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[SPIEL’16]ペンギンをはじいて魚をゲットせよ! そこはかとない戦略性が魅力のアクションボードゲーム「ICECOOL」を遊んでみた
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印刷2016/10/17 11:30

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[SPIEL’16]ペンギンをはじいて魚をゲットせよ! そこはかとない戦略性が魅力のアクションボードゲーム「ICECOOL」を遊んでみた

 ドイツゲーム賞に「子供ゲーム部門」があることからも分かるように,SPIELにおいて,子供向けゲームは大きな存在感のあるジャンルといえる。こうしたタイトルは,基本的に小さな子供が親と一緒に遊ぶことを前提として作られていて,「それほどボードゲームに詳しいというわけではない親」と「人生で初めてボードゲームに触れる子」という,なかなかハードルの高いグループを狙った作品といえる。
 そんな中,指先の器用さが活きる,ちょっと変わった子供向けゲーム「ICECOOL」があったので紹介しよう。また本作のルール構成は,子供向けゲームというものを考えるとき非常に参考になるものだったので,その点についても論及してみたい。

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「ICECOOL」公式サイト(ドイツ語)

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ペンギンの子供達(一部大人)による大レース


 AMIGO Spielが販売する「ICECOOL」では,プレイヤーはペンギンの学校の教師または生徒を担当することになる。教師プレイヤーは1ラウンドごとに交代となり,全員が教師プレイヤーを1ラウンドプレイしたところでゲームは終了だ。そして,その時点で後述する勝利点が最も多かったプレイヤーの勝利となる。

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 ルールはいたって簡単だ。
 手番が来た生徒プレイヤーは,自分のコマを指先ではじく。自分のコマと同じ色の魚のクリップがついたゲートを通り抜けられればその魚を獲得でき,勝利点カードを1枚受け取る。
 一方,教師プレイヤーは生徒プレイヤーのコマを狙い,自分のコマをはじく。生徒プレイヤーコマに命中させると,その生徒プレイヤーからIDカードを入手でき,ラウンド終了時すると,IDカードは勝利点カードに変換される(その後,IDカードはそれぞれのプレイヤーに返却される)。
 それぞれのラウンドは,ある色の魚クリップがすべてなくなるか,生徒全員がIDカードを没収されるか,どちらかの段階で終了となる。

こちらがIDカード。先生ペンギンに捕まると没収される。ラウンド終了時に持っていると,(教師であれ生徒であれ)1枚につき勝利点カードを1枚得られる
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自分のコマを弾いた結果,コマが箱の隅の方でスタックしてしまった場合は,自分の手番でコマをもっとも近い赤いラインのところにまで動かせる
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 勝利点カードには,1つ仕掛けがある。
 勝利点カードには,ランダムに1〜3点が割り振られていて,手に入れたカードは基本的に非公開なのだが,自分の手番で得点1のカードを2枚公開すると,行動回数を1回追加で得られる(つまり2回コマを弾くことができる)。これは,ゲーム終盤においてとくに重要な効果を発揮するルールである。

これが勝利点カード。1点のカードを2枚公開すると追加行動が可能になる。デメリットはほぼないので,どんどん使ってしまってかまわない
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 いかにも子供向けというゲームという印象を受けるかも知れないが,これが以外に難しい。というのも,この作品で使うペンギンコマには,下半身に重りが入っているため,コマを弾いた先で予想外の回転をするのだ。またこれを利用すると,かなりトリッキーな移動を狙って実現することもでき,プレイヤーが大人であっても,上達の余地がかなりある,歯ごたえのあるゲームに仕上がっている。
 
こちらがペンギンコマ。自分でペイントして遊んでいる人もいるそうだ
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展開はやや平板だが……


 とはいえ,本作にはいささか弱点もある。簡単に言えば,ゲームの展開が平板になりがちなのだ。そもそも本作のアクション要素は単純なので,大人が本気を出すと,だいたい3回〜4回ですべての魚クリップを獲得できてしまう。またゲームボード自体は凝っているとはいえ,ステージの構成は変化しない。加えて生徒プレイヤー,教師プレイヤーともにスタート地点は固定だ。これらの条件が組み合わさると,結局「前のラウンドと同じようなことをして終わる」ケースが珍しくない。
 正直なところを言えば,筆者は1ゲーム(4ラウンド)プレイしている間に,「また同じ展開になったか」と感じてしまったので,本作を2回以上プレイするとなると,結構な苦行になる可能性もある。

なんのかんの言いつつ,皆結構マジである
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 また,トップを走っているプレイヤーを妨害する手段が事実上存在しないというのも厳しい点だ。もちろんトッププレイヤーのペンギンコマに自分のペンギンコマをぶつけて「次のラウンドのコースを消す」ことは可能だろうが,コマの振る舞いが気まぐれなので,必ず相手を妨害できるという保証はない。
 加えてコマが小さめなため,自分のコマを使って「ブロックする」といった戦略も建てにくい。
 もう少しほかのプレイヤーを能動的に妨害できるルールがあれば,本作はもっと大人も楽しめるゲームになったのではないか,と感じざるを得ないのである。


苦労して得たものを,失わせないデザイン


 しかしながら,それはあくまで大人の意見だ。
 本作は6歳以上の子供がプレイすることを前提としている。このため,そもそもアクションの難度が,それくらいの年齢の子供を標準として考えられている。SPIELの会場でも,子供達は無駄に強くコマを弾いてゲートをくぐりそこねたり,そもそもうまくコマを弾けなかったりして,そのたびに笑いと悲鳴が上がっていた。

 これを踏まえた上で,本作の構成で「他人を妨害するための」ルールを入れると,恐らく一気に子供が楽しめなくなるゲームになってしまうはずなのだ。
 例えば本作で,ほかのプレイヤーの勝利点カードを奪い取れるルールを入れたとしよう。そうすると,一生懸命コマを弾いてようやく1枚勝利点カードを獲得できた子供は,同時にそれを失う危険に晒される。
 大人にとって「たかがゲームで,勝利点カードを1枚失う」ことと,子供にとって「ゲームで勝利点カードを1枚失う」こととの間には,非常に深い溝がある。そのことはよくよく考えおかなくてはならない。

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 事実,本作にも他人を妨害できるルールが存在しないわけではない。ただ,それが直感的ではないだけのことなのだ。教師プレイヤーが生徒プレイヤーからIDカードを奪えば,それは生徒プレイヤーを実質妨害していることになる。IDカードは教師プレイヤーの加点となるわけで,それは生徒プレイヤーから勝利点カードを1枚奪っているに等しいのである。
 このように,「減点法ではなく,加点法で他のプレイヤーを妨害する」「プレイヤーが苦労して手に入れたものを,安易に奪い取らない」という発想は,とくに子供向けゲームでは重要になってくる。

 本作は,大人にとっては飽きやすい(もしかすると子供も結構早く飽きる可能性がある)という問題はある。が,随所にこっそり忍び込んでいる,そこはかとない戦略性には見るべきものがある。大人と子供が短時間でぱっと盛り上がるなら,本作は良い選択肢になり得るだろう。

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「ICECOOL」公式サイト(ドイツ語)

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