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カプコンのアミューズメント施設向けVRゲーム「特撮体感VR 大怪獣カプドン」を先行体験。最新テクノロジーによる究極の怪獣ごっこが楽しめる
試遊に先立ってゲームの説明を行ったカプコンのディレクター中井 実氏は「このゲームは手足に4つのコントローラを使うことで自分の手足をVR空間に出すことができ,怪獣になることができます」と説明。ビルを破壊するのはもちろん,車や人を持ち上げたり,口から火の玉を吐いたりといった「自分がもし怪獣だったらこんなことをやりたいなということを,ほとんど実現できるようにしています」(同氏)と,こだわりのほどを語った。
プレイは4.3メートル四方のフィールド内で行われ,VRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)と,手足にVRコントローラを装着したプレイヤーは,そのフィールドと同じサイズのVR空間内を自由に動き回れる。怪獣となったプレイヤーは,立ちはだかる防衛軍を倒しつつ,さらわれた子供を探し出し救出していくという内容だ。3分間の制限時間内に,3ステージで目的を達成できればゲームクリアとなる。
4.3メートル四方(黒いマット部分)がVRフィールドと同じサイズ。プレイヤーはこの中を自由に動きまわれる |
フィールドの二角には空間検知用のセンサーが。これで計測したプレイヤーの位置がVR空間にフィードバックされる |
百聞は一見にしかずということで,さっそく筆者は体験プレイに挑戦。まずはスタッフの手を借りつつ,VRHMD,ヘッドホン,両手足にVRコントローラを装着。ゲームセンター内という騒がしいロケーションだが,VRHMDとノイズキャンセリングヘッドホンのおかげで,外界の情報はほぼシャットアウトされ,映像や音声に集中できる。
ゲームがスタートすると,目の前には超高層ビルが林立する箱庭状の市街地が出現する。上を向けば遮るもののない青空が,下を見ればはるか足元には豆粒のような車や人間が。おおお,俺は怪獣になっているではないかっ! ……と感慨に浸っていると,ヘッドホンからスタッフの声がして基本操作をレクチャーしてくれる。
とはいっても,ゲームに慣れた人なら難しいことは一切ナシ。自身の位置はもちろん,視線の向きや手足の動きとVRHMD内の映像は遅延なくシンクロしているので,容易にゲームの世界に入り込めた。気分は映画「シン・ゴジラ」のモーションを担当した野村萬斎さんだ。
ゲームスタート直後の視界はこんな感じ。普段は見上げている高層ビルが自分と同じくらいの高さになった映像を見ることで,自分が巨大になったかのように錯覚してしまうから面白い |
プレイ中はケーブル担当とマイク担当の2人のスタッフがついてくれる。マイクでのヘルプは,プレイヤーの意思を妨げない程度の必要最低限のものだ |
チュートリアルが終わると,いよいよ本番がスタート。ステージ1の目的は,ビル内にとらわれた子供を見つけて救い出すことだ。手でビルをなぎ払い,足で戦車を踏み潰し,火の玉でヘリを破壊しつつ,鳴き声を頼りに子供を探し出す。ひと撫でするだけで目の前のものが破壊でき,さらには敵からの攻撃に怯むこともない。そうした“無敵感”が味わえるのは本作ならではの醍醐味だろう。また,効果音のほかに,状況に応じてアナウンサーの実況音声が聞こえてくるのも,怪獣モノらしい臨場感を感じさせてくれる点だ。
敵を倒しつつビルを破壊していると,鳴き声がした方向に息子を発見。約1分30秒をかけてステージ1をクリアした。続いてのステージ2は,防衛軍のメカを破壊することが目的だ。ヘリや戦闘機,戦車や空母といったすべての種類のメカを倒せばステージクリアなのだが,高速で飛び回る飛行機に手を焼いているうちにタイムオーバーとなってしまった。ちなみにステージ3では,怪獣と防衛軍との最終決戦という怒涛の展開が待っているようだ。
ステージ2の様子。防衛軍はさまざまな兵器を動員して怪獣に挑んでくる |
終了時のリザルト画面には破壊数に応じた被害総額やプレイヤーの腕前に応じた称号が表示される |
