インタビュー
「ダライアス コズミックコレクション」発売記念,ゲーム業界「ダライアス」ファン6名による語り尽くしの座談会!
集ったメンバーは,まずタイトーからサウンドチーム・ZUNTATAの石川勝久氏,開発本部室の外山雄一氏,若手ながら「ダライアスCC」プロデューサーを務めた小林寛季氏の3名。そして開発を担当したエムツーから堀井直樹氏。さらに,愛ゆえに「ダライアスCC」へ対してさまざまな意見をツイートしていたプラチナゲームズの神谷英樹氏と,当時のスコアラーでもありゲームメディアの立場から「ダライアス」を追いかけていた元ゲーメスト編集長の石井ぜんじ氏にも参加していただいた。蛇足ながら,筆者も「ダライアス外伝」全盛期のころゲーメスト編集部で関わったこともあって,本シリーズには強い思い入れがある。そんなわけで,発売前のレビュー記事は非リアルタイム世代によるものだったが,今回のメンバーはほとんどがリアルタイム世代だ。
当時を知っている読者なら「そうだった!」「あるある!」を思い出しながら,当時を知らない読者は「1980〜90年代のゲームセンター文化」を少しでも想像しながら読んでもらえれば幸いだ。
とにかく3画面筐体のインパクトが絶大だった第1作「ダライアス」
4Gamer:
「ダライアスCC」の特装版に収録されている各タイトルについて,当時の思い出を中心にあーだこーだと語っていただく座談会です。まず1作目の「ダライアス」から行きましょう。ゲームセンターでの稼働は1987年に入ってからでした。
堀井:
発表は1986年9月のアミューズメントマシンショーでした。周囲では「タイトーがエラいもの作った」という話で持ちきりでしたね。隣のブースでナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が,キャラクターがデカくてボイスも付いている「源平討魔伝」を出していたこともあり,「なんかすごいことになっているぞ」という雰囲気でした。
4Gamer:
ぜんじさんは,そのころはもうゲーメストで働いていましたか?
石井:
稼働が始まったころは,まだ編集部に常駐はしていませんでした。がっつりと「ダライアス」の攻略特集をやったのは1987年6月号ですね。ただ「ダライアス」はとにかく画面がデカいので,筐体を見たときのインパクトはすごかった。
堀井:
そうそう。標準設定で1プレイ100円だったけど,それが200円だったとしても,誰も文句を言わなかったかもしれない。そのくらいの存在感があった。
石井:
セガ(現セガ・インタラクティブ)が「スペースハリアー」や「アウトラン」などの大型筐体をどんどん出してきていた時代で,「タイトーもこんな大型筐体を出すのか!」と話題になっていました。
堀井:
今はハーフミラーの技術はタイトーのお家芸だというのを知ってるんですけど,当時は画面をつないでしまったのが本当にビックリで。どうやってブラウン管の画面をつなげるのか,すぐには分からなかったですね。
石川:
私にとっての「ダライアス」は,Beep(日本ソフトバンクが1984年に創刊したゲーム雑誌)付録のソノシートで「CAPTAIN NEO」(ZONE AのBGM)を聴いたのが最初で,近所のゲーセンには入荷されなくて筐体を見る機会は少しあとになってからです。写真を見て「すごそうだ!」と思うだけで,ゲームはぜんぜん遊べなかったんですよ。
堀井:
都内にあるタイトー直営のゲームセンターには先行して置かれていましたけど,地方に設置されるのは結構後でしたね。その格差とか時間差とかは相当あったと思います。
小林:
当時,何台ぐらい出たんでしょうね。残念ながら具体的なデータが手元にないのですが……。
堀井:
「ダライアス」は首都圏だと2駅に1個ぐらいはあったような覚えがあります。そもそも,今と比べるとゲームセンターの数が圧倒的に多かったですし。
神谷:
僕が住んでた長野県松本市は,幸いタイトーさんの直営ゲームセンターがあったので「ダライアス」が入ってました。当時,高校2年生だったと思うんですけど,店まで自転車を飛ばして見に行きましたよ。
石川:
新しいゲームが出ると自転車で遊びに行きましたよね。友達から「新しいゲームが入ったぞ」と電話がかかってきたりして。
神谷:
そういう情報はすぐ回るんです(笑)。
石川:
回りますよね。SNKの「サイコソルジャー」が入ったとき,友達から「歌うゲームがあるよ!」って興奮気味に電話がかかってきたので,自転車を飛ばしたのを覚えています。
堀井:
筐体が2人用なのも良かったですね。先輩にすごく「ダライアス」のうまい人がいて,その隣に座ると30分はゆっくりできました。ボディソニックも楽しみつつBGVを眺める感じで,結構良かったですよ。
神谷:
初めて筐体を見たとき,すごく興味津々に奥をのぞき込んだ記憶があります。写真で見てから,どうやって画面をつないでいるのか,ずっと気になっていたんですよ。
構造を知って,「家庭用ゲーム機への完全移植は無理なんだなあ」と思った記憶がありますね。もう物理的に無理だと。
堀井:
画面が横に長いのはインパクトがあるだけじゃなくて,ゲーム性にも影響していました。弾切れ(表示スプライト数の制限によるショット発射レートの低下)もひっくるめて,「このゲーム独自の遊び方をしないとダメなんだな」と感じましたね。
石井:
ほかのシューティングとはちょっと違っていて,独特のテクニックが必要でした。
