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すべてのゲームはWebでやれ――Yahoo!ゲームの新プラットフォーム「ゲームプラス」発表会の模様をレポート
ゲームプラスは,PC/スマートフォン/タブレット向けに提供される次世代型のゲームプラットフォームだ。プレイヤーは各種端末のWebブラウザからゲームプラスにアクセスするだけで,手軽に提供タイトルを遊ぶことができる。ゲームはインストール不要のHTML5ゲームと,「ファイナルファンタジーX」などのコンシューマタイトルを最適化したクラウドゲームの2軸で提供される。
家ではPC,外ではスマホというと従来のクロスプラットフォームプレイのように聞こえるが,ゲームプラスは“ブラウザ”へのアクセスを要としているため,プレイヤーはハードの違いやデータの移動などに縛られず,いつでも同一のゲームデータで遊ぶことができる。これは現代のゲーム環境に即した,新たなプレイスタイルといえるだろう。
「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」公式サイト
テーマは“新大陸発見”
会場ではゲームプラスのプロモーションムービーが上映された後,ヤフー 副社長執行役員 最高執行責任者(COO)の川邊健太郎氏が登壇した。
発表会開始の挨拶として川邊氏は,ゲームプラスは足掛け3年で辿りついた,Yahoo!ゲームの新たな施策であると述べる。また,多様になったハードやプレイスタイルなどの環境の変化こそが,ゲームプラスを生み出したきっかけであったとのことだ。
ゲームプラスのテーマ“新大陸発見”は,ハードに縛られていたゲームが,いつでもどこでも自由にWebブラウザで楽しめるようになることを指している。これまでにないゲーム体験を提供しつつ,関係各社もこれまでにないゲーム環境に臨むことから,誰もがまだ見ぬ1歩を踏み出していく,そういった想いが込められている。そして今後はゲーム業界全体に貢献していくための施策も並行して考えていきたいと,川邊氏は語った。
続いて事業説明のため,ヤフー パーソナルサービスカンパニー 事業戦略本部 ゲームプラス事業部の須藤 岳氏が登壇し,ゲームプラスの手軽な遊び方の一例が紹介された。
例えば「SNSで友人とゲームのURLをやりとりし,もらったURLをクリックしてゲームをプレイする」といったことは,昨今のゲームプレイヤーであれば覚えがあるだろう。しかし,フラッシュゲームならまだしも,ネイティブアプリではプレイまでにひと手間がかかる。だがゲームプラスのHTML5ゲームであれば,アプリのダウンロードもインストールも不要で,手軽なワンクリックでプレイできるという。
もう一方のクラウドゲームは,高画質のハイクオリティゲームをコンシューマハードを介さず,PCやスマホで楽めるよう提供されるものだ。同社は約4年前にYahoo!かんたんゲームを,約2年前にYahoo!かんたんゲームプラスのサービス提供を行っているが,両プラットフォームではカジュアルゲームの範囲はフォローしつつも,コアゲームを提供できていなかった。しかし,ゲームプラスではコアゲームの提供をブラウザ上で可能としているため,コアゲーマーへのリーチ力がいっそう高められている形だ。
なお,ゲームのマネタイズに関しては,HTML5は基本プレイ無料・アプリ内課金が主流となる。そしてクラウドゲームについては,「ファイナルファンタジーX/X-2」関連の3年間のプレイ権の販売,レトロゲーム20作品が遊べる「EGGY」の月額料金の支払いと,現状ではプレイ時の利用券の購入となる。
次に壇上では,ヤフー パーソナルサービスカンパニー 事業戦略本部 ゲームプラス事業部 ビジネスプロデューサーの脇 康平氏から,ゲームプラスに参画するゲーム企業が,7月18日で52社となっていることが明かされた。
その後,会場では52社の内,一部企業の代表者が登壇し,それぞれ挨拶を行った。スクウェア・エニックス 代表取締役社長 松田洋祐氏は,ゲームプラスが生み出す新たなゲーム環境への期待を述べつつ,「FINAL FANTASY XIII」シリーズ3部作,「ラスト レムナント/THE LAST REMNANT」,「ファイナルファンタジーX/X-2」,「いけにえと雪のセツナ」を,クラウドゲームで提供すると発表した。
タイトー 代表取締役社長 山田 哲氏は,スマホゲームの勢いは確かだが,スマホだけに執着するプレイスタイルにはそろそろ限界が見えると,まずは自身の見解を述べる。ゲームプラスでは他社と競合するのではなく,互いに補完しあえる関係を目指しつつ,さまざまなチャレンジを行っていくとのことだ。そして配信タイトル第1弾となる,「パズルボブル(新作)」の提供を発表した。
