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「第2回全国高校eスポーツ選手権」ロケットリーグ部門 決勝大会をレポート。ラストに劇的なドラマが待ち受けていた年末の戦い
昨年に引き続き2度目となる本大会の「ロケットリーグ」部門は,全国から106チームがエントリー。参加全校を4ブロックに分け,8月24日〜25日に行われたオンライン予選にて各ブロックの頂点に立った4校が,決勝大会にて雌雄を決した。本稿ではその模様をレポートしていく。
オンライン予選から決勝大会に進出したのは,以下の4校。そのうちOLPiXと愉快な仲間たちと雷切は,第1回大会の決勝でも対決した実力派であり,そこにオフライン大会初出場となるCat A PuLTとVTuberすこすこ隊ver2がどう切り込んでいくかに注目が集まった。
「全国高校eスポーツ選手権」公式サイト
出場校
Aブロック
佐賀県立鹿島高等学校「OLPiXと愉快な仲間たち」(佐賀県)
プレイヤー:OLPiX08,Ron-nex,Morix
Bブロック
N高等学校「Cat A PuLT」(沖縄県)
プレイヤー:tetu,clockei0516,yayo256
Cブロック
大分県立大分鶴崎工業高等学校「雷切」(大分県)
プレイヤー:AroDra,mcRENT,GORIRA,イソR
Dブロック
釧路工業高等専門学校「VTuberすこすこ隊ver2」(北海道)
プレイヤー:Lambchan,Poriko1496,HRKmur,Yotsubq
※敬称略
決勝大会はシングルエリミネーション形式のトーナメントで,試合は3ゲーム先取のBo5形式にて行われる。決勝トーナメントの組み合わせは以下の通り。アナリストのValtaN氏も「前回優勝校のOLPiXと愉快な仲間たちは強力だが,その他の3校も激戦をくぐり抜けたチームなので,全試合が見どころとなる」と述べている。
準決勝第1試合 雷切 対 VTuberすこすこ隊Ver2
準決勝第1試合は,雷切とVTuberすこすこ隊ver2の対戦。昨年,OLPiXと愉快な仲間たちに敗北し,涙を呑んだ雷切のAroDra選手は「控え室でVTuberすこすこ隊ver2の配信映像を見て,分析をしてきた」と対策はバッチリだと話す。対するVTuberすこすこ隊ver2のLambchan選手も「研究してきたと言われたけど勝ちます!」と声高く宣言した。
そのゲーム1,開幕から猛攻を見せる雷切だったが,Lambchan選手がゴール前でクリアしたボールが,そのまま自軍のゴールに吸い込まれVTuberすこすこ隊ver2が1点を先取する。VTuberすこすこ隊Ver2は,それで勢いがついたか,試合中盤まで押し気味で進める。
しかし,雷切も押されてばかりではなかった。高く上がったボールにイソR選手が合わせたシュートをAroDra選手が押し込んで同点ゴールを決める。その直後にGORIRA選手が追加点を入れた。
一転して1点ビハインドとなったVTuberすこすこ隊ver2は,追いつこうと果敢に攻めるも,2度のゴールチャンスを雷切の固いディフェンスに阻まれ,そのカウンターでGORIRA選手にゴールを許し3−1でゲーム1が終了。
続くゲーム2は,勢いづいた雷切の独壇場だった。イソR選手の1本目から立て続けにゴールを決め,全員で5ゴールを挙げる。点差の余裕があるにもかかわらずディフェンスも固く,イソR選手を中心とした鉄壁の守りの前にVTuberすこすこ隊ver2はゴールラインを割ることができない。
AroDra選手のナイスセーブで客席を沸かせた雷切は,相手に1点も許さずにゲーム2をものにした。
後がないVTuberすこすこ隊ver2は,Yotsubq選手を中心に怒濤の攻めを見せていく。雷切に1点先取される形となったが,Lambchan選手とYotsubq選手の連続ゴールで反撃の狼煙を上げる。ところが雷切も3タテで勝利する気満々で,イソR選手の見事なアシストからAroDra選手が2人のディフェンスを抜く,華麗なプレイでゴールを決めて同点に。そのまま流れは雷切に傾いていく。
互いに激しい攻防の中,残り約1分でイソR選手が逆転のゴール。そして残り5秒でAroDra選手がダメ押しの1本を決めてゲームセット。雷切が昨年に続き決勝に進出した。
勝利した雷切のAroDra選手は「自分の思い通りのプレイができて,味方も完璧なコンビネーションで,最高の試合でした」とコメントした。
