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渋谷の新たな“王”は誰だ。ロールプレイと共に激しい抗争を楽しめる中量級ボードゲーム「シブヤ ストラグル」先行体験会レポート
それに先立ち,11月19日にメディア向けの先行体験会が行われた。本稿では,本イベントで体験できたゲーム内容をお伝えするとともに,本作の監修を務めたデザイナーのカナイセイジ氏や,JELLY JELLY CAFE代表の白坂 翔氏も登壇した,イベント全体の様子をお届けしていく。
「シブヤ ストラグル」公式サイト
なお,本作は同社が以前にリリースした「CHAINsomnia〜アクマの城と子どもたち〜」(以下,CHAINsomnia)と同様に,新規採用された社員達がカナイセイジ氏や白坂翔氏の監修のもとで制作したタイトルだ。CHAINsomniaは,発売後すぐに再生産がかかるほどの人気作だったこともあり,同じ制作体制で作られる続編の動向が気になっていたファンも少なくないだろう。
「The Last Brave」「CHAIN somnia」が発表されたディライトワークス 新作ボードゲーム発表会&メディア向け先行体験会をレポート
ディライトワークスは2018年11月12日,オリジナルボードゲームの発表イベント,およびメディア向け先行体験会を実施した。このイベントでは,同社の新作ボードゲーム「The Last Brave」と「CHAIN somnia」が発表され,試遊もできたので,そのレポートをお届けしよう。
体験会では始めに,本作の制作に携わった6名の2019年度新入社員が登壇し,本作の概要を紹介した。
“覇権争奪ギャングバトルゲーム”と銘打たれたシブヤ ストラグルは,その名の通り渋谷を舞台にギャング達が抗争を繰り広げる,インタラクション(相互干渉)もりもりの対戦ゲームだ。
物語の舞台となるのは,ギャング組織「デス・クラウン」が支配する2020年の渋谷。プレイヤーは新興ギャングを率いるニューフェイスとなり,デス・クラウンから覇権を奪う抗争に明け暮れることになる。詳細なルールについては後ほど,体験レポートの中で紹介する。
ゲームの概要に続いて,本作の制作に携わった6名によるトークセッションが行われた。今回は6名の中で3名がボードゲームの制作を経験済みとのことで,ややレベル高めでのスタートとなったようだ。
本作の世界観のテーマは“中二病感”と“ダサかっこいい”の2点にあるという。設定や世界観もかなり細やかに作り込まれているようで,登場するキャラクターのバックグラウンドもきっちり用意されているそうだ。
また,「ボードゲームに慣れていない人がステップアップできる作品」として,意識的に中量級の作品としてデザインされているという。主に軽量級の作品をプレイしている人も,これを機に本作に触れてみるのも面白いかもしれない。
ゲーム紹介と制作過程に関するトークが落ち着いたところで,本作の監修を行ったゲームデザイナーのカナイセイジ氏と,JELLY JELLY CAFEの白坂翔氏もトークに参加。カナイ氏は主にゲームバランスについて,白坂氏はテーマやプロダクト全般の監修を担当していたようだ。
カナイ氏は本作の制作にあたって,「プレイヤーが『よっしゃ!』と声を出してしまうような瞬間」を意味する“よっしゃポイント”という概念を作り,それを多く組み込むことを提案していたという。そうしたアドバイスは多くの面で取り入れられているとのことなので,本作をプレイした人は自分なりのYP(よっしゃポイント)を探してみよう。
また,制作にあたっての苦労話の中では,製作中で発生した大きな軌道変更についても触れられた。本作の制作は今年の5月頃に始まり,企画やイラスト制作は6月時点で進んでいたものの,7月下旬には企画の大幅な見直しが行われたのだという。
というのも,企画時点で設定した“SFマフィア”というテーマをそのまま使って制作が進んだため,システムとの具体的な整合があまり取れないままデザインに至ってしまったという事情があったようだ。すでに進んでいるものを切り捨てる事に関して議論もあったものの,最終的にはよりシステムと整合するテーマを採用することに決定し,万事解決と相成ったそうだ。
しかし,ここでカナイ氏から「SFマフィアをテーマとして設定した場合にどう理屈付けるか,というストーリーを作ってた」という事実が告げられた。チームの結束を優先して隠されていたようで,制作チーム一同は驚きを隠せない様子だった。
