インタビュー
[インタビュー]「Elin」エンドコンテンツの本格着手は2025年の中ごろ。アーリーアクセス後の印象や今後の予定を開発者のnoa氏に聞く
前作「Elona」から追っている染まりきった妹も,今作から入った新たな妹も,年末年始を自由でカオスなノースティリスで過ごそうと考えているのではないだろうか。
Elinはαテストの公開以降,ものすごい頻度でアップデートが行われてきた。それは現在も同様で,毎日のように(早期公開用のNightlyブランチ側で)手が加えられている。今後も正式リリースに向けて,精力的な更新が続けられていくことだろう。
今回4Gamerでは,アーリーアクセスという1つの節目を越えたElinについて,開発者のnoa氏にインタビューを打診してみた。
- それは記事でできている。
- それはメールインタビューに分類される。
- それはアーリーアクセス以降に打診されている。
- それは12月8日に回答されている。
4Gamer:
まずは開発体制のお話からうかがいます。Elinは何名で開発をされているのでしょうか。個人ゲーム開発者のnoaさんと,イラストを手がけている皆さん,という体制で開発が進められているように見えるのですが,ゲームの仕様を決めて実装しているのは,noaさん1名なのでしょうか。
noa氏:
現在は4名で開発しています。その内,グラフィックアーティストさんが3名です。ゲーム部分を私が実装し,グラフィックやイラストが必要になったら,Google ドキュメントのコメントで打ち合わせ・素材の依頼をする,という感じで開発を進めています。
4Gamer:
Elinのアップデート頻度を見ていると,noaさんは本当にずっと開発をし続けているのでは? という印象を受けるのですが,1日のうちどのぐらいゲーム開発にあてているのでしょう……?
noa氏:
おそらくご想像の通りだと思いますが,だいたい起きてから寝るまで開発しています(笑)。
4Gamer:
前作Elonaのリリースからは18年ぶりの新作ということになりますが,空いた期間はどのような活動をされていたのでしょうか。
noa氏:
Flashのゲームを作ったり,Unity向けの開発アセットをいくつか作って販売したりしていました。表立った活動はほとんどなく,だいたいゲームを制作していました。
4Gamer:
Elona,Elinとnoaさんのゲームを見ていて,noaさんの原体験的なものが気になります。好きな作品や影響を受けた作品,ElonaからElinに進化していくにあたって,そのあいだに参考にした作品などがあれば教えてください。とくに特徴であるカオス感の由来となる作品があるのだとしたら気になります。
noa氏:
雑食なのでいろいろなジャンルの作品から影響を受けています。ゲームプレイでは,やはり「Nethack」や「Angband」系といった,古のローグライクの影響が大きいかもしれません。
「ルーンファクトリー」「ワールド・ネバーランド」「アトリエ」シリーズみたいなほっこりするファンタジー生活ゲームや,「RimWorld」のようなコロニーシミュレーションゲームも好きです。犬と猫やアンディーメンテの作品もよくプレイします。
「カオス感」については,特定の作品の影響というより,私の性格のせいかもしれません。不謹慎だけど笑ってしまうもの,かわいいのにハチャメチャなもの,シュールで面白いものなどが好きですね。
4Gamer:
Elonaの続編を作ると決めたとき,どういった新作にしようと企画を立てていったのでしょうか。Elinを遊んでいると,ベースに宿っているものが同じでありつつ,今の時代のゲームとして遊びやすいものにしたという印象を強く受けますが。
noa氏:
企画や仕様は用意せず,ほとんど勢いで作っています。それが悪い方向に働いて,Elinの開発は本当に迷走を繰り返してしまいました。
現在Elinに入っている「Elonaらしい」部分は,実は開発のだいぶ後半で追加されています。それまでは,トップダウンの2.5DリアルタイムRPGから始まり,3D「Minecraft」風のゲームにしてみたり,「Gnomoria」や「Dwarf Fortress」っぽい立体マップのコロニーシミュレーションにしてみたり,さらにRimdWorldっぽい平面マップに変えてみたりと,グラフィックスタイルやゲームプレイも大きく推移してきました。
