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25年ぶりに復活する元祖RTS。「Command & Conquer: Remastered Collection」はファンたちと共に作り上げられた
そのタイトルに“コレクション”と記載されているように,「Command & Conquer: Remastered Collection」は,1995年にリリースされたオリジナル作品である「Command & Conquer」(通称: Command & Conquer: Tiberian Dawn)と,翌1996年に発売された番外編の「Command & Conquer: Red Alert」を柱にするものだ。
そこに,コンシューマ機専用発売となったためにPCゲーマーは遊べなかったTiberian Dawn向け拡張パック「Covert Ops」と,Red Alert向けの「Counterstrike」と「Aftermath」という合計3つの拡張パックを含めたパッケージで,日本語未対応ながらも19.99ドルでSteamやOriginにてリリースされる予定である。
名門メーカーの血脈を残したリバイバル作品
当時の日本では,お世辞にも人気があったとは言えない「コマンド & コンカー」だが,ネバダ州ラスベガスに拠点を持っていたWestwood Studiosというメーカーが,1993年にリリースした「Dune II: The Building of a Dynasty」で開拓した“リアルタイムストラテジー(以下,RTS)”と呼ばれるジャンルを発展させた,ゲーム史の中にも大きな足跡を残した作品として知られる。Dune IIの未熟だったゲームプレイやAIなどを洗練させたうえで,1990年代中盤からメインストリームとなっていた,実写映像をゲームに取り入れるという手法を加えることで人気を博し,1994年に登場した「ウォークラフト」,1997年の「エイジ・オブ・エンパイア」と合わせて,PCゲーム市場で高いニーズを獲得した。
2000年代には日本のPCゲーマーの間でもRTSが流行したが,改めて本ジャンルを説明しておこう。RTSは,それまで「ターン制」が普通だったストラテジーに“リアルタイム”というエッセンスを加えたものだ。
具体的には“ハーベスター”と呼ばれるユニットを使い資源を集め,施設を建設し,戦闘ユニットの生産や技術革新を通して戦力を増やし,敵勢力に戦いを挑むという,一連の流れをリアルタイムで行うゲームシステムだ。
当時これはかなり革新的なゲームシステムで,筆者はビジネスマンの2人組がノートPCをLANケーブルをつなげて対戦に興じている姿を目撃したことがある。当時としては衝撃的なシーンだったといえる。実際,プラットフォームはPCのみでありながら,今でも多くの根強いファンを抱えているという。
Westwood Studiosはその後Electronic Artsに買収され,Electronic arts LAとして,カリフォルニア州ロサンゼルスに拠点を移したが,RTS人気が下火になるにつれてオリジナルの開発メンバーの多くはラスベガスへと戻った。そして彼らはPetroglyph Gamesを結成して「スター・ウォーズ エンパイア・アット・ウォー」や「Conan Unconquered」など,ストラテジーを専門に手掛けてきた。
そして今回「Command & Conquer: Remastered Collection」で,Westwood Studiosの血脈を受け継ぐPetroglyph GamesとElectronic Artsがタッグを組むことになったわけだ。さらにゲーム開発の補助で経験豊富なマレーシアのLemonSky Studiosが加わっている。
コマンド & コンカーのストーリー
初代作品である「Tiberian Dawn」は,1990年のイタリアのティベレ川近郊に隕石が落下するという仮想の歴史イベントからスタートするストーリーだった。
この隕石からは新しいエネルギー源となりうるティベリウムという鉱石が発見されたが,それは空気中に毒をまき散らしながら自己増殖していくという特性を持っており,生態系と文明を破壊していく。1995年までには全世界に広がって文明は崩壊し,アポカリプスを迎えてしまうという世界観だ。
アポカリプスを迎えた中,ティベリウムを神の贈り物と信奉する元科学者の“ケイン”が率いるカルトグループ“Brotherhood of Nod”(NOD)が勃興,国連軍が発展した“Global Defens Initiative”(GDI)と長きにわたる戦いを繰り広げていくことになる。
双方の勢力でプレイできるキャンペーンが用意されており,GDIはNOD勢力をヨーロッパから駆逐することを目指し,一方のNODはアフリカを制圧し,国連の最終兵器であるIONキャノンを奪い,GDIを一気に殲滅しようと画策するストーリーが描かれる。そこから2012年にリリースされた「Command & Conquer: Tiberium Alliances」までつながるサーガへと発展していく。
スピンオフ作品である「Red Alert」はストーリーが異なり,1946年にアルバート・アインシュタインがタイムトラベルの実験を行い,若きヒトラーと友好関係をもってしまったことから始まるパラレルユニバースをテーマにしている。
その介入によってヒトラーは若くして命を落とし,スターリンが率いるソビエトが力を蓄えて中国大陸を占領。そのままヨーロッパに流れ込んだところを,アメリカを加えた連合軍が立ち向かうというストーリーで,ソビエト側はバッキンガム宮殿の占領,連合軍ならモスクワ攻略というキャンペーンが描かれていた。
「Red Alert」は国連軍とソビエトでユニットの個性がまったく違うという「Command & Conquer」シリーズの伝統を強く表現した作品だった。
オンライン対戦モードをフィーチャーし,マップエディターを搭載していたことに加え,ぶっ飛んだストーリーながらも「もしそうならありえそうな歴史」を題材として扱っていたことで,オリジナルシリーズ以上の人気を誇っていたといってもいい。「Conuterstrike」と「Aftermath」という拡張パックが1年ごとにリリースされたのも,そうしたファンにアピールしたためだろう。
