東京ゲームショウ2019のVR/ARコーナー内,グランディングのブースに出展されている
「スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー」(
PS4 /
PC。以下,SC5VR)は,ビジネスデイから大きな話題を集めている。
ちょうど20年前に,ドリームキャストで発売された
「スペースチャンネル5」(以下,SC5)の最新作として,2019年末の発売に向けて開発が進められている本作の開発陣へのインタビューを実施。スペースリポーターのうららがVRで復活するまでの経緯や,現在の開発状況などを聞いた。
左から,ディレクターの堀田 昇氏,プロデューサーの岡村峰子氏(共にグランディング),ストーリー&ゲームデザインアドバイザーの吉永 匠氏(セガゲームス)
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20年前にSC5を手がけた多くの開発メンバーが集結
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずはこの2019年に,SC5をVRタイトルとして復活させることとなった経緯を改めてお話しいただけますか。
岡村峰子氏(以下,岡村氏):
SC5はもともと1999年に発売されたゲームなんですが,20年もの間ずっと好きでいてくれるファンの方が少なからずいることを,私達もSNSなどを通じて知っていて,その方々に対して何かしらの動きを見せたいとずっと考えていたんです。
その発端となったのが,2016年のKDDIさんとのコラボ企画で,VRで“SC5の世界に入り込む”という実験的なプロジェクトが実現しました。
それがすごく評判が良かったのですが,あのときはSC5の世界を見るだけの内容だったので,体験していただいた人達から「ゲームとして遊びたい」という声をたくさんいただきまして。それならば,過去に発売したシリーズに則って,SC5の世界でダンスをして楽しむゲームを作ろうと企画が立ち上がりました。
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4Gamer:
そもそも,なぜSC5VRの開発をグランディングが手がけることになったんでしょうか。
岡村氏:
私自身がセガに所属していた頃にSC5の開発に深く携わっており,さらに当時の開発メンバーが弊社に所属していたり,ネットワークでつながっていたりして,多くの人材の距離がすごく近い環境にあったんです。
もし弊社で作らせていただけるのであれば,20年前のSC5開発者の端くれとして,ちゃんとした作品を届けるために,できる限り当時のオリジナルのメンバーを揃えてお届けするのが義務だと思ったんです。
そんな折,「GAME SYMPHONY JAPAN」というコンサートの楽屋で,サウンドの
幡谷さん(幡谷尚史氏)と雑談をしていたときに「グランディングでSC5を作ってよ」と言われて,それを真に受けてしまいまして……(笑)。
4Gamer:
正しい流れだと思います(笑)。当然,そこからのセガゲームスとの交渉などがあるかと思うのですが,そこはどのようにされたのでしょうか。
岡村氏:
セガゲームスさんには,SC5でシナリオやデザインを手がけた吉永さんが在籍していましたので,吉永さんを通じて企画の相談からプレゼンまで対応していただきました。
4Gamer:
SC5をVRで復活させるという企画を聞いて,吉永さんはどう思われました?
吉永 匠氏(以下,吉永氏):
私個人は,SC5をVRでやるのは十分ありだと思ったんですが,企画の相談をされた当初は,まだVRタイトルに対するコスト感が読めなくて,社内のプロジェクトとするには難しい環境にあったんです。
でもグランディングさんとKDDIさんが組んで進めていただけるのであれば,それはチャンスなのでやったほうがいいと判断して,私のほうで権利関係をクリアする方向で動きました。
4Gamer:
SC5をVRタイトルにするにあたって,ゲームデザインは当然これまでのものから変わると思うのですが,それについてはいかがですか。
堀田 昇氏(以下,堀田氏):
VRでプレイするために,コントローラをPS Moveにすることは最初から考えていて,その設計のもとで試しにオリジナルのSC5の振り付けを入れてみたんです。ところが実際にプレイをしてみると,
テンポが速くて体がついていかず,ゲームにならないくらいの難しさだったので,振り付けは一から作り直しました。
吉永氏:
昔の場合は,テンポよく見せるために,あえてモーションをキャンセルさせたりしていたんですが,人間がその通りに動くとなると,物理的についていけないんです(笑)。その一方で,ほどよいテンポの良さも崩したくないですから,そのバランスには気をつけていただいています。
4Gamer:
そのほかにVRならではの苦労はありましたか?