プレイを終えての感想だが,“怪獣になれる”というバーチャル体験としては十分に楽しめた。グラフィックス面などにやや荒削りさも感じたが,巨大怪獣となってモノをぶっ壊しまくるという問答無用の爽快感は,そんなささいな難点を大きく上回る。約3分という時間があっという間に感じるほどの,最新テクノロジーによる“究極の怪獣ごっこ”が味わえるはずだ。
また,VRHMDをはじめとするVRデバイスの個人購入が可能となった昨今だが,専用の空間を用いた遊びを楽しむにはまだまだハードルは高い。そういった意味では,アミューズメント施設ならではの体験を,シンプルで分かりやすいルールで味わわせてくれる本作は,「VRゲームってどんな体験なんだろう?」と思っている人への入門編としてもうってつけと言えそうだ。
ディレクター中井 実氏ミニインタビュー「シンプルな伝わりやすさで怪獣を選んだ」
――カプコンとして初の商用VRコンテンツとなる本作は,どのような経緯で生まれたのでしょうか。
私の担当はVRの研究プロジェクトで,以前からプロトタイプを作成して社内プレゼンを行っていました。そんな中,店舗でも展開していったほうがいいねという声が上がったことで,プロジェクトがスタートしました。題材に怪獣を選んだ理由としては,シンプルで分かりやすいからです。怪獣になって街を破壊できるというひと言で,すぐに内容が伝わりますよね。
――開発期間はどれくらいでしょう?
中井 実氏:
プロトタイプを作るのに約1か月,残り2か月で仕上げの,計3か月で完成させました。チームメンバーは15人程度です。私も20年くらいゲームを作っていますけど,なかなかないスケジュール感でしたね(苦笑)。
――どのような動作環境なのでしょう?
中井 実氏:
VRデバイスはHTCのViveと,それを動作させるハイスペックPC。ゲームそのものの開発はUnreal Engine 4で行っています。Unreal Engine 4は,作って試してを繰り返しながら仕上げていくのに最適なエンジンなので,これがなければ完成していませんでした。
――VRコンテンツ制作の苦労や面白みは?
中井 実氏:
苦労だらけでしたね(苦笑)。一番苦労した点は,コントローラを4つ使った点です。Viveのコントローラは4つ同時に使うことを想定しておらず,HTCの人も苦笑いしていました。システム的にはマーカーによるトラッキングも可能ですが,それを取り入れて検証する時間がないために,2つを有線で接続するという荒業で乗り切りました。
――お披露目を済ませた今の気持ちは?
中井 実氏:
カプコン社員によるテストで嬉しいなと思ったのが,VRに初めて触る人でもすぐにプレイに馴染めていたことです。コントローラという理解が必要なデバイスではなく,自分の体を動かしながらゲームが楽しめるというのは,エンターテイメントの幅を広げて,「ゲームって難しそう」と思っている人にも楽しんでもらえそうだと思っています。特撮ファンの人が,ちょっとテンションがおかしくなるくらいに楽しんでくれたのも嬉しかったです。
――ゲームとしてのこだわりは?
中井 実氏:
インタラクションをたくさん用意したことです。プレイヤーが「怪獣になったらこんなことがやりたいな」と思うであろうアクションを多数用意しています。とにかくモノを壊せるゲームなので,ストレス発散にもなりますよ。
――今後の展望を教えてください。
中井 実氏:
まずは「大怪獣カプドン」がどんな反響を得られるのか,ですね。反響が大きければほかの店舗にも導入するかもしれませんが,現状での今後の展開は未定です。希望としてはVRがすごく好きなので,いろいろなタイトルを作っていきたいですね。アイデアのストックはたくさんありますので。
――ありがとうございました。
「特撮体感VR 大怪獣カプドン」公式サイト
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特撮体感VR 大怪獣カプドン
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