インタビュー
「デモンゲイズ2」発売直前インタビュー。角川ゲームスとエクスペリエンスのキーパーソンが語る発売日前倒しの背景と開発の手ごたえとは
今回4Gamerでは,プロデューサーを務める角川ゲームスの河野順太郎氏とエクスペリエンスの千頭 元氏,そしてディレクターであるエクスペリエンスの安宅元也氏の3名に,本作についていろいろと聞いてみた。
「デモンゲイズ2」公式サイト
異例の発売日2週間前倒しの理由,そしてファンの反応はどうだったのか
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「デモンゲイズ2」の発売日がいよいよ間近に迫ってきましたが,現在の心境をお聞かせください。
河野順太郎氏(以下,河野氏):
前作の発売から3年ぶりに,だいぶ時間がかかって,しかも新しい内容で続編をお届けすることに対するワクワク感と,それを無事に届けられるのかという不安がせめぎ合っていますね。
開発自体は結構前に終わっていたので,8月の半ば頃まではとくに何も思っていなかったんです。でも,発売日が2週間も前倒しになると発表されてからは,「あと1か月もない」と,さすがにファンの皆さんの声をチェックするようになりました。どのタイトルでもそうなんですが,この時期は皆さんに気に入っていただけるかどうか心配ばかりで,僕自身は不安のほうが大きいですね。
安宅元也氏(以下,安宅氏):
開発の現場としては,現在,発売後の配信を予定しているコンテンツ「PROJECT CODE -KENGOU-」の開発佳境ですから,まだ終わっていないんですよ。
千頭氏:
ですから開発スタッフは,誰も発売日を意識してないんです。「いよいよ」という気分にすらなってない。
安宅氏:
「まだまだやらなければ」「もっと面白く」という気持ちですね。
千頭氏:
ひょっとすると発売日が前倒しになったことを知らないかも(笑)。
4Gamer:
発売日が前倒しというのは,かなり異例ですよね。公式には「開発進捗が順調だったから」という旨の理由が発表されていますが,あらためて発売日変更の経緯を教えてもらえますか。
河野氏:
発売日が9月29日になったことで「苦肉の発売」などと言われたりもしますが(笑),変更前の10月13日でも同じようなものだったんです。
4Gamer:
もともとの予定では,9月に他社から人気シリーズの大型RPGが2本リリースされるはずでしたからね。そして10月にもPlayStation VRが発売されます。
ええ,話題作の登場が続くという意味では,9月から11月にかけてはあまり差がないんです。
順を追って説明すると「デモンゲイズ2」は開発が順調だったこともあり,ずっと9月発売を念頭に置いてすべてを進行していました。その頃の最も有力な発売日の候補は9月29日だったんです。その次が10月13日で,このどちらかにしようと。
しかし,おっしゃるとおり9月には大作RPGが相次いで登場するというので,「デモンゲイズ2」はせっかくご購入いただいてもプレイが後回しになってしまう可能性がありました。そこで,少し間を置けば購入後すぐに遊んでいただけるだろうと,発売日を10月13日に決定したわけです。
4Gamer:
ところが8月中旬に,その大作RPG2本のうち,1本のリリース延期がアナウンスされ……。
河野氏:
それならゲームも完成しているし,当初の予定どおり9月29日を発売日にするのが正しい形ではないかと判断したわけです。
4Gamer:
エクスペリエンスとしては,そのあたりいかがですか。
千頭氏:
東京ゲームショウ2016に角川ゲームスさんが出展するので,その勢いのまま「デモンゲイズ2」を発売するのがいいだろうとは考えていたんですよね。しかし9月,10月と話題作ラッシュですから,どこがベストなのかについては正直分かりません。
ただ発売日が遅いと,それまでにお金を使ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。誰もが話題作をすべて買うわけでもないでしょうから,発売日が早ければそれだけ手に取っていただける可能性は増えるんじゃないかと。