堀井:
僕はそこに“新しさ”を感じたんですよね。画面が3つあって,その中の一部を見つつ,視界の端で他のものを捉えるというのが重要で。僕が「ダライアス」の基板を入手したとき1画面しか映す環境がなくて,残り2画面をスイッチで切り替えながらプレイしてみたのですが,まあ,この自機近くしか見られない方法ではまともにプレイできませんでした。
筐体に3.5mmミニピン端子を付けるという革新
外山:
「ダライアス」の衝撃と言えばサウンドもですよね。筐体には,当時は珍しかったヘッドフォン用の端子がついてましたし。
神谷:
あれは嬉しかったですね。それまではゲームの音楽を筐体から録音するのに,スピーカーの前にウォークマンを置いたりしてたわけですから。
石川:
それ,めっちゃやりました。
堀井:
僕は駄菓子屋さんの「ギャプラス」をプレイしながら,スピーカーのところにカセットレコーダーを置いて録音してたんですけど,駄菓子屋のお婆ちゃんがゲームを泥棒してると思い込んで怒ってた(笑)。
外山:
私は「沙羅曼蛇」の筐体にステレオマイクを置いて録音していたのですが,同じように怒られました(笑)。
神谷:
当時もう,ゲームの音楽を単体で聴くという楽しみ方も始まっていました。何かの雑誌で「筐体にヘッドフォン端子がついたらクリアに聞けるのに」みたいな意見を読んだ気がするんですよね。そんな時期に「ダライアス」が出てきたので,「ああ,ついに!」と思ったんです。
小林:
ヘッドフォン端子のリクエストはサウンドチームから……でしたっけ?
石川:
当時はサウンドチームの中にハード部門があったそうなので,そこからの提案ではないかなと思います。
石井:
ゲーム音楽が好きだという人は,すでにかなりの数いたと思います。だからヘッドフォン端子の搭載はプレイヤー側としても「ようやく欲しいものが付いた」という感じでした。音楽自体もすごく良かったですし。
小林:
グレートシングと戦いながら聴く「BOSS SCENE 7」はメチャクチャかっこいいですよね。OLDバージョンだとボスの耐久力が高いので,まさに“捕鯨”と呼ぶのにふさわしい死闘を演出してくれます。
石井ぜんじ氏による「ダライアス」EXTRAバージョン制作秘話
4Gamer:
ぜんじさんは「ダライアス」EXTRAバージョンの調整に参加されたとのことですが,そのあたりの経緯を教えてください。
石井:
タイトーさんからゲーメスト宛に依頼が来た,という感じだったと記憶しています。調整期間は,実質1週間くらいでした。
一同(石井氏以外):
い,1週間!?
石井:
与えられた期間はそんなもんでした。なので,急いで「調整するならこうしたい」と考えていることをまとめて,まずタイトーさんと会議をしました。実質的なディレクターの藤田(朗)さんやプログラマーも同席していたので,できること/できないことを,その場でズバッと判断していただけました。
4Gamer:
タイトーさんからのオーダーはどういうものだったのでしょうか。
石井:
基本的には「もうちょっとゲームの寿命を延ばしたい」みたいな意向を踏まえてのファンサービスといった感じでした。ここまで「ダライアス」を盛り上げてくれたファンに向けたものというか。敵配置などを変えていますが,本当はステージの順番も入れ替えたかったんです。だけど,それはやりにくいと言われてしまって。
「ダライアスII」から「SAGAIA」を作ったときは,それをやりまくってるのに(笑)。
石井:
「ダライアス」の時点では,敵の出現パターンとか種類とかなら自由に入れ替えられるという話でした。あのころプレイヤーがもう慣れてしまって,簡単なルートが分かっていたり進むルートが固まっていたりしたので,それを逆転させる調整を考えたんですよ。
でも,そういう目論見まで細かく伝えられなかったので,最終的にタイトー側でいろいろ追加されていて,簡単にしようと思ったステージにキツい敵がポンと入ったりしてましたね。もう1週間あればもっと完成度を上げることができたかもしれません……まあ,こんなこと言ってもしょうがないんですが,変な反省点ですね(笑)。
それでも「ダライアス」は難度が低いゲームだったので,一般プレイヤーの人気がすごく高かったです。「確実に遊ばせてくれる」っていう印象があって。
石川:
……難度は低いほうだったんですね。今を基準にその話を聞くと,「なんとシューティングリテラシーの高い時期だったことか!」という感じですけど(笑)。
石井:
対戦格闘ゲームが高難度化したのと同じで,感覚が麻痺してくるんですよ。シューティングゲームが多くてプレイヤーもうまい人ばかりなので,難度が高くても「このくらい当たり前かな」と皆が思ってしまう。当時は1プレイの時間がインカムに直接響く時代だったので,「短い時間でゲームを終わらせろ」という圧もすごく高くて。平均的な難度では相当厳しかったと思いますよ。
4Gamer:
当時の平均と比べて簡単でも,今やると厳しいですよね。私も,「ダライアスCC」を買った友人から「『ダライアス』って,こんなに難しかったっけ? 全然1面クリアできないんだけど! シーラカンスのボスまで到達しないんだけど!」という熱弁を受けました。
石井:
実は私も,ゲームセンターでやり始めたころは2面を突破するまでにけっこうなお金を使いました。横に長い画面を視野に捉えるのが,慣れないうちは相当難しいんです。
継ぎ目はなくさず,再現することに!?