吉永氏:
ゲームのデザインを考えるときに大変だったのは,「自分は一体誰なのか」ということでした。プレイヤーは主人公=うららなのか,それとも別の誰かなのか,どちらかになるんですが,プレイヤーがうららになってしまうと,その姿を見られないんですよね。
堀田氏:
VR空間のうららの姿を見せたかったので,自分がうららになるのはちょっと違うかなという話になったんです。
4Gamer:
それが新キャラクターの「ルー&キー」なんですね。
吉永氏:
はい,彼女達を出したことで,プレイヤーがゲームの中の登場人物の1人になれましたので,結果としてすごく良かったと思います。これまで主人公だったうららはリポーターなので余計なことを言わなかったのですが,今回はその世界に存在する人物であるプレイヤーに対して話しかけてくれるところが,これまでとはまったく違うところです。それによってうららとの“バディ感”みたいなところも強調できたんですよね。
4Gamer:
ところでルーとキーで,キャラクターが2人いるのはなぜなんでしょう? 1人でもいいような気もするんですが……。
堀田氏:
初期のテストのときに,マルチプレイを前提に作っていたというのが理由です。せっかくの魅力的な新キャラクターですし,テストの結果としても,将来的にこの2人のキャラクターを使って何か面白いことができるのではないかということで,そのまま2人で登場させることにしました。
4Gamer:
TGS 2019の試遊台ではルーのみが登場していましたが,キーもどこかで登場するんですか?
堀田氏:
もちろんです。まだ詳しくは言えないんですが,ちゃん2人で登場しますのでご安心ください(笑)。
懐かしいキャラと新しいキャラが共演する新しいSC5の世界
4Gamer:
今回,うららのコスチュームの色がイエローになりましたが,その理由を教えていただけますか。
岡村氏:
これは新作ごとにコスチュームの色を変えるという,SC5シリーズの伝統的な行事で,これまでのオレンジと白に対していくつかの案を出して,今の時代の雰囲気やVRで映える色をテストした結果,この「ネオンイエロー」という色に決めたんです。ちなみに今回はヘッドホンも同じ色にしています。
吉永氏:
うららが少し昇格したというイメージで,先輩的な雰囲気も出ていますね。個人的には以前よりちょっと強そうな感じもあります(笑)。
4Gamer:
会場で流れていたPVには,メインビジュアルに登場している何人かのキャラクターが映っていましたが,あれはどのような意図で作られたのですか?
岡村氏:
さりげなく新キャラクターが出ていることに気づいてもらえれば嬉しいというところと,ジャガーやプリンなど,過去シリーズからのキャラクターも今回の新しいストーリーに関わっているということをアピールしたかったというのが狙いですね。
4Gamer:
ビジュアルに登場するキャラクターはゲームに出てくると考えてよろしいですか?
岡村氏:
はい,そう思っていただいて大丈夫です。
4Gamer:
各キャラのキャストはどうなるのでしょう?
岡村氏:
これまでのシリーズに出ていただいた方については,全員出演していただく予定です。もちろん新キャラは新たに声優さんを起用していますので,続報をお待ちください。
4Gamer:
キャラクターの中で,モロ星人がちょっと違うタイプになっているのが気になるのですが,彼らはどういう存在なのですか?
吉永氏:
今回試遊できるのが本編のステージ1なのですが,実はあのあとに何かがあって,あのモロ星人やいろんな人達が絡んでくるという展開になっています。
堀田氏:
あのモロ星人はちょっと面白い感じで登場すると思いますよ。
4Gamer:
試遊したステージは初代SC5を思わせるもので,懐かしい気持ちになったのですが,その先はかなり変わるんですね。
岡村氏:
はい,最初はあのスペースポートに降り立ってもらって,“私の知ってるSC5の世界に入れた!”という気分を味わっていただき,そこからまったく新しい旅へと進んでいってもらいたいという気持ちを込めています。
4Gamer:
今回のサウンドに関しては,どのように作られているんでしょうか。
吉永氏:
基本的には幡谷を筆頭に,SC5の楽曲を手がけた弊社のサウンドチームのオリジナルメンバーが楽曲を制作しています。新曲あり,「メキシカンフライヤー」を含む既存のメロディありの構成で,とくにシリーズを遊んでくれている方が聴くとピンとくるようなフレーズも結構入っていますよ。
岡村氏:
サウンド収録のエンジニアまで,当時の方に参加してもらいましたからね。SC5ファンの期待を裏切らない内容になっていると思います。
吉永氏:
手前味噌ですが,サウンドはヤバいです(笑)。
岡村氏&堀田氏:
ヤバいです(笑)。
岡村氏:
すでにサントラの発売も発表させていただきましたが,そこには今回の新しい曲と,昔のサウンドトラックに収録されたいくつかの曲を,ベストセレクションのような形で入れていますので,そちらも楽しみにしていてください。
20年来のファンの熱意がこのプロジェクトへとつながった
4Gamer:
今年はSC5の20周年という記念すべき年となりますが,皆さんは今どんなお気持ちですか?