4Gamer:
ファンの反応には,発売日の前倒しを歓迎する意見が多いのでしょうか。
千頭氏:
僕に届いている範囲では,前倒しされて良かったという声が多いです。ただ,どうしても発売日が重なるタイトルがありますから,そのことが残念だという声や,先に発売されるタイトルとの並行プレイをどうするかが悩ましいといった声も届いてますね。
4Gamer:
ファンの声と言えば,8月18日から31日までの期間限定で,前作「デモンゲイズ」がPS Storeにて500円でセールされており,それをプレイして面白かったので「2」を予約したという声も見かけました。
千頭氏:
そうですね。あのセールはやって良かったです。
ちょうど,コミックなどで1巻めをセール価格にしたところ,続刊の売れ行きが増加して結果的に大きな儲けが出たというニュースを聞いたことと,前作も多くの方に楽しんでいただけたことから,売上よりもまずは手に取っていただくことを考えました。
河野氏:
もともと角川ゲームスからセールのご提案をして,当初は「デモンゲイズ2」に登場する「666番街」に引っかけて,666円というちょっと格好つけた値段を考えていました。けれど,千頭さんから「広く楽しんでもらうのなら,1コインのほうがいいのでは」という意見をいただいて,500円に決まったんです。
前作の反省をもとに「より多くの人がクリアまで楽しめる」ことを目指した
4Gamer:
「デモンゲイズ2」は,2014年7月に初めてお話をうかがってからリリースまで約2年かかっています(関連記事)。開発期間としてはかなり長めですが,どんな形で企画開発が進められてきたのでしょうか。
千頭氏:
最も時間がかかったのは,前作から何を変えて何を変えないのか,何を基準に続編を作るのかという部分でした。一方で,「より多くの方にクリアしていただける内容にする」というテーマは,かなり早い段階で決まっていました。
4Gamer:
その理由は何でしょう。
千頭氏:
そもそもRPGは,プレイ時間が長いために途中で飽きたり,謎が解けなかったり,あるいは敵が強くてレベル上げが面倒になったりと,クリアする前に途中で投げ出す率が高いジャンルです。
もちろん,そのことは知識として知っていたのですが,実際に前作をプレイした皆さんのトロフィーのデータを見て,想像以上にクリアしていない人が多いことに愕然としました。作り手として,面白くなるよう一生懸命作ったゲームをクリアしていただけないのは非常に残念ですし,例えばフルコースの料理として出したものを,前菜だけ食べて「口に合わない」と言われてしまうようなことは嫌だなと。
4Gamer:
具体的には,どこでプレイを止めてしまっていたのでしょうか。
千頭氏:
まずは難度が跳ね上がる,グリモダール城に入るところです。
河野氏:
実に5割近くの方が,ここでプレイを止めていました。
千頭氏:
その次がイーシルミラージュとのバトルです。いずれも開発側がプレイ上の壁として設定したところでした。
4Gamer:
ゲームとしては,クリアまで本当にあと一歩のところですよね。エクスペリエンスでも,まさかここで投げ出す人が増えるとは想定していなかったと。
千頭氏:
もちろんです。我々エクスペリエンスでは角川ゲームスさんと共に「DRPG Progress」を掲げ,ダンジョンRPGの難しいと思われている部分を分かりやすくして世間に広めていこうと「デモンゲイズ」を開発してきましたから,当然乗り越えられるだろうというつもりで壁を用意していました。ところが実際には,そこで多くの人が脱落してしまったわけです。
壁を作る,つまり難度の階段をどう作るかというのは,どのタイトルでも常に悩むところなんですが,さすがに1か所で半数近くの人が脱落するとは考えられませんでした。
千頭氏:
エクスペリエンスでも角川ゲームスさんでも,スタッフ全員,どこにも詰まることなく前作をクリアできていたんですよ。逆に言うと,ダンジョンRPG慣れしたスタッフばかりだからダメだったということなんでしょう……。
河野氏:
