プレイレポート
「Farming Simulator 19」プレイレポート。広大な農場を舞台に,あえて手間や面倒を楽しんでみよう
「Farming Simulator」は,2008年に1作めとなる「Farming Simulator 2008」が登場して以来,定期的に新作がリリースされている人気シリーズだ。
プレイヤーは,海外の広大な土地を舞台に,多数用意されている実在メーカーの農業機械(畜産・林業機械を含む)を細かく操作しながら,自由に農場を管理・開発していく。
特に欧米では幅広い層から人気があり,マニアックなジャンルでありながら累計販売本数は1000万本超と,確かなファンに支えられ続けている。
シリーズ最新作となるFarming Simulator 19では,グラフィックスが一新。迫力ある大型農機やさまざまな天候,広大な風景などがリアルに表現され,実質的な前作にあたる「Farming Simulator 17」(以下,FS17。「Farming Simulator 18」は携帯ゲーム機やスマホ向けタイトル)よりも深い没入感を味わえるようになった。さらに幾つかのシステム変更などのアップデートも盛り込まれており,もちろん扱える生産品や家畜の種類も追加されている。
海外ならではのスケールが大きい農場運営を毎回楽しみにしている日本のリアルファーマー兼ゲーマーも少なくないと聞く本シリーズ。シリーズ未経験の筆者が、初めての農場体験に翻弄されながらPC版プレイレポをお届けしよう。
初プレイならイージーモード&ラベンポートがおすすめ
グイグイと引き込まれるようなストーリーを追いかけたり,イベントで感動したり……といったことはなく,ただストイックに農場を運営していく本作。
「高性能or長年憧れていた農機を手に入れて操作を楽しむ」「マイ農場を軌道に乗せて豊かにする」など目的は自由だが,何をするにも必要になってくるのが「お金」なので,当面は資金調達に勤しむことになるだろう。
右も左も分からないシリーズ初体験のプレイヤーは,あらかじめ土地や最小限の農機が用意されている「新しい農家」(イージー)からプレイするのがいいだろう。最初のマップを選べば簡単なガイドツアーも受けられるので「自由すぎて何をしたらいいかわからない」という状態は避けられるはずだ。
馴れてきたら「農場マネージャー」(ノーマル)や「最初の一歩」(ハード)に挑戦してほしい。
ノーマルやハードの場合は何も持たない状態から始まるが,自分が好きな土地をじっくりと探したり,イチから機材を選ぶ楽しみがある。例えば,行き来することが多いショップ付近の土地を買って,好きなブランドで農機を統一するといったことも可能だ。
今作の初期マップは,星条旗がたなびく素朴な雰囲気の「ラベンポート」と古城が印象的なヨーロッパの「フェルスブラン」の2つだが,先日公式から南米マップ「ESTANCIA LAPACHO」がMODメニューに追加された。今後日本のマップが増えることにも期待したい。ガイドツアーが受けられるのはラベンポートだけだが,ツアーが不要なら好みで決めていいだろう。
土地の準備まで進むと(イージーモードの場合はガイドツアー後),プレイヤーはFS17同様、広大な土地にいきなり放り出されることになる。
前述したように,「取引先が○○を欲しがっている。至急栽培して納品しよう」といった,プレイヤーを導いてくれるようなイベントは一切発生しないので,「必要な農機は一体何か」「どんな生産品をつくったらいいのか」といったことまで,プレイヤーが自分で考え,自由に決めていくのだ。
アルバイトもしながらカッコいい農機に慣れよう
農業・畜産・林業のどれからスタートしても問題はないが,ベースとなるのはやはり農業。というのも,畜産で使う家畜の飼料なども,結局は自分で栽培する必要が出てきたりするからだ(林業はこれら2つからやや独立している印象)。
プレイヤーが栽培して販売できる作物は,FS17から引き続いての「小麦」「大麦」「キャノーラ」「ヒマワリ」「大豆」「トウモロコシ」「ジャガイモ」「テンサイ」「サトウキビ」に,今作で初登場の「オーツ麦」「綿」を加えた11種。
最初におすすめなのは小麦・大麦・オーツ麦・キャノーラ・大豆あたり。栽培に高額な専用農機を用意する必要がないので,投資を抑えられる。もちろん農機に投資して自分が好きな作物から栽培してもいいし,販売ステーションで相場を調べてコストパフォーマンスが高い作物を生産してもいい。
農業の大まかな流れは「耕作」「種まき」「収穫」「納品」。カルティベーター(耕運機)で土地を耕し,用意した種を播種(はしゅ)機で蒔いて育て,作物が実ったらコンバイン(刈り取り脱穀機)で収穫し,電車やトレーラーを使って販売ステーションに納品する。高値になるまでサイロに保管しておくことも可能だ。
