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[G-Star 2018]「Lyn:The Lightbringer」に「リネージュ2」の元アートディレクターが込めた想いとは。メディア合同インタビューをレポート
合同インタビューには,Pulsa CreativeのCEOでもあるチョン氏と,プロデューサーのキム・デファン氏が出席し,メディア陣の質問に答えたので,その内容をお伝えしよう。
──最近の(韓国における)モバイルマーケットはMMORPGが中心となっていますが,さまざまなジャンルの中で収集型RPGを選んだ理由をお聞かせください。
チョン氏:
「リネージュ2 レボリューション」のような大作のMMORPGが最近の流行ですが,弊社が開発をスタートした状況では,スタッフ不足による技術的な部分と資金的なところで問題があり,大作MMORPGを作る方向に舵を切れませんでした。また,デザイン的な部分で言うと,MMORPGはキャラクターのクラスや,装備の見た目にフォーカスを置きますよね。我々はキャラクターに重点を置きたい想いもあり,収集型RPGを選択しました。
──キム・ヒョンテ氏はLive 2Dを活用しましたが,チョン・ジュンホ氏が3Dでの表現を突き詰めたのはなぜでしょうか。
チョン氏:
3Dを採用したというよりは,採用できたという形になります。その背景には,社内の3Dデザイナーとテクニカルな部分で意見が一致したからですね。
我々は,独自のシェーダを開発したわけではありません。複数のイラストレーターが開発に関わると,統一感を出すのに技術的なコストが重なることになりますが,私自身がすべてのイラストを担当したので,デザイナーの負担も最小限に抑えられたんです。
キム氏:
イラストを3Dのモデリングデータにしてみると,シェーディングやエフェクトを使ってイラストそのものを表現するのは難しいという判断になりました。アートテクスチャペインティング手法といいますが,さまざまな研究を社内で重ねて今のバージョンに至っています。
──ビジュアル面で期待が高まっている作品ですが,これから追加されるキャラクターもチョン・ジュンホ氏が手がけるのでしょうか。
チョン氏:
私がゲーム開発に参加するのは久しぶりです。私の名前を知ってもらったのは「リネージュ2」で,そこからアートスタイルが定着し,「TERA」などのタイトルに発展していったんですが,ある意味ではいまや古いスタイルになったといえると思います。
これはあえて言いますが,今は個性が見つけづらい時代になっています。劇画風や実写風を採用した作品もありましたが,特定のタイトル以降,とくに目新しいアイデアはありませんでした。
これまでアーティスト個人のカラーをはっきりと見せるアイデアもありませんでしたし,技術的に実現するのも難しい状況でした。私はゲーム業界にデビューする以前,漫画家を志望していたこともあり,さまざまな画風を研究していました。そういった経験も生かした「Lyn」でコンセプトアートを担当し,ビジュアル面で好評をいただいたのはすごく嬉しいです。ゲームというものには寿命がありますので,どこまでかは分かりませんが,リネージュのように長く愛されるために尽くす必要があると考えています。
──ビジュアル面はとても華々しいですが,戦闘システムはまだ改善の余地があるように見えました。今後はどういった改善を行う予定ですか。
キム氏:
さまざまなキャラの個性が生かされた戦闘を実現するために,各スキルをダイナミックに表現していくなかで,隊列が乱れてしまい,やや調和に欠けている部分があることは認識しています。これからもバランスをとりながら,ダイナミックな戦闘の実現を目指していきますのでご期待ください。
──キャラクターの登場数が多いゲームですので,有料コンテンツに関する質問は避けられません。マネタイズはどのような形にする予定ですか。
キム氏:
収集型RPGにおける一般的なマネタイズを想定していますが,従来作との差別化として「取引所システム」をモバイルゲーム向けに最適化して導入し,プレイヤー間によるキャラの取引を可能にする予定です。
──バックカラーにホワイトを採用した経緯を教えてください。ホワイトは電力消費が激しいため,普通は採用しません。
チョン氏:
開発支援を行うネクソン側からも,同様の指摘がありました。端的にいえば私のこだわりで,本作のテーマカラーをもし聞かれたといたら,白だと答えるからです。
一般的にはフレッシュなブルー,ダークなカラーが採用されているところですが,私はそれがプレイヤーにとっていい経験になるかどうかの確信が持てません。ゲームに個性を持たせたいと思いましたし,サブタイトルにある「Lightbringer」をイメージして,バックカラーにホワイトをあえて採用しています。
──ゲーム楽曲の制作過程についてもお聞かせください。
キム氏:
ネクソンとのコラボで制作した2曲のボーカル曲を採用しています。1曲めはオープニング曲となった「蜃気楼」で,2曲めは「絵の童話」というテーマを持っています。ゲームには9つのチャプターを用意し,各チャプターで曲を聞いてもらえるように制作を進めています。そのほかにもレイドやPvP,争奪戦といったコンテンツにおいても,緊張感があるような楽曲を用意しています。
チョン氏:
実はLynというゲームについてもう少しお伝えしたいことがありまして,アート風のゲームといえば極端にセクシーで,カジュアル風のゲームといえば極端に低年齢層を意識した表現に走りがちです。
プレイヤーにどういうイメージを伝えたいのかを考えたとき,コンシューマのバブル時代に素晴らしいゲームがたくさんヒットしたことを思い出します。そこでゲームとまったく関連性のないようなボーカル曲を採用するなど,“芸能人の雰囲気”をあえてゲームに取り入れるという考えが,私にはあります。「FINAL FANTASY」の楽曲が有名になったように,そういう楽曲を皆さんに楽しんでもらいたいという想いで企画してボーカル曲の制作を行いました。
──PvPコンテンツは今後どのような形で実装されますか。
キム氏:
PvPコンテンツは非同期と同期の2タイプがあります。争奪戦は非同期コンテンツで,同期型はおそらく競争支援という形でお披露目する計画です。
また,3vs.3のマッチングコンテンツも導入します。こちらは従来の収集型RPGでは見られないシステムで構成されていると思います。そのほかにもギルドレイドやギルド占領戦についても,一般的なものとは差別化した形で披露できるかと思います。
──プレイアブルバージョンではキャラの衣装を変えられましたが,これは成長要素に関わっていると思います。詳しくお聞かせください。
キム氏:
キャラクターの外見は基本的に2回変わります。それぞれ特定の段階まで育成されたとき,ランクがSに到達したときです。一般的な強化システムをベースにしていますが,我々はこれを一段階グレードアップした進化システムと呼んでいます。
──収集型RPGといえば,結局はオープニングで打ち出されているキャラを集めて育成することに帰結しがちですが,本作はどのようになりますか。
キム氏:
ガチャで提供される英雄のほうがハイレベルになる傾向にありますが,先ほど紹介した取引所システムを通じて提供の幅を広げています。非同期コンテンツにおいては,十分に役割を果たせるバランスでキャラを制作していますので,多くのキャラに触れられるような構成を目指しています。
──イラスト制作の過程でインスピレーションを受けたことや,記憶に残っているキャラについて教えてください。
チョン氏:
多くのキャラを制作してきたなかで選ぶとしたら「ソフィア」です。ソフィアは,ストーリーでは牽引役となり,子供を守る母親的な側面を持っています。女性の綺麗な姿というのはいろいろあると思いますが,キャラの中でもセクシーさが際立つようにして仕上げました。
もう1キャラを挙げるとすれば,犬の魔法使いが出てくるんですけど,私が心の中で大変だったときにペットの犬を育てていたことがありまして,その時期は本当に癒やされました。犬嫌いの人はそんなにいないと思いますので,昔の思い出を掘り起こしながら制作したキャラです。私が最後の最後まで周囲の反対を押し切って実装した犬の魔法使いなので,印象に残っています。
──ありがとうございました。
ソフィア |
犬の魔法使い |
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(C)2020 Pulsar Creative Inc.
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