堀井:
1画面で「ダライアス」基板を遊んでいた話の続きですが,インチ数の違うブラウン管を3つ並べて,なんとか遠近法でやれないかってチャレンジしたことがありました。この方法,結構チャレンジしている人がいるんですけど,実際のところは無理がありましたね(笑)。
神谷:
僕も基板を持っているのですが,ディスプレイは継ぎ目上等で置いてるので,画面ごとの間がだいぶ空いてるんですよ。だから,画面を通り過ぎるときに自機がえらい伸びる(笑)。
石井:
私も「ダライアス」の攻略ビデオを作ったときにモニターを3つ置いていたんですが,あの継ぎ目には苦しみましたね。筐体のハーフミラーは本当によくできているなと思います。
石川:
でも筐体の調整も難しくて,店によってはガタガタになってたりしましたね。
石井:
ゲーセンに勤めていた知人が,「ハーフミラーは季節によって温度でズレてくる」って話をしてました(笑)。
堀井:
当時は必死でこの継ぎ目を無くそうとしていたのに,「ダライアスCC」では継ぎ目をちゃんと再現しよう,となっているんですよ(笑)。今回の「ダライアス」は,“画面の境目再現”をONにするとハーフミラーの雰囲気を再現するんですが,毎回ランダムで若干のズレが生じるようになっています。
石川:
継ぎ目で自機の位置取りを調整したりしますからね。スコアラーにとっても重要でしょうし。
外山:
開発に協力していただいたスコアラーの2代目ダライアス神さんのレベルだと,もう継ぎ目の有無はあまり重要視していなかったですね。もちろん重要視する人が多数派だと思うんですけど,突き詰めた人は心眼が開いているというか(笑)。
堀井:
2代目ダライアス神さんは,ボス戦で永久パターン防止キャラが出てくるまでの時間が,「そろそろ出るぞ」と体感で分かる方なんです。アーケード基板の1フレームをそのままNintendo Switchの1フレームとして移植すると,どうしても速くなってしまうのですが(Nintendo Switchは秒間60フレーム,「ダライアス」基板は秒間59.94フレーム),今回は時間の一致を優先させました。それによってフレーム数が変わっている箇所はあるのですが,スコアラーとしては「体感の時間をアーケード版と合わせてほしい」とのことだったので。
神谷:
牌を伏せたまま麻雀を打つ人とか,ボクサーとかみたいだ(笑)。ハードの仕様はプログラム上からは分からないので大変ですね。
堀井:
気付く人は気付いちゃうので,変なものは作れないです。
「ダライアスII」の2画面と3画面は何が違う?
4Gamer:
次は1989年登場の「ダライアスII」について,お願いします。
石川:
「ダライアスII」はロケテストを見に行きましたよ。BGMが未完成で,2面になると「ニンジャウォリアーズ」の「ARE YOU LADY?」が流れるバージョンでした。
堀井:
それは聴いてみたいなあ。このころだったら,ロケテストのときにサウンドを録音していた人がどっかにいそうだけど(笑)。
石川:
「ダライアスII」を最初見たとき,ちょっとびっくりしました。初代は硬質な雰囲気でしたけど,こっちは1面からイケイケドンドンな感じになっていて,あまりに初代と違うじゃないですか。ぶっちゃけ,最初は「『ダライアス』じゃない!」って思いましたね(笑)。
一同:
(笑)
石川:
そう感じた人は多かったはずです。
石井:
「ダライアスII」は専用の2画面筐体で出ましたけど,あとから既存の3画面筐体を改造したバージョンもリリースされましたね。
外山:
実は「『ダライアスII』は3画面だろ!」という人って結構いるんです。そういう人は,初期の2画面筐体が入らなかった地域の方々だったようです。
神谷:
僕は3画面バージョンの存在を数年前に知りました。「ダライアスII」の基板が欲しいなあと思っていろいろ漁っていたとき,3画面のものを見つけて「何だこれは!」と。2画面版と3画面版はだいぶ違うんですか?