収入の基本となるのは自分が所有する土地の生産物を販売することだが,契約メニューの「求人・求職掲示板」で,ほかの土地の所有者からミッションを受けてこなす方法もある。ご近所さんの仕事を手伝うバイトというわけだ。
これは「17」から引き継がれているシステムだが,今作ではわざわざマップ上に表示されるポイントまで赴かなくても,掲示板から直接ミッションを受けられるようになった。また仕事の種類も増え,飽きがこないような工夫が見られる。
なお,バイトのときは,報酬だけでなく面積のチェックも忘れずに。農機の性能にも左右されるが,広い土地を選んでしまうと完了まで何時間もかかってしまうことがあるからだ。このあたりの容赦のなさは,さすが洋ゲーといったところ。
これと同じように,自分の所有する土地の仕事の一部を人件費を払って作業員(NPC)にお願いできるし,掲示板から受けた仕事を,作業員に依頼することも可能だ。
二次請け三次請けと,経営につきまとう多重請負問題に真摯に向き合うシステム……かどうかは定かではないが,少し胸が痛むものの,これは結構嬉しい。
こうした作業をサポートしてくれる頼もしい車両やアタッチメントは,今作では100を超えるブランドからなり,その数は300以上。馴れないうちは,農機の種類と役割を紐付けるだけでも結構苦労するはずだ。恥ずかしながら筆者もしばらくは,「……これは何だったっけ」というところからプレイを始める日々が続いた。
とは言え,無駄にスイッチを押してパイプを伸ばしてみたり,謎のフタを開閉してみたり,聞いたこともないアタッチメントと車両をジョイントしてみたりと,普通ならまず触れる機会がないであろう重厚な大型農機を操作する時間は,憧れのロボットを動かしているような感覚を覚えて,決して苦痛ではない。
たとえ農機のことを知らなくても,テンションが上がるに違いない。マシン好きならなおさらだ。
農場の穏やかな空気に浸りながら試行錯誤しているうち,「熊手みたいなやつ」「ギザギザが前についているやつ」といった適当すぎる認識だった筆者ですら,「カルティベーター」「コンバイン」といった名前がスラスラと出てくるくらいには農機を覚えられた。なので,初めての人も安心してほしい。
バイトは自分が持っていない農機を体験するきっかけにもなるので,ゲームを少し進めるといいマシンが欲しくなってくるはずだ。
農機はかなり高額な設定になっていて,最初から自費ですべて揃えるのはなかなか厳しい。リース料を払ってレンタルしたり,銀行から資金を借り入れたりして,予算や自分のスタイルと相談して購入するものを決めていくといいだろう。
初登場の「馬」や「犬」が畜産ライフに彩りをそえてくれる
畜産に欠かせない家畜は,保有するだけなら飼料を与えなくても構わない。ただ維持費が日々かかってしまうため,しがない農場オーナーのうちは,生産品を収益にしていかなければならないのだ。
FS17と同じように「鶏」は卵,「羊」は羊毛,「豚」は堆肥やスラリー(液肥)に豚そのもの,牛はミルクを生産。そして,それぞれにとってより適切な飼料(1種類より配合飼料のほうが効果が高い)と水,清潔な環境を整えることで,生産量や繁殖率を高めるという仕組みになっている。
今作で初登場となる「馬」は,そんな家畜とはちょっと趣が異なっている。何かを生み出すのではなく,それ自体が価値を持つように飼育する必要があるようだ。
馬には「健康」「清潔度」「フィットネス」といったパラメータがあり,水・飼料・掃除・ブラッシングのほか,毎日乗馬することでフィットネス値がアップ。商品としての価値が高まっていく模様である。
「早くお馬さんと触れ合ってみたい!」と思っているなら,まずはそこそこ広い土地に馬小屋を設置しよう。今作では家畜小屋のシステムが変更され,自分の所有地内に施設を置ける形になった(FS17では,購入した家畜をトレーラーに乗せて規定の各小屋に運搬する仕組み)。
購入した馬に乗って小屋の外へ自由に出ることもできる。一緒に畑の見回りをしたり,農道を走ったり,ご近所さんの様子を伺いに散歩に行ったり。トロット,キャンター,ギャロップと切り替えながら,風を切って駆けるのはとても気持ちがいい。
筆者はまだ確認できてないのだが、今作にもイースターエッグが仕込まれているのなら、愛馬とともに隠し要素を探すというのもなかなか楽しそうである。農機を動かすのとはまた別の農場体験だ。
犬小屋は,馬小屋と同様に家畜小屋カテゴリから設置できる。家畜商から犬を購入する必要はなく,小屋とセットだ。
小屋や犬に近づくとエサをあげたり,撫でてかわいがったりできるほか,コマンドを選べばプレイヤーの後を従順についてきてくれる。