一方,敗北したVTuberすこすこ隊ver2のLambchan選手は「調子を出し切れなかった。悔しいです」と述べ,「味方のローテーションが上手く回らず圧倒された。出してくる球が想像以上に強く,動きを崩されてしまった」と敗因を語った。また「ゲーム2までがむしゃらに戦っていたが,ゲーム3で冷静になって立ち回りを変えたことで,最後にいい動きを見せられた。次は相手がどんな球を返してくるのかの想定の幅を広げて立ち回れるように戦っていきたい」と,来年に向けた抱負を述べた。
準決勝第2試合Cat A PuLT 対 OLPiXと愉快な仲間たち
準決勝第2試合はCat A PuLT対OLPiXと愉快な仲間たち。連覇を狙うOLPiXと愉快な仲間たちに対し,オフライン初出場のチームが挑む形となったが,Cat A PuLTリーダーtetu選手は,仲のいいチームであるVTuberすこすこ隊ver2のかたきをとるために決勝に進むことを誓った。
そのゲーム1,両者静かな立ち上がりから,Cat A PuLTはtetu選手のアシストにyayo256選手が合わせて1点を先取。解説者陣もCat A PuLTのチームプレイの強さを評価していて,その後clockei0516選手が続けて2本のゴールを決め,開始2分で3−0と引き離す実力を見せた。
後半はエンジンがかかってきたOLPiXと愉快な仲間たちが押し気味に進めるも,残り13秒でOLPiX08選手がゴールを決めたところで終了し,3−2でCat A PuLTが勝利する。
Cat A PuLTは互いにかけ合う声が客席にも聞こえるほど気合いを入れて戦っていたが,ゲーム2ではOLPiXと愉快な仲間たちのRon-nex選手がCat A PuLTのディフェンスをかいくぐり先制点を決める。
OLPiXと愉快な仲間たちが試合のペースを掴み,OLPiX08選手がさらに2ゴールを決めると,Cat A PuLTにゴールを許さず,3−0でゲーム2を獲得した。
ゲーム3も引き続きOLPiXと愉快な仲間たちがゲームの流れを作り,瞬く間に2点を先取。OLPiX08選手とRon-nex選手のツートップの得点力と,Morix選手の堅実なアシストがうまく働き,3点目はなんとRon-nex選手がCat A PuLTの3人全員をかわして決め,客席を大いに沸かせた。終わってみれば4−0の大差で逆リーチをかける形となった。
もう負けられないCat A PuLT,相手の2トップの猛攻に対し,持ち味のチームプレイで多彩な攻防を見せていたが,決め手に欠けゴールを割ることができない。
延長に突入するかと思われた終了間際,OLPiXと愉快な仲間たちのRon-nex選手がシュートを放ちつつ,clockei0516選手をバンプするファインプレイを見せ,こぼれたボールをOLPiX08選手が押し込んでついに勝ち越し。そのまま守り切って決勝進出が決定した。
試合後のインタビューでCat A PuLTのLambchan選手は,「良くも悪くも自分たちの力で戦うことができた」と評し,個人技レベルでOLPiXと愉快な仲間たちと実力の差があったことを吐露。そしてこの大会を「ゲームに本気で打ち込んで,大きな舞台に出られたことは本当に楽しい時間でした」と気丈に振り返ったが,試合終了後の控え室では悔し涙を流す様子も見られたという。
決勝戦 雷切 対 OLPiXと愉快な仲間たち
迎えた決勝戦は,第1回大会と同様の組み合わせとなった。昨年の覇者ながら,この大会では常に緊張していることを明かし,言葉少なに「がんばります」と答えるOLPiX08選手に対し,AroDra選手は「さっきの試合が熱すぎたので,その流れを生かして押し切りたい」と,昨年のリベンジを誓う。
この試合で雷切はGORIRA選手に替わりmcRENT選手が出場。ゲーム1は開幕から雷切の動きが好調で,開始7秒でAroDra選手がゴール。その後OLPiXと愉快な仲間たちもRon-nex選手のゴールで追いつくが,雷切はAroDra選手の相手を3人かわす華麗なドリブルからmcRENT選手が合わせてリードを奪う。
雷切のチーム力が光り,ディフェンスも好調で,OLPiXと愉快な仲間たちに追加点を許さない。終了間際にOLPiX08選手がゴールを決められたが,最終的に4−2で雷切が勝利した。
ゲーム2は開始35秒でゴールを決めた雷切のイソR選手が,その後の自陣のゴール前でファインプレイで,OLPiXと愉快な仲間たちのツートップによる攻撃を防いでいく。このまま終了するかと思われたが,残り47秒でOLPiX08選手がミドルシュートのこぼれ球を自ら押し込み土壇場で追いついた。
雷切も残り数秒で打ったシュートは決まらず,決勝大会初のオーバータイムへと突入。最初のチャンスとなったRon-nex選手のゴールはギリギリ外れ,そのボールをキープしたmcRENT選手がフィールド中盤から放ったシュートがゴールへと突き刺さり,2−1で雷切が優勝に王手をかけた。