それだけ「デモンゲイズ」が新しい層にリーチしたということでもあるんです。500円セールで新たに手に取ってくださった方からも「難しい」という声が挙がっていますし。
千頭氏:
そこで「デモンゲイズ2」では,前作からDRPGに触れていただいた新しいユーザー層の方がプレイ継続のモチベーションを維持できて,かつ途中で投げ出さないバランスにすることを目指しました。
4Gamer:
なるほど。
河野氏:
また,プラットフォームをどうするかというのも,かなり議論を重ねた部分です。ここ1年くらいの市場動向を踏まえて,PS Vita専用ではなく,PS4とのマルチプラットフォーム展開も視野に入れるべきかどうかということですね。
千頭氏:
プラットフォームに関しては,現状どこのメーカーさんも悩んでいると思います。
河野氏:
しかし,前作はPS Vitaで評価されたタイトルですから,やはりその続編も恩返しの意味も込めて,PS Vitaのみでまずは行こうと。今や数少ないPS Vita専用ソフトなので,ファンの皆さんに応援していただけると本当に嬉しいです。
千頭氏:
そのほかには,当然ですが前作を遊んでくださった方の声をどう消化するかということも議論しました。
4Gamer:
先ほど話題に上がった難度のほかには,どんな意見があったのでしょうか。
千頭氏:
圧倒的に多かったのは,「デモンと一緒に冒険したい」というものでした。前作のデモンは召喚獣的なポジションでしたから,パーティメンバーの一人として感じられるようにしてほしいと。
実を言うと前作では,ダンジョンRPGとしてのキャラクターメイクと,デモンという存在をうまく合致させることができなかったんです。そこでキャラクターメイクを優先したのですが,今回は実際に前作を遊んだ方の声をもとにデモンを大きくフィーチャーしています。
4Gamer:
「デモンゲイズ2」では主人公のみキャラクターメイクする形になっているのも,そうした理由からであると。
安宅氏:
プレイヤーが自分でキャラクターメイクをする場合,RPGのコアプレイヤーなら各キャラクターのバックボーンまで想像して楽しめますが,「デモンゲイズ」は非常に広い層にリーチしたため,そうした遊び方に慣れてないプレイヤーもたくさんいました。そういう方は,こちらで用意した少しだけバックボーンのあるキャラクターを中心に使っていたんです。今回のデモンは,それらのキャラクターを膨らませた感じになっています。
千頭氏:
デモンはバトルで勝つと仲間にでき,そのあとデモンそれぞれが持つストーリーを知ることができます。つまり,「ポケットモンスター」に代表されるように昆虫採集的に仲間を増やしていくRPGと,ストーリーを進めて仲間を増やしていくRPGとの中間のようなシステムになっているのが特徴です。
また「デモンゲイズ2」では,デモンのレベルアップ時にパラメータの割り振りが可能になっています。さらに特定のタイミングで,そのデモン固有のスキルとは別に「リバティスキル」を習得させることもできますから,同じデモンでもプレイヤーごとに個性を出せます。
安宅氏:
その意味では,「デモンゲイズ2」のデモンは,自分で作ったキャラクターと同じように愛せる存在に仕上がっていると思いますよ。とくにダンジョンRPGというジャンルに慣れていない方には馴染みやすいでしょう。
4Gamer:
それでは,前作の特徴の一つだったラブコメ的な要素はどうでしょう。最初から「デモンゲイズ2」にも継承するつもりだったのでしょうか。
千頭氏:
前作では「共同生活ラブコメ」をウリの一つとしていましたので,それをどうプラスしていくかということは最初から考えていました。
その一方で,シナリオを詰み重ねてラブコメのボリュームを出すという手法は,なかなか実現が難しい。そこで「デモンゲイズにふさわしい,パワーアップされたラブコメとは」と考えた結果,「メンテナンス」や「デート」といった仕組みが生まれたわけです。
最終的には,前作で主人公とフランの関係が深まりすぎることを嫌がる方が予想以上に多かったこともあり,今回はあそこまでの表現は入れていません。