堀井:
画面が広くなっていることもあって,ゲームバランスは全然違いますね。僕は当時,3画面版を見て「昔の基板を流用したものが出たんだ」ぐらいに思っていました。でもハードウェア的には相当違うはずなので,やることが多いはずなんです。でもディレクターの藤原(英裕)さんにお聞きしたとき「それほど手間はなかった」と言っていましたね(笑)。
石井:
藤原さんのことだから,「割と簡単ですよ!」とか言って。
堀井:
このころはハードの規模も小さくて,仕様がすべて頭の中に入るくらいだったから可能だったのかもしれません。
石井:
プレイヤーとしては,ちょっと難度が高い印象でした。あの時代なのでロケテに出すたび難度を上げることになって,それでも難しすぎないようにと,そんなせめぎ合いの中で調整されたみたいなんですけど。パワーアップアイテムの数は少なかったなあ。
堀井:
難度を上げたい,プレイ時間を抑制したいという目的で作るなら,パワーアップはさせても,その度合を抑制する方向でやってくれたら,もっと遊んでいて楽しかったかなとは思います。
このころになると,ロケテが始まるとゲーセン仲間の間で情報が流れて,製品版がリリースされたときに少しでもアドバンテージになるような要素を,目を皿のようにして探していたんですよ。結果としてロケテのたびに難度が上がってしまって,製品版で僕らも遊びにくくなるという(笑)。
外山:
前作の評判もありますし,難しくてもマニアは遊んでくれますからね。難度調整は上げる意見と下げる意見がイタチごっこだったかもしれません。
石井:
難度は高かったですが,ボス戦のバリエーションが大きく広がっていました。やっぱりヤマトは凄いインパクトがありましたよ。
堀井:
初めて見たとき「ダライアス」だから,見た目通りの戦艦ではないだろうと思ったら……ね。ヤマトの演出は本当にすごい。
石井:
「ダライアス」に限らず,あそこまで凝ったボスは珍しかった。
4Gamer:
新要素と言えば,ゲームの演出と音楽のシンクロ的なところも「ダライアスII」で取り入れられていましたね。
石川:
最終面で流れる「say PaPa」はゾーンセレクトから鳴り出しますしね。最終面の冒頭は効果音が鳴らなくて,「壊れたんじゃないか?」と思わせてからの……。
堀井:
途中から鳴り始めるのがメチャクチャかっこいいんですよ。
石川:
ゲームの展開に曲を合わせているから,映画音楽に近いかもしれないですね。
外山:
最終面の音楽演出は,藤原さん主導だったんですか?
※初出時「藤田さん」(藤田 朗氏)となっておりましたが,「藤原さん」(藤原英裕氏)の誤りでした。訂正してお詫びいたします。
石川:
ああいう部分のこだわりは,絶対にサウンドの小倉(久佳)さんですよ(笑)。
ステージ構成や難易度を調整。「ダライアスII」の欧州版「SAGAIA」
4Gamer:
次はヨーロッパ向けに作られた「SAGAIA」についてお願いします。こちらは海外版「ダライアスII」……なんですよね?
小林:
実はタイトーでも今回初めてプレイしたような人が大半なので,あまり語れることがないんです(笑)。
石川:
当時のタイトーは,海外に向けて結構アーケードゲームを出荷していたんです。海外法人もあったので,細かい要望にも応えていたのですが,その結果のひとつとして生まれたのが「SAGAIA」でした。
外山:
「SAGAIA」はプログラマーが好き勝手にやった傾向があって,とくにバージョン2はアレンジが効いてますね。
神谷:
これ,国内流通はあったんですか?
石川:
なかったと思います。
石井:
もし国内で流通していたら,1台ぐらいは都内に置かれるはずですし,都内に1台置かれたのなら多くの人が知ってるはずですから。
外山:
欧州のリクエストに応えて納品して,それで終わりだったんでしょうね。今になって「ダライアスCC」のサプライズ要素になってくれたので,結果的には良かったです(笑)。
堀井:
エムツーとしては昔遊んだゲームを移植することが多いので,知らないゲームを移植するという経験は面白かったですね。「こんなふうになってるんだ」みたいな発見をしながら作っていました。
外山:
バージョン1は確かに欧州で出回っていたみたいなんですけど,バージョン2は出回ったかどうかも定かでないんですよ。リリースされていなかったんじゃないかという話もあるくらいで。
神谷:
出回ってないとしたら何のバージョンなんでしょう?
外山:
それすら謎なんです(笑)。
堀井:
もし「バージョン2を遊んだことがある」というヨーロッパの人がいたら,名乗り出てほしいくらいですよ。
「ダライアス外伝」は2Dシューティングの完成形!
4Gamer:
1994年,「ダライアス外伝」についてはいかがでしょう。
外山:
中小メーカーはこの後もいろいろ作り続けますけど,大手メーカーはこのあたりが最後のシューティングゲームになりますよね。
堀井:
「誰も見たことないような2Dシューティングゲームを作るぞ!」というただならぬ熱意を感じるのは「ダライアス外伝」が最後だった……という印象があるほど,あらゆる作りがとにかく豪華だなと感じます。
石川:
でも「ついに1画面になっちゃった……」っていう声はありましたよ。自分もプロジェクトメンバーでしたが,同じ感想を持ちました。
堀井:
ゲーム雑誌では「(新作のたびに画面数が減るから)次は画面が無いに違いない」みたいなことも書かれてました(笑)。
石井:
クオリティは飛び抜けていましたけど,このころは「シューティングゲームが出たこと自体がすごい!」という印象でした。やっぱり皆,対戦格闘ゲームにばかり目が行ってましたよね。
1994年は僕がゲーム会社に入社した年なんです。上司に「どんなゲーム作りたいんだ?」って聞かれて「シューティングゲームを作りたい!」と熱い気持ちをぶつけたら,「お前何言ってんだ?」って言われましたよ。
石川:
シューティングゲームの中でも,とくに横スクロールはマニアックだと思われてました。縦はまだあったんですけど,横は本当に好きな人しかやらないので。
小林:
ダライアス自体も,「縦シューにしろ!」という声が相当あったと聞きました。
堀井:
ダライアスを縦に?