勢いのある形でリーチをかけゲーム3へと挑んだ雷切だったが,ディフェンディングチャンピオンのOLPiXと愉快な仲間たちも後がない状態となり,怒濤の攻防を見せていく。開幕37秒でOLPiX08選手が決めた1点を絶対に守り切りきる姿勢を見せつつも,隙あらば攻め込むスタイルで,後半OLPiX08選手は2本のゴールを決め,ハットトリックに成功。OLPiXと愉快な仲間たちが3−0で勝利し,次のゲームへとつないだ。
準決勝でもスロースターターの印象を持たせたOLPiXと愉快な仲間たち。ゲーム4では本領発揮とばかりの勢いを見せ,開幕35秒でRon-nex選手がコート中盤から鋭いシュートを放ち先制点を獲得する。その後もOLPiXと愉快な仲間たちのツートップの活躍は目覚ましく,OLPiX08選手がゴール前で雷切の2選手をバンプし,その隙にRon-nex選手が2点目をゴール。さらにOLPiX08選手が3点目を入れ,決して動きの悪くない雷切に対して点差を広げていく。
雷切もOLPiX08選手が外したシュートをAroDra選手がカウンター気味に決め,続けざまイソR選手も追加点を入れ猛追する。ところが残り20秒,Ron-nex選手がゴール前に上げたボールをOLPiX08選手が見事に合わせてダメ押しのゴール。ゲーム4はOLPiXと愉快な仲間たちが4−2で勝利し,フルセットの最終戦へと持ち込んだ。
客席はもちろん,実況席も興奮する最終戦。開幕15秒でAroDra選手が,34秒と41秒でイソR選手が立て続けにゴールし,雷切は2ゲームを落としたとは思えないほどの勢いのあるプレイで優勝への布石を序盤に作り上げる。
ところがOLPiXと愉快な仲間たちもその勢いに呑まれることなく,すぐに2点を返し,開始1分で5得点が動く激しい展開に。絶対に追いつかれまいとする雷切と,必ず追いつくというOLPiXと愉快な仲間たちの一歩も引かない攻防は,前半の乱打戦とは反対の守り合いの展開となった。ボールの支配力はOLPiXと愉快な仲間たちが優勢で,雷切の必死の守りが続く中,残り43秒でRon-nex選手の見事なドリブルシュートが雷切の2枚のディフェンスを抜けてネットを揺らした。
オーバータイムも視野に入る中,残り10秒のカウントダウン中に上がった高いボールを互いにタッチしている間にカウントが終了。ボールが地面についた瞬間に試合終了となるが,空中に浮いたボールをイソR選手が拾い,それをAroDra選手がゴールに押し込むという,劇的なブザービーターで雷切が念願の初優勝を果たした。
優勝は大分県立大分鶴崎工業高等学校「雷切」
優勝を掴んだ雷切のAroDra選手は「優勝できるとは思っていなかった。全員一丸となって,雰囲気もいい中で,最高の仲間とこういうゲームができてよかったと思います」とコメント。最後の執念のゴールについては,普段ああいった場面では前に出ないイソR選手が前に出たことで,自分も「ここで取れなかったら負ける」という気持ちを持って臨んだという。
優勝を逃した昨年は,チームメイトをあまり信用せず,自分の力だけで戦うという気持ちが強く出てしまっていたが,今回は仲間を信頼して戦うことを意識したことで連携が上手くいったことも告白。練習では自分に足りていなかった個人技を磨きつつ,メンバー全員が積極的にゲームプレイをしてくれたことが勝利に繋がったとも述べていた。
リベンジを果たしたOLPiXと愉快な仲間たちについては,OLPiX08選手とRon-nex選手のツートップが怖く,3人のローテーションが崩され気味だったので,ゲーム3〜4はディフェンス重視の立ち回りでしのいだが,それでもかなりきつかったと評している。
また優勝を逃したOLPiXと愉快な仲間たちのOLPiX08選手は,「練習時間が取れなかったことと,最後まで集中力が続かなかったことが敗因」と決勝を振り返った。また,劣勢の中でもお互いに声を掛け合い,雰囲気は悪くなかったと述べながらも,雷切は昨年よりもチーム力が上がっていて,その差が結果に繋がったと語った。
実況のkokken氏はこの結果に涙声で「本当に面白かった。本当にありがとう!」と出場選手に感謝の言葉をかけ,解説のdore52x氏も「最終戦は見ていて解説の立場を忘れ,kokkenさんとともにただただ大はしゃぎしてしまった」と興奮気味に話した。
第1回に続き,熱い戦いが繰り広げられた第2回全国高校eスポーツ選手権。106チームが参加したロケットリーグ部門は,その頂点に昨年の雪辱を果たした雷切こと大分鶴崎工業高等学校が立った。今回優勝した雷切,前回優勝したOLPiXと愉快な仲間たちはともに3年生のチームで今年卒業となる。次回は少なからず新世代の高校生たちが登場することになるはずだ。
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