プレイレポート
【Role&Roll連動企画】マフィア梶田と「シャドウラン」を遊ぼう。誌上リプレイ「運命の輪は回らない」の予告編を掲載
新紀元社より2018年9月29日に,サイバーパンクテーブルトークRPG「シャドウラン 5th Edition」が発売された(関連記事)ことを受けて,マフィア梶田が11月に呟いたのが以下のTweetである。
専門学校時代の恩師でもある朱鷺田祐介氏が手掛けたシャドウランの最新ルールブック!
— マフィア梶田 (@mafia_kajita) 2018年11月11日
しかし、俺は本作をプレイしたことがない……。誰か、誰かイチからレクチャーしてくれ……一緒に遊んでくれ……。https://t.co/DDwdukXjQg#シャドウラン pic.twitter.com/fnJlqQa8Mq
というわけで,シャドウランに興味津々なマフィア梶田を助けるべく,5名のメンバーが4Gamer編集部に召集された。ゲームデザイナー兼アニメ脚本家の金子彰史氏,ライトノベル作家の蝸牛くも氏,アナログゲームデザイナーのカナイセイジ氏,シャドウラン翻訳チームの西上 柾氏,そして筆者こと朱鷺田祐介である。
4Gamerでは,このメンバーにマフィア梶田を加えて行われたゲームセッションの誌上リプレイを近日掲載の予定だが,本稿ではその予告編として,キャラクター紹介までの部分をお届けする。
また本記事はテーブルトークRPG専門書籍「Role&Roll」とのコラボ企画となっており,本日(4月15日)発売の第175号には,本稿と連動した記事が掲載となっている。テーブルトークRPGファンは,こちらも合わせてチェックしてみよう。
【Role&Roll連動企画】マフィア梶田と遊ぶ「シャドウラン 5th Edition」。前日譚となるシナリオ「運命の輪は回らない」のリプレイ本編をお届け
シャドウランに興味津々なマフィア梶田を助けるため,5人のランナーが立ち上がった。オークのサイボーグ戦士・マフィア梶田は,グール軍団にさらわれた女性を救出に向かう仕事を引き受ける。果たしてその結末は……。2018年9月に発売となったTRPG「シャドウラン 5th Edition」をリプレイ形式で紹介する。
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サイバーパンクは踊らない
朱鷺田祐介(以下,朱鷺田):
本日,ゲームマスター(以下,GM)を務めます朱鷺田祐介です。
「シャドウラン」は,サイバーパンクの世界に魔法が復活した「第六世界」を舞台としたテーブルトークRPGです。ドラゴンがいて,魔法使いやエルフがいる一方で,サイボーグ戦士やドローン使いも存在する,そんな世界。
マフィア梶田:
待ってました!
朱鷺田:
まず,この世界の歴史についてざっくりと説明しておきましょう。「第六世界」には,我々の世界と異なる歴史を辿ることになった分岐点が3つ存在しています。
1つめは,まずシャドウラン初版が発売された年である1989年。この数年後に起こった日本のバブル崩壊が,「第六世界」では起こりませんでした。おかげで,第六世界では通貨単位として新円(ニューエン)※が使われています。
※1新円は約1ドルに相当する。
金子彰史氏(以下,金子氏):
それは燃えますねえ。
そして21世紀初頭,日本帝国が復活し,日本が太平洋の覇権を握りました。なにせ世界を支配する十大企業のうち,3つを日系企業が占めているのです。その一つ,大阪を本拠地とする財閥であるシアワセの系列会社シアワセ・アトミックが,1990年代のアメリカで原発事業を推し進めます。それに伴い,反原発の過激派が,シアワセの核燃料輸送を襲撃するようになりました。
蝸牛くも氏:
「原発は危険なので破壊して良い」と。
マフィア梶田:
パワーワードしかなくて,もう笑うしかない。まあでもサイバーパンクって,たいてい日本が優遇されてますよね。
朱鷺田:
日本がイケイケだった時代に生まれた世界観だからね。でまあ応戦せざるを得なくなったシアワセは,アメリカ連邦裁判所に「自衛のための武装の許可」を訴えます。連邦裁判所はこれを許可し,以後,企業が軍隊を持つのは当たり前になっていきました。これが第二の分岐点です。