「でっかい舞台で,でっかい冒険」をキーワードに世界観とストーリーを拡張
4Gamer:
それでは「デモンゲイズ2」の世界観やストーリーについて,あらためて教えてください。今回は前作の数年後ということですが。
千頭氏:
コンセプトは「都会」です。前作からどう進化させるかにあたり,河野さんから「より広がった世界」,つまりパッと見たときにボリュームが増していることが分かる舞台設定にしたいという提案がありました。そこで前作では廃墟だった舞台を,人の多い華やかな城下町に置き換えたわけです。実を言うと,前作から何年経ったかという部分はあまり重要ではなかったりします。
また街の中だと,いろいろな表現ができますよね。前作は「Wizardry」などのオーソドックスなダンジョンRPGをベースとしていたので,どんどんダンジョンに潜っていく展開でしたが,それだとダンジョンと竜姫亭を行ったり来たりするだけになってしまいます。それを広げるためには,都会という大きな器が必要だったわけです。
安宅氏:
ひと言でまとめると,前作の世界観がアッサリしすぎていたので,今回は「でっかい舞台で,でっかい冒険をしよう」と。
河野氏:
一人でも多くの方に楽しんでいただこうと考えたときに,世界観やストーリーでもう少しワクワクさせられるんじゃないかと思ったんです。単にストーリーを語るのではなく,探索や共同生活の中で妄想の余地がある舞台を用意することにより,知らず知らずのうちに熱中している状況を作り出せるんじゃないかと。
そこで前作とはガラリと変えて,生活感のある街,そして「革命」というテーマを掲げたストーリーを打ち出そうと考えたんです。
安宅氏:
鶏と卵のどちらが先かという話じゃないですけれど,革命にしても,舞台やストーリーが大きくないと,何のために起こすのかが分からなくなるんですよね。
4Gamer:
革命というテーマはどのタイミングで出てきたんでしょう。世界観やストーリーを大きくすることよりも先に決まっていたのでしょうか。
安宅氏:
まずは舞台やストーリーを大きくすることから始めました。その中で表現できる最大の事件とは何か,と考えて革命にたどり着いたんです。最初は,主人公達をドクターやマフィアにしようという案もありましたね。
千頭氏:
見た目でほかのタイトルと差別化を図りたかったので,皆さんがよく知っていて,かつ憧れを抱くような存在を模索していきました。その中でも革命団は,旗印を掲げることができるし,いろいろ妄想する余地があるんじゃないかと。
安宅氏:
革命って,何か格好いい響きがありますしね。
4Gamer:
それではヒロインのミュゼやプリムを始めとした主要な登場人物の設定には,どんな狙いがあるのでしょう。
安宅氏:
ネタバレになってしまうので詳しく説明できないのですが,「円卓の生徒」「剣の街の異邦人」,そして「デモンゲイズ」をプレイした方であれば,ニヤリとできる設定を用意しています。
千頭氏:
あとは「デモンゲイズ2」を作るにあたり3部作構想が生じたので,そのことも考慮に入れた配置になっていますね。
4Gamer:
ちなみに今回の支配人は,前作と違ってあまり家賃にうるさくないですよね。前作では一歩でも竜姫亭から出ると家賃を請求され,お金をむしり取られていましたが。
千頭氏:
開発側としては,前作の家賃の仕組みは良くできていたと思っているんですが,プレイヤーの皆さんからは結構嫌われていることが分かりまして……。
安宅氏:
いただいた意見をまとめたリストの中でも,そうした声は多かったですね。
4Gamer:
管理人さんの「可愛い顔して,お金にうるさい」というギャップが好きだったので,ちょっと残念です。
千頭氏:
ゲームとしても「この稼ぎでは家賃を考えると赤字だから,もう少し頑張ろう」とか「もうHPやMPが厳しいから,いったん戻ろう」といったマネジメントの要素が生じるので,システムとロールプレイがうまく噛み合った要素だったと思いますが,そこはプレイヤーの皆さんの声を反映して見直しました。
デモンゲイザーとデモンの関係は,仮面ライダーと怪人のそれと同じ?
