサーの秋山隆利氏にインタビュー。iOS版の配信開始でスタートラインに立った「ケイオスドラゴン」プロジェクトの今後に迫る
各社がテレビアニメ(ケイオスドラゴン 赤竜戦役),ボードゲーム(ケイオスドラゴン 覇王春秋),スマホゲームといったメディアミックスコンテンツを提供し,さらにそれらが連動して新たなコンテンツを生み出していくとされている。
本作のAndroid版は7月2日にサービスが開始されたものの,“本来予定していた設計とは異なる仕様や想定外のバランスになっている”状態で配信されてしまい,各種仕様やゲームバランスに関する問題が多く発生してしまった。しかし,その後修正が続けられ,7月30日のVer1.0.4アップデートにより対応は一段落し,現在は“本来”の仕様でプレイできるようになっているとのこと。
今回4Gamerでは,本作のチーフプロデューサーである秋山隆利氏にインタビューを実施。ようやく“仕切り直し”の状態になったといえる本作について,アニメやボードゲームとの具体的な連動などを含めた,今後の展開について話を聞いてきた。
なお,Android版で発生した一連の問題に関しても,秋山氏およびインタビューに同席してくれた運営ディレクターの遠藤峻亮氏に,経緯と対応についての説明を受けている。
iOS版の配信開始で本作を知った人はもちろん,Android版配信時からプレイし続けている人,Android版のトラブルで止めてしまった人も本稿に目を通してほしい。
「ケイオスドラゴン 混沌戦争」公式サイト
「ケイオスドラゴン 混沌戦争」ダウンロードページ
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「ケイオスドラゴン 混沌戦争」チーフプロデューサー 秋山隆利氏 |
「ケイオスドラゴン 混沌戦争」運営ディレクター 遠藤峻亮氏 |
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,「ケイオスドラゴン」プロジェクトがどのようなものなのか,これまで詳しくお聞きする機会がなかったので,本題に入る前にあらためて教えていただけますか。
秋山氏:
「ケイオスドラゴン」プロジェクトは,星海社さんのRPF(Role Playing Fiction)である「レッドドラゴン」を原案としています。
「レッドドラゴン」では,虚淵 玄さん,奈須きのこさん,紅玉いづきさん,しまどりるさん,成田良悟さんという5人のクリエイターが,それぞれ1人のキャラクターを演じて,物語を紡ぐというものでした。
4Gamer:
RPFは「レッドドラゴン」で使われていた独自の呼称で,いわゆるテーブルトークRPGのリプレイの発展形みたいなものですよね。それがどのように「ケイオスドラゴン」プロジェクトにつながるのでしょう。
秋山氏:
「ケイオスドラゴン」プロジェクトでは,「レッドドラゴン」の世界観をベースに,アニメーション,ボードゲーム,スマートフォンゲームが連動してコンテンツを展開していきます。定義的にはメディアミックスに相当しますが,同じ思想のもとで集まった人々が,ユーザーさんを交えてコンテンツを生み出すという部分は,他に類を見ないものになるはずです。
4Gamer:
具体的な連動や展開時期についても教えてください。Android版の配信と同時に放送が始まったアニメ「ケイオスドラゴン 赤竜戦役」では,ゲームで使える装備アイテムが入手できるという取り組みが行われていますが,ほかにも予定があるのでしょうか。
第一話連動アイテム「忌ブキの帽子」 |
第四話連動アイテム「楽紹のマスケット銃」 |
今の段階で実施しているのは,アニメの放映中に発表されるキーワードを入力するとオリジナルの装備アイテムがもらえる,という連動のみですね。
4Gamer:
アニメの過去放送分や連動アイテムの入手などに関して,iOS版のゲームで「ケイオスドラゴン」のことを知った人は出遅れたと感じてしまうのが残念なところですよね。アニメの過去放送分はオンデマンド配信サービスを利用すれば視聴できますが,基本的に最新話以外は有料ですし。
秋山氏:
このインタビューが掲載される頃には発表していると思うのですが,iOS版でゲームを始めてからアニメに興味を持った方のために,過去放送分を一挙に無料で視聴できる特番をニコニコ生放送で配信します。8月23日16:00からの放送となりますので,ぜひこの機会を利用してください。