本作では,自分の手入れ不足で作物が枯れることはあっても,干ばつや害虫といった外的要因によるアクシデントは発生しない(プレイした限りでは確認できていない)のだが,犬も狼などの捕食動物から家畜を守ったり誘導したりという牧羊犬としての役割を果たすものではなさそうだ。
ひとつ確かなのは,一人ぼっちのプレイヤーを癒してくれる貴重な存在だということ。たっぷりかわいがってあげてほしい。
KOMATSUのマシンが大活躍! 林業では最高難度の作業が待ち受ける
本作のTIPSには役立つアドバイスが多いという話は最初のほうで触れたが,そこで「畑作業に疲れたら,気分を変えて木を伐採して高収入な木材を売るのもアリです」と言われたら,本稿の流れ的にもそろそろ林業に行くしかないだろう。
林業における第一の目的は木を切って売却すること。「長さ」「まっすぐさ」「枝打ちの有無」によってその価値が決まってくるらしい。なので,販売する前に木材の状態をきれいに整えておくのがポイントだ。
伐採や枝打ちは安価なチェーンソーでもできるのだが,林業機械を活用すると,切り倒して枝葉を取り除き,同じ長さに揃えるという工程を一瞬で行ってくれる。一度使ってもらうと分かるのだが,これがちょっとクセになる使い心地なのだ。
しかも前述したように,本作では日本でもおなじみであるKOMATSUブランドの機械(正確には,小松製作所の子会社であるコマツフォレスト製)が初登場している。これに乗らない手はない。
木がある場所は,スペースが狭かったり,平坦でなかったりといったことが多い。また,木の種類によってはウッドハーベスターが対応していないこともあるので,チェーンソーと林機はシーンによって使い分けるといいだろう。
木材は製材所で買い取ってもらえる。製材所は伐採場所からかなり遠くなることもあるので,できるだけまとめて納品しに行こう。
小さくカットされた木なら,ハンドツール,つまり自分の手を使ってトレーラーに積み込む(放り投げる)こともできるのだが,さすがに大きな材木は持ち上げられない。そこで出番となるのがクレーン付きの林機,フォワーダだ。せっかくなので,ここでもコマツのマシンを使用してみよう。
マウスの場合は2つのボタンとジェスチャーの組み合わせで操作し,まさにクレーンゲームの要領で材木を積み込んでいくことになる(ゲームパッドでのプレイも可)。これが予想以上の複雑さで,このゲーム一番の難度と言ってもいいのではないだろうか。とにかく特訓あるのみ。
木材は丸太として卸してもいいが,ウッドチップに加工してもそこそこの価格になる。ホームセンターのガーデニングコーナーでもよく見かける人気商品だけに納得だ。
ショップでは,材木を粉砕したそばから売却してくれるという夢のようなマシンも販売されている。価格がつきにくそうな端材を処理したいときや,とにかく早く売ってしまいたいときなどに活用してみてほしい。
林業でできることは,木を切って売るだけではない。邪魔な木を処理し,新たな土地として開拓することや,逆に植林して木を育てることも目的となっている。農業・畜産・林業の農場体験をすると,それぞれがお互いに作用し合っていることがよく分かるのだ。
「Farming Simulator 19」は“あえて手間を楽しむ”ゲーム
ゲームオーバーもクリアもない本作。その遊び方は最速・効率攻略を目指すゲームとは対極にあると言っていい。
例えば,マップ画面から行きたい場所にワープできる機能を便利と思うか,味気ないと思うかで,印象は随分変わってくる。オープンワールドだからこそ味わえる手間や面倒をどう捉え,どう関わっていくかが,このゲームを心ゆくまで楽しめるかどうかのポイントになってくるのかもしれない。
……なんとなく珍プレイ集的な感じになってしまってる気もしなくもないが,筆者なりにこの長閑な世界を堪能している様子をお届けできていれば嬉しい。
キャリアモードではNPC任せだった仕事も,マルチプレイではフレンド同士で分業することもできるのだが,農場発展のためにお互い協力するプレイヤーがいる一方、カスタマイズした農機でレースを楽しむプレイヤーもいる。遊び方は本当にそれぞれ。誰かに咎められることもない。
自分の思い描く農場の姿を目指して,気の向くまま,自由に遊び尽くしてもらいたい。
「Farming Simulator 19」公式サイト
- 関連タイトル:
Farming Simulator 19
- 関連タイトル:
ファーミングシミュレーター19
- 関連タイトル:
Farming Simulator 19
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