やがて企業は国よりも大きな力を持つようになり,その敷地内には合衆国の法律が及ばない治外法権になりました。つまり企業のエージェントがどこかで何かやっても,企業の敷地まで逃げ込めば,警察は追って来られないわけです。
金子氏:
メキシコの国境越えみたいですね。
朱鷺田:
世界を支配する複数の多国籍企業が,各々そんな権利を振りかざすので世界は大混乱に陥ります。まさにやりたい放題で,企業同士による戦争が激化していきました。まあこの企業間戦争で暗躍するイリーガルなフリーランスのエージェントが皆さん,シャドウランナーなわけですが。
マフィア梶田:
なるほど。実にサイバーパンクだ。
朱鷺田:
そして世界は第三の分岐点,2011年12月24日を迎えることになります。世界に魔法が帰ってきたのです。人類の何割かはエルフ,ドワーフ,オーク,トロールに変化しました。人間のみならず,動物や植物にも魔法に目覚める個体がおり,そこからはドラゴンやヴァンパイアといった怪物――クリッターが生まれるようになりました。こうした出来事を,総じて「覚醒」と呼びます。この世界には,そうした超常の存在がたくさんいるのです。
カナイセイジ氏:
この混ざり具合。世界観が面白すぎますよね。
朱鷺田:
この「覚醒」の日から60余年が経過した2075年が,今回プレイする「シャドウラン 5th Edition」の舞台となります。半世紀以上にわたって繰り広げられた混乱の果てに,科学と魔法,サイバーとパンクが濃密に混ざり合った現在の第六世界があるわけです。
金子氏:
今回のシナリオの舞台はどこなんです? やっぱりアメリカ?
朱鷺田:
ゲームとしては世界中のいろんな国がサポートされていますが,その中心となるのはUCAS――カナダ・アメリカ合衆国の街・シアトルで,今回もここが舞台です。西海岸側で唯一のUCAS所属地域として,スプロール化※しながら成長を続ける巨大都市。今や十大企業が重要な支社を置く,企業戦争の中心地でもあります。
※都市開発が急速に進行し,不規則かつ無秩序に街が広がっていく状態のこと。インフラの整備などが追い付かず,生活環境が悪化しがちなのがよく問題となる。
西上 柾氏(以下,西上氏):
北米大陸の西海岸は,魔法を取り戻した北米先住民にほとんど奪還されちゃったんですよ。重要港湾都市であるシアトルだけは守った結果として,この地域だけ飛び地になっちゃって。周りはすべて先住民族国家に囲まれてる……という状態ですね。
マフィア梶田:
ちなみに日本はどうなってるんです?
朱鷺田:
日本帝国は高レベル向けの地域だね。日系企業が強すぎるうえ,世界一治安がいいのでランナーには住みにくい。なにせ銃刀法で銃が持ち込めない。切腹用にカタナはOKなんだけど。
マフィア梶田:
銃刀法とは?
誕生・シャドウランナー「マフィア梶田」
俺の名は「マフィア梶田」。
21世紀初頭にウェブ上で活躍した伝説的な英雄の名前をもらった。多分,5人目だ。巨大都市(スプロール)の影を走るシャドウランナーに真実なんてない。
朱鷺田:
ではまず,プレイヤーキャラクター(以下,PC)の自己紹介からはじめましょう。シャドウランのキャラクターメイクは時間がかかるので,参加者の皆さんには事前に作ってきていただきました。またシャドウラン初心者のお二人には,こちらでキャラクターを用意してあります。
マフィア梶田:
うし。俺の名は「マフィア梶田」。なにしろ「独特のスタイル:マフィア梶田」と書いてあるので,だれが見てもマフィア梶田だ。ネット上の伝説的な英雄「マフィア梶田」という概念を継承した5代目であります。
朱鷺田:
梶田くんはショットガンが撃ちたいとのことで,オークのショットガン使いをチョイスしました。加速装置を付けたサイボーグで,ショットガンと対物ライフルを使い分けます。あと人を丸ごとクローンする技術はまだないんだけど,外見を似せる改造なんかは難しくない。実際ファンがアイドルやミュージシャンそっくりに整形するのも珍しくないので,このマフィア梶田はきっとそういう人なんでしょう。
マフィア梶田:
それはそれでどうなんだという気がするけど(笑)。(キャラシートを見直して)あと,エルフには偏見があります。
朱鷺田:
「資質」としての「偏見:エルフ」ですね。なので,そういうロールプレイが求められます。オークである「マフィア梶田」は,カッコつけているエルフに偏見があるのだ。
金子氏:
えっ,自分のキャラがエルフなんだけど?