サイバード 代表取締役社長 内海州史氏は,同社の人気作品「イケメン」シリーズ計8タイトルをはじめ,女性向け恋愛ゲームの売上伸長率が2年で7.6倍を記録(※日本国内のApp Store/Google Play合計)していると説明したうえで,ゲームプラスでも「イケメン戦国◆時をかける恋」を提供すると明かした。なお,本作は7月18日から事前登録の受付が開始されており,8月14日に正式サービスが行われる予定だ。
角川ゲームス 代表取締役社長 安田善巳氏は,まずは2作品をゲームプラスで提供するとし,角川ゲームミステリーの第1弾タイトル「√Letter ルートレター」を,クラウドゲームとして8月下旬に配信すると告げた。また,完全新作タイトルとなる,アニメ×世界文学を題材にしたHTML5ゲーム「魔女と猫」の提供も予定されている。
最後はコーエーテクモゲームス ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ氏が姿を見せた。シブサワ氏はこれまで,川邊氏らとは一緒に何かをやろうと度々話しをしており,それがようやく形になったと口にする。同社は今後,HTML5対応の新作ゲームとしてコードネーム「Turn」を提供するとのことだ。なお,本作の世界観はファンタジーになるという。
スクエニ新作ボードゲームに加藤一二三さんが挑戦
ゲームプラスではサービス開始と同時に,HTML5ゲームが12本,クラウドゲームが27本の計39タイトルが提供されている。そのうち,ローンチタイトルの中でもひときわ注目される,スクウェア・エニックスの最新タイトル「アンティーク カルネヴァーレ」(以下,アンカル)の紹介が行われた。
壇上には同社の第7ビジネスディビジョン 運営プロデューサーの藤川 翔氏をはじめ,お笑い芸人「インパルス」の堤下 敦さんと板倉俊之さん,グラビアアイドルの倉持由香さん,そして“ボードゲーム”にちなんで棋士界のレジェンド 加藤一二三さんが姿を見せた。
ゲーム好きが高じて気付いたら某作品で全国ランカーになってしまったほどの板倉さん,毎年自腹で格闘ゲームイベント「Evolution」に足を運んでいるという倉持さん,子供とライトなカジュアルゲームをよく遊ぶという堤下さん,そしてゲームやパソコンは苦手だという加藤さんと,バラエティに富んだゲスト陣だ。
藤川氏は,「アンカルはYahoo!ゲームで人気のチェスやリバーシをモチーフにしたゲーム」だと説明する。スクエニらしいビジュアルや世界観を楽しめる1人用のストーリープレイはもちろん,知的な対戦ゲームとしての一面がウリとなるようだ。
デュエル(対戦)の勝利条件は,相手のキングを取ることだ。デュエル中は盤面のピース(駒)をチェスのロジックで動かし,相手のピースとかち合わせると,コマンド選択式のバトルに突入する。コマンドバトルでは通常攻撃やスキルを選択して戦うが,スキルの使用には「MP」が必要だ。このMPは,盤面のピースを配置・移動させた範囲(自身の色)が総量となる。
またリバーシの要素として,“ピースとピースで列を挟むと,その一列の色が自身の色に置き換わる”といったシステムが存在する。このリバーシ要素を疎かにしていると,「通常攻撃しかできない自身vs.スキルをたっぷり使える相手」といった状況になってしまうため,単純なステータスだけでは戦況が図れない。
チェスの思考,リバーシの駆け引き,ピースの属性関係,さらに召喚獣を使っての攻撃・回復といった必殺技なども考慮していかなければならない本作は,少し複雑なゲームに感じるかもしれない。しかし,元々シンプルなゲームを題材としているだけに,全体像はいたってシンプルだ。ゲーマーであれば,デュエルの模様を1度見るだけで容易に理解できるだろう。
ゲームの説明が済んだところで,本作の特徴の1つ「ライブ配信機能」を利用しながら,倉持さんと加藤さんが実際にデュエルをすることに。ライブ配信ではPCのカメラ(※スマートフォンでも可能。なお,サービス開始時は一部端末に限られる)を使用すると,プレイヤーの顔を画面に映しながらデュエルを楽しめる。壇上では加藤さんの顔を映しながらの対戦が繰り広げられた。
今回のデュエルでは,ピースの強弱といったものまでは把握できなかったが,一見するだけでチェスとリバーシの攻防が,戦況の大きなアドバンテージを握っているのが見て取れた。シンプルなルールでありながら,簡単すぎるゲームにはなっていない。そのようなバランスに感じられた。
なお,本作のライブ配信ではプレイヤー以外に観戦者も参加できる。観戦者は配信を見ながら,チャットを使ってプレイヤー間の交流を楽しめるようだ。
続いて,女優の佐野ひなこさん,声優の花江夏樹さんが加わり,アンカル以外の提供タイトルの紹介が行われた。
HTML5ゲーム「揃えて消してマカロン ぽちゃもぐ」は,ウィズコープ エグゼクティブ・プロデューサーの中込博之氏より紹介が行われた。