そんなシブヤ ストラグルは2019年12月4日から全国のボードゲームショップやディライトワークスショップでリリースされる予定だ。先に紹介した通り,ゲームマーケット2019秋での先行購入も可能となっている。
データ | |
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タイトル | シブヤ ストラグル |
発売日 | 2019年12月4日 |
価格 | 4950円 |
プレイ人数 | 3〜4人 |
プレイ時間 | 60分 |
自分のチームを誰よりも早く成長させて,渋谷の支配権を“KING”から奪い取れ
では,実際に遊んでみてのプレイレポートをお届けしていく。こちらがセットアップが完了した“2020年の渋谷”の全景だ。
プレイヤーはこの3×3のエリアで表現された渋谷に,自身のチームの手駒である“構成員”を送り込むことで,エリアごとに設定されたさまざまな効果を得られる。各エリアの効果を得てチームを育て上げ,デス・クラウンが誇る四天王をすべて撃破し,最後に出現する“KING”との最終決戦に打ち勝つのがゲーム最終目的となる。
ただし,プレイヤー同士は対抗関係にあるためエリアは奪い合いとなる。同じエリアに構成員を送り込んでしまった場合は“抗争”を行って勝利したプレイヤーだけが効果が得られる格好だ。
各プレイヤーには3種類のステータスが設定されていて,各エリアでは特定のステータスを上昇させたり,構成員を増やしたりできる。構成員は,ランダムに設定されるスタートプレイヤーから順番に配置していくので,自分が伸ばしたい能力に合わせて構成員を送り込んでニラミを利かせると同時に,相手プレイヤーの足止めも考えねばならない。
ステータスとその効果 | |
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武 | 抗争の発生時,武の数値に等しい補正値を得る。 初期値:1 最大値:5 |
財 | ラウンド開始時,財に等しいコインを得る 初期値:1 最大値:5 |
運 | 抗争でダイスを振る際,運を1消費することで以下のうちいずれかの効果を実行できる ・ダイスをすべて振り直す ・ダイスを1つ選んで振り直す 初期値:1 最大値:5 |
ステータス以外の要素 | |
構成員 | エリアを起動するためのコマ。同じエリアに複数の構成員が配置されていても,エリアの効果は1度しか発動しない 初期値:3 上限:6 |
コイン | 特定のタイミングで,特殊能力を起動するためのコストとして使用する。 初期値:5 |
初期の時点で各プレイヤーが持っている構成員は3人だけ。撤退した構成員は“お詫びの上納金”として1人につき1コインを献上してくれるが,基本的には争わずにエリアの効果を発揮した方が美味しいのは間違いない。
まずは戦闘を避けつつ,自分の強みを作っていくのが上策だろう。筆者は「財」の成長とコイン集めに重きをおいた配置を行い,プレイヤー同士の抗争を避けながらアガリの収集に務めることになった。……少々逃げ腰に見えるかもしれないが,基盤を整える時間はやはり大切だ。
なお,エリアに配置した構成員はラウンド終了時(エリアの効果を処理した後)に手元に帰ってくるため,特定のプレイヤーがエリアを独占するような状況は発生しない。
エリア名称 | 効果 |
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裏闘技場 | 効果1:武+1 効果2:武3以上で,3コイン獲得。 |
セントラルストリート | 効果1:武+1 効果2:武4以上で,抗争カード1枚獲得。 |
道玄坂裏路地 | 効果1:財+1 効果2:武・財・運 どれか1つを-1したら,抗争カードを1枚獲得。 |
709ビル | 効果1:財+1 効果2:武・財・運 どれか1つを-1したら5コイン獲得。 |
キャバクラ | 効果1:運+1 効果2:3コイン支払えば,抗争カードを1枚獲得。 |
カジノ | 効果1:運+1 効果2:1コイン払えば,ダイスを1個振り 出目×1コイン獲得。 |
ハチ公広場 | 効果1:武 or 財 or 運 +1 効果2:5コイン払えば,構成員1人獲得。 |
クラブ | 効果1:武 or 財 or 運 +1 効果2:クラブに置かれた構成員が…… 【2人のみ】抗争カード1枚獲得。 【3人以上】構成員1人獲得。 |