4Gamer:
「デモンゲイズ2」では,主人公であるデモンゲイザーとデモンの設定が一新されたのも見どころです。まず主人公は,デモンゲイザーとして目覚める前に,何者かに拉致されたとのことですが。
安宅氏:
すでに公開しているとおり,主人公はもともと「邪眼」の持ち主だったんです。彼がさらわれたのは偶然だったのですが,邪眼の持ち主だったがゆえに,特別な改造を施され「魔眼」の力を手に入れたと。
千頭氏:
実は裏ではもっといろいろあるのですが,これ以上はネタバレになってしまうので。
4Gamer:
それでは邪眼と魔眼の違いについて教えてください。基本的には,どちらもデモンを従える能力ですよね。
安宅氏:
邪眼には,能力を使っていると術者が急速に消耗するという設定があるんですよ。
千頭氏:
あとは能力の強さが異なっており,邪眼は強力なデモンには効かないケースがあります。さらに魔眼はデモン空間とつながっているので,その中でデモンを飼うことができます。邪眼ではそこまではできません。
ちなみに今回の主人公が持っているのは人造魔眼なので,前作主人公・オズの魔眼よりランクが落ちます。それゆえに,前作以上にデモン達と力を合わせて戦う必要があるわけですが……。例えると,オズと今回の主人公は,仮面ライダーとライダーマンくらいの差があるんです。
安宅氏:
あるいはニュータイプと強化人間の差というか。
4Gamer:
読者にどこまで伝わっているか分かりませんが,同じ魔眼の持ち主でも前作のオズは相当強力な存在だということですね。
また,今回のデモンは前作と異なり,もともとは人間で,その魂を改造してデモン化しているという設定ですが。
千頭氏:
今回のデモンは,仮面ライダーで言うところの怪人なんですよ。そのため,この世界で暮らしている5つの種族の特徴がそのままデザインに活かされています。
4Gamer:
前作のデモンは神の兵という設定で,種族ではなく能力でデザインが分かれていましたよね。
千頭氏:
ええ。今回は元になった種族と,バトル中の前衛,中衛,後衛のポジションでデザインが分かれていて,前衛は竜,中衛は獣,後衛は悪魔をイメージしています。
4Gamer:
それぞれのデザインはじっくりチェックしたいところですね。
さらに今回のデモンは,人間体からデモン体にトランスしますが,この設定は主人公達と共同生活するうえで必要になったということでしょうか。
千頭氏:
そのとおりです。デモン達がデモン体で街を歩いていたら,大変な騒ぎになりますから(笑)。
4Gamer:
その代わりというわけではないと思いますが,デモンは今回暴走しなくなっていますよね。
安宅氏:
そこは神ではなく,人間が作った存在なので,もともと制御できるように作られている存在だからです。
千頭氏:
人造デモンなので,暴走できるほどパワーがないということでもあります。その点は,先ほどの魔眼の話でも申し上げましたが,今回のデモンゲイザーとデモンがより力を合わせて戦う必然性にもつながる点となりますね。
4Gamer:
それでは,先ほども少し話題に上がったデモンのメンテナンスなどについても教えてください。すでにファンの間では賛否が分かれているようですが。
千頭氏:
お話したとおり,メンテナンスはデモンゲイズらしいラブコメとは何かを考えた結果,生まれたものです。シナリオとして描くのではなく,どちらかと言えばプレイヤーが自分の好きなデモンに対して妄想を抱くことを後押しするようなシステムとして,メンテナンスとその延長線上にあるデートを用意しました。
そのうえで,プロモーションとして話題になる要素がほかにも欲しいということから,「男性デモンともデートができる!」みたいな打ち出し方をしてみたのですが(笑),実際には友情や絆を深めるという描写なので,至って健全な内容となっています。
安宅氏:
デモンは半機械生命体ですから,パワーアップするにはカスタマイズが必要なんですよ。それを今回はメンテナンスと呼んでいるわけです。
千頭氏:
オープニングムービーを見ると分かりますが,メンテナンスはバーコードリーダーのようなスキャナーを使って問題点を見つけ出し,そこを改良するイメージですね。
4Gamer:
ちなみに主人公の左腕も機械の義手になっていますよね。
安宅氏:
腕を切られているのもライダーマンと同じです(笑)。
千頭氏:
これもオープニングで見られますが,あの左腕でデモンを吸収して合体するんです。
4Gamer:
オープニングは最初に一度見るだけでなく,いろいろ分かってから見直すと新たな発見がありそうですね。
