プレイレポート
「GUNGRAVE VR」&「VR U.N」を紹介。13年ぶりに甦った「死人」が葬送交響曲(フルブレイク・ガンアクション)で全壊のビートを刻む
本作は,2017年12月に発売されたPS4用ダウンロードソフト「GUNGRAVE VR」と,その続編「GUNGRAVE VR U.N」をセットにした製品だ。本稿では,この2タイトルを紹介したい。なお,「GUNGRAVE VR U.N」は単品でも1600円(税込)にてダウンロード専売でリリースされている。
13年ぶりの続編「GUNGRAVE VR」
シリーズの原点にあたる「GUNGRAVE」は,2002年にレッド・エンタテインメントから発売されたPS2用ソフトだ。原案およびキャラクターデザインは「トライガン」や「血界戦線」の内藤泰弘氏,メカデザインは「逮捕しちゃうぞ」や「サクラ大戦」の藤島康介氏,音楽はアニメ版「トライガン」の今堀恒雄氏が手がけるといった,豪華なスタッフがウリの1つだった。
レッド・エンタテインメントが謳ったゲームジャンルは“フルブレイク・ガンアクション”(葬送交響曲と書いて,ルビにフルブレイク・ガンアクションと綴られる場合もある)。要するに破壊をひたすらフィーチャーしたゲーム設計となっており,「疲れ果てて家に帰って来た人が,10分間だけプレイして,すぐにストレスを解消でき,すぐ寝ることが出来るゲーム」(当時の公式サイトより)というコンセプトのもとに制作されていた。端的に言うと「バカゲー」で,どれくらいバカかと言うと,「見栄ポーズ」というカッコいいポーズを取るだけのボタン操作が存在したくらいだ(いちおうスコアには影響する)。
出来は正直「荒削り」なレベルだったが,今堀氏による派手なBGMが鳴り響く中で,馬鹿馬鹿しいほどカッコつけて主人公・グレイヴが2丁拳銃を撃ちまくり,フィールド上のオブジェクトを破壊しながら並み居る敵を蹴散らしていくゲームプレイは,プレイヤー達に強烈な印象を残した。
そんなGUNGRAVEをベースに,VRコンテンツとして開発されたタイトルが「GUNGRAVE VR」だ。前作にあたるのは2004年に発売されたPS2用ソフト「GUNGRAVE O.D.」で,実に13年ぶりの続編ということになる。
プレイヤーキャラクターは,死者を蘇生した生物兵器(「死人」と呼ばれる)として甦った男,ビヨンド・ザ・グレイヴ。VRコンテンツになったり,システムにいろいろな変更が加えられたりはしたが,巨大な2丁拳銃のケルベロスと,重火器を内蔵した棺桶のデス・ホーラーで撃ちまくって戦うスタイルは旧作と同じだ。
時代設定はGUNGRAVE O.D.から数年後となっていて,ヒロインの浅葱ミカは「カオスウォーズ」(※)への客演時と同様,“シード”と呼ばれるエイリアンの一種が体内に共存する状態となっている。なお,ミカの年齢は20代となるはずだが,シードの影響によってGUNGRAVE O.D.当時(17歳)から見た目はほとんど変わっていない。なお,グレイヴの声優は関 智一さん,ミカの声優は佐久間紅美さんと,2003年に放映されたアニメ版を引き継いだキャスティングが行われている。
※アイディアファクトリーから2006年に発売されたPS2用ソフトで,複数社がコラボしたシミュレーションRPG。
ゲーム中には,三人称視点パートと一人称視点パートの2種類が存在する。どちらも基本的な操作は「ヘッドトラッキングで敵に照準を合わせて,[R2]ボタンによる射撃などで撃破していく」というもの。三人称視点パートでは,これにLスティックでの移動とRスティックでの視点移動が加わる。視点移動はVR酔い対策のためか,一定角度ごとにカメラが動くという独特な仕様となっているが,少しプレイすれば慣れるだろう。
ステージの始まりはシリーズ恒例の「Kick their ass!!」 |
筆者的には割とお気に入りの,レールシューティング的な一人称視点パート |
とくに意味はないのだが,飛んだり跳ねたりしながら撃ちまくるグレイヴ。強いて言うなら,彼の癖のようなもの |
「ハリウッド映画の間違った日本観」的な看板があるステージも。開発は韓国なので,もちろん「そういうジョーク」ということだ |
また,先ほど「システムにいろいろな変更が加えられた」と述べたように,ケルベロスには「クールダウン」の必要性が存在したり,デモリッションショット(いわゆる必殺技)における無敵効果が削除されたり,「バレットタイム」というシステムが追加されたりしている。バレットタイムはゲーム内をスローモーションにさせるのが主な効果だが,グレイヴをスピードアップさせる効果があり,敵の攻撃を回避するときに重要だ。
正直なところ,バレットタイムを使うタイミングの分かりにくさなど,ゲームデザインやバランスに「練り込まれた」感覚は薄く,十分に楽しむにはある程度プレイヤーの努力が求められる。ただ,荒削りな出来ながら,派手なBGMが鳴り響く中で,馬鹿馬鹿しいほどカッコつけて主人公・グレイヴが2丁拳銃を撃ちまくり,フィールド上のオブジェクトを破壊しながら並み居る敵を蹴散らしていくゲームプレイは……奇妙な爽快感があり,15年前の懐かしい感覚が呼び起こされる。
