レビュー
RTX 2080 SUPERの実力をRTX 2080 TiおよびRTX 2080無印と比較
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER Twin Fan
2019年7月23日22:00,NVIDIAのハイエンド向け新型GPU「GeForce RTX 2080 SUPER」(以下,RTX 2080 SUPER)搭載グラフィックスカードの販売が解禁となった。
RTX 2080 SUPERの仕様については,7月2日の発表時にレポートを掲載済みであるが,搭載カードのレビューに進む前に,軽くおさらいをしておこう。
TU104コアのフルスペック版。動作クロックもRTX 2080から向上
RTX 2080 SUPERは,「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)と同じ「TU104」コアを用いたGPUである。そのため,64基のCUDA CoreとWarpスケジューラ,命令発行ユニットやL1キャッシュなどに加えて,レイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行う「RT Core」を1基,行列同士の積和算に特化した「Tensor Core」を8基まとめて演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を構成する点は変わらない。
CPUで言うところのCPUコア的な存在である「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)数は6基で,GPCあたりのSM数は12基といった基本構成も当然同じだ。
大きな違いはSMの総数にある。RTX 2080の場合,カード全体でSMが2基無効になっているため,総SM数は46基,総CUDA Core数は2944基だ。RT Core数は総SM数と同じ46基で,Tensor Core数は368基となる。それに対して,RTX 2080 SUPERは,総SM数が48基と,TU104のフルスペック仕様となっている。総CUDA Core数は3072基で,RT Core数は48基,Tensor Core数は384基となるわけだ。
動作クロックは,ベースクロックが1650MHzで,ブーストクロックが1815MHzと,RTX 2080比で前者が135MHz,後者が105MHz引き上げられている。さらに,メモリクロックは15.5GHz相当で,RTX 2080の14GHz相当から向上している点もトピックのひとつに挙げられるよう。メモリインタフェースが256bitなのはRTX 2080と同じだが,メモリクロックの向上によってメモリバス帯域幅が496GB/sと,RTX 2080から1割ほど広がっている点は押さえておきたいポイントだ。
RTX 2080 SUPERと,上位モデルである「GeForce RTX 2080 Ti」(以下,RTX 2080 Ti),およびRTX 2080のスペックをまとめたものが表1となる。
ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの各部をチェック
ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanのカード長は,実測で約267mm(※突起部除く)。RTX 2080 Founders Editionが同267mmだったので,ほぼ同サイズと言ってよかろう。GPUクーラーは,「IceStrom 2.0」と呼ばれる2スロット占有タイプで,90mm角相当のファンを2基搭載している。ちなみに,ZOTAC製の付属アプリケーション「FireStorm」(Version 3.0.0.009E)から,2基のファンの回転数を個別に設定できる点はユニークなポイントだ。
動作クロックは,GPUとメモリともにリファレンスどおりだ。なお,後述するテスト環境において,FireStormでテスト中のコアクロックを追ってみたところ,最大で1980MHzまで上昇していることを確認した。
PCI Express補助電源コネクタは,リファレンスとなるFounders Editionと同じ8ピン+6ピン構成。映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.0b Type A×1で,Founders Editionが備えるUSB 3.1 Gen.2 Type-C×1は省略されている。
ZOTAC製RTX 2080 SUPERの最上位モデル「ZOTAC RTX 2080 SUPER AMP Extreme」も写真でチェック
ZOTAC 2080 SUPER AMP Extremeは,90mm径の空冷ファンを3基備える大型クーラーを採用し,ブースト最大クロックが1875MHzに達するクロックアップモデルであるのが特徴だ。
カード長は実測約323mmで,3スロットを占有する大型のカードだ。補助電源コネクタは8ピン×2で,電源部は16+4フェーズ仕様という豪勢な仕様もポイントである。
ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの性能をRTX 2080 TiおよびRTX 2080と比較
カードの概要は以上のとおりで,ベンチマーク部分に進む前に,今回のテスト環境について説明しておこう。
今回の比較対象には,「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」と「GeForce RTX 2080 Founders Edition」を用意した。これにより,RTX 2080 SUPERが,無印のRTX 2080からどれだけの性能向上を実現し,RTX 2080 Tiにどこまで迫れたのかを確かめようというわけである。
ドライバソフトは,NVIDIAから全世界のRTX 2080 SUPERレビュワーに配布された「GeForce 431.56 Driver」を使用した。そのほかのテスト環境は表2にまとめたとおり。
