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「あんぷらぐど☆げーまーず」第4回:恐怖の病原体から世界を救え! 名作ボードゲームがダイスゲームになった「パンデミック:完全治療(ザ・キュア)」
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印刷2015/07/11 00:00

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「あんぷらぐど☆げーまーず」第4回:恐怖の病原体から世界を救え! 名作ボードゲームがダイスゲームになった「パンデミック:完全治療(ザ・キュア)」

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 2009年にホビージャパンから日本語版が発売された「パンデミック」は,病原体との戦いをテーマにした協力型のボードゲームだ。「広がる病原体の脅威から人類を救う」という分かりやすさが多くのプレイヤーの心をつかみ,ボードゲームファンの間では協力型ゲームの定番として広く知られるタイトルとなった。拡張セットもすでに「パンデミック:迫りくる危機」「パンデミック:科学の砦」の2つが発売されており,この秋にはキャンペーン形式で遊ぶ「パンデミック:レガシー シーズン1」が発売予定となっている。
 そんな「パンデミック」が,この度なんとダイスゲームになった。今回は,本家のエッセンスはそのままに,さまざまな処理を単純化することでより手軽にプレイできるようになった「パンデミック:完全治療(ザ・キュア)」(以下,ザ・キュア)を紹介していこう。

※発売前に執筆した記事であるため,本稿の画像は日本語化した英語版を使用しています。

色鮮やかな病原体コマやプレイヤーコマが目を引く内容物。プレイ人数は2〜5人でプレイ時間は30分,価格は5000円(税抜)だ。拡張版ではないので,これ1つ買えば遊ぶことができる
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「パンデミック:完全治療(ザ・キュア)」紹介ページ



拡がり続ける病原体との緊張感溢れるバトル


 ザ・キュアの紹介に入る前に,まずは本家「パンデミック」の内容を簡単におさらいしておこう。
 パンデミックシリーズにおけるプレイヤーの目的は,互いに協力しながら4色のコマで表される4種の病原体を駆逐することにある。病原体はゲーム開始時にボード上の都市のいくつかに広がっており,プレイヤーは都市間を移動しながら,局地的に病原体を駆除しつつ,治療薬の開発を目指す。
 だが,病原体のほうもその間に刻々と勢力範囲を広げていき,一つの都市に病原体コマが4個以上集まると,アウトブレイクが起こって爆発的に感染が広がってしまう(アウトブレイクが8回起きるとゲームオーバーだ)。
 クリアのコツは,各プレイヤーが担当する役職それぞれが持つ特殊技能を生かして,感染拡大を未然に防いでいくこと。感染が全世界に広がりきる前に,4種の病原体すべてに治療薬を開発することができればプレイヤーの勝利となる。

 ザ・キュアでも,「4種の病原体に対する治療薬の開発を目指す」「各プレイヤーがそれぞれ異なる技能を持った役職に就き,その技能を生かして病原体を駆除していく」といった基本は変わらない。
 ただしゲームボードは大幅に簡略化され,6つの丸い地域パネル(それぞれにダイスの1〜6の目が描かれている)に変更されている。病原体コマもダイスに変更になり,感染の拡大は「袋から病原体ダイスを取り出し,振って出た目に対応した地域に配置する」という形で表現されるようになっている。

円上に6つ並んでいる円いボードが地域パネル。中央にあるドーナツ状の物体の内側が,後述する「治療センター」となっている
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病原体ダイスはこのように袋に集めておき,必要に応じて取り出す方式だ
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 各プレイヤーは手番になると,自分の役職に応じた専用ダイスを振り,出た目に従ってアクションを実行する。出目には役職ごとの特殊アクションのほか,「別の地域パネルに移動」「治療」「サンプルの収集」といった共通アクションもあるのだが,このうちとくに重要なのが「治療」「サンプルの収集」だ。

 「治療」は,自分のいる地域にある病原体ダイス1個を治療センターに移したり,治療センターにある病原体ダイス1個を袋に戻したりできる。
 一方「サンプルの収集」は,治療センターにある病原体ダイス1個に,自分の役職ダイスを重ねて役職カードの上に置くことで,病原体ダイスをサンプルとして手元に確保できる。こうしてサンプルを集めていき,合わせたダイスを振って合計で13以上の目を出すことで,治療薬は完成する。
 当然ながらサンプルが多いほど治療薬を作りやすい――13以上の目が出やすいのだが,そこに至るまではサンプルの上に重ねた役職ダイスが使用できなくなるので,ここはジレンマになっている。

 「病原体(患者)を治療センターに送り,そこからサンプルを抽出し,治療薬を作る」というプロセスは,本作のテーマをうまく再現している部分であり,この点はむしろ,本家より洗練された部分といえるかもしれない。