なお,本作はカジュアルに楽しむにはいささか高めの難度がプレイヤーから難点として挙げられていたが,「Complete Edition」発売にあわせて配信されたバージョン1.02へのアップデートを適用すると,難度が引き下げられ,遊びやすくなる。これによって,オリジナルの掲げた「疲れ果てて家に帰って来た人が,10分間だけプレイして,すぐにストレスを解消でき,すぐ寝ることが出来るゲーム」というコンセプトが復活した感じだ。
さらにその先「GUNGRAVE VR U.N」。そして「G.O.R.E.」へ
GUNGRAVE VR U.Nは,GUNGRAVE VRの直接的な続編だ。ストーリーは地続きとなっており,前回の戦いによって発覚したシードの生産拠点(麻薬や生物兵器製造用の薬物として利用されている)を撃滅する過程が描かれる。今回は一人称モードは一部パートに留まり,代わりにサイドビュー形式の横スクロールステージが実装された。
全体のゲームプレイ自体は短いものの,破壊できるオブジェクトが増えたり,敵の攻撃パターンがプレイヤーの対応しやすいものになったりと,全体的に遊びやすく,かつ爽快感が増している。前作からそれほど期間を空けずに開発されているはずだが,着実な“進歩”を感じられるポイントだ。
画面内のキャットウォークなども破壊できる |
横スクロールステージ。2Dアクションシューティングの,すごく左右に画面が長いタイプといった印象だ |
とは言え,GUNGRAVE VRおよびGUNGRAVE VR U.Nは旧作以上にゲームプレイを重視した設計となっており,シナリオの部分では肩透かし感を覚えるかもしれない(とくにアニメ版から入った人は)。ただ恐らく,そういった部分に関しての欲求は開発中の「GUNGRAVE G.O.R.E.
GUNGRAVE VR U.Nにはアニメーションのオープニングとエンディングが存在するのだが,エンディングでは“あるキャラクター”が登場し,グレイヴに呼びかける。そのキャラクターは明示されるわけではないが,旧作をプレイしたりアニメを観たりした人なら,声と呼びかけの二人称で何者か分かるだろう。GUNGRAVE G.O.R.E.における彼の本格的な参戦と,さらに進歩したゲームプレイを,楽しみに待ちたい。
今も鳴り止まない“全壊のビート”
さて,先述のとおりGUNGRAVEシリーズのタイトルがリリースされるのは13年ぶりのことなので,旧作のことを知らない,あるいは忘れてしまったという人も少なくないだろう。そこで,GUNGRAVEとはどのようなタイトルなのかを,軽く振り返りたい。
繰り返しになるが,初代GUNGRAVEが発売されたのは2002年。ただ,大きく知名度を上げたのは2003年に放映されたTVアニメ「ガングレイヴ」だろう。こちらはゲームのシナリオを大幅に補填したシナリオ(執筆は黒田洋介氏)が高い評価を受け,「男の義務教育」というネットスラングが生み出されたほどだ。
2004年に発売されたGUNGRAVE O.D.は,アニメ版の設定を取り入れて世界設定を再構築したり,新たなプレイアブルキャラクターが追加されたりと,さらなる掘り下げが行われており,同作を基点としてシリーズの本格的な動きが始まる……と,ファンは思ったのだが,逆にシリーズは一気に収束してしまった。
カオスウォーズへの客演の後,アメリカ・ロサンゼルスで開催された「AnimeExpo2010」でDigital Mangaによる小説/漫画の制作とCONVERGENCE ENTERTAINMENTによる実写映画の制作が発表されたりもしたが,続報は今に至るまで聞こえてこない。ゲームを開発したポジトロンと,企画デザイン工房 戦船もすでになく,ファンは“続き”を期待しながらも,暗澹たる想いを抱えていた。
しかし,さらに6年を経た2016年,遠いアメリカではなく,隣国である韓国から「GUNGRAVE開発中」との報が届き,国内ファンを驚かせた。そして,それがVRコンテンツとなって世に送り出され,今回その続編や2作のセットが発売され,さらにGUNGRAVE G.O.R.Eが開発中というわけだ。
GUNGRAVEはこうしてゲームで復活したほか,アニメ版「血界戦線」ではブランドンと九頭文治(生前のグレイヴと,その舎弟)をイメージしたと思しきキャラクターが1カットだけ登場したり,今堀恒雄氏の「今堀恒雄 Another Works」というライブイベントではアニメ版「ガングレイヴ」の楽曲がフィーチャーされたりしている。GUNGRAVEの“全壊のビート”は,まだまだ鳴り止みそうにない。
「GUNGRAVE VR」シリーズ公式サイト
- 関連タイトル:
GUNGRAVE VR COMPLETE EDITION
- 関連タイトル:
GUNGRAVE VR
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