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「競争が激化するモバイルゲーム市場でのユーザー獲得と今後の展望」レポート。ゲーム内容と無関係な広告に効果はある?
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印刷2020/11/26 17:48

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「競争が激化するモバイルゲーム市場でのユーザー獲得と今後の展望」レポート。ゲーム内容と無関係な広告に効果はある?

 App Annie Japanが主催するカンファレンスイベント「Mobile Leader Summit」が,2020年11月10〜12日の3日間にわたって開催された。本稿では,同イベント中のセッション「競争が激化するモバイルゲーム市場でのユーザー獲得と今後の展望」の内容をレポートしていこう。

画像集#001のサムネイル/「競争が激化するモバイルゲーム市場でのユーザー獲得と今後の展望」レポート。ゲーム内容と無関係な広告に効果はある?

●登壇者
・株式会社ミクシィ
デジタルエンターテイメント事業本部 事業企画部
マーケティングインテリジェンスグループマネージャー
片瀬 大氏

・Voodoo
Head of Japan
Ben Fox氏

・Papergames
CEO of Japan
北阪幹生氏

 本セッションでは,「コトダマン」などのマーケティングを担当する片瀬氏に,ハイパーカジュアルゲームを多数提供するVooDooのBen氏が,それぞれの視点から現在のモバイルゲーム市場での広告手法などを語ってくれた。


今後求められるのは,ブランド力を高めるマーケティング手法


 最初の議題は,これからのゲームに必要なものについて。コロナの影響により,モバイルゲームをプレイするユーザーや,関心を持つ人は以前よりも増加した。その影響について,片瀬氏はゲームをプレイするだけでなく,見て楽しむことの重要性が増したと述べる。

 インフルエンサーをとおしてゲームを楽しむ人が増加したことと合わせて,いわゆる動画映えするタイトルの注目度が増しているようだ。今後はただ面白いだけではない,YouTubeなどを通じて見ている人も楽しめるタイトルが大切になるとBen氏も賛同した。

画像集#002のサムネイル/「競争が激化するモバイルゲーム市場でのユーザー獲得と今後の展望」レポート。ゲーム内容と無関係な広告に効果はある?

 続いて,マーケティング手法がうまいと思う会社や,その手法についてに議題が変わる。片瀬氏は,日本で展開される海外ゲームのマーケティングの物量とスピード感は真似できないものだと感心を表した。

 一方のBen氏は日本のタイトルが得意とするブランド作りの能力を評価し,特定タイトルが数年間ランキングトップを維持し続ける現状を例に挙げる。1つのブランドが長期的な人気を維持するのは日本独特のもので,ハイパーカジュアルゲームでは再現が難しいのだという。

画像集#003のサムネイル/「競争が激化するモバイルゲーム市場でのユーザー獲得と今後の展望」レポート。ゲーム内容と無関係な広告に効果はある?

 ハイパーカジュアルゲームがダウンロード数を伸ばす中,マーケティング活動にここ数年で変化があるのか。北阪氏のこの質問に対し,片瀬氏は前提として昨今のモバイルゲーム市場環境について説明した。たびたび議題に上がるモバイルゲームのレッドオーシャン状態により,現在は広告活動だけをしていても手に取ってもらえないという。
 
 対応の変化として片瀬氏は,コミュニケーションを重視し,ファンを増やしていく手法を挙げた。例として,「コトダマン」であれば雰囲気を大切にしつつ,少し変わったマーケティングをすることで,普通ではない特別感を出しているという。ファンと一緒に楽しめる空気感を作ることを重視しているそうだ。また,誰に遊んでもらいたいかを深く考えることも大切だとした。心が動くか,手に取ってもらえるかを考えるのはもちろんのこと,実際のターゲット層がどのような印象を抱くかも考えるという。

 ファンと一緒に育てていくブランドマーケティングについてはBen氏も同意を示し,意識を持ってダウンロードしてもらうことは重要だと述べた。ファンやインフルエンサーと一体となってゲームを作るマーケティングは,今後グローバルでも似たような手法として活用される可能性があるそうだ。

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 YouTubeの広告などで頻繁に見かける,ピンを抜くゲームなどの広告。実際にダウンロードするとピンを抜くシーンが一切存在しないなど,広告とゲーム内容の乖離は定番と化している。そんな現状について,マーケティングの担当者たちはどのように感じているのか。

 片瀬氏は,安価でユーザーを獲得するなら最適な方法なのだと推察。一方で,ファンがどう感じるのかは気になってしまうという。先述したとおり,空気感やブランド力を大切にする日本では,真似できない手法ではあると感じているようだ。

 日本のタイトルとは運営手法の異なるハイパーカジュアルゲームの場合は,やらざるを得ない面もあるとBen氏は述べた。実際にゲーム内容と乖離した広告でも,効果は出ているようだ。意外なことに,ジャンルによってはインストール後の継続率も高いという。とはいえ,まったく別のゲームだと誤認させることには,違和感を覚えているようだ。

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 続いて議題に上がった気になるゲームジャンルでは,「Fall Guys」や,「アーチャー伝説」が大きく評価されていた。とくに「Fall Guys」は,冒頭でも話題に上がった動画映えする要素を含む,見て楽しい&遊んで楽しいタイトルになっている。

 YouTubeでの視聴率も高く拡散力があり,視聴者をユーザーとして取り込める力を持ったタイトルになっており,Ben氏の務めるVoodooのデベロッパコミュニティにおいても一時期「Fall Guys」が大きな話題になっていたようだという。また,「アーチャー伝説」の絶妙なバランスについてもBen氏は注目しており,ハイパーカジュアルとは違った,スーパーカジュアルゲームを社内でも検討する段階にあると述べる。

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 ミクシィの海外展開について問われると,片瀬氏はグローバル向けの開発が進行していることを明らかにした。北米と日本ではトレンドが違うため,現地でのユーザーテストや,ニーズを確認しながら仕込んでいる最中とのこと。

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 マーケティングのターゲット層が議題に上がると,大勢への調査より,個別に聞いて感覚をつかむという調査方法を実施していることが片瀬氏より語られた。小学生への調査や,高校生へのインタビューを始め,流行の基点などはアンケート調査を使って確認しているという。ターゲット層を絞り,その層にどんなものが受け入れられるのか。流行の基点にフォーカスしてマーケティングをしていくことが,ミクシィでの手法になるようだ。

 一方でハイパーカジュアルゲームを多数展開するVoodooの場合,特定層への訴求より,より多くの人に受け入れられるデザインを目指しているという。老若男女に受け入れられるデザインを重視し,好かれるよりも,嫌われないことを目指しているそうだ。

 セッションの最後には,新時代でのモバイル戦略について,大きく変化した点をそれぞれの観点から語られた。Ben氏は,一度売れたゲームと同じものが売れる時代は終わり,常に変化するトレンドを見極めることを重視しているという。

 片瀬氏は市場をデータ分析するだけでは予測できない部分もあり,それをマーケティング側で読み取っていく,感覚的な部分も必要な時期になったと述べる。

 人気タイトルの後追いや,単純に広告を出すだけではヒットに結び付かない現在のモバイルゲーム市場。それぞれジャンルの異なるゲームを展開する両者の視点から,よりユーザーにフォーカスしたマーケティングや,多くの人を引き寄せるゲーム自体の魅力の必要性を感じさせる。

 レッドオーシャン化したと言われ数年が経過し,人気タイトルが数年単位で運営され続けている。新規タイトルをユーザーがインストールしたくなるようなマーケティングは,より重要性を増すことになりそうだ。

「Mobile Leaders Summit」公式サイト

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