プレイレポート
「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」は,ゲームをきっかけにマーベルの世界へと入り込める傑作。あえて原作に詳しくない人間が遊んでみた
アベンジャーズと言えば,日本においては,ヒーロー達が活躍する実写映画の世界観を包括する「MCU(Marvel Cinematic Universe)」作品を思い浮かべる人が多いだろう。ここからマーベルの世界に足を踏み入れた人もいるはずだ。
一方,筆者はというと,実は「アイアンマン」シリーズぐらいしか観たことがなく,マーベルのコミックス本編やMCUの知識はあまりない。しかし,本作はプロモーションムービーを見るだけでも「おっ?」と思うような作り込みが感じられ,ゲーマーとしてはぜひ遊んでみたいと思ってしまう。
そんな筆者は以前,本作の開発を手がけたCrystal DynamicsのQ&Aセッションの取材に参加して,「本作のプレイ前にMCUの世界観を知っておいたほうがいいのか」と聞いてみたことがある。それに対してクリエイティブディレクターのShaun Escayg氏は,「映画をはじめとするMCU作品の知識がなくても十分に楽しめるでしょう」と返答してくれた。
その言葉を信じて,「マーベルが分からない人間でもMarvel's Avengersを楽しめるのか」を実際に確かめてみようというのが,本稿の趣旨である。
なお,本稿のゲームプレイはPS4版で行っている。文中のボタン表記もPS4準拠のものだ。
「Marvel's Avengers」のストーリーやゲームシステムを紹介する動画「WAR TABLE」が公開。Crystal Dynamicsが語る見どころとは
さて,本作に知識なしで挑んだとき,見どころとなるストーリーはどうなるのか。率直に言えば,筆者のような人間でも自然と入り込める。そのカギとなるのが,本作の主人公のひとり「ミズ・マーベル」ことカマラ・カーンだ。
アベンジャーズは,人々から尊敬され,親しまれるスーパーヒーローのチームとして登場するわけだが,実はカマラは一般人。プレイヤーはまず,彼女の目線からアベンジャーズと触れ合うこととなる。
カマラはアベンジャーズの大ファンであり,彼女が執筆したファン・フィクション(つまりは二次創作)がコンテストに入選。ヘリキャリア「キメラ」のお披露目イベント「A-Day」に招待され,そこで本物のアベンジャーズ達と出会う。
アベンジャーズ本家がファン・フィクションのコンテストを主催している設定もかなりぶっ飛んでいるが,カマラはそのファイナリストに残るような“超”が付くほどのマニアであり,そんな彼女のセリフの1つ1つがアベンジャーズに関するトリビアとなっていて,「知識はなくても興味はある」という筆者のようなプレイヤーにとっても十分楽しめる演出なのだ。
少々説明的なセリフも,マニアな彼女の言葉なら納得がいく |
本物のアベンジャーズが彼女の前に登場。ミーハーな筆者も興奮してしまった |
物語はイベントの最中に突如発生したゴールデンゲートブリッジの爆発から,思わぬ方向へと動いていく。アベンジャーズは橋を爆破した謎のテロリストと交戦する警察に加勢し,ここで初めてプレイヤーキャラクターとしての彼らを操作できるようになる。シーンの演出に沿って全員の操作感覚を体験できるとともに,互いのセリフなどから彼らの関係性を理解できるというのも,うまい作りだ。
ゲームは[□]での軽攻撃と,[△]での重攻撃をメインに,ジャンプ([×])と回避([○]),あるいはカウンター([R2])などを使って立ち回るアクションが展開する。また[L2]を押しながら[R2]を押すと,遠距離攻撃を繰り出せる。
また,すべてのヒーローが3種類の「ヒーローアビリティ」を持っている。これは戦闘を行うことでゲージがたまっていく必殺のアビリティで,「アサルト」は強力な攻撃を瞬間的に繰り出し,「サポート」は自分や仲間に戦いに有利になる特殊効果を与え,「アルティメット」は一定時間強大な力を得て暴れ回るというものだ。
アクションやヒーローアビリティはヒーロー達の個性を象徴していて,例えばアイアンマンことトニー・スタークなら,手や胸から発射するリパルサー・ビームが主な武器で,重攻撃はこれをテンポよく敵に撃ち込みながら戦っていく。
