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東京レトロゲームショウ2015:第17回「Tom Clancy\'s Splinter Cell」で,暗いところが大好きで体脂肪率の低い中年工作員の活躍を体験したい
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印刷2015/09/03 12:00

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東京レトロゲームショウ2015:第17回「Tom Clancy's Splinter Cell」で,暗いところが大好きで体脂肪率の低い中年工作員の活躍を体験したい

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 Ubisoft Entertainmentのモントリオールスタジオは,現在,約2700人の開発者を擁する規模の大きなゲーム制作拠点だ。もしかしたら,単一のゲームスタジオとしては世界最大かもしれないが,設立時点では子供向けのライセンス作品を作る少人数のスタジオだった。転機となったのは2002年に制作したある作品が高い評価を得たことで,そのヒットをきっかけにして拡大を続け,今のような姿になった。すでにお気づきかと思うが,その作品こそが今週の「東京レトロゲームショウ2015」で紹介したいと思っている,「Tom Clancy's Splinter Cell」(以下,「スプリンターセル」)なのだ。これはビックリだ。

Ubisoft Entertainmentの礎を築いたともいえる男,サム・フィッシャー。シリーズ第1弾は,ヒゲの剃り跡が濃い
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 上記のようにリリースが2002年ということもあり,「レトロじゃないじゃん!」と言われてしまいそうな気がするが,大人の事情により,試しにこのあたりまで近づけてみようという魂胆だ。でも,13年前ですよ。これが0系の新幹線車両なら,そろそろ寿命で置き換えという頃合ですよ。

 さてこの「スプリンターセル」,タイトルにトム・クランシー氏の名を冠してはいるが,ストーリー,キャラクターともオリジナルで,原作小説などはとくにない。主人公の名前はサム・フィッシャーで,第二次世界大戦に従軍したはずのジェームス・ボンドと同様,最近の作品ではやや年齢不詳な感じになってしまったが,本作では一度引退した中年工作員として登場する。シリーズ第3作「Splinter Cell: Chaos Theory」(2005年)では,1991年に勃発した湾岸戦争に行ったと言っているが,生年月日はソースによって異なり,1957年生まれという説もある。そうなると筆者より2歳ほど年上だが,たぶん体脂肪率は筆者の10分の1以下だ。

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ラペリング(懸垂下降),壁登り,パイプ登りなど,年齢を感じさせないほど動きは軽やかだ。しなやか中年であるサムの動きはモーションキャプチャーではなく,手描きのアニメが使われているという。そのほうが,カッコいいからだ
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網膜スキャナでロックされたドアは,網膜の持ち主に協力してもらおう
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 サムが所属するのは,アメリカ国家安全保障会議(NSC)内部に作られた秘密組織サード・エシュロン(Third Echelon)だ。エシュロンとは軍事用語で「梯団」を意味すると同時に,現在アメリカが運用している大規模通信傍受システムの名称でもある(アメリカ政府が,その存在を公式に認めたことはないが)。サード・エシュロンは本家エシュロンがシギント(Sigint=電子情報)専門なのに対し,ヒュミント(Humint=対人情報)を行うために作られた組織だ。
 ヒュミントとは,スマートでハイテクな電子盗聴とは異なり,敵地に潜入して相手のこめかみに銃口を押しつけ,「しゃべれ!」と脅して情報を得る古式ゆかしい諜報活動のことで,サムはそんな潜入工作のベテランなのだ。ちなみにタイトルのSplinter Cellは造語で,直訳すれば「独立した細胞」となる。諜報員を「細胞」と呼ぶのは,これまた古くからの習慣だが,Splinterには「とげ」という意味もあり,サムのチクリと刺さるような活動を暗示している。総合的に,かなりいかしたタイトルだと思う。

背後からこっそり近づいて,羽交い締め。暗闇から筋肉質の男がいきなり現れて背中に抱きついてきたら,相当怖いと思う
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羽交い締めファンには垂涎の一作
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ミッションの合間には,国際社会の状況を知らせるニュースクリップが挟み込まれる
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 さて,記念すべきシリーズ第1作で敵をつとめるのは,グルジアの大統領Kombayn Nikoladzeだ。前大統領の暗殺によって大統領になった人物だが,実は彼は中国の軍部と結託して危険な企てを進めている。サムの目的は,そのNikoladzeの陰謀を阻止することにある。上記のように原作はとくにないものの,トビリシからカスピ海,ミャンマー,アメリカ東部など,世界の各地で起きる一見すると独立したミッションをサムが解決するにつれ,次第に一つの大きな物語に収斂していく展開は,いかにもトム・クランシー的だと思う。
 ただ,ちょっとばかり複雑すぎて,いまいち物語を把握し切れていないのは筆者だけではないと思いたい。オレいま,どこにいるんだっけ?

