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[TGS 2020]「MtGアリーナ」世界大会“Red Bull Untapped”の日本予選をレポート。オムナス大上陸合戦を制したのは石橋 広太郎選手
本稿では,前日の試合を勝ち抜いた8名による決勝ラウンドの様子をレポートする。
なお,前日に行われた予選大会の一部は,バーチャルライブ配信者グループ「にじさんじ」メンバーによる解説とともに配信されている。ゲームの基本的な流れも紹介されているので,MtGアリーナを遊んだことがない人はこちらを先に視聴してみるのも良いだろう。
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※画像は配信映像をキャプチャしたものです
まずは,本大会のレギュレーションと,最新パックのメカニズムについて軽くおさらいしておこう。
予選(9月26日)はスイスラウンド形式で行われ,そこで勝ち上がった8人のプレイヤーが決勝ラウンドへ進出した。今回の決勝ラウンドではBO3のシングルエリミネーション方式が採用され,その中から優勝者が決まる形となる。出場選手とトーナメント表は以下の通りだ。
最新パック「ゼンディカーの夜明け」が発売され,スタンダードローテーションが行われた後の環境で実施された初の大型大会だ。最新カードが追加されただけでなく,「エルドレインの王権」より前に発売されたカードは使用不可となり,対戦環境も大きく変化している点に注目したい。
ゼンディカーの夜明けでは,土地に関係する能力がフィーチャーされ,表裏で異なる効果を持つ“両面カード”の土地が収録されている。今回の両面カードは今までとは異なり,戦場に出してから条件を満たして変身するのではなく,手札から唱える際にどちらの面を使用するかを選ばなければならない。
クリーチャーやインスタントとしてプレイするか,ほかのカードのために土地としてプレイするか,状況に応じて柔軟な対応を迫られることになる。本大会でも,こうした点がプレイヤーの細かな意思決定に余地を与え,見どころとなっていた。
対策を練って4色オムナスを討ち取るか
自らが4色オムナスとして覇権を握るか
試合で目立った活躍を見せていたのは,土地を戦場に出すことをトリガーとして発動するキーワード能力“上陸”を持つカード群だ。
上陸発動時に好きな色のマナを1点加える軽量クリーチャー《水蓮のコブラ》と,上陸の発動回数に応じて異なる特殊効果を発揮する《創造の座、オムナス》のコンビは,特に強烈な存在感を放っていた。
また,わずか3マナで多数のアドバンテージを得ながら土地カードを手札から戦場に出し,脱出コストを支払うことで墓地から6/6の巨体を4マナで唱えられる《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も,上陸系カードの相棒としてデッキに投入されているケースが多かった。これらを組み合わせたデッキは“4色オムナス”と呼ばれ,本大会のメタ(対策)の中心となっていた。
水蓮のコブラ |
創造の座、オムナス |
自然の怒りのタイタン、ウーロ |
これらのカードを主力に据えたデッキは低マナ帯の構成にそれなりの自由度があり,一口に4色オムナスといってもさまざまなバリエーションが存在する。そういった事情から,本大会ではミラーマッチ対策を施した4色オムナスと,4色オムナスの足回りを崩すメタデッキが多く見られた。
戦いを勝抜き,準決勝まで駒を進めたのは以下の4名。ここからは,準々決勝 第1試合,準決勝 第1試合,および決勝戦の模様をお伝えしていく。
■準々決勝
●柏 智博選手 ティムールアドベンチャー
●井上 徹選手 スゥルタイコントロール
第1戦目では,柏選手が井上選手によるカウンターの網をくぐり抜けて《僻境への脱出》などの補充カードを押し通し,リソースの削り合いに勝利。井上選手も巻き返しを図るが,墓地からも機能する《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を《魂標ランタン》が一掃し,そのまま柏選手が第1戦をモノにした。
続く第2戦目では,井上選手がカウンター呪文の《否認》と《神秘の論争》を構え,万全な状態で《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を着地させる。カウンターで邪魔になるカードを薙ぎ払い,最後に《悪夢の織り手、アショク》を着地させて井上選手がラウンドを取り返す。