ヒーローアビリティのアサルトは胸のアークリアクターから撃ち出す「ユニビーム」,サポートアビリティは一定時間固有エネルギーが減らなくなる「アーク・オーバーロード」,アルティメットは無敵のアーマーを召喚する「ハルクバスター」といったものが揃い,戦闘中でも飛行やホバリングを自在に行えるのも大きな特徴だ。冒頭で述べた通り筆者は「アイアンマン」の映画は観ているので,あのアクションをプレイヤーとして体感できるのは嬉しい。
アーマーを入手するまで,簡易的なメカを装備して戦うトニー。こうした演出も楽しい |
ハルクバスターは自身が着用するだけでなく,別の場所に召喚して,マルチプレイで仲間に着せることもできる |
一方,彼らについてあまり詳しくなくても,アクションゲームのキャラクターとして本作のストーリーを体験することで,必然的にその魅力を知ることができる。個人的には,プレイヤーとして動かすことにより,映画以上に感情移入できるという印象だ。原作を知っているものだけ贔屓したくなるなら,筆者はアイアンマンだけ使いたいはずだが,そうはならなかったのだから。
アベンジャーズに加わるカマラについても触れておきたい。A-Dayの事件はキメラの墜落を招き,そのエネルギーは付近の都市の一角を崩壊させてしまう。またそのときに発生した「テリジェン・ミスト」により,これを浴びた人々が特殊な能力を持つ「インヒューマン」化するという現象が発生する。
事件から5年が経過し,大人っぽく成長しつつも,相変わらずアベンジャーズ大好きなカマラであったが,彼女もまたインヒューマンの力が覚醒していた。カマラの能力は身体のあちこちを伸ばしたり巨大化させたりする変身能力で,この力を生かしたアクションを得意としている。
移動時はゴムのように伸びる手でワイヤーアクションのように足場にぶら下がる「グラップルスイング」を使って移動し,攻撃は手足を伸ばしてのリーチの長いパンチやキックを繰り出す。カウンター時は,身体をぐにゃりと変形させて敵の攻撃を避けることができるので,回避時のように場所を変えずに攻撃を続けられるといった立ち回りが可能だ。
付近の仲間も含めて体力を回復させる「ヒーリングスピリット」(サポート)や,自身の身体を巨大化させて戦う「大きくなれ!」(アルティメット)などのヒーローアビリティを持っていて,攻守に優れた使いやすいキャラクターである。
カマラの手足を伸ばす攻撃は,リーチが長く範囲も広い |
身体能力も高く,脚を伸ばして大きなジャンプができる |
カマラは,A-Dayの事件で彼女と同様にインヒューマン化し,同じ境遇にある人々を“治療”の目的で捕らえ,人体実験を繰り返すジョージ・タールトン(後にモードックなるヴィランに変貌)と,彼が率いるAIM(アドバンスド・アイデア・メカニクス)に追われることになる。そして,AIMに対抗する「レジスタンス」と呼ばれる組織を探す過程でブルース・バナー(ハルク)と出会い,それをきっかけにアベンジャーズとキメラの復活に尽力する。アベンジャーズとの再会に喜びつつも,インヒューマン化した自身のことに悩み成長していく彼女の様子が,本作オリジナルのストーリーにて描かれる。
本作は盛りだくさんな作りで,キメラ復活後の「ウォーテーブル」から,全世界に点在するミッションへと挑んでいく。ストーリーが進む「ヒーローミッション」のほかに,任意に出撃できる「ウォーゾーン・ミッション」も出現。これらは場所によって異なるシチュエーションのステージが作られていて,その中で決められた目標を目指して進んでいく仕組みだ。
復活したキメラや,レジスタンスの拠点アントヒルなどからウォーテーブルにアクセスし,ミッションに挑む |
マップの探索やポイントの破壊など,さまざまなミッションが登場する |
ダウンしてしまった場合でも,仲間がいればその場でリスポーンできる。ただしシングルプレイ時はリスポーン回数に制限がある |
もちろんボスとなるヴィランも登場。ヒーローアビリティを駆使して戦いたい |
面白いのは,この手のキャラクター推しのアクションゲームとしては珍しい,ハック&スラッシュの要素が盛り込まれていること。ヒーローごとに装備する4カテゴリーの「ギア」と,ヒーロー全員で共有する2カテゴリーの「アーティファクト」を装備することで,自身の強さを表す「パワーレベル」を上げたり,特別なパークを身に付けたりできる。それぞれに6段階のレアリティが設定されていて,レアリティが高いものほど高性能なので,ミッション進行時に色の違うものが見かったときは,その場ですぐにその性能を確認したくなってしまう。