外山:
開発スタッフに対して,「横じゃだめだ! 縦にしろ」っていう営業の方がいたそうです。
神谷:
言われてみれば縦もありな気がしますよね。画面が1つになる言い訳にもなりますし。
石井:
でも,魚を上から見て何が面白いんだろうって思いますけど(笑)。
「ダライアス外伝」に話を戻しますが,グラフィックス表現的な部分がすごいのはもちろん,シューティングゲームとしてもクオリティが高くて面白かった。
堀井:
スプライト系として最強レベルのビデオチップが搭載されていました。たくさんのBGに対して1ラインごとにラスターの座標位置とか拡大縮小率を指定ができるおかげで,演出がすごいことになって。僕,「ダライアス外伝」は昔から移植したくて,タイトーさんにデモを持っていったことがあるんですよ。
石川:
拝見しました。
堀井:
なんて言ったらいいのか……2Dハードの映像表現としては総力戦で,“行きつく先”に来ちゃったみたいな。昔のシューティングゲームは大手メーカーがそういう勢いで作っていたジャンルなので,「ダライアス外伝」はある意味“最後のシューティングゲーム”だったと思っています。
石井:
1画面なんだけど,ちゃんと“ダライアスらしさ”はあったよね。
堀井:
「ダライアスII」があったおかげで,シリーズとしての許容範囲がすごく広かったんですよ。
神谷:
それはあります。
堀井:
1面ボスのゴールデンオーガは,画面の中を優雅に泳いでいて,「これはダライアスだぞ!」というつかみがバッチリでした。ボムがあろうが1画面になろうが,“ダライアス”だったんです。
神谷:
これが「ダライアスIII」にならなかった理由は何かあるんですか?
石川:
当時の社内には,「ダライアスIII」にするんだったら,やっぱり2画面なり3画面なりの大型筐体にしたいという思いが多くありました。
小林:
当初,企画の仙波(隆綱)さんが書かれたタイトルは「ダライアス サードステージ」で,2画面筐体だったんですよ。
石井:
当時のプレイヤー的には,「外伝」が「III」でも全然オーケーでしたよ。このクオリティだったら,まったく問題なしです。
神谷:
今後,専用筐体で「ダライアスIII」が出たら,それはそれで熱いですけどね。
石川:
「ダライアスIII」は,定期的に誰かが企画を考えてましたね。小倉さんも「ダライアス外伝」から「Gダライアス」の間に,コックピット型筐体の企画を考えていたようです。
堀井:
僕らみたいに業界の片隅でゲームを作ってる人間にも,ドリームキャストのころに「ダライアス」の案件的なものが回ってきたとき,「タイトーさんが今度こそ大型筐体でやるらしいぞ」みたいな噂話が届いたりもしました。
これがもっと出ていたら歴史が変わった!? Sega Master System版「SAGAIA」
4Gamer:
それでは家庭用を見ていきましょう。まずは「ダライアスII」を移植したSega Master System版の「SAGAIA」です。堀井さん,お待たせしました。
堀井:
僕もBeepを愛読する少年だったので,セガ・マークIIIやセガ・マスターシステムには無限の可能性があると信じていたんです。その無限の可能性がいつまでたっても発揮されないな……と思っていたら,このSega Master System版「SAGAIA」ですからね。マスターシステムは,やればできるんですよ。
ハードウェアを隅から隅まで使いこなせば,こんなゲームもできるんだって,強いインパクトがありました。僕は当時,「SAGAIA」と本体を担いでいろんなところに行って,「セガのハードはすごいんだぞ」と言って回っていました。相当迷惑なヤツだったと思うんですが。
神谷:
ファミコンではカートリッジに専用チップを搭載して本体性能以上の表現を可能にしている作品も多かったですけど,セガ・マークIIIにはそうしたものがなくて,この「SAGAIA」も素のままやってるというのがすごいですよね。
外山:
移植を担当したナツメさんの力,とくにディレクター水谷(郁)さんの力ですよ。
堀井:
本当にその通りで,Sega Master SystemのCPUであるZ80をよく分かってる人が,必要なリソースの割り振りをキッチリやって「ダライアスII」を完成させてくれているので,よくできています。画面の演出なんかも見応えありますし。
4Gamer:
アーケード版の基板だとサウンドの制御に使われているのもZ80ですよね。
堀井:
そう,アーケードの基板だとサウンドの制御だけをやっているCPUが,Sega Master System版では音楽を鳴らすわ画面も描くわキャラも動かすわなんですよ。機会がある人はぜひ実機で動かして遊んでみてほしい。日本未発売のゲームですし,いろいろと購入のハードルは高いのですが(笑)。
外山:
実機だと,また別の感動がありますよね。
堀井:
この記事を読むような人は分かっていると思いますが,念のため言っておきます。Nintendo Switchだからスムーズな動きだったり,スプライトのチラつきも少なかったりすると思っているかもしれませんが,そんなことはなくて,実機もまったく同じなんです。日本の僕らがマスターシステムで遊んでるときに,このレベルに到達したゲームを各社が作れていたら,もうちょい戦えた。
神谷:
残念ながら,国内では流通しなかったんですよね。セガとしても,もうメガドライブの時期でしたし。あのころ海外でSega Master Systemはまだ人気があって,「大魔界村」も出たりして,羨ましい状況でした。大人になってから大人の力で買い集めましたけど(笑)。
堀井:
僕も海外の送金が郵便局でしかできなかったころにeBayで買い集めましたよ!