グラフィックス以外にもある改良点
さて,オリジナル版ではデフォルトが640x400だった解像度を,一気に4Kにまで引き上げた「Command & Conquer: Remastered Collection」。特にリマスター版では,高解像度によるリマスターされたグラフィックスと,過去をノスタルジックに楽しめる低い解像度を,リアルタイムで切り替えるという,“ならでは”なフィーチャーも用意されている。もちろん,今回のオンラインイベントにおいては,キャンペーンの内容などはそのままにしつつも,様々な部分で強化されているのが紹介されていた。
「Command & Conquer: Remastered Collection」のライブデモを視聴して気づいたところでは,ゲーム画面の右側にまとめられたユーザーインタフェースが,当時の雰囲気を持ちつつも,かなり変更が加えられている点だ。
オリジナル版では4x2のマス目で最大8つの施設やユニットしか表示できなかったサイドバーが,施設,兵士ユニット,ビークルなどにまとめられて,さらに5x3のマス目に増やされていた。「Command & Conquer: Red Alert 3」以来のメンバーであるプロデューサーのジム・ヴェセラ(Jim Vessella)氏は,「サイドバーの使いづらさは,かなり昔から,ファンの修正要望ポイントだった」と話している。
サイドバーの使いやすさは,操作時間短縮につながるためにゲームプレイの変化に影響を与えてしまう懸念はあるものの,このあたりの変更についてはコミュニティに理解されているということだろう。
また,オリジナル版では上下左右のスクロール移動のみだったカメラコントロールに,さらにズーム機能も加えられている。また,ミッションの選択画面なども一新して,操作の流れをスムーズにするとともに,ホットキーのオプションを増やしてカスタマイズも可能にするなど,コントロール面での改良はかなり重視されているようだ。
ネットワークコードは新たにPetroglyph Gamesで開発されたものを採用し,マルチプレイモードもスムーズに楽しめることになる。カスタムゲームロビーが用意されており,ゲームルールやチーム,マップをカスタムしてホストすることも可能だ。マップと言えば,「Red Alert」でしか利用できなかったマップエディターが,「Tiberian Dawn」のほうでも利用できるようになっており,OriginとSteamの双方に対応しているという。デフォルトでもマルチプレイマップは250種類も存在するとのことで,かなり長い間楽しめるのは間違いないだろう。
映像からBGMまで,ファンなら感激のボリューム感
「コマンド & コンカー」シリーズの最大の特徴と言えるのが,俗にFMV(フル・モーション・ビデオ)と呼ばれる実写映像であり,ミッションとミッションの間に挿入されるカットシーンが実写撮影されていることである。カメラ目線で司令官やケーンが話しかけてきたり,複数の役者の演技しているシーンは,グリーンスクリーンで背後のCG映像とクロマキー合成したものだ。もちろん,すべてWestwood Studiosに設けられたスタジオ内で撮影されたものなので,照明の当て方などがB級映画っぽく,その分だけ1990年代のゲームらしさが感じられる。
この実写映像は,「Command & Conquer: Remastered Collection」においては6時間にも及ぶ分量があるらしいが,オリジナルのフッテージが失われている部分もあるため,いわゆるAIアップスケールのソフトを利用して,高解像度での視聴にも耐えられるようになっている。このAIアップスケールには多くのファンが協力したとのことだが,さらに映像中に使われているキノコ雲のフッテージなど,パブリックドメイン化された実写映画の高解像度版なども,ファンの間で捜索が行われて,Petroglyph Gamesに情報がもたらされたという逸話もヴェセラ氏は紹介していた。
1990年代のハードロックと言った感じだったBGMは,当時からオーディオディレクターとしてWestwood Studiosに在籍し,現在もPetroglyph Gamesに参加しているフランク・クレパッキ(Frank Klepacki)氏が,自らの音楽仲間と結成したバンド「Frank Klepacki & the Tiberian Sons」の演奏で20曲以上を取り直し,合計で7時間にもおよぶBGMが収録されている。
ゲームに使われなかった未公開曲や映像素材,メイキング写真などの秘蔵コンテンツは,「Bonus Gallary」としてゲームを進めていくとアンロックされるとのこと。
シリーズのファンなら,ゲーム中で最も記憶しているのが,「Re-enforcements have arrived. Building on hold」という,AIキャラクター「EVA」(Electronic Video Agent)の声だろう。その声優は,当時Westwood Studiosの受付をしていた,キア・ハンツィンガー(Kia Huntzinger)氏が担当していたが,まだラスベガスに在住してクレパッキ氏とも親交があったので,彼女の音声のHD版を再収録したらしい。
すでに記載したように,この「Command & Conquer: Remastered Collection」が日本語化されないというのは,PCゲームの歴史の中に大きな足跡を残す作品だけに非常に残念なところではある。本編は2007年にフリーウェア化されているとは言え,これだけのボリュームで19.99ドルで販売されるというのもうれしい。欧米においては,そのリリースにあたり,「Special Edition」と「25th Anniversary Edition」という限定版もプレオーダー(関連リンク)が始まっているなど,これまでリマスター版の発売を長く待ち望んでいたファンなら気になるところだろう。
最後の直系作品となった2010年の「コマンド&コンカー4:タイベリアン・トワイライト」からも10年が経った現在,今後の展開にも期待しつつ,プレイしてみるのも悪くないかも知れない。
「Command & Conquer Remastered Collection」公式サイト
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