マフィア梶田:
偏見があります! 「奴らは信頼できない」(キリッ)
金子氏:
じゃあ次は自分か。エルフの格闘アデプトで,名前はベタだけど「ライトニング」でお願いします。
朱鷺田:
アデプトは魔法の力で身体能力を強化したキャラクターで,格闘技や体術に長けています。「戦姫絶唱シンフォギア」の主人公っぽく,壁を走ったり,飛んだり跳ねたりして拳で殴るスタイルをイメージしてみました。
金子氏:
壁走り,いいですよね。ロールプレイ的には世間知らずっぽい感じ……が出せるといいなあ。
マフィア梶田:
金子さんは今回,俺が誘って来ていただいたんですけど,なんでもテーブルトークRPG歴はめっちゃ長いらしいんですよ。
金子氏:
いやあ,古くからのプレイヤーではあるんですが,ブランクも長くて。最後に遊んだのは……初期の「ソード・ワールド」だったかな?
蝸牛くも氏:
では次は私で。名前は「モリイ・ゴースト」。有名なサムライの名前をつなげたコードネームですが,ランナーとしては駆け出しで,周りにはMGと略称で呼ばれています。もともとはミツハマ※系列企業の社長の娘で,ハイスクールでは野球部のエースだったのですが……。
※ロボット工学や魔法用品を扱う日本企業,三浜コンピュータ技術のこと。ぶっちゃけると極道の集団である。
西上氏:
なぬ?
蝸牛くも氏:
……婚約者がハニートラップに引っかかって失脚。アオリを食らって家を追い出され,その過程で片腕を失ってサイバーアーム化し,腕にサブマシンガンを仕込んでいます。ストリートに堕ちてシャドウランナーになりましたが,どこかお嬢様気質が抜けてない。
金子氏:
おお,さすが作家。設定盛々だ!
朱鷺田:
くも先生やカナイさんはシャドウラン上級者ですからね(笑)。キャラクターも当然のように自作データです。
カナイセイジ氏:
いや上級者というわけでは(汗)。ええと,私のキャラクターはコードネーム「シスター」,本名はシスター・メアリーといいます。小汚いビルで数名の子供を養いながら,ランナーをしているという設定です。魔法様式はヘルメス魔術様式なので,シスターと言っても“なんちゃって”ですけどね。
朱鷺田:
ヘルメス魔術は西欧発祥の理論を重視した魔法様式ですね。天使なんかを扱うキリスト教の術者は,分類としては信仰重視のシャーマン様式にあたります。
カナイセイジ氏:
25歳の女性で,ヒューマンのコーカソイド。若い頃から魔法を使って裏の仕事をしていたのですが,あるとき火球の魔法を使ったら,子供を巻き込んでこんがりと焼いてしまい……以降,罪滅ぼしをしているという設定です。そのため「依存症:アルコール」や「苦痛に弱い」「扶養家族」といった「資質」を取っています。
西上氏:
では最後は私で。デッカーの「“教授(プロフェッサー)”ウィリス・ウィルヘルム」です。
ドイツ人・日本人・アメリカ人のミックスで,UCAS陸軍のドローン特殊部隊にいて中尉まで昇進しましたが,2062年のクラッシュ2.0(ネットワークが世界中で崩壊した大事件)でPTSDを患い退役。PMSC(民間軍事企業)を点々とした挙げ句の果てに,シャドウランナーになりました。
朱鷺田:
西上さんはルールブックの翻訳を手伝ってもらったベテランで,今回はサポート役としてお呼びしました。ちなみにデッカーというのは,いわゆるハッカーのことですね。
西上氏:
はい。キャラクターとしても,「新人ランナーのサポートを頼むよ」と言われているということで。現場にも出られるコンバット・ハッカーを目指します。
朱鷺田:
これで5人のシャドウランナーが出揃いました。かくして,物語が幕をあけます。「シャドウラン」ではたいていの場合,フィクサーと呼ばれる仕事の元締めから仕事を持ちかけられるところから話が始まります……。
というわけで,いよいよここからシナリオ本編へ移っていくこととなる。オークのサイボーグとなったマフィア梶田を初めとするシャドウランナー達に,いったいどんな運命が待ち受けているのか。新米シャドウランナー達の活躍に期待しよう。なお次回の掲載は4月27日の予定だ。お楽しみに。
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- 関連タイトル:
シャドウラン 5th Edition
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