岡村氏:
今年こうしてTGS 2019に出展させていただいて改めて思ったのですが,実は1999年のTGSでは,モロ星人がチャンネル5のロゴマークに乗っているバルーンを出していたんです。そこから20年が経って,またSC5がこのTGSの会場に出ているというのが,とても不思議な感覚で,嬉しさをしみじみ感じてしまいましたね。
堀田氏:
僕は当時,同じ社内で「Rez」の開発をしていて,隣でSC5を作っているのを見て「チャンネルやりてー」と思っていたんです(笑)。ある意味,このSC5VRでその夢が叶ったのですが,歴代のレジェンドが手がけたタイトルでもあるので,皆さんの期待に応えられるよう,かなり緊張して作っています(笑)。
吉永氏:
過去のSC5のモーションのリストなどを見ていると,日付が1999年とかなんですよ。20年経っても同じことやっていて,「なんだよコレ!」みたいな感じで過去の自分と対話するという,新鮮な体験をしていました(笑)。当時は20年後に何かやるなんて考えもしなかったですからね。
4Gamer:
例えば20周年記念として,本作の発売以外に何かプランなどはあるのでしょうか?
岡村氏:
20周年の記念日が2019年12月16日ですので,そこに向けて何かをやりたいという計画は,現在絶賛調整中です。またどこかのタイミングで,続報を発表させていただきたいと考えています。
4Gamer:
このTGSでは,EDIT MODEさんのTシャツがスタッフTシャツとして使われていて,一般販売の予約も開始されましたね。
岡村氏:
EDIT MODEさんとは,かねてから私達と仲良くしていただいて,SC5のTシャツも以前から作りたいという話をしていたんです。今年はちょうど20周年を迎えて,このSC5VRも発売となりますので,いい機会なので作っていただきました。
4Gamer:
胸に漢字表記のあるデザインは珍しいですね。
吉永氏:
この「株式会社宇宙放送局第05号」というのは,設定のみにあったスペースチャンネル5の正式名称なんですよ。
岡村氏&堀田氏:
そうなんだ!?
吉永氏:
何で知らないの!(笑) そんな彼らが知らないぐらいの隠れた設定をEDIT MODEさんがうまく使ってくれたので,すごく新鮮でしたよね。
それとバリエーションとしては,黒いカラーのTシャツってSC5グッズの中ではかなり珍しいです。ほかには,しまむらさんで発売されたTシャツぐらいしかないんですよ。
4Gamer:
ちなみに現在,ゲームはどのぐらいまで完成しているんでしょうか?
堀田氏:
全体の7割程度といったところですね。パーツは組み上がりましたので,あとはそれを入れ込んでいくところです。サウンドも仕上がってきましたし。
吉永氏:
今回,全部で4つのステージがあるんですが,ゲーム自体は最初から最後まで遊べるような状態になっていますね。
4Gamer:
TGS 2019でも,すごく熱意のあるファンがたくさん来場していましたが,そんな人達に向けて,伝えたいことがあればお願いします。
吉永氏:
本作は主役がプレイヤー自身ですので,今までのシリーズとは少し違って,みんなと仲間になれる感覚を楽しんでいただけると思います。発売までもう少しですので,ぜひ楽しみにしていてください。
堀田氏:
SC5ファンの皆さんの期待を裏切らないような内容になっていると思います。早くうららに会ってほしいと思っているので,発売日までの開発をがんばって進めます。
岡村氏:
今は,20年待っていていただいて本当にありがとうございます,という気持ちでいっぱいです。リアルタイムで遊んだ方だけでなく,「初音ミク -Project DIVA-」や実況動画などで知ったという方,あるいは親御さんが遊んでいて知ったという方など,いろんな入口からSC5の世界に入ってきてくれた方々が話題にして盛り上がってくれていることが,今回のプロジェクトにつながっています。
皆さんの熱意がなければ,このプロジェクトは存在していないので,それに対する感謝の気持ちをお伝えするとともに,一緒に盛り上げていただければ私達の力になります。今後とも,よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
TGS 2019のグランディングブース。試遊は同ブースで朝10時より配布される整理券が必要となる
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会場では「スペチャンVR発売記念グッズセット」が予約受付中だが,その会場限定特典として配布されるオリジナルクリアファイルがこちら
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