また,iOS版の配信に合わせて,放送が済んでいる分のアニメ連動キーワードを公式サイトであらためて告知しています。キーワードの入力とアイテムの受け取りは8月31日23:59までとなりますので,早めに利用していただければと。
4Gamer:
それならiOS版でゲームを始めた人も遅れを取り戻せそうです。
では次に,ボードゲーム「ケイオスドラゴン 覇王春秋」との連動はいつ頃始まって,どんな形になるのかを教えてもらえますか。
ボードゲームが完成していないので,まだ具体的な時期や仕様はお答えできないのですが,スマホゲームの「混沌戦争」で今後実装される“国家戦争”の結果が,私達がスタープレイヤーと呼んでいる,クリエイター達のプレイするボードゲームの状況に影響を与えます。そして,ボードゲームのプレイによって変化した情勢が,「混沌戦争」側に影響を与えるという形を予定しています。
4Gamer:
もう少し詳しく教えてもらえますか。
秋山氏:
「混沌戦争」とボードゲームは,物語の時間軸としてアニメの10年後という設定で,7つの国が舞台になります。
現在は開発を進めている段階なので,確定していない部分もあるのですが,国家戦争ではユーザーの皆さんが7つの国のいずれかに属し,スタープレイヤー達が演じる「国家元首」の指揮のもと,戦うことになります。
4Gamer:
なるほど。その国家元首が,小高和剛さん,武井宏之さん,成田良悟さん,鋼屋ジンさんと下倉バイオさん,PEACH-PITさん,松野泰己さん,三田 誠さんの8人だと。スタープレイヤー達のリプレイは,どうやってゲームとのつながりを持たせる予定なのでしょうか。
秋山氏:
まだ決まっていない部分もあるのですが,スタープレイヤーのプレイは,Web上でお伝えする形になる予定です。
アニメを見てから「混沌戦争」を遊ぶことで,世界設定や7国家の情勢との関わりが分かるのと同様に,スタープレイヤー達がボードゲームで遊ぶ様子をお届けすることで,「混沌戦争」をより楽しんでいただけるのではないかと考えています。興味を持っていただけたら,ぜひボードゲームもプレイしていただきたいですね。
さまざまな修正とアップデートで,より遊びやすい「ケイオスドラゴン」に
4Gamer:
ここからは,「混沌戦争」の話をお聞きしたいと思います。
Android版は7月2日に配信開始されましたが,ゲームバランスや仕様関連の不具合などさまざまな問題が発生して,順調な滑り出しとはいきませんでしたね。
秋山氏:
まずは,我々の不手際でプレイヤーの皆さんにご迷惑をおかけしてしまったことをお詫びいたします。今回の問題は,プログラムやゲームバランスなど多岐にわたる不具合だったため,修正に時間をいただくことになってしまいました。遊びづらい状態が続いてしまい,申し訳ありませんでした。
4Gamer:
プログラム関連の不具合をゼロにするのは難しいとは思いますが,率直に言って不具合が多いという印象でした。
秋山氏:
おっしゃるとおり,原因は我々の不手際と判断の甘さによるもので,本当に申し訳なく思っています。起きてしまったことをなかったことにはできませんが,開発・運営の管理体制見直しを徹底して,プレイヤーの方々の信頼を取り戻せるような運営体制を構築していきます。
4Gamer:
ゲームバランス関連でも,クエストの難度の高さやクエストクリア報酬が本来の仕様と異なっていたことが,その補填内容と併せて公式サイトで告知されましたが,こちらはどういった経緯で発生したのでしょうか。
秋山氏:
主に運用上の不手際でして,配信前に設定していた古い仕様で配信されてしまったのが原因です。
クエストに関しては,チュートリアルが不親切なところも理由の一つだったのですが,プレイを始めて30分もしないうちに壁に突き当たるような難度で,ユーザーの皆さんには,苦労しながら遊んでいただくような仕様になってしまいました。
4Gamer:
チュートリアルでは,武器や防具の装備について省略されていたので,それでつまづいた人もけっこういたかもしれませんね。キャラクターの見た目はデフォルト状態でも装備品を付けているように見えるので,実は丸裸でクエストに挑んでいることに気付きにくかったですし。
クエスト報酬の少なさは,どのような理由だったのでしょうか。