千頭氏:
そうですね。ただデモンに関しては,もう少し種類を増やせたら,もっと育成や使い分けの面白さを表現できたかなと思います。とは言え,増やしすぎると微妙な性能のデモンが出てきて,使ってもらえなくなったりしますので,難しいところです。
4Gamer:
そう言えば,仲間にしたデモンは基本的にレベル1の状態ですよね。ゲームの後半では主人公達とのレベル差が生じて,即戦力にしづらいところがあると思うのですが。
千頭氏:
そこはかなり悩みました。ただ僕自身がそうなのですが,後半でレベル30の仲間が入ってきても,自分のパーティメンバーだとは思えないんですよね。ちゃんと自分でパラメータを振っていきたいので。
安宅氏:
歌姫デモンだけは例外的にレベルの上がった状態で仲間になりますが,今,千頭が言ったような事情もあって,ほかのデモンをすべてレベル1にしたんですよ。その代わり,パーティに入れていればすぐにレベルが上がるように,経験値の補正がかかります。
大型DLC「PROJECT CODE -KENGOU-」の具体的な概要はTGS 2016にて公開
4Gamer:
それでは,ベニー松山さんが原作と監修を手がけている,無料の大型DLC「PROJECT CODE -KENGOU-」についても聞かせていただけますか。
千頭氏:
ここまでお話してきたとおり,今回はライトプレイヤーを含む新しい層が“最後まで楽しめる”ことを大きなテーマとして掲げています。しかしそれだと,往年のダンジョンRPGのファンなどコアなプレイヤーにとっては,ゲームとして簡単になりすぎるきらいがあります。正直なところ,双方のプレイヤーを一つのタイトルで満足させるのは,かなり困難なのです。
そこで,コアプレイヤーはクリア後にも引き続きプレイを続ける傾向があることに着目し,本編を楽しんだあともさらにチャレンジしていただける,本編のクリア後コンテンツを用意しようと考えたんです。
4Gamer:
コアプレイヤーにとっては,本編をクリアしてからが本番であると。
千頭氏:
ただ,一つのタイトルの中に,本編とチャレンジコンテンツの両方を入れ込むのは,リソース的に無理がありました。そのため両者を切り分け,チャレンジコンテンツは大型DLCとして無料配信することにしたわけです。これがライトプレイヤーとコアプレイヤーを共存させる,一つの答えかなと。
4Gamer:
前作のクリア後ダンジョンは,1本道に歴代ボスが並んでいるという比較的シンプルな内容でしたが,「PROJECT CODE -KENGOU-」はもっとガッツリ遊べる内容なのでしょうか。
千頭氏:
まず,クリア後ダンジョンは今回も本編とは別にあります。そのうえで,追加で配信される「PROJECT CODE -KENGOU-」は前作を楽しんでいただけた方なら,絶対に楽しめる内容に仕上がっています。
安宅氏:
ちょっとやり過ぎたかなと思うくらいのボリュームですよ。
4Gamer:
“KENGOU”という言葉から,和風な印象を受けますが……。
千頭氏:
舞台となるのは,前作に登場したグリモダール城のあるミスリッド地方です。そこにどう“KENGOU”が結びつくのか……。
河野氏:
それは東京ゲームショウ2016の「デモンゲイズ2」ステージにて公開しますので,ご期待ください(関連記事)。
4Gamer:
もう少しヒントが欲しいのですが,「PROJECT CODE -KENGOU-」ではデモンがリバティスキルを習得できる機会がさらに増えるのでしょうか。
安宅氏:
今言えるのは,おそらくあるでしょう,ということだけです。
河野氏:
あとは,新しいデモンもおそらく出てくるんじゃないでしょうか,とかね(笑)。ともあれ,ボリュームと内容にはかなり自信を持っています。
安宅氏:
先日ボイス収録をしたのですが,間違いなく最高の仕上がりになると思います。
4Gamer:
シナリオの出来栄えはどうでしょう。
安宅氏:
ベニー松山さんから上がってきたばかりなので,まだ千頭にも読ませていないのですが,さすがですね。「デモンゲイズ」の悪ノリを含めたユルい部分もきちんとご理解いただきつつ,ベニーさんの持ち味もしっかり活かされたシナリオをご用意いただけました。
千頭氏:
過去のエクスペリエンスのタイトルというと,クリア後はひたすらハクスラで強さを極めていくイメージがあるかもしれませんが,「PROJECT CODE -KENGOU-」はストーリーも楽しめるものを目指しました。
4Gamer:
「PROJECT CODE -KENGOU-」の配信が今から楽しみです。