石川:
こういうロースペックなハードの,すごい工夫で移植されたソフトを愛でる文化は,今の人には分からないんじゃないかと思う(笑)。やはりロマンがあります。そこを理解してほしいなあ,難しいかな。
神谷:
ロースペックハードへの移植って大きく2つ,最初から違うゲームにアレンジしての移植と,愚直にオリジナルを再現しようとする移植がありますよね。このSega Master System版「SAGAIA」は後者の最たる例です。やっぱり,そういうものにはすごいロマンを感じますね。
PCエンジン版の収録タイトルが「ダライアス アルファ」になったワケ
4Gamer:
ではPCエンジンの「ダライアス アルファ」について。PCエンジンのダライアスは,他にも「スーパーダライアス」「ダライアス プラス」とある中で,なぜ「アルファ」のセレクトだったのでしょう?
堀井:
僕は「スーパーダライアス」をやりたかったんですけど,CD-ROM2の移植環境をととのえるまでの時間がどうしても取れなかったんです。生々しい話ですが,Nintendo Switchのタイトー参入タイトルということもあって納期も重要でして,いろいろ調整した結果,HuCARDのタイトルなら期間的に行けるだろう,と。
外山:
HuCARDタイトルは「ダライアス プラス」と「ダライアス アルファ」がありますが,セーブ領域の関係でどちらか1本しか収録できず,プレゼント商品として開発されたことで希少価値がある「ダライアス アルファ」を選ばせていただきました。世の中に1000枚も出回らなかったこともあって,大人のパワーをもってしても買いづらいタイトルなんです。
堀井:
21世紀に入ったあたりだと,秋葉原ではまだ8万円ぐらいだったんです。ずっと待ってたらそのうち半額ぐらいになるのでは……と思ったら,半額の10倍になってましたね。
外山:
「ダライアス プラス」は数千円で買えるはずなので,だったら「アルファ」を遊ばせてあげたいな,と思ったんです。
石川:
それ以前に,PCエンジンのタイトルはタイトーでなくNECアベニューから発売されたソフトなので,収録できないと思っていました。「アルファ」はボスラッシュの特別版なので,手軽に遊べて良いですね。
スーパーファミコンのローンチから4か月で発売! 「ダライアス ツイン」はとにかく売れた!
4Gamer:
次に16ビットマシンに行きましょう。まずスーパーファミコンの「ダライアス ツイン」から。
石川:
日本版と海外版を収録していますが,違うのは言語とサウンドくらいですね。
神谷:
えっ,音も違うんですか?
石川:
国内版はモノラルなんですが,海外版はステレオで,素材のサンプリングレートも高いんですよ。当初はステレオ前提で作っていたけど何かしら容量を小さくしなければならない事情ができて,レートダウンしたりステレオ情報をなくしたりしたんでしょう。
神谷:
日本のプレイヤーには馴染みのないステレオ音声と高品質なサンプリングの音ということで,この移植によって図らずもちょっとしたリマスター感を味わえるわけですね。
8bitや16bit時代のゲームが移植されたとき,例えば「グラディウス」にステレオサウンドで遊べるモードが追加されたらロマンあるなって感じたりするんですけど,この「ダライアス ツイン」はそれを味わえる。
小林:
(タイトル画面を見ながら)ロゴがグルグルと回転してますね。
石川:
スーパーファミコンのゲームは「回転処理を入れないとダメ」みたいな空気がありましたから。
神谷:
スーパーファミコンは,「家庭用でこれだけスムーズな回転を見られるようになったのか」って感じでしたね。ドット絵の時代には,回転とか拡大縮小とかってのはロマンでしたから。
堀井:
ただスーパーファミコンが拡大縮小・回転できるのはBG(バックグラウンド。背景としての使用を前提とした画像)1枚だけという。
神谷:
スプライトの拡大縮小・回転はできないんですよね。
堀井:
当時,一般のゲーマーは「スーパーファミコンは画面が回転するぞ!」って喜んでいたと思うんですが,開発の皆さんは「でも1枚しかないじゃん」という悩みがつねにあったと思います。
なので,ボスが回転する代わりに背景はスプライトで処理したり,そういう工夫を効かせたタイトルが多いですよね。
神谷:
家庭用で2人同時プレイができるダライアスは,この「ダライアス ツイン」が初めてですかね?
外山:
スーパーファミコンの初期はコントローラを2つ同時に使うゲームがなくて,同時プレイ自体「ダライアス ツイン」が初でした。私も「ダライアス ツイン」の登場で,初めて2P側を使いましたよ。
石川:
これはメチャメチャ売れたはずですよ。
外山:
スーパーファミコンが1990年11月発売,「ダライアス ツイン」が1991年3月発売で,まだソフトもありませんでしたからね。これでダライアスを知ったという人もけっこう多いんです。
堀井:
映像的な処理のことを考えれば,スーパーファミコンはメガドライブより秀でてるんですけど,CPUの速度はちょっと抑えめになっていたので,たぶん2人同時プレイを搭載するのはキツかったはずです。それをローンチ間もない時期にやったんですから,結構大変だったでしょう。
自機をセレクトできるようになったスーパーファミコン「ダライアス フォース」
4Gamer:
1993年に発売された「ダライアス フォース」についてもお願いします。スーパーファミコンでの2作目ですよね。
石川:
ここにいる人でも,発売当時にはフォースをやってないんじゃないですか?(笑) これ,いつの間にか作られていましたね。企画とかの何人かは内部スタッフでしたが,基本はサウンドも含めて外部で作っていたはずです。
堀井:
最終的に「サウンドはこうなったのでチェックお願いします」みたいなのはあったんですか?