本作は画面中央のマカロンタワーからマカロンを抜き,タワーに残った同じ色のマカロン同士を消していくという,落ちものパズルゲームだ。マカロンを素早く正確に引き抜かなければ,タワーがバランスを崩して倒れてしまう。なぜマカロンなのかという理由だが,同社の親会社がフランスにあることから,フランスの菓子にちなんで決めたという。
また,ゲームにはサンリオ描き下ろしのサンリオキャラクターズが登場し,ハローキティやマイメロディーなどが,全体的に頭の大きい“ポチャッとしたデザイン”で登場する。そのデザインには佐野さんも黄色い声を上げていた。
クラウドゲーム「ファイナルファンタジーX」は,ゲームプラスに技術協力しているユビタス 春日伸弥氏より紹介が行われた。本作の体験者に選ばれた花江さんは,同作のボスキャラクターであるシーモアとの決戦に挑む。
画面を見ていたところ,ゲームのストリーミングは安定しており,バトル開始からバハムートの召喚,派手な演出の「メガフレア」まで,ストレスにつながるようなカクつきは見られず,スムーズに遊べる印象であった。ただ,後ほど脇氏に尋ねたところ,素早いレスポンスが求められるアクションゲームやリズムゲームについては,まだレイテンシが安定しないという。今後の研鑽に期待か。
次はゲームプラスの「遊びの革新」の一例として,スマートフォン/フィーチャーフォン向けに配信されている「チョコボのチョコッと農園」のゲームプラス版が紹介された。ゲームプラス版では新たに“万歩計機能”が取り入れられ,ライフログ×ゲームという特徴が加わるという。余談だが,ポケットステーションの「おでかけチョコボRPG」を思い出す人も多そうだ。
なお,ライフサービスとの連携はゲームプラスの大きな特徴とされる。今後はYahoo! JAPAN IDと連携し,「現在地が雨なら,ゲーム内でも雨が降る」「クリアにつまずくと,クリアの様子を映した実況動画が届く」「体重が減ったら,ゲーム内のアバターも痩せる」「リアルの運動量が,ステータス値に反映される」といった,Yahoo!の関連コンテンツとゲームの連動も構想しているとのことだ。
また,将来的にはアプリ内課金のみならず,ライフサービスと連携して「プレイヤーに移動してもらうことで発生する広告ビジネス」など,業界全体に寄与できる新しいビジネスチャンスの発見にも努めていくとしていた。
もう1つ「技術の革新」として,ブラウザ上で動かせる3Dグラフィックスのデモが披露された。HTML5の技術発達により,ブラウザ上でもネイティブアプリと遜色ない品質のゲームを提供できるようになったと語る脇氏だが,正にそのとおりであった。壇上ではスマホ向けのリッチゲームのような3Dアクションゲームが,まったく違和感なく動作していたのだ。
ちなみに,発表会後の脇氏と須藤氏への質疑応答でいくつか興味深い答えが返ってきたので,抜粋して紹介しておこう。まず,ゲームプラスのプレイスタイルについて脇氏は,「TVのリモコンを操作して画面を見る」ことを例に,ゲームプラスも「URLをクリックしてゲームを始める」といった,手軽な体験であることが重要だと語った。
また,ゲームプラスはPC/スマートフォン/タブレットで提供されているが,サービスはあくまでブラウザを介することができるデバイスであるため,(実際の問題はさておき)Webブラウザが利用できるコンシューマハード機や携帯ゲーム機などにも,今後の状況次第でサービス範囲を拡大していきたいと述べた。
「本日発表されたタイトルはカジュアルゲームに寄っているのではないか」という質問には,各社と相談をしはじめたのが2016年11月前後であったことが大きいと語る。現時点で関係各社がさまざまなゲームの開発を進めているというので,これについては続報に期待するべきだろう。ただし,ローンチからリッチゲームを押し出してしまうと,リッチゲームを目的とするプレイヤーのみが集まってしまうという懸念もあったらしい。ゲームプラスではYahoo!ブランドらしく,より幅広い層に興味を持ってもらうことが大切なようだ。
発表会の最後には,ヤフー パーソナルサービスカンパニー 事業戦略本部長 米谷昭良氏より,閉会の挨拶が行われた。米谷氏は「構想から3年,ゲームプラスは本日サービスの開始を迎えることができました。今回の発表会では関係各社からの期待の大きさをあらためて実感いたしましたので,今後は参画してくれた関係各社とともに,より良いサービスを生み出し,より多くのユーザーの皆さんに届けていきたいと思います」と語った。
その後,登壇者一同によるテープカットが行われ,発表会は終了となった。
サービスが開始された,Yahoo!ゲームの新たな施策となる「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」。ヤフーが語る新しいゲーム体験がどのようなものなのかは,ぜひ自身で体感してみてほしい。
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