主に竜玉に関してのお話になると思いますが,こちらもクエストの難度と同様に,古い仕様で配信されてしまったのが原因です。
開発中は,竜玉の価格を1個100円という設定にしていて,クエストの報酬などもそれに応じた内容にしていました。ただ1個100円の設定だと,App Storeで為替レート変更が行われて単価が上がったときに,iOS版では実質値上げになってしまいますし,Android版との差が出てしまいます。
App Storeの為替レート変更は,我々にはどうしようもできない部分ですので,そういった変更が入ったときにも対応できるように,竜玉の価格設定を1個100円から1個20円にして,価格が上下したときに販売個数で調整できるようにしたんです。
4Gamer:
そういえば,先日の為替レート変更のときは開発者向けの告知が直前で,多くのメーカーが対応に苦労していましたね。
秋山氏:
ですが,配信直後のゲームでは1個100円で設定したときの報酬になってしまっていて,本来の意図よりもかなり少なくなってしまっていたんです。その後,クエスト報酬を本来の設定に戻すとともに,すでにゲームを進めていたユーザーさんには,進行状況に応じたお詫びとして,竜玉を配布させていただきました。
不具合やバランスに関連した問題は修正を行ったので,現在は正常なゲームバランスと安定した動作でプレイしていただけます。
4Gamer:
今は,当初に想定されたとおりのゲームバランスで遊べるわけですね。
過ぎたことを振り返っても仕方のないところもありますが,アニメの放送開始に無理に合わせて配信するよりも,配信を延期するなり,課金関連の要素を制限した状態で配信するなりしたほうが良かったのではないでしょうか。今後は,プレイヤーのためにも同じようなミスが起きないようにしてほしいです。
秋山氏:
はい,もちろんです。遠藤をはじめとしたスタッフが,ローンチ以降文字どおり不眠不休でがんばってくれたおかげで,これまで起こった大きな問題の解決や基本的なシステムの改良は一とおり終わりました。現在は細かい部分のチェックを行うフェーズに入っています。
配信開始以降,予定していた姿に少しでも早く戻せるよう修正と調整を行い,ようやく修正が一段落付くところまでたどり着きました。プレイし続けてくれたユーザーの皆さんのためにも,これからイベントやキャンペーンなどを提供して,楽しんでいただけるように守りから攻めの運営姿勢へと転じていこうと考えています。
秋山氏:
7月30日に実施したVer.1.0.4アップデートでは,バトルの難度を易しくする,初期レベルからレアリティの高い装備を使えるようになる,クエストに必要なAPの回復速度をアップさせるなど,さらに遊びやすくするための調整を行いました。
今後のアップデートでは,戦闘システムの面白さも追求していく予定です。詳細はまだお話できる段階にないのですが,ダンジョンにモンスターを狩りに行くコンテンツなどを予定しています。
残る6か国の物語は今後定期的に実装予定。追加キャラクターは“量より質”を重視する方針に
4Gamer:
配信して間もないゲームに要求するのは酷かもしれませんが,ストーリーを売りにしているにもかかわらず,「混沌戦争」では,メインストーリーのボリュームが物足りないと感じるところがありました。今後はどのくらいのペースでストーリーが増えるのでしょうか。
7月の時点でストーリーは1章のみだったので,物足りなく感じるユーザーさんも多かったかもしれません。
今後は,1か月あたり2章分のシナリオ追加を予定しています。1章ごとに新しい国のストーリーが解禁されて,7つの国すべてを自由に行き来できるようになったあとは,それぞれの国での物語が展開されていくという形です。
9月中旬のアップデートでは4章まで実装する予定で,皆さんが気になっているであろう「ジャグルドグル」も登場します。
4Gamer:
ということは,遅くとも年内には7つの国すべてに行けるようになるわけですね。
秋山氏:
はい。ストーリーに関しては,すでに準備ができているものもあるのですが,アニメとの兼ね合いでまだ公開できないという部分もあるんです。公開を前倒しにすることも考えているのですが,ネタバレにつながってしまうので難しいかもしれません。
4Gamer:
ちなみに,ジャグルドグルといえば,頭に袋のようなものを被った指導者のダイム・ディアスが印象的ですが,あの国の人々は全員同じような格好をしているんでしょうか?