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1に準拠しているが,時間の都合により「Overwatch」「Middle-earth: Shadow of War」「Project CARS 2」は省略した。その一方で,「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER AMP Extreme」のレビューと同様に,レギュレーション23.0を先取りする形で「Far Cry 5」の代わりに「Far Cry New Dawn」を,「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の代わりに「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズベンチ)を利用する。
具体的なテスト方法だが,まずFar Cry New Dawnは,ゲームに用意されたベンチマークモードを,最高プリセットを選択したうえで2回実行して,その平均をスコアとして採用する。FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチは,グラフィックス設定を最高品質にしたうえで1回だけベンチマークを実行し,レポートファイルから得られる総合スコア,平均フレームレート,最小フレームレートをスコアとして用いるという内容だ。
今回テストするGPUは,2560×1440ドットでのゲームプレイを想定しているため,解像度は3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3種類を選択した。
RTX 2080との差は4%前後。RTX 2080 Tiとの性能差は大きいまま
以下で扱うグラフ内では,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanをZOTAC 2080 SUPER,比較対象をそれぞれRTX 2080 Ti,RTX 2080と表記していることを断ったうえで,「3DMark」(Version 2.9.6631)の結果から見ていこう。
グラフ1は,Fire Strikeにおける総合スコアをまとめたものだ。ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanのスコアは,RTX 2080より1〜4%程度高いものの,RTX 2080 Tiとの差は12〜21%程度あり,性能差はまだ大きい。
Fire Strikeから,GPU性能を見るGraphics Scoreを抜き出したグラフ2では,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080との差は3〜4%ほどだが,RTX 2080 Tiとの差は22〜23%と,より顕著になった。純然たるGPUの性能差が,これだけあるということなのだろう。
グラフ3は同じくFire StrikeにおけるPhysics scoreをまとめたものだ。ここでは,CPUによる物理演算性能が問われるため,CPUを統一している今回のテストでは,スコアがほぼ横並びになる。
グラフ4は,GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものだ。ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanが,RTX 2080に2〜5%程度の差を付けているのはこれまでと同じ傾向だ。
一方,RTX 2080 TiとZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの差は最大で24%もあり,依然として両者の差がかなり大きいことが見てとれる。なお,Fire Strikeのスコアだけは,RTX 2080 TiとZOTAC 2080 SUPER Twin Fanが横並びとなっているが,これはCPU性能の限界でスコアが飽和していると理解していい。
DirectX 12世代のテストである「Time Spy」の総合スコアをまとめたものがグラフ5だ。ここでも,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080の差は3%弱といったところ。一方,RTX 2080 Tiとの差は16〜18%もあり,Fire Strikeと同様に,両GPUの差はまだかなり大きい。
続くグラフ6は,Time SpyのGPUテスト結果を,グラフ7はCPUテストの結果をそれぞれまとめたものだ。
GPUテスト結果は,総合スコアよりも顕著なもので,RTX 2080 TiとZOTAC 2080 SUPER Twin Fanとの差は22〜26%程度にまで広がった。まさに格の違いがハッキリと表れてしまっている。一方,CPUテスト結果はFire Strikeと同様に横並びだ。
3DMarkの結果を踏まえたうえで,実際のゲームにおける性能差を見ていこう。
グラフ8〜10は,Far Cry New Dawnのテスト結果をまとめたものだ。ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080との差は,平均フレームレートで1〜3%程度といったところ。数値を見ても最大2fps程度の差しかなく,両GPUの違いを体感することはまずないだろう。
一方,RTX 2080 Tiとの差は,CPU性能の影響が低くなる3840×2160ドットで顕著となり,約16%ほどとなった。しかし,それ以外の解像度では2〜4%程度の差に収まっているのは注目すべき点だ。
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果をまとめたグラフ11〜13では,1920×1080ドットや2560×1440ドットにおいて,CPUのボトルネックにより平均フレームレートのスコアが飽和しつつある。そこで,3840×2160ドットに注目すると,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080との差は約6%あり,明確な違いを見せつけている。その一方,RTX 2080 Tiとの差も19%ほどあるので,まったく届いていない。
グラフ14〜16の「Fornite」でも,傾向は変わらない。平均フレームレートにおけるZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080の差は,5〜6%程度だ。RTX 2080 Tiには16〜23%程度もの大差を付けられている点も変わらない。