石川:
なかったような気がします。少なくとも僕のところには回ってこなかったですね。
堀井:
かなりゲームの内容も変わっていて,攻めてる感じはあります。スーパーファミコンの2作目と言っても,「ツイン」からの作風的な系譜は感じられなかったんですが,やっぱり外部開発だったんですね。
小林:
保管されていた仕様書を見たところ,「ツイン」で出た問題点をどう払拭するかみたいなテーマがうかがえました。それで自機をセレクトする機能が新しく入ったりしたみたいです。
堀井:
なるほど,自機選択は後の「ダライアス バースト」シリーズにつながる仕様とも考えられますね。
外山:
でもあまりセールス的には振るってないんですよね。
石川:
「ツイン」がすごく売れたからというのもあると思います。
小林:
「ツイン」は2人同時プレイできたのに,「フォース」は1人プレイ専用になってましたし。
渾身のタイトー社内開発!メガドライブ版「ダライアスII」
4Gamer:
では最後に,メガドライブの「ダライアスII」をお願いします。こちらは1990年に発売されました。
石川:
これも超よくできてますよね。
外山:
8メガも使ってるからですよ。そのころはまだ4メガのカートリッジが主流でした。
堀井:
8メガにすると定価が1000円くらい跳ね上がるほど,4メガのROMとは製造原価がぜんぜん違いました。さっき神谷さんがおっしゃっていた「移植するときどうするか」っていう選択肢の話でいうと,オリジナルの再現に向けて頑張る方を選んだタイトルですね。画面比率を縮小してでもプレイ感覚の再現を優先したので,「迫力がない」と文句を言う人もいましたが。
外山:
これはこれで当時の正解の1つだったと思います。「メガドライブ版を開発したのはナツメ」という噂がありますが,実際そうだったら,また別のアプローチだったかもしれないですね。
堀井:
開発はタイトー内製というのを聞いてびっくりしました。あと,ちょっと目を離していたら買いやすい値段になっていたという記憶があります。お昼ご飯を2回か3回我慢すれば買えた気がするんですよ。
石川:
本数を作り過ぎるとそうなる時代でしたからね。買う側としては,ありがたいところもありましたけど。
外山:
先日,メガドライブの製造本数リストを見たんですが,「ダライアスII」はかなり数が多いですね。メガドライブソフトの需要に対して供給が高かったのかもしれません。
神谷:
任天堂信者だった僕としては,アーケードゲームの移植作品が多かったメガドライブに羨ましさを感じていましたよ。
堀井:
セガファンはアーケードゲーマーが多くて,移植作をやりたいと思っている人がたくさんいると見られていたから,再現を優先したのかもしれません。
「ダライアスCC」はパッケージ版だけなのか!?
4Gamer:
この「ダライアスCC」自体の売れ行きはどうでしょう? ショップでは早々に売り切れて,特装版を買いたくても買えないという人が出ていましたが。
外山:
我々としては,発表から半年以上かけて「予約してください!」って宣伝してきたのですが……難しいですね。発売日になって「今知った」みたいな人が大勢いらっしゃいました。
小林:
自分達がくどすぎるくらい宣伝したつもりでも,届かない人って結構いるんです。タイトーとしても家庭用ハード向けのソフトが久しぶりだったというのはありますが。
外山:
ゲームマニアの人には何とか知れ渡ったと思うんですけど,遅れて「昔遊んだゲームを久しぶりにやってみたい」という人にまで届いたのは、嬉しいながらも誤算でした。
石川:
そういう人たちに,どうやればもっと早く情報を届けられたかというのは,今後の課題だと思います。
外山:
いろんな人に届けるために,今でも「ダライアス」を置いているような地方のゲームセンターにポスターを配るなどの努力はしたんです。ただ,普段から「ダライアス」に馴染んでいるような人ばかりじゃないんですよね。
神谷:
いちユーザーとしての質問なんですが,ダウンロード版は出ないんですか?
外山:
現時点では何とも申しあげられなくて……すみません。
堀井:
僕は販売に関しては部外者なので詳しいところは分からないんですけど,やっぱりタイトーがコンシューマへ再参入するにあたり,お店に届けるところまで一回全部やっておこうみたいなところはあったのかなあと思っています。
神谷:
せっかく古い時代の傑作を蘇らせたプロジェクトなので,いつでもユーザーの手に届くところにあってほしいですね。
堀井:
僕もダウンロード版があったらそっちを買うようになっているので,出てほしいです。ただ,マニアなので特装版みたいなパッケージを作られると,それはそれで飾りたくなったりもします。
僕も特装版を買ったんですけど,もったいなくてパッケージを開けられない。2個買っておけばよかった(笑)。
堀井:
その気持ち,すごく分かる!
