プレイレポート
第二次世界大戦に原点回帰し,さまざまなモードで連帯感を味わえる。「コール オブ デューティ ワールドウォーII」プレイレポート
「コール オブ デューティ」(以下,CoD)は,全世界で人気を博するFPSシリーズだ。3作目までは第二次世界大戦をテーマにしていたが,その後は現代戦や近未来戦へと移行している。
そして,2015年の「コール オブ デューティ ブラックオプスIII」では,人体と機械を融合した「スーパーソルジャー」が敵ロボットをハッキングし,2016年の「コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア」だと,宇宙戦闘機の空中戦と歩兵戦がシームレスに展開する……といった具合に,ここしばらくの作品ではSF色が強められていた。
プレイヤーキャラクターの能力も近未来戦に合わせて強化され,壁を走ったり,2段ジャンプしたり,高速でスライディングするなど,特殊な機動でアクロバティックな戦いができるようになっていったのだ。
こうした傾向に一旦リセットを掛けた感があるのが,今回の「コール オブ デューティ ワールドウォーII」(以下,CoDWW2)だ。舞台は初期作品と同じく第二次世界大戦となり,プレイヤーキャラクターは平凡な兵士である。壁を走ることも2段ジャンプで空を舞うこともできず,登場する銃器類も,ゲームオリジナルの近未来銃ではなく,戦争映画やドラマで見覚えのある実在する銃ばかり。さまざまな意味で原点回帰が志向されているのだ。
仲間とともに戦うキャンペーンモード
キャンペーンモードは,アメリカ軍の兵士・ダニエルズが主人公となる。けんかっ早いが友情にあつい親友・ザスマンや,鬼軍曹のピアソン,ミスで部隊を全滅させた過去を持つ上官・ターナーといった仲間たちとともに,各地を転戦していく。
最初のステージはもちろん,第二次世界大戦を代表する激戦・ノルマンディー上陸作戦だ。ドイツ軍が待ち構える浜辺に上陸艇で突入し,周囲で多くの味方が撃ち殺される中,死体を乗り越えつつ前進していく。映画「プライベート・ライアン」で映像化され,多くの人に衝撃を与えたシーンである。
この作戦は「コール オブ デューティ2」でも扱われているが,12年の歳月を経ているだけあって,グラフィックスはよりリアルになっている。加えてキャンペーンは,ボートに乗ったダニエルズが攻撃の煽りを受けて倒れてしまい,味方に助け起こされるところからプレイが始まる。これは2と同様の展開で,いわゆるセルフオマージュといった感じだ。両作品を見比べて,技術の進歩に思いを馳せるのも良いだろう。
また本作のキャンペーンモードでは,2作品目から採用され続けてきた自動回復が廃止されている。回復アイテムをストックしておき,状況に応じて適宜使用しなければならないため,無理な進軍は禁物だ。
回復アイテムはマップのあちこちに設置されているが,「分隊アビリティ」を使ってザスマンから分けてもらうこともできる。敵を倒すたびにゲージが上昇していき,MAXになった状態で方向キーの上を押せば,回復アイテムをもらえるのだ。もちろん,ザスマンがいない時はこうした恩恵は受けられないため,親友である彼の存在が大きなものとして感じられるようになる。単に原点回帰で昔のやり方に戻すだけでなく,新システムも取り入れたうえで,これがストーリーの演出としても機能している辺りが面白い。
ほかの仲間たちもそれぞれ分隊アビリティを持っており,ゲージもそれぞれに独立している。ピアソンの分隊アビリティで敵の輪郭をハイライトさせて狙いやすくし,弾が足りなくなればターナーから分けてもらい,撃たれたらザスマンから回復アイテムを手に入れる……というように,1人で遊ぶキャンペーンであっても,仲間と協力している感覚を味わえるというわけだ。