最終戦では,デッキ構成上カウンターが難しい《幸運のクローバー》からの《豆の木の巨人》のコンボを通した柏選手がアドバンテージを得て,優勢に戦いを進めていく。そして,カウンター呪文をくぐり抜けて《創造の座、オムナス》が柏選手のボードに着地し,序盤のアドバンテージを守り続けた柏選手が勝利する結果となった。
■準決勝
●柏 智博選手 ティムールアドベンチャー
●上田 沙選手 4色オムナス
1戦目の序盤戦は上田選手がペースを握ったが,中盤にキーカードが引けずに停滞してしまう。そこで柏選手が序盤に配置した2枚の《幸運のクローバー》が大暴れ。10/10になった2体の《豆の木の巨人》を《厚かましい借り手》で手札に追い返し,後に唱えた《願いのフェイ》では3枚ものカードを一気に手札に加える。最後には《カズールの憤怒》の効果で17/17の《豆の木の巨人》を顔面に叩きつけ,柏選手がファーストラウンドを獲得した。
続く2戦目では柏選手が《創造の座、オムナス》を素早く着地させ,一時は上田選手をライフ8まで追い込むことに成功する。しかし,上田選手は《帰還した王、ケンリス》の回復効果とドロ―効果を駆使して少しずつ差を埋め,ゲーム後半でついに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を引き込む。そこから《発生の根本原理》を叩き込み,ボードを一気に奪い去って上田選手が驚異の粘り勝ちを見せた。
もつれ込んだ第3ゲームでは,柏選手が《恋煩いの野獣》を早めに戦場に投入して早期決着を仕掛ける。この思惑は当たり,ボードに置かれた6点クロックであっという間に上田選手の体力を6まで削り取る。最終的には《願いのフェイ》でサイドデッキから《カズールの憤怒》をサーチし,クリーチャーとマナを余さず使い切って決勝進出を決める。
■決勝
●柏 智博選手 ティムールアドベンチャー
●石橋 広太郎 4色オムナス
1戦目では,石橋選手が《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を最速でプレイして着々と準備を進める。対する柏選手は《水蓮のコブラ》などの足回りを補強するカードを《砕骨の巨人》で撃破しつつ,ボードアドバンテージを確保していく。
序盤は柏選手が大きくリードするが,中盤で石橋選手のボードに《発生の根本原理》から《精霊龍、ウギン》が着地。対応する側の柏選手は選択肢が急増し,思考中に時間切れが発生してしまう。何もせず石橋選手にターンが渡り,その後柏選手は膨大なディスアドバンテージを押し戻せず,石橋選手が1ラウンド目を先取した。
2試合目は,石橋選手が《水蓮のコブラ》を出すタイミングを1ターンずらすことで,柏選手の《砕骨の巨人》による2点ダメージをさばき,大量のマナを産出する《水蓮のコブラ》を場に残すことに成功。しかし,先に着地した《砕骨の巨人》が刻むクロックを止めることはできず,準決勝の第3戦に近い流れで柏選手がラウンドを取り返す。
そして最終戦では,柏選手が土地3枚に《エッジウォールの亭主》《幸運のクローバー》《枝重なる小道》《厚かましい借り手》と,素晴らしい初期手札を引き込む。これで必勝パターンを掴むかと思いきや,緑マナが引けず微妙に動きが遅れてしまう。
その後柏選手は《恋煩いの野獣》を着地させるも,最初の遅れが尾を引き石橋選手の《発生の根本原理》が通ってしまう。結果として《創造の座、オムナス》が2体出現し(伝説のクリーチャーであるため,片方は墓地に送られる),大量のマナが石橋選手に流れ込む。そこから《峰の恐怖》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といった,現環境における強力なクリーチャーが石橋選手のボードに勢揃いし,柏選手に抵抗の余地も与えないまま,石橋選手の4色オムナスが優勝をもぎ取った。
優勝した石橋 広太郎選手には,賞金の2000ドルとRed Bull Untapped 2020 Finalへの招待券が進呈された。《創造の座、オムナス》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が大暴れした大会だったが,まだまだ現環境は始まったばかりだ。大会の様子はアーカイブから視聴できるので,これからスタンダード環境で幾度となく出会うであろう両カードへの対策や,ミラーマッチにおける戦い方の参考としよう。
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