 サムの武器は,暗闇だ。闇にまぎれて誰にも見つからないように移動するステルスアクションが本作の醍醐味になっている。彼の着ているスーツには,浴びている光を感知する装置が仕込まれており,受光量がゼロになれば彼は誰にも見つからない(動いたらバレるが)。真っ暗闇だと,サムも何も見えないんじゃないかと心配する人もいるかもしれないが,大丈夫。こちらには暗視装置があり,例えば敵が暗闇でうろうろしている様子が手に取るように分かる。
 ミッションでは,暗闇を生み出すことも効果的だ。多くの照明器具が破壊可能なので,サイレンサー付きのピストルでガシャッ,と割ってしまおう。おや,急に電気が切れたぞ,と敵が照明に近づいて見上げたところに,背後から近づいて締め上げる。そして,倒した敵は,どっこいしょと背中にかつぎ,見つかりにくいところに移動させるのだ。

どっこいしょ。重いな,こいつ
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ドアを開ける前は,Optic Cableで向こうの様子を確認。さぼってテレビをみている護衛発見
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鍵のかかったドアは,Lock Pickで開け(左),邪魔な監視カメラは,ピストルで壊す(右)。壊せないカメラもあるので,要注意
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 もちろん,ピストルで狙いをつけてヘッドショットをキメることもでき,サムに発砲を許すと,序盤はかなり楽になる。とはいえ,本作の面白さはやはり,敵を華麗にスルーして,誰にも見つからず,せいぜい相手を気絶させる程度でゲームを進めていくところにある。上司のランバート大佐も,「銃は最後の手段だ」と言ってることだし。
 本作は基本的に,誰とは言わないけど最後の1人以外,誰も殺すことなくクリアできるようにデザインされている。筆者ぐらいの達人(自称)になると,中ボスだって殴り倒しちゃう。殴り倒したのに,死亡扱いになってしまうのが残念だが。また,場合によっては殺害を禁じられているミッションもあり,うっかり殺してしまうとゲームオーバーになったりする。
 ちなみに,「Splinter Cell: Chaos Theory」には,どうしてもバリバリと撃ち合いをしなくてはいけない場面があり,さらに進んで「Splinter Cell: Conviction」(2010年)では,敵を連続して撃ち倒せる「Mark & Execute」というフィーチャーが用意されたりしており,シリーズ作品は全体的にサムの戦闘力を高める方向に進化している。その点,コソコソするのが大好きな筆者としては,ちょっと残念だ。

本文には,誰も殺さずに進めると書いたが,13年ぶりにプレイしてみると,どうやってクリアしたのかどうしても思い出せないところがたくさんあって照れくさい。ええい,撃っちゃえ!
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 ミッションの進行は,サムの内耳に埋め込まれた無線機にワシントンから指示が入るので,それに従っていくことになる。話し相手はランバート大佐のほか,サポートチームのアンナ・グリムスドッティアがおり,彼らとのエスプリの効いた会話も聞きどころだ。
 本作の大きな魅力の一つは,サムのキャラ立ちのよさにある。単純なマッチョ兵士ではなく,シニカルで,生死の瀬戸際に立っても軽い冗談を飛ばすことのできる中年男(あまり笑えないが)。そんなサムの姿が,なんともカッコいいのだ。同じ中年としては,憧れちゃうね。

キャラクターのポリゴンは少なめだが,グラフィックスは今見ても美しい。それにしても,サード・エシュロンやランバート大佐,そして愛娘のサラがいずれあんなことになっちゃうとは,このときは思いもよらなかった。グリム(アンナ・グリムスドッティア)は今でも頼れる味方だが
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 2013年の「Splinter Cell: Blacklist」以降,新作の話が聞こえてこないのがちょっと気になる本シリーズだが,第1弾はおなじみのSteamやGOG.comなどで,手軽に購入できる。光と影が鮮やかなグラフィックスも古びていないし,シンプルな操作で多彩な動きが可能な操作性の良さも光っている。「スプリンターセル」シリーズの名前を聞いたことはあるが,まだプレイしたことがないという人は,ぜひ挑戦してほしい。

Steam「Tom Clancy's Splinter Cell」紹介ページ

GOG.com「Tom Clancy's Splinter Cell」紹介ページ

  • 関連タイトル:

    Steam

  • 関連タイトル:

    スプリンターセル 完全日本語版

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