役職は全部で7種類。「SCIENTIST(科学者)」は治療薬作成の難度を下げ,「DISPATCHER(通信司令員)」は地域間の移動の手助けができるなど,それぞれ一芸に秀でている。各職業の特性をうまく生かして,効率的に病原体を駆除していこう
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青い病原体のサンプルをひとつ集めたところ。手に入れたサンプルは,手番の間に同じ地域にいるほかのプレイヤーに受けわたすことができる。同じ種類のサンプルはひとりに集約し,なるべく治療薬を作りやすくするのがセオリーだ
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青と黒の治療薬が完成。治療薬完成後は,対応する病原体を1つずつでなく,まとめて移動させられるようになる。これで効率よく病原体を治療センターに隔離できる

 なお,役職ダイスは出目が気に入らなければ何度も振り直しが可能だ。ただし,ハザードマークの出目が出てしまうと,「感染率トラック」が1つ前に進む。トラックが一定の箇所まで進むと「エピデミック」が起き,感染が一気に拡大してしまうから困りもの。

 また,手番の最後には「地域の感染拡大」フェイズがあり,病原体の数が増えてしまう。この「地域の感染拡大」やエピデミックによって,一つの地域に同じダイスが4個以上集まるとアウトブレイクが発生。アウトブレイクになると,3つより多い数のダイスは隣の地域に移動させなくてはならず,移動させた先でまたアウトブレイクが発生して……と連鎖的に感染が広がっていく事態に陥る。まさに危機的な状況というわけだ。

 感染トラックが進んでいくと,「地域の感染拡大」で追加される病原体ダイスの数も増えていく。そしてさらにトラックが進むと,やがてはゲームオーバーになってしまうのだ。もちろん本家と同じく,アウトブレイクが8回起きてもゲームオーバーだし,プレイが長引くほどにプレイヤー達は追い詰められていく。
 病原体との戦いに打ち勝つ術は,プレイヤー達の知恵とチームワークを置いてほかはない。このあたりの焦燥感あふれるプレイフィールは,本家とまったく変わっていないのだ。

緑色の注射器上のマーカーで示されているトラックは,左が感染トラック,右がアウトブレイク発生回数を示している。写真はあと3回アウトブレイクが起こるとゲームオーバー,という危険な状況だ
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特定のダイス目が集まると使えるイベントカードは,いざというときの強い味方。「ONE QUIET NIGHT(静かな夜)」なら地域の感染拡大をスキップできるし,「RE-EXAMINED RESEARCH(定期検査)」を使えば,治療薬作成時にダイスを振り直せる
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本家の面白さをダイスの中に凝縮


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 プレイ前は「あの名作をダイスゲームにして果たして面白いのか?」と不安だった筆者だが,システムが変わってもしっかりと本家のエッセンスを保っている本作には,正直感服させられた。どのアクションを使えばクリアに近づけるか,仲間と知恵を出し合う楽しさ。アウトブレイクが発生したときの絶望感。そして,見事世界を救ったときの達成感。それらの要素をしっかりと押さえた「ザ・キュア」は,まぎれもなく名作「パンデミック」ファミリーの一員として,恥じない面白さを備えている。

 加えて「ザ・キュア」は,より短時間に,カジュアルにプレイできるという点においては,本家よりも優れていると言っていい。プレイヤーの選択肢が幅広い本家は,より歯ごたえのあるプレイが楽しめる半面,1回のプレイに割くことになる時間や気力が大きいからだ。ゲームオーバーになったときに,すぐに「リベンジだ!」とは正直なりづらく,その点「ザ・キュア」はさくさく遊べる分,気軽に再チャレンジができるのが嬉しい。
 役職の組み合わせや難度を変えればプレイフィールも大きく変わるので,そういう意味でもリプレイ性はかなり高い。「手軽に協力プレイを楽しみたい」という向きには,もってこいのゲームなのではないだろうか。

 もちろん,ダイスの出目によってはあっさりクリアできてしまったり,逆に序盤から絶望的な戦いを強いられたりといった大雑把さを感じる部分もある。だが,それを差し引いても「手軽に遊べる」という利点は大きく,そのうちもしかすると本家から「協力型ゲームの定番」の座を奪ってしまうかもしれない。そんな予感さえ感じさせる一作だ。

 本家のエッセンスはそのままに,面白さをコンパクトにまとめた「パンデミック:完全治療(ザ・キュア)」。シリーズの入門用としても最適なので,広がりつづける「パンデミック」ワールドにこれから足を踏み入れてみようという人は,ぜひここからはじめてみてはいかがだろうか。

複数の地域でアウトブレイクが発生寸前に。どの地域から病原体を取り除けば破滅から逃れられるのか。プレイ中,プレイヤーたちはこのような究極の選択を幾度となく迫られることになる
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「パンデミック:完全治療(ザ・キュア)」紹介ページ

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    パンデミック:完全治療(ザ・キュア)

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