戦いのシチュエーションも,ジープを運転して装甲列車を追いかけたり,諜報員になってドイツ軍の基地に潜入し,騒ぎを起こさないようにしつつ内通者を探し出さなければならなかったりとバラエティ豊か。良い意味で少し昔の戦争映画という感じで楽しめる。
新ルール「WAR」が楽しさの幅を広げたマルチプレイモード
マルチプレイモードでは,CoDらしいカスタマイズ要素に加え,新ルール「WAR」によって大規模戦の醍醐味を味わえる。ここでも前作のような特殊機動はなく,地面を走り回って泥臭く撃ち合う。マルチプレイモードでは自動回復もあるため,久しぶりにシリーズに復帰した人や,FPSの初心者でもすぐに操作に慣れるだろう。
これまでは,PERKと呼ばれる特殊能力を複数組み合わせてキャラクターをカスタマイズしていたが,今回は使いたい武器に合わせて「師団」を選び,そこに特殊能力「基礎トレーニング」を1つセットする方式になっている。
師団は5種類が存在し,「歩兵」(ライフル),「空挺」(サブマシンガン),「機甲」(軽機関銃),「山岳」(スナイパーライフル),「派遣」(ショットガン)と,それぞれ得意な武器が決められている。歩兵ならライフルに銃剣が付き,空挺だとサブマシンガンにサプレッサー(消音器)が装備され,派遣はショットガンに強力な「焼夷弾」を装填できるなど,得意武器を使ったときの恩恵が大きい。
基礎トレーニングは,自動で発動する特殊能力を付与するもの。サブウェポンがランチャーになる「ローンチ」,ダッシュ中に銃を撃てる「ガンスリンガー」,2つのメインウェポンを装備できる「ライフルマン」などさまざまだ。複数のPERKを組み合わせる従来方式よりも分かりやすくなっており,とくにFPS初心者にありがたい仕様と言えるだろう。
マルチプレイモードに参加して経験値を得ると,師団はパワーアップし,基礎トレーニングの種類も増えていく。
師団の場合,5つのそれぞれにレベルが存在しており,使った師団に経験値が入る。例えば歩兵だと,2レベルでメインウェポンに付けられるアタッチメントが増え,3レベルでマガジンを多く携行できる……など,師団を使い込むほど得られる恩恵が増えていく。
基礎トレーニングは師団に関係なく,プレイヤー自身のランク(総合レベルのようなもの)が上がることで新しいものが手に入る。師団とランクはレベルアップするタイミングが違うため,常時モチベーションを刺激されるのが嬉しい。
今回のマルチプレイモードでとくに印象的なのが,新ルールのWARだ。攻撃側と防御側に分かれて遊ぶこのルールは,マップの中で目標が移り変わっていく。例えば「OPERATION BREAKOUT」の場合,「監視所を制圧する」「壊れた橋を修理する」「弾薬庫に爆弾を仕掛け,爆発するまで守り抜く」「進軍する戦車を護衛する」という4フェーズから構成されており,立ち回りや戦術を変えなければならないのがポイント。
この場合だと,監視所の制圧には力押しが有効で,橋では撃ち合いより修理を優先し,爆弾を仕掛けるには見つからずに行動することが重要になり,戦車を守るためにつかず離れずの距離を保ちつつ進まなければならない……といった具合だ。個人の技量はもちろんのこと,仲間との連携がかなり重視されるため,戦いの最中は強い連帯感を味わえる。
WARモードには,CoD名物の「スコアストリーク」(敵を倒してスコアを蓄積すると使える特殊攻撃。偵察機を飛ばして敵の位置を探ったり,爆撃を要請したりするなど)が存在しないうえ,敵を倒した数や,やられた数が戦績に反映されないという,CoDとしては思い切った仕様になっているのも見逃せない。
e-Sports的な展開を重視すると同時に,気軽に遊べるように間口を広げる努力が行われており,これは意義深い取り組みといえるだろう。