秋山氏:
ダイム・ディアスだけが特別で,さすがにそういうことはありません(笑)。
4Gamer:
今のトレンドでは,仲間にできるキャラクターが豊富なことをウリにしているスマホゲームが多いのですが,それと比べると「混沌戦争」では,キャラクターが少ないという印象を受けてしまいます。その辺りは,どのような計画になっているのでしょうか。
秋山氏:
「混沌戦争」では,それぞれのキャラクターについて掘り下げていく方向で,むやみに数を増やさないという方針なんです。現時点では毎月1〜2体ずつ増やしていく計画になっています。
4Gamer:
追加手段は,主にガチャとなるのでしょうか。
秋山氏:
お話する機会がなかったので,正しく伝わっていない状況になってしまっているのですが,新しいキャラクターを仲間にする方法は,実はガチャだけではないんです。
仲間にするには,そのキャラクターに縁がある装備が必要になるというのが「混沌戦争」の基本システムですが,入手経路は複数あります。たとえば,「絆クエスト」を進めることで手に入ることもありますから,やり込めばガチャを引かなくても新キャラクターを入手できるんですよ。
4Gamer:
「ガチャを引いて新しい仲間に出会う」というスマホゲームの一般的な手法とは,アプローチを変えている部分があるわけですね。
秋山氏:
我々としては,「ケイオスドラゴン」の世界観を大事にしたいと考えていますし,ユーザーさんにはゲームを遊んでもらったうえで,物語に没頭していただきたいと考えています。
多くのスマホゲームでは,ガチャなどでキャラクターを引き当てると即座にパーティに加わりますが,僕らの世代が体験した古き良きRPGでは,ゲームを進めることで新しいキャラクターが仲間になる,という流れが基本でした。当然,キャラクターも物語の一部となりますし,彼らの性格や行動から感銘を受けたり考えさせられたりすることもあります。
また,そういった体験以外にも,同じゲームを遊んだ皆でワイワイと話して,体験を共有して膨らますことができるというのも,RPGの魅力だと思うんです。ですので,「混沌戦争」では,物語が語られたあとに晴れて仲間になる,という手順を踏んでもらいたいんですよ。
4Gamer:
なるほど。そういう理由もあって,キャラクターの数ではなく質というか,深く掘り下げる方向性を採ったわけですね。
もともと,この「ケイオスドラゴン」プロジェクトでは,アニメとゲームの枠組の中で,テーブルトークRPGを体験したことがない今の10〜20代の方々に向けて,ストーリーテリングの楽しさを伝えたい,という発想が起点になっているところがあります。
キャラクターに縁がある場所に行ったり装備品の記憶を読み取ったりして,クエストをクリアすると新しいキャラクターが仲間になるという形式になのは,こういった理由によるものなんです。
ほかにも,アニメとストーリーが連動しているところもありますので,アニメでゲームの10年前の状況を知ってから「混沌戦争」を遊ぶと,物語がより深く理解できます。
我々としては,アニメ,スマホゲーム,ボードゲームすべて遊んでいただける状況を作ることを目的としていますが,遊んだユーザーさんが自分で物語を作るような,創作意欲をかき立てられるものにできたら本望ですね。
4Gamer:
「ケイオスドラゴン」プロジェクトには,多くの著名クリエイターが参加していますが,今後さらに増えていくのでしょうか。
秋山氏:
「ケイオスドラゴン」独自の世界観として,それぞれの国の情勢から文化,食生活まで細かな設定とガイドラインがあるので,自由気ままにできるというわけではありません。ですが,新たなクリエイターさんやアーティストさんに参加していただき,いろいろな表現をしていただきたいと考えています。
4Gamer:
設定やガイドラインは,細部まで厳密に決められているんですか?
秋山氏:
ある程度は融通の利く設定になっています。たとえば,現実世界にあるセーラー服をそのまま取り入れるようなことはできませんが,セーラー服のような現代的な服のエッセンスを「ケイオスドラゴン」の世界の国や文化に合わせた形で取り入れる,というような再解釈は許されています。
「何でもあり」ではないのですが,製作委員会やガイドラインがあるからといって,フットワークが鈍るようなことはありません。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
遠藤氏:
「ケイオスドラゴン」に期待していただいた方々を裏切るようなスタートになってしまい,本当に申し訳ありませんでした。
Ver.1.0.4アップデートを実装して,ストレスなく遊べる土台がようやくでき上がったと思います。ここから先は,7つの国を順次公開して世界が広がっていきますし,新しい要素も追加していきます。
初動の時点で止めてしまった方も,「混沌戦争」をもう一度プレイしてみて,あらためて評価していただければ幸いです。
秋山氏:
いろいろな不手際があったことを,あらためてお詫び申し上げます。また,このような状況の中,プレイし続けていただいたユーザーの皆さんには本当に感謝しています。
開発や運営の体制も含め,修正やアップデートで改善を行い,再スタートを切れる状態にたどり着くことができました。iOS版もようやく配信されましたし,ユーザーの皆さんの期待に応えられるよう,これからどんどんパワーアップしていきます。
これから佳境に入っていくアニメ同様,ストーリーの面白さは確約できます。ゲームを一度止めてしまった方も,まだ遊んだことのない方も,「ケイオスドラゴン 混沌戦争」をぜひプレイしていただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。今後,プレイヤーの期待に応えられる運営を期待しています。
「ケイオスドラゴン 混沌戦争」公式サイト
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ケイオスドラゴン 混沌戦争
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(C) SEGA Networks (C) STAR SEAS COMPANY / 「ケイオスドラゴン混沌戦争」製作委員会
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