これらは特定のコンテナの中に隠されていたり,強敵が持っていたりして,方向キーの上を押すと発揮できる「戦術意識」によってステージ上のどこにあるかを確認できる。場所によっては非常に巧妙に隠されている場所などもあり,悩まされることになるかもしれないが,見返りも大きいのでしっかり探したい。
戦術意識を使うと目的地とは別に,ギアなどが入手できるポイントが表示される |
ボックスを開けたり,強敵を倒したりすることでギアが手に入る |
まずはパワーレベルが上がるものを装備しよう。必要ないものは分解してリソース(ギアを強化する素材)にしたり,倉庫に保管したりしておく |
ギアで見た目は変わらないが,「装飾アイテム」によって見た目を変えられる。実績やアイテムなどで入手可能だ |
またヒーロー達にはレベルの概念と固有のスキルツリーがあり,後者はプレイ中に入手したスキルポイントを振り分けることで,攻撃やアビリティのバリエーションを増やせるようになっている。ミッションには好きなヒーローを選んで出撃できるところもあるので,ハクスラだけでなく特定のヒーローを強化するのにも好都合だ。なお,これらのミッションはオンラインマルチプレイでのマッチングにも対応していて,ほかのプレイヤーと一緒にプレイすることもできる。
本作は,カマラの活躍をフックとして,散り散りになったヒーロー達が再び集まっていく展開とともに,ヒーロー達の個々のアクションがよくできているので,原作やMCUにあまり詳しくない筆者でも純粋にストーリーとゲームを楽しめた。主役となるヒーローや脇を固める人物達に興味を惹かれるきっかけにもなり,それらが登場する作品に触れてみたいという気持ちも湧いてくる。
またギアやアーティファクトのほかにも,要所にドキュメントやコミックなどといった収集アイテムを発見でき,それらを集めていくやり込み要素も充実しているので,キャンペーンを一通り終えてからもしばらく楽しめるのが嬉しい。
その一方で,ウォーテーブルからのミッションにアクセスする手段や,ギアをはじめとする細分化されたアイテム類,頻出する専門用語など,ゲーム面での情報量は多い。ヒーローごとに用意されたチュートリアルや,項目を選んだときポップアップされるヘルプなど,かなりユーザーフレンドリーに作られているものの,それでも細かな(とくにゲーム的な)用語などの知識がないと理解できないであろうポイントも多い。筆者とは逆に,「マーベルやMCUは好きだが,あまりゲームをやらない人」が本作を触った場合,若干のハードルは感じるかもしれない。
ヒーローのアクションは,キメラ内の「HARMチュートリアル」で何度でも練習ができる |
メニュー画面はとくに情報量が多い。規程の場所にカーソルを合わせればヘルプのポップアップも出るが,それもまた専門用語が多かったりする |
それらを差し引いたとしても,ゲームならではのアベンジャーズの活躍を楽しむゲームとしては十分な完成度であることは間違いない。ファンが楽しめるのはもちろん,ゲーマーがマーベルやMCUの世界に入っていくきっかけにするにはもってこいで,もし「アベンジャーズは気になるんだけど,今さら映画を順に観るのも……」という人も,本作を遊んでみたら考えが変わることだろう。
今後のアップデートでホークアイやスパイダーマン(後者はPS版のみ)などの参戦も明らかにされており,筆者もしばらくプレイを続けようと思っている。アクションゲームが好きな人は,ぜひこの機会に手に取ってみてほしい。
「Marvel's Avengers」公式サイト
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(C)2020 MARVEL. Developed by Crystal Dynamics and Eidos Montréal.
Development support provided by Nixxes. All rights reserved.
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