ところで「デモンゲイズ2」では,システム面の細かい部分でもブラッシュアップされていますよね。
安宅氏:
ええ。まずはオートバトルや移動時のオートパイロットが,前作よりも大幅に進化しました。進化しすぎてプレイ時間をかなり短縮してしまっているのですが,それでもクリアまでは40時間くらいはかかります。自分で言うのも何ですが,これはちょっとすごいことですよ。
千頭氏:
オートバトルやオートパイロットを駆使してもボリュームが減ったようには感じられないですし,プレイの熱量もずっと落ちませんからね。
4Gamer:
オートパイロットもスピードが上がっただけでなく,回転床などのトラップを自動的にやりすごしてくれるので便利ですよね。ここまで親切でいいのかなと思うくらいです。
千頭氏:
これも迷ったところなんですけどね。
安宅氏:
やはり,より広い層にクリアしていただくことを考えると,そのほうが良いだろうと。
河野氏:
それ以外にも,オンラインでプレイヤー同士がヒントを共有するメモシステムが改善されました。
安宅氏:
今回は攻略用の「シンプルメモ」と,ネタ的にいろいろなコミュニケーションを取れる「ゲイザーメモ」の2種類を用意しました。それぞれ個別に表示のオン/オフができますし,後者では選択できるワードも増えて活用の範囲が広がっています。
4Gamer:
今回はメモを書くのに特別なアイテムが必要ないので,利用する機会も増えそうですね。
安宅氏:
今回もいろんなネタが見られるんでしょうね(笑)。
千頭氏:
前作で導入して「こんな遊び方もあるんだ」と感心しましたからね。ネタを書く人はいるだろうと予想はしていましたが,まさかほとんどがネタになるとは。
安宅氏:
あとは今回,難度選択で「ぬるい」か「あったかい」を選べば,全滅したときに回数制限付きで再挑戦できます。
千頭氏:
全滅した時点での敵の状態――つまり敵の数を減らしたり,HPを削ったりした状態で復活できますから,初めての方でもクリアまで楽しんでいただけると思います。
逆にコアプレイヤー向けには,最高難度の「けしずみ」を用意しました。こちらは開発スタッフでもかなり苦戦するので,腕に自信のある方にチャレンジしてもらいたいですね。
4Gamer:
では最後に,「デモンゲイズ2」に注目している人に向けてメッセージをお願いします。
河野氏:
前作「デモンゲイズ」では「DRPG Progress」を掲げ,幅広い層に受け入れられることを目指しました。その姿勢は「デモンゲイズ2」でも変わりません。本作は単に続編というだけでなく,前作を途中で投げ出してしまった人や,「難しい」と聞いて敬遠していた人にも楽しんでいただける内容にできたと考えています。
逆に,万人向けになったと聞いて「やり応えがなくなったのか」と思った人もいるかもしれませんが,そんなことはありません。ダンジョンRPGとしてのシステムや手触りは今まで以上に楽しめるようになりました。キャラクターメイクこそ無くなりましたが,デモンの育成システムは「これはこれで面白い」と受け止めていただけると思います。ぜひご期待ください。
千頭氏:
とくに前作を遊んで挫折してしまった方には,ぜひもう一度手に取っていただきたいです。前作の反省を活かし,より多くの方が最後まで楽しめる内容にしました。もちろん初めて遊ぶ方も,ご満足いただけると思います。またダンジョンRPGのコアファンの皆さんには,「PROJECT CODE -KENGOU-」にご期待いただきたいです。
繰り返しですが,「デモンゲイズ2」では,一つのタイトルでライトとコアの双方のプレイヤーに楽しんでいただける一つの答えとして,本編と「PROJECT CODE -KENGOU-」を用意しました。ぜひ多くの方に遊んでいただければと思います。
安宅氏:
今回は単に“食べやすい”だけでなく,“最後までおいしく食べられる”ダンジョンRPGを目指したわけですが,その目標達成には本当に苦労しました。結果として熱量の高い内容に仕上がったと思いますので,秋の夜長に楽しんでいただけたら嬉しいです。
河野氏:
東京ゲームショウ2016の角川ゲームスブースにて9月18日に行う「デモンゲイズ2」ステージでは,「PROJECT CODE -KENGOU-」の情報を含め,さらなる魅力を紹介します。ぜひ,そちらにもご注目ください。
4Gamer:
ありがとうございました。
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