最終的にターンベース制のローグライクとなりましたが,ゲームエンジン的には,今でもリアルタイムに動かせますし,コロニーシミュレーション的な動作もできます。
マウスメインのお手軽操作やUIについても,今の時代風にしようといった思惑はなく,いろいろ作っていて結果的にそうなった感じです。初めからバリバリのローグライクを作ると決めていたら,やはりトップダウンの,キーボードをしこしこしてプレイするゲームになっていたと思います。
4Gamer:
Elinはクラウドファンディングで6350万円もの金額を集めました。個人開発のフリーゲームからこの金額には驚きましたが,noaさんとしては,どういった意気込みでクラウドファンディングを開始し,どのぐらいの調達を見込んでいましたか。
noa氏:
クラファンについては,蓋を開けてみるまではどうなるかまったく分からないという状態でした。長年開発してきたElinをこのまま終わらせたくないという思いもあって,珍しく気合はかなり入っていたと思います。集まった金額以上に,Elinに期待してくれている方が大勢いると分かったことが,大きなモチベ−ションになりました。
4Gamer:
私はバッカーなのですが,クラウドファンディングで入手できたグッズは非常に満足感のあるものでした。むしろ「もっと頼んでおけばよかった!」と思っているぐらいです。今後,入手機会はありませんか?
noa氏:
私もイラストを担当したNZさんも,皆さんにグッズを喜んでいただけたのは本当に嬉しい体験でした。今のところクラファンのグッズの再生産は考えていませんが,Elona・Elinグッズは私ももっと欲しいので,今後また何か作ってみたいです。
4Gamer:
クラウドファンディングの成功後,「願い」のアンケートを公開されていましたが,さすがElonaプレイヤーたちと思わされる回答が印象的でした。事前アンケ―トだったので,実際に提出されるかは不明だったと思いますが,実際に願われて面白かった,意外だったなど,noaさんの印象に残っている願いを教えてください。
noa氏:
「願い」のバッカーリワードを作った背景には,私一人ではどうしても固定されてしまう・狭くなってしまう世界観を,プレイヤーの力を借りて広げたいという思いがありました。狐種族を始め,人気のサキュバスやメスガキのほか,多くの「願い」がプレイヤーの皆さんにぐっさり刺さっているのを目の当たりにして,そういう需要があったんだ……と私自身驚いています。すべての願いが印象に残っていますし,印象の少ない願いがあれば,のちのち強化しなければいけないですね。
4Gamer:
アーリーアクセスが始まり,これまで以上に多くの人がプレイされていますが,Elonaを通っていない新規のプレイヤーも多いのでしょうか。
noa氏:
フィードバックやコミュニティでの反応を見ると,新規プレイヤーも多い印象を受けます。Elonaを知ってはいたものの,遠目から見るだけでプレイしていなかった,という方のコメントをよく見かけます。
4Gamer:
11月のSteamの週間売り上げで上位に入っていましたが,もし可能でしたら,どのぐらいの販売数になっているのか教えてください。
noa氏:
12月8日時点の販売数は,およそ18万となっています。日本の冒険者がやはり一番多く,全体の半数程度,その次に多いのが中国・米国の冒険者です。
4Gamer:
アーリーアクセスでさまざまなフィードバックが届いているかと思いますが,現状の遊ばれ方にどういった印象を持っていますか。
noa氏:
バグリポート送信時にセーブデータも添付できるのですが,送られてきたデータでプレイヤーの拠点をこっそり見学するのが楽しみになっています(笑)。ロールプレイを楽しんでいるのが伝わってくる拠点や,性癖にまみれた拠点,効率を重視した拠点や,やってんねぇ(誉め言葉)と呆気にとられてしまう拠点まで,プレイヤーによって本当にさまざまな遊び方をされている印象です。
4Gamer:
もし,現状の遊ばれ方で人気の種族やクラスなど,プレイヤーの傾向が分かるデータがあれば教えてください。
noa氏:
残念ながら,そういうデータは一切収集していないんですよね。Steamの実績解除率から,プレイヤーの傾向やゲームの進行状況を分析できるらしいので,いつか面白い実績を導入してみたいと思っています。ElonaがSteamで出ていたら,実績データからゴミ箱ダンク率が分かったかもしれませんね。
4Gamer:
Elinのような自由度が高く,カオスなこともできるゲームで,プレイヤーの行動は想定内に収まってくれるものなのでしょうか。
noa氏:
すべてを想定するのはやはり不可能ですし,何より,こういう世界を用意したらプレイヤーはどのように遊んでくれるんだろうか,新しいギミックを入れたらどんな悪さをするんだろうか,というのを,私自身が一番楽しみにしている節もあります(笑)。
バランスについては,穴が見つかればその都度修正していくというスタンスで,インディーゲームらしく自由に,ちょっぴり大胆に,これからもElinを拡張していければと思っています。
4Gamer:
Elinは長期開発を予定しているというコメントをされていたかと思うのですが,今後のロードマップを教えてください。
noa氏:
大まかには,来年中にホームストーリーをほぼ完結させ,2026年後半にメインストーリーをすべて導入し正式リリース,という流れを想定しています。エンドコンテンツの本格的な調整や拡張は,それらより大分早く,来年の中頃には徐々に着手を始められたらと考えています。来年前期は,サブクエストや街ごとのユニークNPCをメインにコンテンツを追加していく予定です。
4Gamer:
種族やクラスは,主に前作にあったもの+バッカーコンテンツとなっていますが,今後新たなものが追加されることはあるのでしょうか。
noa氏:
種族については,今後の新しい敵やNPCの登場に合わせて,どんどん追加していきたいと思っています。クラスは,転職システムの導入も考えていて,追加というよりも既存のクラスの拡張や特徴化という方向に進むかもしれません。
4Gamer:
グローバルマップを見ていると,とくに北東の雪原などに行けない地域が多くありますが,行ける場所は拡張されていくのでしょうか。
noa氏:
まだしばらく手を付ける予定はありませんが,雲で覆われている部分は,のちのち解放することを想定して作っています。グローバルマップの拡張にあわせて,Elinでは,実際に乗って移動できる船や飛空船といった乗り物も,いつか出せたらと思っています。
また,マップ単位でシーンの切り替わるElona・Elinでは,特徴的なシーンを手軽に表現できるため,月面のマップや神々の領域のマップといった,少し変わった場所も追加していければと思っています。
4Gamer:
世界観的にはElonaの30年近く前が舞台となりますが,プレイを続けるとElonaの時代に追いついてしまう気が……このあたり,Elonaに合わせたクエストの発生や変化などは予定されているのでしょうか。
noa氏:
この部分は特に何も考慮していませんでした。ElonaからのユニークNPCは,Elinではだいたい子供として登場するので,時間経過と共に成長してポトレやドット絵も変わるようになったら,また新たな楽しみがでてきそうですね。
追加コンテンツとして,Elonaの物語やクエストをそのままelinに持ってきて,30年たったらElonaの物語が始まる……というのが今ちょっと頭をよぎったのですが,さすがにしばらくは封印しておきます(笑)。
4Gamer:
アーリーアクセス,フリープレイが配信され,今でも多くの人がElinを楽しんでいるかと思います。プレイヤーにメッセージをお願いします。
noa氏:
アーリーアクセス版をプレイしていただきありがとうございます!
公開からしばらく経ち,現在のエンドコンテンツを遊び尽くしている方もいらっしゃるかもしれません。私はこのゲームを,クリアしたら終わりではなく,しばらくして起動したらまた新しい冒険や発見が待っているような,長く付き合える作品に育てていきたいと思っています。
これからの長いElinの旅路を,古の妹たちや新しい妹たちと一緒に歩めることを,幸せに思っています。
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