グラフ17は,FFXIV漆黒のヴィランズベンチの総合スコアをまとめたものとなるが,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080との差は約1%程度しかなく,
そんなFFXIV漆黒のヴィランズベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ18〜20だ。平均フレームレートの傾向は,おおむね総合スコアを踏襲しているが,RTX 2080比では3〜6%程度に差を広げた。一方,RTX 2080 Tiには,2560×1440ドット以下で約9%,3840×2160ドットでは約18%と差を付けられている。
最小フレームレートは,2560×1440ドット以下でスコアが飽和してしまい,見事な横並びとなってしまった。ただ,3840×2160ドットでは,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080 Tiの差が約30%と大きくなっている。
RTX 2080から消費電力は20Wほど増加。RTX 2080 Tiほどの電力食いではない
RTX 2080 SUPERの消費電力も確認してみよう。
ZOTAC 2080 SUPER Twin FanのTDPは250Wで,RTX 2080の215Wから35W増えて,RTX 2080 Tiと同じになった。では,実際の消費電力はどの程度だろうか。
今回も「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV漆黒のヴィランズベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめてみた。結果はグラフ21のとおり。
ここでは,RTX 2080が200W前後,RTX 2080 Tiが250W前後で推移しているのに対して,ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanは,その中間に収まっているように見受けられる。ちなみに,300Wを超えるケースをカウントしてみると,RTX 2080が47回なのに対して,ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanは61回と,確実に消費電力が増加しているのが分かる。とはいえ,RTX 2080 Tiは90回も300Wを超えているので,それに比べれば,ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの消費電力はまだ低めとも言える。
線が重なって見にくいグラフ21から,スコアの中央値をまとめたものがグラフ22だ。ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanは,RTX 2080から約20W増加している一方で,RTX 2080 Tiよりは20Wほど低い値に収まった。この結果からも,ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの消費電力は,RTX 2080 TiとRTX 2080のほぼ中間と言ってよさそうだ。
念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測してみた。
テストにあたっては,いつもどおりWindowsの電源プランを「バランスに設定」。さらに,ゲーム用途を想定して,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
システム全体の最大消費電力をまとめた結果がグラフ23だ。ピーク値をスコアとして採用するテストであるため,ZOTAC 2080 SUPER Twin FanとRTX 2080との差は14〜31W程度と,大きく広がった。とはいえ,RTX 2080 TiとZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの差も20〜49W程度あるので,ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanの消費電力は,RTX 2080 Tiより低いのは明確だ。
最後に,「GPU-Z」(Version 2.22.0)を用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。
ここでは,室温約24℃の環境で,テストシステムをPCケースに組み込まないバラック状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得している。
その結果はグラフ24のとおり。ZOTAC 2080 SUPER Twin Fanのスコアは,ほかと比べて低いということはなく,大雑把ではあるがFounders Edition並みの冷却性能は有しているということなのだろう。ちなみに,その動作音だが,筆者の主観であることを断りつつ述べると,ウルサクはないものの,やはりそれなりの動作音はしっかりとある。もちろん,PCケースに入れると問題ないレベルだ。
スタート時の価格は税込10万円前後,価格がこなれたRTX 2080のほうがお買い得か
RTX 2080は流通在庫のみとなるそうなので,いずれはRTX 2080 SUPER搭載カードに置き換わるわけだが,登場時の価格は10万円前後となるようだ。RTX 2080は,登場時に搭載カードが12〜13万円程度で販売されていたことを思えば,RTX 2080 SUPER搭載カードは,スタート時から落ち着いた価格となりそうである。
とはいえ現時点では,7万円台後半から9万円程度に価格がこなれたRTX 2080のほうが,魅力的に映るのは筆者だけではないだろう。RTX 2080から確実に性能は向上しているものの,目新しさはあまりないので,RTX 2080 SUPER搭載カードの価格がこなれるのを待つという手もありそうだ。
ZOTACのZOTAC 2080 SUPER Twin Fan製品情報ページ
- 関連タイトル:
ZOTAC GAMING(旧称:ZOTAC Gaming)
- 関連タイトル:
GeForce RTX 20,GeForce GTX 16
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