スクランブル交差点 | 非戦闘マップ (このエリアでは抗争が発生しない) 以下の効果から1つを選ぶ ・抗争カード1枚獲得。 ・5コイン払えば,構成員1人獲得。 |
しかし,ゲームが進んで各プレイヤーの構成員が増えていくと,必ずエリアの奪い合いが発生してしまう。同じエリアに複数のプレイヤーがいた場合は,より高い「戦力」を叩き出したプレイヤーが勝者としてエリアに残る。
基本的な戦力の値は「エリア内にいる自分の構成員に等しい数のダイスを振った合計値」に「武の数値」を足したもの。つまり,相手の動向を見て多数の構成員で潰しにかかるなど,ドカッと多くの構成員を投入するのも有効な戦略といえる。
しかし,数で優勢になったからといって油断はできない。各プレイヤーにはゲーム開始時点で2枚の「抗争カード」が配布されており,これによって戦力を追加したり,ダイスを振り直すなどの特殊効果を発揮できるのだ。
この「抗争カード」にはセリフが書かれており,これを読み上げてカードを出すことになる。これがまたゲーム全体の雰囲気と見事に合致していて,ゲーム的にも極めて派手な効果が多いこともあり,自然なロールプレイが楽しめるのも本作の大きな魅力と言えるだろう。
抗争を繰り返す中で自身のステータスを一定以上まで鍛え上げ,指定されたエリアの支配に成功すると,街を支配するデス・クラウンの「四天王」を撃破できる。四天王を撃破したプレイヤーは,ゲームの最後に出現する“KING”との最終決戦が有利になる特殊能力を得られるので,中盤以降は「いつ四天王を撃破する条件を満たしに行くか」という読み合いも展開されるようになる。
そして,四天王がすべて撃破された時点で,ゲームボード上の「スクランブル交差点」エリアが反転してデス・クラウンのKINGが姿を表す。
KINGエリアではプレイヤー同士の抗争は発生せず,KINGとプレイヤーとのバトルが行われる。通常の抗争と同じように戦力を算出するのだが,KING側の戦力は実に50+X(ダイス2個)であり,下手をすれば60以上の戦力を用意せねば勝利できない。
たとえ構成員6名でダイスを振って全部6を出したとしても合計36点。ステータスや抗争カード,および四天王の能力を最大限活用しても負ける可能性が残るほどの強敵である。しかも,KINGが出現してからスタートプレイヤーが1周しても誰もKINGに勝てなかった場合は全員の敗北になるため,必ず誰かが挑戦せねばならない。
今回のプレイでは筆者が2人の四天王を撃破して「所持コインに等しい戦力を得る(最大値15)」と「同じ出目になったダイスの数×3の戦力を得る」という強烈なバフを獲得。周囲のプレイヤーからの“絶対に負けてほしい”という真摯なる願いを背に受けつつ,KINGに挑戦状を叩きつける運びとなった。
最初はダイスが振るわなかったものの,最大値まで伸ばしていた運のステータスを限界まで使い,さらに抗争カードまで活用して合計7回もの振り直しを実行。最終的にダイスは“6・6・6・6・5・5(合計34)”という結果となり,四天王やそのほかの抗争カードの効果をまとめて合計戦力82点を叩き出し,KINGを跡形もなく粉々にして勝利。これにより,晴れて渋谷に平和が訪れたというわけだ。
プレイしてみての感想としては,見た目や処理の内容から受け取る印象よりもカジュアルなゲームに感じた。運によって差が付きやすいデザインだが,ステータス上限が低めに設定されている関係で,後続が追いつくのも難しくはない。
また,特定ステータスを下げることで恩恵を受けられるシステムも用意されているため,先行している(ステータスが最大値になった)プレイヤーが考える余地を失わないのも良いポイントだ。
戦略が運に飲み込まれてしまう場面もチラホラと見えたが,その辺りも抗争カードでの補助やロールプレイ要素によって,幸運も不運も笑い飛ばしながら楽しめるのは本作の大きな美点と言えるだろう。
プレイ時間は約60分ほどで,その点の表記にも偽りなし。いわゆる中量級に位置する作品ながらルールは単純で覚えやすい部類に入るので,軽量級のゲームを主に遊んでいるボードゲームプレイヤーの“次の一歩”として有効な作品といえる。気になる人は11月23日,24日のゲームマーケット2019秋に足を運んでみよう。
「シブヤ ストラグル」公式サイト
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シブヤ ストラグル
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