プレイレポート
赤毛の剣士がスマホへ上陸。国産アクションRPGの傑作を気軽に楽しめる「イースIクロニクルズ」インプレッション
古参PCゲーマーにとっては言わずと知れた「イース」(日本ファルコム)が,スマホ向けアプリとしてリリースされたということで,注目している4Gamer読者も多いのではないだろうか。本稿では,初代イースのことを懐かしみつつ,本作のインプレッションをお届けしよう。
「イースIクロニクルズ」ダウンロードページ
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若い世代の4Gamer読者にあらためて説明すると,「イース」は1987年に第一作がリリースされ,現在までさまざまなプラットフォームで展開されている,日本ファルコムの看板シリーズである。1987年当時は,各社が競うように“難しい”PCゲームを作っていた時代で,日本ファルコムも「ロマンシア」「ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー」などでコアゲーマーに挑戦状を叩き付けていた。そんな時代に現れた新シリーズの「イース」は,より多くの人が楽しめるライトなゲームバランスで瞬く間にヒット。PCゲーマーの裾野を広げ,その後のアクションRPGにも多大な影響を与えた,マイルストーンともいえる一作である。
物語は,赤毛の剣士アドル・クリスティンが,呪われた国エステリアに漂着するところから始まる。エステリアの各地では,銀製品が次々と盗難に遭うという不可解な事件が多発しており,アドルが究明に乗り出したところ,かつてこの地に繁栄していた古代王国イースの存在が明らかになる。そしてアドルは,イースの歴史が記された6冊の書物を探し求め,物語のクライマックスでは,不気味にそびえ立つダームの塔へ挑むことになる……といった流れだ。
「イースI クロニクルズ」はプラットフォームがスマホ/タブレットということで,タッチパネルでの操作に対応している。バーチャルパッドにより移動方向は360度フリーで(上下左右の4方向ではない),そのまま敵に体当たりすれば攻撃が行える。また,移動しながら別の場所をタッチすることでダッシュも行えるが,これが結構スピーディで,オールドゲームのベタ移植にありがちな古臭さはそれほど感じなかった。
当時の経験者なら,ここで“半キャラずらし”(※注)が気になるかと思うが,今作では軸が少しでもズレていたり,斜め方向から攻撃したりしても,ノーダメージで戦える。スピーディなダッシュアクションと相まって,ガンガン突っ込んで戦える印象だ。
※注:敵に体当たりする際,真正面からではなく半キャラ分ずらすことで一方的にダメージが与えられるという,イースシリーズにおける伝統的なテクニック
なおバーチャルパッドは,画面内のどこをタッチしても,そこを中心点として操作が行えるのだが,個人的には慣れるまでに少々苦労した。例えば10インチ級のタブレットをテーブルに置き,人差し指などを使って操作すると,方向転換が思いのほか難しかったりする。一方スマホを両手で持ってプレイする場合は,左手親指でタッチできる範囲が限られているため,比較的遊びやすい印象だ。
ちなみに,本作ではBluetooth接続のゲームパッドにも対応している。アナログスティックだと微妙な方向転換も可能で,色々試した結果,やはりゲームパッドが最も遊びやすいと感じた。
個人的に「イース」といえば古代祐三氏によるBGMを真っ先に思い出してしまうのだが,今回のプレイでは新たなステージに入る都度,攻略の手を休めて,3つのBGMモードを切り替えながらしみじみと聞き入ってしまった。本稿の冒頭部に掲載しているPVでは,オーケストラやエレキギターなどをふんだんに使っているクロニクルズモードのBGMが一部聞けるので,ぜひチェックしてみてほしい。
個人的にはゲーム性云々というより,当時の記憶を辿るための“きっかけ”として,本作をたっぷりと堪能させてもらった。PCゲームを遊ばせてもらうため友達の家に連日押しかけたり,山下 章氏が寄稿していた月刊パソコン誌を回し読みしたり,そういえば「イース」のサウンドトラック(カセットテープ)を友達に借りっぱなしだったな……などなど,「イース」を遊ぶだけで沢山の思い出が蘇る。この時代に,あえてスマホで本作をプレイしながら,そういった思い出に浸るのも悪くはないものだ。
本作は,本腰を入れてプレイすれば1日でクリアできるボリュームで,iOS版が600円,Android版が500円という価格設定で販売されている。思い出補正を抜きにすると,主に操作性の面で「スマホ向け新作タイトルとして万人にオススメできる」とは言いづらいのだが,「イース」というタイトル名を聞くとさまざまな想いが去来するという人にとっては,この「イースI クロニクルズ」を強くオススメしたい。それも,購入/プレイのハードルが低いスマホ向けアプリならではの楽しみ方と言えるのではないだろうか。
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