初登場のオンラインロビー「司令部」もユニークだ。日替わりのミッションを受けたり,射撃を練習したりできるのに加え,ほかのプレイヤーと交流したり1対1で対戦できる。ただ,原稿執筆時点ではほかのプレイヤーとの交流要素は使えず,プレイヤーが1人で息抜きをするだけの場所に留まっているのはとても残念だ。
また,全体的にサーバーも不安定なようで,ゲームに接続できなかったり,プレイ中に切断されたりといった現象も見られた。11月13日には,これらの問題に関する声明も発表されたが,一刻も早い解決を願うばかりだ。
謎と恐怖に彩られたゾンビモード
おなじみの協力型マルチプレイ「ゾンビモード」も健在だ。元・美術史家のオリビア,絵画泥棒のドロスタン,タフガイのジェファーソン,兄を助けようとするマリーたちは,枢軸軍に奪われた美術品を奪還すべく,雪深いドイツの村へ赴く。そこで4人はナチスの研究によって生み出されたゾンビに襲われてしまう。ゾンビどものウェーブを凌ぎつつ,少しでも長く生き延びるのだ。
ゾンビはいずれもナチス兵士の姿をしており,コミカルだった前作とは比較にならないほど怖い。
先へ進むには,「指定エリアの中でゾンビを一定数以上倒す」「特殊なライトを使い,いろいろな場所に飾られた絵を照らし出し,そこに書かれた記号と数字を謎の機械に入力する」など,マップに散りばめられた謎を解かなければならない。1人用である程度予習しておくか,手練れが仲間にいる場合は動きをしっかり観察しておくといいだろう。
ゾンビを倒すことで,このモード専用の通貨「ジョルト」を入手できる。閉ざされた扉を開くほか,武器や弾薬を買ったり,体力や攻撃力をアップさせたりと用途は多い。ゾンビどもはウェーブごとにパワーアップするため,こちらも適宜強化しなければならない。下手をすると,ゾンビにかなわない→ジョルトが手に入らない→ジョルトがないので強くならない……という負のループに陥る危険がある。ガッチリためて,しっかりと使っていきたいところだ。
ゾンビを倒していくとゲージが蓄積されていき,MAXになると「スペシャル」を使える。弾薬が無限になる「フリーファイア」や,ゾンビに見つからなくなる「迷彩」など,その効果はさまざま。これに,パッシブ能力「MOD」を組み合わせられるため,カスタマイズはかなり多彩となる。
例えば,フリーファイアに,ヘッドショットのダメージが上がる「マークスマンシップ」と,しゃがんだり伏せたりしたときに射撃精度がアップする「集中力」を付けてヘッドショットに特化するなど,いろいろと工夫するのが楽しい。
前作よりはプレイヤーが死ににくくなったうえ,たとえやられても誰かがウェーブをクリアすれば生き返れるため,より気軽に挑戦できるという印象。ただし,長引くと1時間以上はかかってしまうため,遊ぶのはある程度余裕のある時にするといいだろう。
残された仲間たちが苦労するため,途中抜けは厳禁だ。終盤には全員が協力しての謎解きもあるため,シャイな日本人向けに定型文などの意思疎通手段がほしいと感じられた。
CoDWWIIのキーワードは「原点回帰」と「連帯感」ではないだろうか。なじみ深い第二次世界大戦をテーマに,特殊機動を一旦廃して地上での撃ち合いにフォーカスする原点回帰。そして,シングルプレイでは分隊アビリティで,マルチプレイでは協力必須のWARルールとゾンビモードによって連帯感を味わえる。いずれの取り組みも一定の成功を収めているように感じられた。
ただ,前述したようにサーバーの不安定さによって画竜点睛を欠く感があるのが惜しい。本来の仕様通り,司令部でソーシャルな交流ができ,スムーズにゲームを楽しめるのなら,連帯感もより強くなり,ゲーム体験はより良いものになるはず。今後のアップデートに期待したいところだ。
「コール オブ デューティ ワールドウォーII」公式サイト
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