小林:
販売数とスコアランキング登録数がだいぶ違っていて,購入しても開けていない人は多いという印象です。
堀井:
外山さんが前職でいらしたとき,一緒にやらせていただいたPS4版「バトルガレッガ Rev.2016」のPremium Editionは,ソフトでなくダウンロードカードにしていたんですよ。そのほうが遊びやすいと思ったんですが,でも「なぜディスクじゃないんだ!」という意見がすごいいっぱい来ました(笑)。
石川:
私もパッケージだと嬉しいのかなって思っていたんですけど,想像以上に皆さんダウンロード版で遊ばれているんだなというのは実感してます。
堀井:
ディスクやカートリッジを欲しがる人が多い傾向は,少なくとも日本では確かにあります。弊社で出した「ケツイ Deathtiny 〜絆地獄たち〜」も,求める声が多かったのでディスク版を出しました。ただ,それを買ったうえでダウンロード版で遊んでいる人が多いんですよ。
石井:
ファンがパッケージ版に求めるものとダウンロード版に求めるものは,違うんですよね。
外山:
ダウンロードしてゲームを遊ぶ習慣がNintendo Switchユーザーの中にしっかりできていますよね。とくに0時にダウンロードするっていう人がいっぱいいて,時代が全然変わっているなと思います。
神谷:
僕も「ダライアスCC」発売日の0時になった瞬間から,ニンテンドーeショップを探してましたよ(笑)。
堀井:
旧作の移植でいうなら,SEGA AGESやアーケードアーカイブスもダウンロード専用ですしね。インディーズゲームだと基本的にダウンロード版しかなかったりもしますし。
外山:
私自身も含めてマニアはパッケージが欲しいんじゃないかなと思って,「ダライアスCC」はパッケージありきで企画していました。
神谷:
ダウンロード版は欲しいですが,やっぱり物理的に「ある」というのも重要だと思いますよ。
外山:
特装版には,特典として冊子とCD,それからアクリルマーキーのミニチュアを付けました。私は筐体も大好きなので,「アクリルマーキーはみんな喜んでくれるに違いない」と思い込んでいたんですけど,「これ何に使うの?」みたいな声は多くて(笑)。
神谷:
僕はむしろ実物大で欲しかった(笑)。家で3つ並べている28インチモニターの上に,実物大のマーキーを飾りたいです。
今後の移植希望タイトルは?
時間的にはそろそろ締めとなりますが,タイトーさん的には今後もこうした過去作のアーカイブ的な「○○コレクション」を制作する予定はあるのでしょうか。
外山:
「○○コレクション」ではないですが,タイトーとしては次にナツメアタリさんとの共同開発による「ザ・ニンジャウォーリアーズ ワンスアゲイン」をNintendo SwitchとPlayStation 4で7月に発売予定です。引き続き家庭用のゲーム全般に力を入れていく予定ですので,またリバイバルものもあるかもしれないですね。
4Gamer:
そのときの特装版と特典も楽しみにしています(笑)。
石川:
「ダライアスCC」特装版の特典CDでは,いろんなコンポーザーさんに声をかけさせていただきました。私は“ゲームサウンド界のアベンジャーズ”と呼んでいるんですけど,すごい方々にお集まりいただいてアレンジアルバムを作ることができたので,私的には満足です。私と同じように現在に至るまで「ダライアス」やアーケードゲームを遊んできて,ゲーム音楽が好きだという人なら必ずグッと来ると思います。
外山:
冊子のほうは私が話をおうかがいしたい人に,石井ぜんじさんにも協力いただきながら,「ダライアスII」のアートデザインを担当した仙波隆綱さんや,元NECアベニューの多部田俊雄さん,元ナツメの水谷(郁)さんと高岡(周哉)さんにお話を聞けたのが非常によかったので,機会があればまたやりたいですね。
特装版の特典CD,アレンジアルバム「DARIUS THE OMNIBUS II −群像−」。ZUNTATAメンバーと石田雅彦氏,岩垂徳行氏,古代祐三氏,中潟憲雄氏,濱田誠一氏,Hiro氏,古川もとあき氏が参加している |
同じく,特典冊子の公式資料集「DARIUS ODYSSEY -COZMIC ARCHIVES-」。設定画や企画書などのほか,関係者へのインタビューも多く収録されている |
4Gamer:
外部の皆さんとしては,移植を希望するタイトーのタイトルはありますでしょうか。
堀井:
F3システム(1990年代にタイトーが展開していたアーケード基板)をもっと極めたいですね。例えば「レイフォース」とか。ようやく「ダライアス外伝」でF3システムのゲームを動かしたので,誰が見てもどこが基板と違うのか分からないところまで突き詰めるのが当面の野望です。
石井:
タイトーさんには良いIPがたくさんあると思うので,今のゲーマーにもアピールできるような,タイトーらしさが色濃く出ているタイトルがリリースされるといいですね。
神谷:
僕的には「アルカノイド」「キャメルトライ」「プランプポップ」を収録したパドルゲームコレクションを,“パドルコントローラーと一緒に”出していただきたいと思っています。まだ「アルカノイド」は完全移植されてないんですよね。
石川:
でも家庭用のパドルって軽いですよね。重い金属製が良いんですけど,家庭用で金属パドルなんてほとんど見たことがないし,ちゃんとしたものを作るとコストがとてもかかりそう……。
外山:
受注生産なら……といった感じですね。
神谷:
3万円くらいだったら出しますよ(笑)。
堀井:
金額的には僕も同感です! 基本的にはタッチパネルで遊べるようにして,パドルの対応も実装したいですね。
神谷:
ぜひご検討ください(笑)。
外山:
Nintendo Switchでパドルかあ……Nintendo Laboみたいな段ボール製は?
一同(外山氏以外):
ダメです!(笑)
「ダライアス コズミックコレクション」公式サイト
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